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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第四章 ロード・オブ・アドベンチャー
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8-7 ローレシア戦役 ―突入―

 魔獣の軍団に対し、アリーア姫の兵力は三分の一にも満たず、痛ぶるようにじわじわと攻められている。防御を固めて応戦しているが、背後も挟まれて、嵐の大波に翻弄(ほんろう)され四方から海水が入って、沈没寸前の小舟ようだ。


 だが、こうして魔族が時間をかけているのは幸いだ。

 なんとか持ちこたえてくれと、祈るしかないけど。



 僕たちはクレイ・フィールド側方の険しい山を伝って、魔女のいる陣に急いだ。身を隠して慎重に進み、なんとかコルベットのいる陣地を見下ろす位置にたどり着いた。


 崖の上から遠望すると、コルベットの軍勢は三百人程度と小規模だが、ほぼ魔道師で構成されているのでかなり強力だ。 

 しかも魔族の背後にいるので、奇襲すれば大打撃を与えられる。なんとしても味方にして、反撃したい。


 陣地は大きなサーカスのテントのような本陣を中心に、周りを三重の柵で囲んでいる。

 使者を立てての交渉は、敵に見つかるし門前払いされるだろう。言うまでもなく、これだけの人員で、魔導師に勝てる見込みは皆無だ。

 なんとか、強引に乗り込んでコルベットと話をしたいのだ。


 ミホロが小声で

「こちらに寝返る見込みはあるの」

「あの魔法使いは、カーズ率いる魔獣ではないから、ラ・ムーアの復活の話をすれば、聞いてくれるかもしれない。それと、なんだか僕と似ている気がするんだ」

「似ている…って、どこが」


「ローレシアに嫌われて。たぶん、ボッチだ」


 ミホロは絶句して

「ボッチがどうして、軍勢を引き連れられるのよ」

「ちがうよ、この魔女の集団全員が、ボッチということさ。そうでないと、魔族側につくこともないだろう」

「………そんな、いい加減な」


 確かに、いい加減だけど、他に思いつかない。竹中半兵衛や、三国志の諸葛亮孔明のような奇策は思いつかない。


 さらにミホロが

「準備不足でこちらが殺られたら何にもならないじゃない。そもそも、そこまでする義理はないのでしょ」


 つくづくミホロは中学生とは思えない意見をする。これでは、同じ中学生程度ではミホロの話に付いていけず、逆に疎外されて不登校になったりするのかも。

 天才肌の(つら)いところだ、


 でも、僕は丁寧に答える。

「アリーア達は、この世界の人達だし、あのままだと本当に死んでしまう。見捨てるわけにはいかないよ」

「でも、私達もここで死んだら、アカウント取り消しの可能性があるのでしょ」


「そうだけど、本当に死ぬのではないし……」

 ここでは死んでも、本当に死なない余裕が、一か八かの勇気を与えてくれるだけのことだ。


「ここで、アリーア姫を見捨てたら、一生後悔しそうなんだ。レイカの意思にもそむくような気がする。できるだけのことはしたいんだ。だから、ルークとミュールさんは絶対に無理しないで」


 ミホロは、やれやれ、といった表情で苦笑いして「わかった」と答え


 他の皆も、笑顔でうなずいてくれている。

「ほんとにごめん」

 これまで、僕は何度ミホロ達に謝ったことだろう。


 ◇奇襲


 コルベットの軍勢は魔導師だけで構成され、攻撃は火炎、電撃、氷撃、さらには風、精神攻撃など多彩で、ミサイル巡洋艦のように飛道具的な攻撃が主体で、近づくのが困難だ。

 しかし、近接戦に持ち込めば、剣士の方が圧倒的に強い。

 魔導師が詠唱したり、MPチャージしたりしている間に肉薄すれば、勝てる。


「手はず通りにね」

 僕は全員に作戦を再確認した。

 もちろん、相手を倒すのでなく、コルベットの玉座に乗り込んで話をするためだ。


 ルークはいざというときのため、陣地から離れた崖の上で待機させた。

 他は一点突破で、とにかくコルベットの玉座に突っ込む作戦だ。


 ミュールとゴンゾーが前衛で、その後に僕とミホロが続く。さらに後ろに三平太が傀儡の準備をして追いかける。

 とにかく速さが勝負だ、魔導師が集まる前になだれ込む。


「さあ、戦闘開始だ!」


 日が暮れた闇の中、篝火(かがりび)の影を探し姿勢を低くして慎重に近づく。それでも、いずれ気づかれるので、できるだけ内部に侵入したい。

 まずは、一番外側の柵を飛び越えた……と同時に


 カラン! カラン!

 侵入者を察知する、鳴子の音がなる。


「もう、見つかったか」

 ゴンゾーが、唸る。

 ここからは、強引に突っ切るしかない。

 とにかく、敵が体制を整える前に突入するのだ。


 全員全速力で走り出す!

 数人の魔導師が向かってきたが、ミュールは姿勢を低くし、ジグザグに走って一撃で倒していった。相手は、詠唱はもちろん魔法杖をかざす間もない。さすがだ。

 ところが、ゴンゾーが一人も倒せない……


 魔導師は全員女性、しかも修道女姿で、とても斧をふりかざすことができないようだ。一方、ミュールは容赦ない。


「こうするしかないか」

 ゴンゾーは斧に鞘をかぶせている。

 でも、躊躇(ちゅうちょ)している暇はない。続いて二の柵を越えると、すでに十人ほどが集まって詠唱を始めている。とにかく、魔法を発する前に仕留めなければならない。

 ミュールが必死で向かうが、足の速いミュールでも間に合わない。


「ミホロ! 」僕が叫ぶと

 わかってる、と言った表情で

流連浄火(るれんじょうか)! 」


 ミホロが流連浄火のファイアーボールを放つと、炎弾は前を走るゴンゾーとミュールの間を抜けて魔導師に向かう。

 相手は魔導師なので浄化の火に効果はないが、詠唱を遅らせる程度の目くらましにはなった。


 なんとか、ミュールとゴンゾーが魔導師の中に突っ込むと、近接戦になり魔導師は対応できない。

 見ていると、やはりゴンゾーの動きはにぶく、倒した相手に謝ったりしている。まあ、仕方ないよな。


 一方、魔導師達は本陣に突入してきた僕たちに騒然とし、相手はこちらの状況をつかめず、かなり混乱している。同士討ちの可能性もあるのでうかつに魔弾も放てないようだ。


 最後の柵を越えると、コルベットのいる豪奢なテントだ。周囲にはさらに魔導師達が集まって囲んでくる。

 ここで、背後に待機している三平太か背中の箱をあけると、あの美少女フィギアがロケット砲のように飛び出した。

 三平太が背負い箱を改造したのだ。


 美少女フィギアの傀儡(くぐつ)は、空中から魔導師達の中に放り投げられるように突っ込んで、めちゃくちゃに暴れて、詠唱を撹乱する。


 そこにミュールとゴンゾーが駆け込み活路を開く。密集した魔導師達の中に入れば、ミュールとゴンゾーに敵はない。

 ミホロと僕がその後を追う形で、ミホロも周りから来る魔導師を流連浄火で撹乱している。


 僕は……またもや、何もしていない。



お読みいただき、ありがとうございます。m(_ _)m

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