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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第四章 ロード・オブ・アドベンチャー
45/100

1  旅立ち

 幻想(ファンタジー)……

 それは僕を最高の気分にしてくれる


 夢と風が自由な世界へと旅立たせたくれたとき

 すべては幻想に包まれ

 すべての言葉が交響曲になる

 

 そして君の心をやすらぎへと導く奇跡を起こすよ

 僕を信じていてほしい


 ◇

 一か月後


 北の関所を攻略してから、ストレインワールドの世界で一ヶ月が過ぎたが、リアルでの父の逮捕騒動があり、僕はあまりログイン出来なかった。

 その間、ミホロとゴンゾーが情報収集や資金などの調達を頑張ってくれて、さらにミュールも手伝ってくれた。


 夏休みに入って少し落ち着いた頃、準備は完全とは言えないが、ラ・ムーアの復活まで、あまり時間もないので、僕たちは出発することにした。


 未明、十二番街のはずれの街路に集合。


 ミホロは、三角のウイッチハットを新調し、魔法杖も生木から、文様のついた少し立派な魔法杖を手にしている。

 服装も、ちんちくりんな魔女の◯急便みたいなローブから、腰までのマントのようなローブになり、無謀にもスカートは膝上のミニスカートだが、子供のような華奢な素足で、ミュールやレイカに比べて、まだまだ色気にはほど遠い。

 でも結構、美少女魔導師らしくなってきた。


 ゴンゾーといえば、相変わらず作業着のような風体だが、斧が一回り大きくなっている。


 早朝の静寂の町、空気は爽やかに漂い、目覚めた新たな体は軽い。

 出発直前の荷物を確認しているときの緊張と高揚感。


 忘れ物はないか何度確認しても、何か忘れているようで心配でしかたがない。でも、出発してしまうと忘れ物など些末なことで、体さえ忘れなければ、なんとかなるものだ。


 準備が整ったところで、僕はまず父の逮捕騒動で、あまり準備ができなかったので、二人を前に。

「あまり手伝えなかったけど、こうして、旅立てることができた。本当にありがとう」

 頭を下げると、ミホロが

「もう、固い挨拶なんてカズヤには似合わないよ。さっさと行こ」

 どこか照れ臭そうにリュックを背負う。


 ゴンゾーも、少し笑うと鞘をかぶせた斧を担いで、二人は歩き出したので、ぼくも慌てて追っかけた。


 店の戸は閉まり、人気のない十二番外の通りを抜けて王都の正門に来ると、もう一人の旅人が待っている。

 腰までのマントを羽織、紫紺の胸当て、ミニスカートの腰に巻いている太いベルトに重厚なロングソードを下げた、紅髪(えんぱつ)ハイランダー(高位騎士)


「ミュールさん! 」


 頼もしい道連れだ。

 その横には、流星騎士団の団長のシンド・ボルグも待っていた。

 僕たちは、シンドボルグにも挨拶すると


「私も、行きたいのだが、ガイア教の目もある。ミュールは北の探索の名目で、出発を許可してもらった。皆の力になるだろう」


「とんでもない! ミュールさんが一緒だなんて、これほど心強いことはありません! 」

 僕が興奮して言うと、シンドボルグが笑いながら頷いたあと、ミュールに向かい


「それでは、ミュールたのんだぞ。なんとしても、レイカ姫をお連れするのだ」

「はい! それでは、叔父上。行ってまいります」

 歯切れよく返事をすると、シンドボルグは「うむ」とうなずく。


 ミュールはさっと踵を返して僕らに向かってきた。

「それでは、行こう。よろしく頼む」

「はい! 」

 僕が返事をすると、前を向きさっさと王都の外に向かう。ミュールらしい、あっさりした旅立ちだ。

 僕たちも、シンドボルグに挨拶して、王都の門を後にした。


 ◇


 まずは、北の関所を目指す。

 エクアドルの街道沿いには、人を襲う強いモンスターはいないので、途中の村などで宿泊しながら進んだ。


 ミホロは、女子がひとりだけで心細かったようで、ミュールの横にべったりついている。


「ミュールさんが来てくれてうれしいです。女子一人だけだし。しかも、エクアドル最高レベルの剣士ミュールさんだなんて、願ってもないことです」


「あー、私も回復系の魔法も使えるミホロがいて安心だ。でも、この男二人なら問題ないだろうがな」

「そうですね。アハハ」


 なんか、完全に男とみられていないようだ。でも、ミュールさんが一緒だなんて、確かに小さな軍隊をひきつれているといってもいい。



 ところで、僕たちはこのあと蛮族の地に入ったら、死ぬことができない。死んだら、エクアドルの聖堂まで戻ってしまうからだ。

 北にはセーブポイントがないようで、死んだり、ログアウトするとエクアドルの聖堂からやり直しになり、パーティーとも離れ、大きく時間ロスになってしまう。

 とにかく、スワン・ヒルまで、なんとしても生きてたどり着かなければいけない。


 こうして、僕たちはレイカの元に行くまで、リアルに戻ることのない、ゲームにフルダイブすることにした。



 北の関所に着くと、エクアドルは検閲所を設けて、人の出入りを取り締まっている。

 ただ、意外と関所は暇そうにしていた。


 僕は通行証を見せながら、検問の役人に様子を聞くと

「関所が開かれたことで、北からの移民が押し寄せるかと思ったが、からっきしさ。北からはだれも来たものはいないよ」


「だれも……ちなみにエクアドルから北へ行った者は」

「ああ、何人かの冒険者が向かったよ」

「それなら、その者から向こうの様子を聞いていませんか」

 少しでも情報を集めたい。この二十年間の北の様子は、全くわかっていないのだ。


 すると、役人の答えは意外にも

「それが、だれも戻ってこないのだ。エクアドル王国はラ・ムーアの復活で忙しくて、使者を送る気配もないので、北の様子はさっぱりわからない。あんたらも、行くのは止めないが気をつけなよ。みれば、可愛いいお嬢さん連れているようだし」


 関所が開かれて一ヶ月が過ぎているのに、だれも戻ってこないとは、どういうことなのだろう。それ以上は拉致があきそうもないので。

「ありがとう、それでは」

 そう言って、後ろで待っているゴンゾー達のところに戻った。ミュ―ルも、名前を変えて通行証を発行しているので、かのアイドル・ハイランダー、ミュールとは役人も気づかないようだ。



 北側の門をでると、眼前に霞のかかった、褐色の広大な山地がはるか地平まで広がっている。


北の世界をエクアドル側では「北の蛮族」と蔑視しているが、正式にはノーザン・エミレーツ(北方首長国連邦)と言い、いくつかの小国が連盟、同盟を結び、それぞれの国に王と言うべき首長が存在している。


 峠から見下ろす天啓山脈の北の地は、緑豊かなエクアドルとはあまりに違う景色だ。

 本当にこの先に人が住み、国があるのだろうか、さらに天界に通じているのか、と思ってしまうほど荒涼としている。



お読みいただきありがとうございます。

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