8-10 ローレシア戦役 ―真の敵―
なんとか、会話になりそうだが、ローレシアへの疑念は払拭していない。
勝負はここからだ
「ラ・ムーアは、レイカ姫の懸念されていた魔神です。この魔族もその仲間と思われます。真の敵は、魔族なのです」
「それは、わかっている。先程も言った」
「だったらなぜ」
「私がスワンヒルから戻ってくると、ローレシアは我々を異教徒として迫害していた。しかも、魔女狩りと称して、幾人もの巫女が火炙りの刑に処せられたのだ。なにも、していないのにだぞ! 」
最後は、怒りを込めて言うと、コルベットは続けて
「私は修道院に帰り、ローレシアの奴らに報復しようとしたが、前の修道院長に止められた。その修道院長はローレシアに話合いに向かったが、同じく火炙りに処せられ。そのとき、魔族がローレシアに攻めこんで修道院長を救いだしてくれたが、手遅れだった………その修道院長は優しく誠実な方で、私にとっても大切な人だった」
最後は声を震わせている。
(そうだったのか……しかし、おかしい)
「その後、魔族を束ねるカーズが、我々と手を組む話を持って来た」
「それで、どうされました」
ある程度想像つくが、聞いてみた。
「無論、私は魔族の味方をするに決まっている。これは悪逆非道なローレシアへの天罰だ! 」
……確信した
「コルベット様、おかしくありませんか」
僕の、思わぬ反論にコルベットは少し動揺し
「……なにがだ」
「魔女狩りを促したのは、誰ですか」
「それは、ローレシアの国王だろう」
「その、動機は?」
畳み掛ける質問にコルベットは詰まる。僕は続けた。
「ローレシアは特定の宗教を支持せず、異文化、異宗教にも寛容です。そのローレシアがなぜ、危険思想もなく、おだやかな修道院だけを異教徒と決めつけるのです。動機がありません」
「なにが言いたい」
「さらに魔族が復活した時、なぜ西の森の修道院を狙わなかったのです。いきなり湧き出て、何も知らない魔族にとって、修道院の若い巫女は魔族の恰好の標的です。それが襲ってこない、どころか話合いに来るとは解せません」
コルベットは沈黙した、もうひと押し
「魔族は間違いなく、コルベット様を恐れているのです。一連の修道院の迫害や魔女狩りは、コルベット様にローレシアへの敵意を抱かせ、自分たちの味方にするために仕組んだのです。もし、魔族がノーザンエミレーツを征服すれば、今度はコルベット様を貶めるでしょう」
「でたらめを申すな! 魔女狩りの元凶が私だというのか! 」
コルベットは立ち上がるが、あきらかに狼狽している。ここは頑張りどころだ、もう後にはひけない。間違ってもいいから言うだけ言おう。
「ノーザンエミレーツの他の国の中にも、裏切り者と思える輩がいます。なんとか、王宮の様子をさぐれませんか」
「にわかに、信じられないが………」 そう言ったあと
「キキラ!」
コルベットは、横に控えている巫女に耳打ちすると、キキラという巫女はすぐに、ふくろうに変身して飛び去った。
「少し、まっていてくれ」
◇
しばらくして、フクロウが戻ってくると、コルベットに耳打ちする。
すると、次第にコルベットの表情が険悪になる。
何が、起こるのだ……僕のロジックは違っていたのか……
コルベットは僕に向かい
「カズヤ殿、ローレシアを探らせたところ、王は魔族の呪詛で操られていたようだ。さらに、我が同胞を火炙りにしたローレシアの官僚もカーズの元にいる……」
コルベットはうつむいて拳を握り震えている。
「怒りに打ち震え、奴らの口車に乗せられてしまった……」
次に玉座から降りると、僕の横に立ち
「こういうとき、カズヤ殿ならこうするのだな」
土下座!
ええ! コルベットが土下座!
僕は大慌てで
「顔を上げてください! 」
「これでよいか」
「いいです、いいです! 土下座は僕の専売特許です。それに他の巫女さんも見ています」
しかし、コルベットは全くかまっていない、どころか周りの巫女は、素直に過ちを認め謝罪する、誠実なコルベットに感心している。
自分が明らかに間違いを犯した時、言い訳や責任逃れする輩より、何倍も魅力的だ。
そして、立ち上がると。
「全巫女に告げよ! 」
コルベットはキキラや周囲の魔道師の巫女の前に立ち、厳命する。
「魔族をたたきつぶせ!! 」
「御意! 」
話しを聞いていた巫女達も事情を知って怒りに打ち震え、大声で唱和した。
(やった!……のか)
僕は力が抜けて、その場にへたり込んだ。
そこに、解放された仲間達が、笑顔で駆けて来てくれた。
さあ、反撃だ!
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