表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第四章 ロード・オブ・アドベンチャー
57/100

8-5 ローレシア戦役 ―愚策―

 その後もノーザン・エミレーツの連合軍は快進撃を続け、噂を聞いた諸国も参戦してくる。

 そして、いよいよローレシア王都が視野に入ったとき、偵察隊より情報が入った。

 魔獣の軍勢がローレシアの近郊にある、クレイ・フィールドという平原に集結して待ち受けていると言うのだ。


 ローレシアの王都の南に火山灰の固まった、草木もほとんどない乾いた灰色の平原があり。そこに、魔族の軍勢が集結しているらしい。


 さらに、魔獣の背後には、西の大魔法使い率いる部隊かいるようだ。

 その魔法使いは魔族側に組みしているが、これまで襲ってきたことはなく、戦いには参戦しないと名言している。ただ、魔族側が窮地になったときは、援護する可能性は高い。


 数日後、途中の拠点攻略などで分散していたノーザンエミレーツの反撃軍も、クレイ・フィールドの手前で集結した。

 集結すると兵力的には反撃軍の方がかなり有利で、これだけの差があればバカでも勝利できるだろう。


 もう、マジで僕たちの必要はない。

 というか、実はこれまでも軍について行くだけで、まともに戦ったのは、僕がゴブリンにタコ殴りにされたときくらいだ。


 そんなことで、僕達は暇乞いとまごいに姫の天幕に向かった。

 まだあどけなさの残る、琥珀の瞳の可愛いお姫様と別れるのは、ちょっと、もったいないけど仕方がない。


「姫様、ここまで兵力が集まれば勝利間違いなしです。私どもは、早く先に旅をしたいので、ここで、お暇をいただきたいのですが」

 僕は片膝をついて丁寧に伝えると、姫はさみしそうに


「確かにそうですね、ここまでお付き合いいただき、すみませんでした。でも、やはり決戦直前の今は」

 当然、今は無理だ。ノーザンエミレーツにしてみれば、僕たちが敵に情報を漏らさないとも限らない。


「それは承知しております。決戦が終わるまでは、後方の姫のそばにいますので」

 そう答えると、アリーア姫は少し躊躇したが


「………わかりました」 


 とりあえずは、許しを得た。

 ミホロ達もほっとした様子だ。


 すると、アリーア姫は

「カズヤ様、これまで助けていただき、何もお礼をしなかったので」

 そう言うと、侍女が金子(きんす)を持ってきた。

(おおー、やっとキター! )


どうも、これまでのお礼、餞別のようだ。しかし、僕は

「金のために、姫様をお助けしたのではありません! 」

 とカッコよく辞退………なんてするか! 


 貰えるものは貰っておく。あくまでゲームの世界、最初に姫を助けたとき、ティアラを辞退して後悔していたのだ。正当な対価だ、遠慮なく受け取った。

 僕がヘラヘラと笑いながら受け取るのを、ミホロ達は情けなさそうにみている。


 アリーア姫は(あらた)まって

「これまで、ありがとうございました。できれば、ローレシアまでご一緒にと思ったのですが」


 僕は金子を懐のアイテムボックスに入れながら

「そうしたいのも山々ですが。私どもも、先を急いでいますので」

「そうですね、ご無理を言いました」

 寂しそうに、というより不安な様子だ。


 そのあと、おもむろに

「この前、私とカズヤ様がゴブリンに襲われたことですけど……」

 やはり、姫も気にしていたようだ。

 あれは僕を狙っていたかもしれず、なんとも言えないので


「あれから、グランブル騎士団長もそばにおられるようですから、大丈夫ですよ」

 少しそっけなく言ってしまった。グランブルも怪しく、真実を確かめないといけないが、正直なところ面倒くさい。

 貰うものを貰ったら、もう知らないのだ。


「分かりました………」

 姫は何かもの言いたそうだけど、そんな僕の態度に気づいたようで、それ以上聞いてこなかった。とにかく、あまり関わりたくないので話題を変えようと。


「ところで、いよいよ明日は決戦ですね、どのような戦法で戦うのですか」

 興味本位で聞いてみたが、作戦は最高機密なので簡単には話せないだろう。

 僕は話題を()らせたいだけなのだ。


 姫はすまなそうに口を閉じている。

「ああ、すみません。これは、機密ですよね。言わないで結構です。それでは、失礼します」

 上手く席を立つ口実が出来て、僕達は立ち上がると


「まってください! 」


 どこか、思い詰めた表情のアリーア姫。

 まさか、そんな重要なことを部外者の僕達に話すつもりなのか。僕の意見を聞きたいのだろうか。

 でも、少し興味もある。


 そのあと、布陣などの詳細は話してもらえないが、概略を教えてくれた。

 兵力的にはノーザンエミレーツがかなり有利なので、主力のアリーア姫の軍が正面から攻撃し、さらに兵力を二手に分けて、それぞれ敵の左翼、右翼からも襲い掛かる手はずらしい。

 敵は一塊なので複数方向から攻めて、相手の攻撃力を分散させる定点攻撃の基本だ。


 が………!


 聞かなければよかった……


 僕は、唖然として、真っ青になって震えがとまらない。

 後ろのミホロ達も、そんな僕の態度にどうしたのかと言った表情だ。

 固まっている僕に

「どうされたのですか」

 姫は心配そうに聞いてくる。僕は言うべきか迷ったが


「………姫、この作戦はダメです! 最悪全滅します! 」


 姫は驚いた。

 ミホロ達も何を言うのかと思ったようで、こんな優勢なのに、なぜにと言った感じだ。


 複数からの定点攻撃は、動かない陣地へなら有効かもしれないが、相手は大軍といえどもここまで遠征し、機動性がある。


 もし、その大軍が分割したそれぞれの軍に全軍で対したら、分割して少数になった味方の軍隊は、各個撃破されるだろう。敵の攻撃を分散させる戦法が、逆にこちらが戦力を分散させられた状態になる。


 しかも、僕が見る限り、敵の四方の守りが不自然で、かなり粗密があり、特に右翼側ががら空きだ。

 戦力的に優勢なので、駆け引きのない真向勝負をしないと危険だ。



「どうして、こんな作戦が決まったのです! 何のために集結したのです。このまま全軍一丸となって勇戦すべきです! 」

 僕は、つい息を荒げてしまった。姫は、後ずさりして

「首長たちの総意で決まったのです……」


 何もわかっていない。


「グランブル騎士団長はなにか言わなかったのですか」

 僕は必死で詰め寄る

「いえ、この作戦に感心され、自分が先頭に立つと意欲満々です」


 僕はこぶしを握り「あいつは馬鹿か! これでは姫を守れない」

 思わず小声で言ってしまった。

 姫には聞こえたようで、驚いている。そばにいたミホロ達にも聞こえたようだ。


「これまで敵の攻撃が手ぬるいのも不自然で、我々を油断させている気もする。あえて勢力を分散する戦術を提唱し、それを待ち受けている体制にも見える。だとしたら間違いなく参謀の中に敵と内通している奴がいる」

 とまでは、憶測なので言えず。


「姫、なんとか、作戦の変更はできませんか」

 食い下がったが、すでに軍隊は配置についている。


「私は軍議には口出しできません、カズヤ様のような意見もありましたが一蹴されました」


 ……確かに、僕の意見が正しいとも言えない。この作戦でうまくいく可能性もある。だけど、立派な橋があるのに、わざわざ川を泳いで渡ろうとするようなものだ。

 軍議で僕の意見も出たようなら今更聞いてくれそうもない。どうせ、そんな会議では、常に喋りまくり、声の大きい者の意見が通り、冷静な意見は駆逐される。


 ただ、姫を不安にさせたくもないので

「すみません。優秀な参謀達の作戦なら大丈夫でしょう、これは私の浅知恵で、単なる老婆心です。お気になさらずに」

 そう言って深く頭を下げ、ゴンゾーやミホロ達と、姫の御前を下がった。


 僕の表情を見てアリーア姫は心配そうな顔をしているが、どうしようもない。あとは、僕の意見が間違いであるよう祈るだけだ。


 ◇

 テントに戻るときミホロに

「どうするの」

 ゴンゾーも

「確かにカズヤの言うとおりなら全滅になるのではないか。心中はごめんだぜ」


 わかっている…… 

 僕のゲーム脳をフル回転させた結論は


 状況をみて危なくなったら戦線を離脱する、日和見(ひよりみ)、自分本位、無責任作戦をすることにした。

 僕達はローレシアに、何の義理も恩義もない。


お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ