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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第四章 ロード・オブ・アドベンチャー
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3 追っ手

 山岳地帯は続き、相変わらず地山が露出した山道や谷道を進む。

 褐色の山間に深い谷があり、谷底のわずかな平地に小さな森がある。森に入ると、ところどころ廃屋があり人が住んでいた形跡はあるが、実際に人を見たことがない。


 僕たちはその森の中の一本道を歩いていると薄い(きり)がかかり、木々の間が白く(かす)んで先が見えなくなる。

 昼食をしながら休憩していると


「何者かに追われているようだ」

 ミュールがつぶやくように言う。

 僕も気になっていた ゴンゾーやミホロもうなずいている。


 昼食のあと、出発しょうとしたが

「疲れたー」

 ミホロがなかなか立とうとしない。

「そういえば、僕も体が重い」

 見れば、ミュールやゴンゾーも顔には出さないが、結構疲れているようだ。


 山の上から見渡したときの森は小さく、長くても一時間ほどで森を抜けられると思っていたが、半日ほど歩いていも森を抜けていない。


 僕たちは重い体に鞭打って、再び出発する。

 しばらく歩いて、木の幹に十字の傷を見つけ、僕は立ち止まった。


「どうしたの」

 考え込む僕にミホロが聞く

「この木の傷、さっき僕が付けた傷なんだ」

「ということは、私達は同じところを歩いているの」

 僕がうなずくと、後ろのミュールも


「私も、そんな気がしていた。どうも、森に入ってから違和感がある。疲れ方もひどい」

 僕達は立ち止まって周りを注意深く見渡した。

 森は薄い霧で、奥の方は白く先が見えない。


 すると、ミホロが急にうつろな表情になり

「ねえ、休まない……」

 と言うやいなや、地面にへたり込んだ。


 アバターの体は一日歩いてもほとんど疲れないのだが、僕も脚がフラフラだ

「何かのトラップにハマっているのかも……」

 立っていられなく座り込んだ。ミュールとゴンゾーも耐えきれず、剣や斧を杖にしてなんとか立っている。


 そのとき、森の先から、人の足音が近づいてくる。

 ミュールとゴンゾーが剣を抜くが、片膝をつくのが精一杯で立つことができない。


 森の木の間から、足元まであるローブを着た男が出てきた。

「まだ意識があるとは、さすがだな」


 顔をフードで隠し、魔法杖を持った痩せた壮年の魔導師のようだ

 座り込んでいる僕は見上げるように

「魔導師か。いったい、何のつもりだ」


 魔導師はフードの陰から白い歯を見せて

「お前の持っている、剣の(つか)を渡してもらいたいのだ」

「なぜ……柄のことを知っている。どうする気だ……」


「何もせぬ。捨てるだけのことだ」

「きさま……ガイア教の……」

 魔導師は笑みをこぼして、それには答えず。

「この一帯の霧に幻覚の妖術を仕掛けている。神経はマヒして動けないはずだ」


 魔導師の罠は巧みだった。

 強い幻覚ならすぐに気づくだろうが、森に入りじわじわと効いてくるので、気づいたときには奴の術中にハマっていたようだ。


 こちらにレベルの高い魔導師がいればいいのだが、ミホロではまだまだだ。魔導師を希望する者は多いが、魔導師は知識が必要なので、レベルの高い魔導師になるのは難しい。その分、貴重な存在で高い戦闘力を持っている。

 ちなみに、この魔導師もレベルは低い、それ以上に自分たちの魔法に対するレベルが低いだけだ。


 魔導師が僕に近づくと、袋の中に手をのばす。

 僕はなにもできず

「くっそー……こんなところで…」


 死んで時間ロスになるのも辛いが、柄を取られるのは最悪だ。

 これが無くなると、レイカの元へは行けなくなる。死ぬよりもつらい。

 抵抗しようにも、体がしびれたようで動けない。


「観念するんだ。この霧の中では人間も動物も生きるものすべて動けない」

 ミホロやミュールも苦々しい表情で見ているが、何もできない。


 ◇

 その時、森の奥から木々の枝が折れる音がして、何かが強引に森の中から向かってくる気配がする。

 魔導師も驚いて

「動物なのか……この霧の中では動物や魔獣でさえも動けないはず」


 目前の草木が揺れた瞬間、その中から一人の女性剣士が僕と魔道士の間に飛び込んできた。


「なに! 」

 

 驚いた魔道師は飛び避けたが、さらに後ろにもう一人出てきた。

 見ると、二人とも短パンとミニスカートの女性剣士で、魔道師をはさんで対峙している。

 しかも美人で……なぜか見覚えがある。


 魔道師は、信じられない様子で。

「この、妖術の中でなぜ動ける! 」

 二人の女剣士は問答無用で、容赦なく魔導師に交互に剣を打ち込んでいく。


「きさまら!  何物だ!」

 女剣士は何も答えず、ひたすら剣を打ち込む。魔導師もわけがわからないようで防戦一方だ。僕達も思わぬ援護に驚いた。


 最後に、女性剣士が魔法杖を折った瞬間、周囲の靄が消え体が軽くなると、ミュールとゴンゾーも立ち上がり、剣に手をかける。

 僕も、くらくらする頭を抑えるが、もうこれで魔導士の運命は尽きた。


 すぐに、ミュールが魔道士を抑え込み

「貴様、なぜ私たちを狙う」

 魔術師は、不敵に笑いながら


「簡単に言うと思っているのか。これで、貴様らともども」

 魔道士の手の中で赤い魔石が点滅する、ミュールが蒼白な表情で

「こいつ自爆する気だ! 逃げろ!」


 僕たちは逃げようとしたが、足に紐のような物が絡まって、こけてしまう。

「金縛りの妖術だ、貴様らは私もろとも死ぬのだ! 」


 そのとき、助けてくれた女性剣士の一人が、飛び込んで魔術師を抱えて森の奥に走り出す

「貴様! なぜ先程から、妖術が効かない! 貴様も死ぬぞ」

 担がれた、魔術師は叫びながら、女性剣士と森の奥に消えていった。


 次の瞬間、大爆発が起こる。

 鼓膜が破れそうな爆音と爆風とともに木々の破片が飛散してきた、自分たちもふきとばされそうで地面に這いつくばる。


「凄まじい! そばにいたら全滅だった……」

 僕は蒼白で、他のみんなも絶句している。


 ただ、助かった安堵以上に、先の娘は僕たちを身を挺して助けてくれた。

 だれか知らないが、やりきれない思いだった。

 助けてくれた女性剣士のステータスは見えなかったので、モブキャラのようだ。ということは、死んだら、ほんとうに死んでしまう。


「あの(ひと)私したちを助けるため……」

 ミホロが涙声で言う。

 僕は申し訳なく、もう一人の娘に振り返ると、仲間が死んだのに平気な顔で微笑んでいる。


「君たちは……」

 その娘は笑っているだけ、口がきけないのだろうか。それに、やはりその露出の多い女剣士のコスチューム、見覚えがある。


 とりあえず、亡くなった人の遺品だけでもと思い、僕たちは爆発のあった場所に向かった。

 木々がなぎ倒され空き地のようになっていて、今更ながら巻き込まれたら確実に死んでいた。


 よく見ると、その爆発箇所の中央で、何者かが屈んでいる……

 僕たちは慎重に近づくと、灰色のローブをまとった小柄な人だ。


「あ…あーー……バ…バラバラだ」


 聞き覚えのある声、しかも吃音(きつおん)

 ミュールたちが剣を抜くが、僕は制して


「お前は……もしかして……もしかして! 」


 その何者かは、落ちている手足のようなものを持って立ち上がる。

 見覚えのある顔、めちゃくちゃ見覚えのある顔!


「やっ……やあ、か……かずや」

「三平太! 」


 僕は走り寄った。

 ミュール達も寄ってくると、ミホロが

「この人知り合いなの」

「ああ、同じクラスの三平太だ。どうして、ここに」


「そのー……白鳥さんに…言われて」

「ひょっとして、助っ人って! 三平太のことか」

「ええ……そうかも」

 それで、この女剣士は

「ぼくの……人形フィギア……」


 すると、ミュールが後ろから

「もしかして、これは人形に妖術をかけて人間のように使役する傀儡(くぐつ)。そうか、それで精神魔術が効かなかったのか」

 三平太は

「み……皆出発したあと急いで追いかけたけど、間に合わなくて、……そしたら、へんな男が追っていたので…しばらく、様子を……みてた」


「そうか。ありがとう、三平太」

 僕が一番信頼できる仲間だ、麗華も(いき)(はか)らいをしてくれる。

「それで、この女の子は、あのフィギアか」


「ああ、和也が好きな」

 ……それは、言うな!


 すぐにミホロが食いついてきた。

「それで、やたらスカートがみじかいわけね」

 ミホロが白い目で僕をみくだす。ミュールとゴンゾーも呆れているようだ。


「ええ! ち……ちがう、こともないことも、ないけど」

 ぼくがしどろもどろになっていると、ミホロは「はぁー」とため息をついたあと。


「まあ、カズヤの変態は慣れたし。でも、傀儡(くぐつ)ってすごいね、この世界にはほとんどいないよ。それに強いし、カズヤも頼もしい友達がいるじゃない。ボッチと思ってたけど」


 おいおい、ボッチはあるいみ僕のステータスのつもりだぞ、あんまりうれしくないけど。でも、頼もしいし、信頼できる奴だ。


 僕たちは一緒に、壊れた三平太の傀儡の人形のパーツを集めた。

 それを、三平太は自分の体より大きな箱の背負籠に入れ込むが、なんだかバラバラ死体を詰め込んでいるみたいだ。

 さらに、もうひとりの女性剣士の妖術も解くと、マネキン人形みたいになり、体をグニャグニャ曲げて籠に詰め込んだ。足と手と胴体と顔が重なり合って、人形とは思っても結構リアルなので、気持ちわるい。


 ◇

 その後、僕たちは三平太を加えた五人で、森を抜けていった。

 

 道中、ミュールが

「そいえば、出発の前にポー殿に占星術で我らのことを占ってもらったのだが。七人の戦士が、レイカ姫の元に集うと出たそうだ。もしかしたら、三平太くんもその一人かもな」


 七人の戦士なんて僕は聞いていなかった。

 するとミホロも

「そうそう、そんなこと言ってた。三平太さんも頼もしいし、すんごい人が集まりそうだね。私と、ゴンゾーとミュールさん、一応カズヤで五人。だとしたら、あと二人が仲間になるのだね。ワクワクするね」


 七人の戦士なんて、荒野の七人、七人の侍、最近では七つの……とか、なんかカッコイィぞ。でも、なんで僕だけ一応なのだ。


 三平太に経緯(いきさつ)を聞くと、父の逮捕騒動の頃に麗華が三平太をストレインワールドのゲームに誘い、僕を助けてほしいと、お願いしたらしい。

 ここでは、あまり詳しく聞けないが、それなら最初から言ってくれればと思ったが。不穏な動きもあり、三平太にも危害が及ぶ可能性があるので、ひそかに進めていたのだろう。


「し……しらとりさん…和也のこと……とても、心配してた。それと、リアルのことは、心配するな……と伝えてと」

 うれしいことを言ってくれるではないか。これで元気百倍だ!


 ちなみに、三平太の職業(スキル)は「技工士」。魔法使いの一種だが、白魔法、黒魔法とは全く異なる魔法で、直接相手に対する魔法ではなく、傀儡のように物に術をかけるのだ。


 この世界ではかなり珍しいタイプで、傀儡の場合精神系魔法は全く効かない。盾にもなるし、揺動や、最初に突破口を開く捨て身の攻撃もできる。その気になれば数百の傀儡を操って、一人で一軍隊の働きをすることも出来るらしい。さらに、トラップなどの仕掛けにも精通している。

 エクアドルの王宮騎士団が、喉から手が出るほど欲しがっていると聞いたことがある。


 さらに、三平太は技工士なので、武器や防具などの修理をしてくれるので、めちゃくちゃ助かる。

 ゴンゾーの斧にブースターをつけてくれたり、あの碧玉の柄を僕のレイピアに付けたりしてくれた。、

 安物の剣だが、柄が違うだけで重厚な剣に見えてくる。


 しかし、追っ手を差し向けるとは……

 この先、油断ならない。



お読みいただき、感謝でございますm(_ _)m



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