8-12 ローレシア戦役 ―ローレシアを後に―
ローレシア戦役の最終話です。
ローレシアの王都を占拠していた魔族は、熱水大墓まで撤退したようだ。
なぜかあっさりと撤退し、他の国の魔族も撤退している。
コルベットのエクスプローションの破壊力に恐れをなしたのか、クレイ・フィールドの敗北で熱水大墓まで下がって体制を立て直そうとしているのか。
油断はできないが、念願のローレシアは奪還できた。
魔族が占領している間、ローレシアの住民はひどく弾圧されていたようで、僕たちが凱旋すると王都をあげての大歓迎だ。
さらに、アリーア姫が王宮にもどると、呪詛が解けた王が出迎えて感動の再会を果たし。僕たちも王宮の間に呼ばれて功績を称えられた。
ちなみに、コルベットの修道女達はローレシアの国には入らず、そのまま西の修道院に戻っていった。
王は謝罪したいと言ったが、コルベットは拒んだようだ。
迫害を受けたこともあり、しばらくは来たくないのだろうが、友好的に付き合うことになり。ローレシアは今後、修道院に寄付を送り手厚く保護することになった。
そんな中、本来なら王宮で祝宴や祝賀会に招かれるところだが、悠長なことを言っていられない情報が入ってきた。
「カズヤ様、エクアドルが大変です! 」
その情報はアリーア姫自らが持ってきた。
「ラ・ムーアが復活して、王都が大混乱に陥っているようです」
みんな、愕然とした。
「もう復活したのか! 」
情報としてはこれだけで、被害状況など詳しくはわからない。いずれにしても、ぐずぐずしていられない。
この先には熱水大墓があり、そこを突破しなければならない。碧玉もそこを指し、その先は人跡未踏の地で、そこに天界に通じる何かがあるに違いない。
僕たちは、すぐに出発することにした。
◇
ローレシアの北の門で僕たちは旅支度を整えて集ると、アリーア姫が見送りに来てくれた。グランブルも一緒だ。
アリーア姫は
「カズヤ様、多くの魔獣を封印した熱水大墓は我々にとっても脅威なので。手助けすべきところなのですが、援助できず申し訳ありません」
確かに、熱水大墓に逃げ込んだカーズを倒さないと、再びゾンビ魔獣が湧き出てくるので、ローレシアとしても退治しておかなければならない。しかし、魔族の侵略からの復興に人手がかかり、兵隊も多くを失い今は対応できないようだ。
僕もそれは承知しているので。
「今は王国も大変ですし、熱水大墓は大軍で攻めることができません。少数の精鋭部隊で挑む方が良いかもしれません」
「すみません。魔族の群れはかなり強敵です、どうか無理なさらずに」
確かに、これまで軍隊規模で戦ったきた敵に六人で挑むのだ、勝ち目がないと言ってもいい。むちゃくちゃ不安だけど行くしかない、もう時間もないのだ。
でも、ここでカッコつけようと
「お……おとこは、負けるとわかっていても、戦わなくてはいけないときが……ありありなのです」
と言うと、後ろで
「あのう、女性もいるのですけど。それに、カッコつけてもひきった表情ではねぇーーー」
とミホロに言われた。
確かに、姫に言われてビビっているの、丸出しだった。
アリーア姫は心配そうな表情で
「皆様のご武運を、心よりお祈りいたしております」
本当にすまなさそうに、寂しそうに、祈るように両手を合わせている。
「それでは、行きます」
僕は頭を下げると、アリーア姫は少しはにかむように
「そのー、カズヤ様。エクアドルが落ち着けば、ローレシアへ来られませんか。よければ……私を守っていただけると、嬉しいのですが」
少し顔を紅らめる姫。
こんな可愛い娘に、好意的なセリフを言われたことはない。
もしや、これは、モテ期到来なのか!
どうしようもないオタクに、空から降ってきた美少女が恋するパターンのイベントか!
………こんなうまい話は無いよなぁ、ゲームの世界だからに決まっている。
僕は慎重に。
「守るなら、グランブル騎士団長のような、強い人がいいですよ。」
「強いだけの兵は周りに大勢います。カズヤ様のような方は……初めてなのです」
嬉しいけど、かなり買いかぶりのようだ。
「姫さま、身に余るお言葉ですが、僕はそれほどの人間ではないです、たまたま上手くいっただけです。ですから、自分に自信が持てたら考えさせてください」
「わかりました。でも、いつでも来てください、私は大歓迎いたします。ローレシア、そして私を救っていただいたのはカズヤ様なのです、この御恩は生涯忘れません」
そう言ってくれるアリーア姫に、僕はお礼を言って別れた。
後で、ミホロが
「そこまで、自分を卑下することないのじゃない」
どことなく沈んだ声で言う。リアルの自分を思い起こしているのだろうか、臆病で人の好意を素直に受け取れない僕も、人を信じることができない……ところがあるのも。
多分、これまでのボッチ気質のためなのだろうな。
◇
僕たちが出発しようとすると、さきほどから、グランブルがミュールにしきりに話かけている。
「ミュール様、私もなにかあれば馳せ参じまする」
するとミュールも
「グランブル殿、あの絶体絶命の陣中で、最後まで命を賭して主君を守ろうとする姿勢は、武門の誉れであります。感服いたしました」
ミュールが初めてグランブルを褒めると、グランブルは満面の笑顔で
「騎士として当然のことです……ミュール様は戦場に咲く一輪の花……」などなど、
そのあと百倍返しで、自分の功績、ミュールへの賛美を、歯の浮くようなセリフであびせかけ始めた。
ミュールは、辟易としている。
出発したあと「あいつは、社交辞令と言うのを知らないのか、うかつに褒めるのではなかった……」と小声で言ったのが僕には聞こえた。
でも、グランブルのような、能天気な方がいいのかもな。
こうして、巨大な敵に対してかなり心もとない編成だけど、道の先に思わぬ人物が立っていた。
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