8 隕石にあたった!
数日後の放課後、廊下を歩いていると……
「中川くん! 」
女生徒が中川を呼ぶ声、この学校には中川が五人いる。しかも、この内の一人は軽音のイケメン中川なのだ。
僕が女生徒から声がかかるなんて、ありえないのでスルーした。
「中川くん! 」
再び中川を呼ぶ声、念の為、振り返ると……
なっ……なんと!
白鳥麗華様が僕を見ているではないか!
予想だにしていないことで、僕は脈拍が2百近くになって心肺停止に陥るのではないかと思うほど緊張する。
まさに、隕石にあたった。
「はっ!…はい」
まるで、二等兵が最高司令長官に呼び止められたくらいの直立不動で、思わず敬礼しそうになった。
麗華は涼やかな表情で
「ストレイン・ワールドではカズヤと名乗っているそうね。カズヤ君でいい」
「はっ!!はい、結構でございます」
いきなり名前とはもったいない。麗華様に声をかけていただけるなら、私など、ゴミ、クソ、カスと呼んでいただいても、全然構いません!
一方麗華は気さくに
「それで、どうでした、ポーは」
そうだ、あのポーの話を伝えていなかった……というか、とても僕から声をかけるなど、恐れ多い。
「はっ! はい。洞窟に軟禁状態でしたが。お元気でお過ごしで、あらせられました」
緊張して変な敬語になってしまった。
「それは以前、早瀬君から聞いたわ。軟禁状態ですってね。早く、戻ってなんとかしてあげたいのだけど……」
いきなり早瀬の名前が出て焦った。
ただ、麗華は寂しそうにポーのことを言うので、本当に心配しているようだ。ひょっとして、麗華はポーの事が……なんて嫉妬心ばかりしか思いつかないとは、なさけない。
僕は続けて
「それから、ラ・ムーアがもうすぐ復活して、王都が大変になるとおっしゃって、おられました」
「ええ! ラ・ムーアが……」
麗華が珍しく取り乱し、蒼白な表情をする。
「やはりそうか……でも、早瀬君はそのことは話してくれなかった。というか、ポーは早瀬君には言わなかったのか……」
ブツブツと考え込んだあと
「だとすれ本当に時間がない、早くスワンヒルから脱出したいけど……こうなったら、カズヤ君しか望みはないのかも。それで、ポーは話したのかもしれない」
独り言のようにつぶやいている麗華。しかも、こんなに焦る麗華は見たことがない。
「あの-……白鳥さん」
考え込む麗華に声をかけると、われに帰ったようで
「ああ、ごめんなさい。それより、剣のことを何か話していませんでしたか」
そのことを言われると、僕は申し訳なく
「それが………剣の柄をとってしまって……」
「剣の柄を取った……」
一瞬、唖然としたあと
「ほんとに……マジで!……アハハハ! 」
麗華はお腹をおさえて笑い出した。
普段は「オホホ」笑いの麗華が「アハハ」笑いをしたのは意外だった。スワンヒルの豪快なレイカみたいで、少し親近感が持てる
「何かの勇者みたいに、抜けるとでも思ったの。早瀬くんも抜こうとしたけど、ダメだったと言ってたし」
僕は、うつむいて何も言えない、麗華はひとしきり笑ったあと
「わかったわ。ならば、その柄をカズヤ君にわたすようにポーに言って」
「それが……ポーさん、ぼくに渡してくれたのです」
麗華は「ほほーー」とうなずくと
「さすがポー! わかっていたんだ」
感心しながら言うのだが、僕はまだポーのことをよく知らない
「ポーさんって、白鳥さんと、どういったご関係で、あらせられるのでしょうか」
相変わらず舌を噛みそうな、歪な敬語になってしまう。
すると、麗華は宙をあおいで、思い返すように。
「大賢者よ、私の大切な人。まあ、先生といったところかな」
ええーーここに至ってさらにライバル出現か!
でもあの人は女性っぽいし、大人だし、これは強敵だ。
そんな僕の思いを麗華は察してか
「まあ、私に告白してくれた人の前だから、言っておくけど。心配しないで、あのひとは大丈夫だから」
大丈夫って、どういうことなんだ。
身内でもないようだし、結婚している感じでもない。先生と言っているが、先生だって場合によってはライバルだ。ついでに早瀬とのことも聞きたいけど、初めて声をかけてくれたのに、そこまで突っ込むのは図々しい。
でも、ここまで気さくに話してくれる麗華。というか女子と話したことが記憶にない。この状況を、妹や三平太に見せて自慢してやりたいぞー
しかも、これは僕が召喚獣だと告白するチャンスかも……
そのとき、校内放送で
『中川和也君、至急職員室へ』
突然の呼び出しだ。
「中川くん、呼び出しだよ。早く行ったほうが」
うう……残念だけど、麗華にも言われると行くしかない。でも、また話のできるチャンスはあると確信できた。
「はい、わかりました」
僕は、相変わらずかしこまって返事をすると、麗華は笑顔で見送ってくれた。
その後、職員室で担任の先生から聞いた話に、耳を疑った……
父さんが、公共工事をめぐる官製談合で逮捕された。
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