8-11 ローレシア戦役 ―反撃―
翌未明
コルベットが動き出した。
巫女の魔導師を集結し、コルベットが魔導師の最前列に立つと、まずは自ら反撃の強烈な一発をお見舞いする。
詠唱を行うと、魔法杖をかかげ
「エクスプローション! 」
魔獣の群れの頭上に巨大な火炎球が発生すると、轟音とともに大爆発が生じる。それは、クレイ・フィールドの平原の三分の一ほどを覆い尽くす強烈な一撃で、魔獣の半分以上が一瞬に消え去った。
そのあまりの破壊力に僕たちは唖然とし、魔族が恐れるのもうなずける。
この一撃で、一気に形勢が逆転した。
魔獣も何が起こったかわからないようで狼狽している。
その後、魔導師は数人が一塊となり魔獣に向っていくが、統制のとれない魔獣はバラバラに宛もなく歩き回るだけで、ほとんど狩りをしている感じだ。さらに、ミュールとゴンゾーも、ここぞとばかりに最前線で剣を振った。
今のゴンゾーはこれまでの鬱憤を晴らすように、容赦なしだ! 一撃で数体の魔獣が消え去る。
こうして、中央に穴を開けられた魔族は連携がとれず、壊乱状態となリ抵抗はほとんどなくなった。
日が暮れると、コルベットの魔導師達は一度後退して、休養も兼ねて体制を立て直す。
完全に形勢は逆転し、明日には決着がつくだろう。
◇
その夜は、前線の防御陣で休憩した。
魔導師達は修道女の巫女で、言うまでもなく全員女性だ。ということは僕にとっては、ハーレム状態なのだ。
「お名前は」「どこから来たの」「今夜一緒に食事しましょ」などとキャッキャと、ちやほやされている………のは。
言うまでもなくルーク君。
可愛い巫女さんが、ルークに群がっている。一方、僕とゴンゾー、三平太には半径五m以内にすら、だれも寄ってこず、虚しく見つめているだけ。
そんな、僕たちにミホロが笑いながら
「まあ、見た目がすべてじゃないしね」
ミュールも
「その通りだ、コルベットも言ってたように、イケメンや強いだけが勇者ではないぞ」
励ましてくれるが、気休めの慰めにしか聞こえない。そんなミュールも、多くの巫女さんに言い寄られている。
そこに、空から数体のガーゴイルが襲ってきた。
ルークは颯爽と矢をつがえ、瞬時にその数体を射落とす。
「きゃーーー」
「ステキーー」
巫女達の歓声があがり
「凄腕だわ。それに弓を射る姿は天使みたい」
「コルベット様も一目置いているらしいわよ」
「ほんとう、すごーーい」
……もういい。やめてくれ―!
ここは女性だけの花園、そうなのだ、僕とゴンゾーと三平太は貴重な男手。おばさん魔導師に、ひたすら食糧運びの強制労働を強いられ、喜んでいただいた……
◇
さらに翌日、陽がのぼると不意を撃たれた魔族は、ほとんど逃げ出していた。
僕たちは残党狩りで、余裕で敵地に向かっていく。
あらためて魔族にとってコルベットは驚異だったことがわかる。なんとしてもとどめて置きたかったのだろうが、それが背後から襲ってきたので、全く抵抗できない状況だった。
こうして、背後からの不意打ちではあったが、結果的にコルベットと修道院の強さを見せつけた戦いとなり。これを見れば、ノーザンエミレーツの首長達も、修道院に手を出そうとする者はいないだろう。
さらに進むと、魔獣の姿は消え、その先にアリ―ア姫の陣地が見えてきた。
ところどころに、申し訳程度の土塁や柵で防御しているがほとんど破壊され、ほぼ丸裸の状態で、兵士が多数倒れ、見るも無残な状況だ。
もう一日、いや半日遅れていたら全滅だっただろう。
アリーア姫は無事だろうか。
◇
魔導師の巫女達は、傷ついた兵士の介抱を始めた。兵士達は感謝の言葉を繰り返し、中には涙を流して、これまで修道女への仕打ちを謝っている者も少なくない。
そんな中、グランブル騎士団の兵士の群れを見つけた。
それも、かなり悲惨な状況で、傷ついた兵士たちがぐったりしているが、僕達が来たのを見て、笑顔で挨拶してくれたり、傷ついた手で握手をしたりしてくれる。
少し面映ゆい……
その奥に、板で囲った粗末な防御陣を見つけた。
一国の大将の陣地にしては、あまりに貧素で、その上にボロボロのローレシアの御旗がある、たぶんアリーア姫のいる本陣だ。
僕は入口で許しを得て、中に入ると。
疲弊した騎士団の奥に、やつれた姿のアリーア姫が座っている。
目が合うと
「カズヤ様―――― 」
アリーア姫は立ち上がり、涙ながらに駆けてくる。
そして僕に抱きついてきた。
(おお! これは思わぬご褒美だ! )
でも、こちらでは、ハグは一般的で、勘違いしないように。とのことだった……でも、良い習慣だなー
「もうだめかと思っておりました」
涙ながらに言う。
「いや、あの、その。騙すようなことをしてすみません、敵に悟られないようにしたので」
「そうでしょうね、わかっております」
ああ、本当にこれがリアルであればいいのに。
グランブル騎士団長も出てきて
「カズヤ殿、お礼の言葉もない。あのときは、ひどいことを言ってすまない」
頭を下げる騎士団長、意外と素直だ
「いえ、でもこうして最後まで主君の元におられるのは立派です」
すると、グランブ騎士団長は、苦渋の表情で
「姫は、自害を覚悟されておられていたのです」
「………」
僕は言葉が詰まった。姫もうつむいて震えている。
「本当に遅くなり申し訳ありません、いろいろ手間取りまして」
そう言うと、後ろから
「おい! わたしのせいにするな! 」
いつのまにかコルベットが後ろに来きて、口を出す。
アリーア姫たちは驚いて
「西の魔女、大魔法使いコルベット! ……さま」
姫はコルベットの前でしゃがみ
「この度は、助勢いただき、ありがとうございます」
アリーア姫は片膝をついて、お礼を言う。
「礼はそこの、カズヤに言うのだな。お前たちは運がいい、カズヤがいなければ今頃全滅だったろう。それに、私も大きな禍根を残し、後悔するところだった」
「はい、その通りでございます」
これはなんか、うまくいったぞ。功績は僕のことになっている。
これは、策士のヒーロー、諸葛亮孔明、間違いなしだ!
「でも、カズヤ様、どうやって、コルベット様を説得されたのですか」
よくぞきいてくれた! ここは頭脳戦でコルベットを論破し、感動させて、籠絡したことをかっこよく伝えなくてはいけない。
僕が口を開こうとすると、コルベットが
「土下座だ! 」
「どげざ……? 」
アリーア姫はなんのことかわからない。
「カズヤの土下座は、すばらしいぞ、地面にカエルのように平伏する姿に私は感動した。どうだ、姫の前でやってくれないか」
後ろで、みんな笑いをこらえている。
おいおい、ここで僕は白羽扇一つで軍を動かす神算鬼謀の軍師、孔明の役になるのではないのか……。
僕が情けない顔をしていると、ミホロが
「かわいそうだから、やめてあげて。まあ、ご褒美にもう一回アリーア様の髪の毛一本を、カズヤとその横の三平太さんにわたしてあげれば、ご褒美十分よ……ね」
ミホロが、ジト目で見つめる。僕はヒア汗が出てきた
ええ……こいつ、三平太とのやり取りを聞いていたのか……諸葛孔明がさらに遠のく
アリーア姫は、なんのことかわからず
「そんなー、私の髪で良ければ全部切って差し上げます。毛一本と言わず、なんでもご奉仕いたします」
意外な申し出に、僕もミホロも驚いた、あまりに純真な人だ
「あの……冗談です、本気にしないでください!」
焦ってミホロが言うと、僕も横で、うんうんとうなずく。
◇
こうして、クレイ・フィールドの決戦をなんとか制したアリーア姫の反撃軍は軍を立て直し、目指す、隣接のロレーシア王都に向かう。
さらに、コルベットが配下になったことで、離散したノーザン・エミレーツの部族も集結し一気にローレシア王都に乗り込んだが……
すでにカーズたちは撤退していた。
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