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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第四章 ロード・オブ・アドベンチャー
65/100

9 六人の天才と一人の凡人

◇ 七人目の仲間

 北の城門を出てしばらく進むと、道の真ん中に、魔法杖を持ち足元までのローブを羽織った魔導師が立っている。


「コルベット様! 」


 巫女達は、西の修道院に戻っているので、わざわざ見送りに来てくれたのだろう。

 コルベットは白を基調に金と黒の模様があしらわれた格式の高そうなローブを(ひるがえ)すと、短いワンピースに、腰を装飾のあるベルトで括った軽装で立っている。

 美脚をおしげもなく露出し、体にフィットしたスタイルのよいボディーラインで、大人の魅力満載だ。


 僕は少し緊張しながら前に出て

「コルベット様、今回の戦いでは、援助いただき本当にありがとうございます」

「うむ」

 コルベットはうなずき、見送りの言葉でもあるのかと思ったけど、それ以上何も言わない。

 一瞬沈黙のあと、どうしようもないので。


「そ……それでは、我々は先を急ぎますので」

 そう言って、深く頭を下げて先に進むと、コルベットがついてくる。


「あのー……コルベット様……どうして」

「一緒に行くのだ」

 さも当然のように言う。


「ええ! 修道院は」

「修道院はキキラに任せた。だいたい修道院は苦手なのだ。前の修道院長が亡くなられ、しかたなく私が院長をしていただけだ」

 みんな、固まっている。


 どうも、子供の頃は修道院の問題児だったようで、今回、魔族を相手にできるのはコルベットだけといことで、院長をするしかなかったようだ。

 戦いが終わり、魔族も去ったことで修道院を任せたのだろう。


 コルベットは

「熱水大墓を突破するのだろ。それには、魔導師が必要だぞ」

 そう言ってニタリと笑う


「そうですが……」

 ストレイン・ワールド最強と言ってもいい魔導師が仲間になるなんて想像もしなかった。一方で、コルベットもレイカに会いたいのだろう。

 

 正直、熱水大墓の攻略はかなり厳しいと思っているので、コルベットが参加してくれるなんて、願ってもないが……少し怖い。


 こうしてコルベットも加わって、熱水大墓のある北を目指す。

 これより先は人が住んでいない地域で道も整備されていない。さらに、周囲は火山地帯となり、ごつごつした険しい岩屑の間に獣道のような細い踏み跡程度しかなく、碧玉の光を頼りになんとか進んでいる。


 そんな厳しい道中だけど、野営ではゴンゾーが美味しい食事を作ってくれて、みんな輪になって食事する。なんだかキャンプ気分で、以前ミホロが言っていたように、こんな旅をいつまでもしたいと思えてくる。


 食事をしながらレイカの話をすると、コルベットが食いついてきた。

「ホーリースラッシュを会得されたのか! さすが姫様だ。早くお会いしたい」と、無骨なコルベットが夢見る少女のように言ったあと

「しかし、レイカ姫は強者(つわもの)と言っていたが。周りの者はそれなりだが、肝心の勇者がへっぽことは」

 さすがに、ストレートに言われるとショックだけど……


「確かにへっぽこだが。みどころはある」

 横からなんと、ミュールがフォローしてくれるではないか!


 すると、コルベットは、少しにやけて

「そのようだな、とても人を褒めそやすことのないミユールがそう言うなら、間違いないだろう……」

 と、なぜかジト目で、ニヤニヤしながら言う。


 すると、ミュールは焦ったように

「な……なんですか。別に、そんなのではない」

「そんなのとは? 」

 コルベットが突っ込む。


「それはその……あの…その」

 めずらしく、口ごもるミュール。もしかして、これって、僕に気があるフラグでは。コルベットさん、もっと突っ込んで!

 と、思ったが、僕がデレっとしているのを見たコルベットは「何を勘違いしている」といった表情だ。


 そのあと、コルベットが口ごもりながら

「ところでカズヤ……その碧玉の柄を私にも持たせてくれないか」

 少し遠慮がちに言う。

 まあ、気になるのも無理はない。それに今となっては問題ないので、コルベットに渡すと、うれしそうに月に柄をかざしたが何も起こらず、少しがっかりしたようだ。

 次に、僕が持つと命が吹き込まれたように、するどい光線が北をさす


「うーむ。悔しいが、カズヤにしか反応しないのだな。まあ、私はレイカ姫のところに向かう強者の力になってくれと言われた。私はそれに従うだけだ」

 と、どこか負け惜しみに聞こえ、少し子供みたいにすねている感じで、意外と可愛いところもある。

 最後は少しふてくされたように


「さあ、今夜は、もう寝ようか」

 なんだか仕切っている。


「は……はい! 」

 僕は、素直に返事する………しかないよな。

 パーティは西の大魔法使いコルベットが加わり、ポーの予言どおり七人になった、


 道すがら、野良魔獣が出現し、熱水大墓(ねっすいたいぼ)が近くなるにつれて強くなるが、ルークが先制攻撃をして、近づいた魔獣はコルベットがあっけなく駆除してしまう。

 たまに、運動させろと、ミュールやゴンゾーも軽く魔獣を倒している。

 アタッカー、魔法使い、傀儡士(くぐつし)、アーチャー、ヒーラーが揃い、戦闘のバリエーションは近接、遠距離なんでも対応できる。レベルも高く、流星騎士団にも匹敵、いやそれ以上だ。

 さらに、レイカが加われば、本当に無双だ……でも、そんな中で僕はと言えば


「隠れていろ! 」

 と言われ、後ろで隠れている。勇者に守られる女の子ならいいけど、一応僕も勇者を目指す冒険者なのだけど……


 周囲は相変わらず、火山地帯の荒々しい道が続く、所々噴煙や水蒸気が立ちのぼる不気味な景色だ。

 僕は、横をあるくゴンゾーに

「強いメンバーが揃ったよな。ゴンゾーやミホロもレベル六十を超えてマスタークラスだし……でも、ぼくは相変わらず、レベル20からなかなか上がらない……」


 すると、ゴンゾーは笑いながら

「まあ、しかたないさ。カズヤもいろいろ事情があるのだろ、天界に行くまでは俺たちにまかせておけ。エクアドルに戻って、レベル上げをすればいいさ」

 気を使ってくれているが、なさけない。今の僕は、どう考えてもお荷物なのだ。


 思い返すと、ミホロやゴンゾーに会うまで、他のパーティに入っていた時のパターンだ。

 レベルの上がらない僕は、みんなに置いて行かれ、パーティーはさらに難易度の高いクエストを行いたいのに、僕がいるためできない。そして、僕のいないときにこっそりクエストに行ったりし、いたたまれなくなって「一身上の都合で……」と言って、パーティーを辞めるのだ。

 ちなみに、引き留められたことは一度もない。


 しかも、今のメンバーはこれまでのパーティとは桁違いの強さだ。プロスポーツの集団の中に、素人が親の七光りで入れてもらっているようなもの。レイカとの繋がりで入っているだけで、レイカと出会えばその先、僕の必要はない。


 まあ、どうせいつもと同じなだけさ……


◇ミホロの悩み


 そんな中、コルベットの攻撃魔法を見せつけられるミホロも、少しお悩みのようで

「あのー、コルベットさん……」

「なんだ」

「私も魔法使いなのです」

「見れば分かる」

 そっけないコルベットに、ミホロが恐る恐る


「それで、私にも。そのー……魔術を」

 コルベットはミホロを眺めて

「私の魔術は攻撃系の黒魔術が主だ、ミホロにはさほど教えられない」

「私、エクスプローションとか覚えたいのですけど」

 コルベットはあきれて


「どう見てもミホロは白魔術だろ。しかも、素養はかなり高い、その気になれば聖母にも匹敵しそうなのに」

 それは、以前ポーにも言われたらしいが、どうしても攻撃系がいいらしく、素養もないのに、懸命に攻撃魔法を練習している。


「どうして、攻撃魔法にこだわるのだ」

「それは……自分が癒されたいのに、なんで人を癒さなきゃいけないのかって。それに、怪我を直しても、また戦って怪我して戻ってきて、また直して……それなら、怪我をさせる張本人をやっつけたほうが……」

 以前、ミホロが言っていたことだけど、僕はそれでいいと思っていた。


 するとコルベットはミホロに

「フォーリー・ブライトを知っているか」

「味方のHP/MPを全回復し、死者を蘇らすことも出来るという」


「そうだ、剣技の最高奥義がホーリー・スラッシュなら、回復系の最高奥義がホーリー・ブライトだ。聖母ほどになれば、一軍隊を全回復することができる」

「はい、聞いたことはあります。でも、そんなの私には絶対無理です」


「今はな……」

 そう言うと、コルベットは自分のアイテムの中から、クリスタルを取り出し

「これは、そのホーリー・ブライトを発動する補助魔具だ。素養があれば最初のうちはこれを触媒にして発動できる。私は、使えないのでミホロに渡しておこう」

「ええ! でも、私使えません」


「大丈夫だ、一回しか使えないが、このクリスタルをかざして呪文を詠唱するだけだ。しかし、今のミホロのレベルでは自分のMPも全消費して、一人を全回復するのが精一杯だろうが、いざというとき役に立とう」

 そう言って、僕を見つめた。

 どうやら、僕のためにと言っているみたいだ。


 ミホロも、気づいたようで

「わかりました」

 笑顔で受け取った。


 みんな、僕のことを気遣ってくれている。

 ところで、僕はなんの素養があるのだろう……アタッカーでもなく、ヒーラーでもない、策士というほど、知略にもたけていない

 この六人の天才の中で唯一、運だけで入っている凡人だ。


 そんな、ウジウジしている僕に構わず、熱水大墓が近づいてくる。

お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m

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