9. 家庭崩壊
全く、予想だにしなかったこと。
僕自身のことなら察しもつくが、親が普段何しているかなんて子供には分からないし、興味もない。
当然、状況を改変する知力、財力、政治力などは、高校生の身分では皆無だ。救命胴衣なしで、乗っている船が沈没するようなもので、船と共に沈んでいくしかない。
◇
学校で事情を聞いて、急いで家に帰ると警察が来て騒然としていた。家宅捜査で、家の中の物を押収している。
僕と母、そして妹は呆然としているしかなかった。
警察が帰ってからは、散らかった部屋を片付ける気力もなく、母さんは寝込んでしまい、妹も部屋に閉じこもってしまう。
何度か新聞記者のような人がインターホンを鳴らしたが、丁重にお断りした。
ネットのニュースては、父さんが工事の発注を巡って、予定価格を業者に漏らしたことが書かれている。よく聞く話だが、まさか自分の父親が当事者になるとは。
今まで、うだつの上がらない親父が、年功序列で昇進して業務を発注できる立場になり、ちやほやされて、浮かれてしまったのだろう。
親父も、人がいいから、いろいろ接待されると、断れないのだろうか。
(バカ、おやじが! )
と思うが、小遣いをあげてもらったり、食事に行ったりして、僕達にとってはいい父親だけど。
そんな僕も、スコルピオン戦に参加した時、ハヤセに借りを作ってしまった。簡単に借りを作ってしまう性格は、人が良すぎる場合にも多いのだろうか。美味しい話には、裏があるのはわかっていても、断るのは相当の勇気がいる。
多分、ぼくも親父と同じなのだろう、
◇
それから、僕の家庭事情は激変する。
母さんは、寝込んでしまい外に出られないようで、しかたなく僕が買い出しに行く。まあ、ハミ子には慣れているので、近所にどう見られようと気にしない。
スーパーに買い物に行って、お弁当を買ってくるのだが、親父は失業して収入もなくなるので、閉店ギリギリに行って半額弁当を買ってくる気配りようだ。
金持ちが儲かり、幸福な者に幸運が訪れ、不幸な者に不運がまとわりつく。
これらは連鎖し、呪縛だ。
金は水と似ている、少ない時は人を潤し生きるためになくてはならないものだが、多すぎると災害を起こし逆に人の命を奪うことがある。いきなり大金を持つと、人生を大きく変えるものだと、痛感してしまった。
◇
翌朝、妹の結衣は部屋にこもったまま。
「おい、学校に行くぞ」
返事がない。部屋を覗くと、まだ布団にくるまっている。
(まあ、しかたないか……一日くらい休ませてやろう)
ぼくは、一人学校に向かった。
こういったとき、ボッチは強いのだ……
学校で噂はすぐにひろまったようで、教室の生徒がよそよそしい。いつものことなので、気にせず席に着いた。
ただ、以前より、僕を見る目が厳しい……
そんな中、三平太と、部活のゲイ・マッチョたちは、全く気にしていないようで、いつもと同じだ。こういった時、変人友達はありがたいが、相談相手にはならない。
その後、犯罪者の子供とのレッテルが張られ、陰湿ないじめが始まる
『犯罪者の息子! 』
『税金泥棒!!』
などと書かれたくしゃくしゃの紙が靴箱に置かれていたり。靴が隠され、裸足で帰れ、などのご丁寧な書き置きがあったり。掲示板に、僕の家の新聞記事がはられ、知らないうちにノートに辛辣な落書きがあったりする。
僕はどれも無視している。
教室ではいつもように、早瀬がきて麗華達と話をしているが、犯罪者とか、汚職、といった単語が聞こえる。どうせ、僕のことを罵っているのだろう。
麗華は、腰に手をあて不機嫌そうに聞いていた。
せっかく話しかけてくれた麗華は、どう思っているのだろう……お嬢様の家だから、家柄を大切にするのだろうな、犯罪者の家なんて、近づきたくもないだろう。
◇
こうして、肩身の狭い思いで通っているが、最も僕を落とし込ませたのは、妹へのことだ。
僕は、妹の担任の先生に言われて、置いている勉強道具を取りに行った。
僕が兄だと知られるのは嫌だろうが、仕方がない。
遠巻きに、妹のクラスの生徒が僕をみている
「あれが、結衣のお兄さん……ださいー」
「結衣も、裏ではいろいろしているらしいよ」
といった、あらぬ噂のヒソヒソ声が聞こえる。
僕は、妹の机を空にして、自分の教室に戻ってノートを見ると、“犯罪者”とかの落書をされているページを見つけ、僕はすぐに破り捨てた。
止めは帰り際、心配で妹の靴箱も覗いてみると。やはり僕と同じ、いやがらせの紙が入っている。
僕は、取り出して破り捨てた。
結衣が学校に来ていないのが幸いだ。
愚妹ではあるが、結構周りを気にするので、こんなことされたら、むちゃくちゃ傷つくのは目に見えている。それは、自分がされるより辛い……
もう、無理だ……
一週間で、ヘトヘトだ。根暗と言われるけど、ポジティブだけが取り柄のぼくでも限界だ……
僕は、しばし呆然と立ちつくし、何もかも嫌になった。
僕も明日から学校にこられそうもない……
肩を落として、靴箱の玄関から外に出ていこうとすると。
……麗華がいた。
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