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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第四章 ロード・オブ・アドベンチャー
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8-8 ローレシア戦記 ―大魔法使いコルベット―

 僕たちは魔導師の集団を突っ切り、中央の大きなテントの前にたどり着くと、ミュールがテントを切り裂き中に突っ込んだ。


 中がどうなっているかもわからないのに、怖いもの知らずだ。かなり自分の腕に自信があるのだろう。

 僕達も後を追って入っていく、怖がっている暇はない。


 テントの中はいくつもの仕切りがあり、狭い通路や部屋に分かれているが、これは近接戦が優位な剣士のほうが有利だ。

 しかもミュールはハイランダー(高位騎士)! 


 走りながら敵と突然出会っても、駆け抜けざまに剣を振るう。後ろにも目があるような前後左右、全く隙がない。魔導師が杖を構えるまもなく、コンマ数秒で叩きのめす。一方、ゴンゾーは相変わらず相手の魔法杖を払う程度しかできない。

 こうして、ミュールを頼りに、次々と(さえぎ)る魔導師を振りきり、奥に駆け込んで行った。


 そして最後の扉をあけて、広い空間に転がり込むと、すでに数人の魔導師が待ち構えていたが、これも想定内


「カズヤ、いけ!」


 ミュールとゴンゾーのHPが削られるが、魔導師の魔法攻撃を盾となって受けてくれる。僕はその間を抜けて、玉座の前に走った。


 こうして、魔導師の親玉の前に駆け込んだが、足がもつれて頭から無様にこけてしまった。

 一瞬、振り返ると、ミュール達が魔道士の緊縛の術に捕まっている。ついでに、傀儡もだ。


 僕は、両手をついて前を見上げると。

 正面に、紫のロングドレスを着た妖艶な女性が、大きな背もたれの豪華な椅子に足を組んで座っている。

 この人が、コルベット……


 覚めた目で、肩肘をついて僕を蔑むように、余裕で見下ろしている。

 息が詰まるオーラで、これまでの魔導師とは格が違う。魔女というより怪物のような威圧感だ。

 僕は背中がぞわーとして震えが止まらない。レベルは……マックスの百、いや、それ以上の軽く限界突破クラスだ、これほどとは想定外だ、考えが甘かった。


「この部屋までたどり着くとは、どんな猛者かと思えば、まだガキではないか」

 どうやら、最初から感づいていたようだ、これは、完全にシクったかも。後悔しても、もう遅い。

「し……知ってたのか……」

 僕は、震えながら言うと。


「あたりまえだ。魔族と人間がつまらん戦いをするので、暇で仕方なかったのだが。そこに、お前達が突っ込んできて見物していたのだ。負け戦の腹いせに、死を覚悟で一矢報いようと、大将の首を取りに来たのか」

 そうではない、と話そうとしたが。

「あっ……あの、その……」

 恐怖と緊張で言葉が出ない。


「なんだ、ビビッて話もできないのか。しかし、お前はレベル20にも満たないではないか。なんのつもりだ」

 威圧的に言われ、頭が真っ白になり、言葉が浮かばない。

「あわ…アワ……」


 なにも言えない僕に、コルベットは呆れ、落胆し、怒っているようだ、これはまずい……落ち着け、落ち着け、と思うほど冷や汗がでてくる。


「なんだ、つまらん! 余興にもならんわ。()せろ! 」

 そう言って杖を振り上げた瞬間


 ヒュルルルーーーー


 風切り音がすると、直後にバキッ! と鈍い音がした。

 コルベットが手元を見上げると杖が折れている。


「………! 」

 何が起こったのか、コルベットも驚いている。

 背後の壁に、矢が突き刺さっていた。

 ルークだ!


「お前の仲間か! 何処から射ってきた 」

 コルベットが慌てて周りを見ると、テントの天井に僅かの隙間が幾つかある。

「あそこから通して……」


 コルベットはすぐに、その隙間を防ぎ、考え込むように

「……この細い杖を射抜くとは。その気になれば確実に私に当てることができたはず………しかも、これほどの使い手なら、私は急所を射抜かれ即死だった」

 すこし青ざめている


「さらに、防護の魔法を張っていたのに、それを突き破ってくる対魔法の矢……ここまで追い込まれたのは初めてだ」

 苦々しい表情だ。

 コルベットは矢を掴み、矢の残留思念から持ち主をトレースする。


 これはやばい!

 ルークはこの世界の人間だ、もし殺されたら本当に死ぬ、ミランダさんが悲しむ。


 こうなったら最後の手段しかない、かの諸葛孔明、孫氏、竹中半兵衛、稀代の名軍師も思いつかないであろう奇策……


 土下座! 


 僕はいつでも、どこでも、だれにでも土下座ができる特技がある。相手が小学生や幼稚園児にだって土下座できる自信がある。さらには回転土下座に、ジャンピング土下座もマスターしている。


 地面に平伏しこれ以上、下げようない頭、これほどまでに相手に優越感を与え、怒っている相手でも大抵許してくれる魔法のようなパホーマンスだ。

 

 そして僕は土下座をすると、落ちついて頭も回り、まともに声が出るのだ。アパンマンでいうところの替えのアンパン、仮面ライダーの変身のきめポーズ、古いけどポパイのほうれん草なのだ。


 こうして、土下座をすることによって、パワーを得た僕は能弁になる。

「コルベット様! 矢を射った者は、女の子を撃つことはしません。だから、殺さないでください。僕たちは、コルベット様の魔導師を殺害していません。どうかお助けください」


 命乞いは得意中の得意だ。

 そう、僕は殺し合に来たのではない、だからみんなにも魔道士を殺さないように頼んでおいた。

 でも、それを実行するとは、たいしたものだ。


 コルベットは驚いて、横の魔導師に聞くと

「なんだと! 確かに私の配下に誰一人死者はいない。わが配下をみね打ちで倒すとは……こいつら、ただものではない。それを、お前が(ひき)いているのか……」


 すこし感心したように言う

「しかも、仲間のためなら話ができるようだな」

 いや、土下座したからだけど、そのことは黙っておこう。


 そこに、配下の魔導士がなだれ込んで僕たちを囲んだ。ルークも捕まって連れて来られ、仲間全員が引き立てられた。

 これはやばい……


 そのとき

「まて! 」

 意外にもコルベットが制した。


「命がけでここまで来たのには、わけがあろう。しかも、巫女を殺害してない、一言だけ話を聞いてやる」

 僕は顔をあげて、胸をなでおろした。


お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m


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