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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第三章 目指せ! 遥かなるスワン・ヒル
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7. 月光

 僕は、レイカの言うオルフェス山の洞窟に、ミホロとゴンゾーと共に来た。


 王都から歩いて半日ほどの所に、小さな岩の山が密集した所がある。その(ふもと)の洞窟の前に、粗末な干し物や、井戸、小さな鶏小屋などがあり、人の住んでいる気配がする。


 暗い洞窟に向かって声をかけると、奥から繕いだらけでヨレヨレのローブを着た、浮浪者のような人が出てきた。

 伸ばし放題の汚れた髪、色白でやせ細った髭のない面長(おもなが)の顔で、女性か男性か一見するとわからないが、背が高く体つきから男のようだ。


 その男は、うつろな瞳で何も言わないので、こちらから

「現世のレイカに言われてきました、カズヤと言います。あなたが、ポーさんですか」

 男はめんどくさそうに。

「そうですか、この前も同じことを言う若者が来ました」

「ええ! 」


 僕は驚いて、一瞬詰まったあと

「ハヤセJrでは」

 他に考えられないが、ポーは何も言わない。


 返事くらいしてくれてもいいのにと思ったが、仕方なく次の質問をした

「あのー。レイカ姫とは、どういったご関係で」

「今は、関係ありません」

 かなりそっけない。


「そのー……僕は、レイカ姫の召喚獣なのです」

すると、意外にも

「先般来た者も同じことを言っていました」

 

 まさかだろ!

 確かに、ハヤセJrはこのゲームをしているが、召喚獣だとは……そういえば、レイカは僕が召喚される以前に、他に召喚獣がいたようなことも言っていた。

 絶句している僕に


「レイカ姫は、天界のスワンヒルにいると、言うのでしょ」

「そ…そうですが」

 ハヤセJrに先を越されてしまったようだ。奴もレイカに言われて来たのだろうが、これ以上話せる雰囲気ではなくなった。


 すると、ポーが

「それで、君はどうしようと言うのです」

「えっと……そこに、行こうかと思っているのです」


 ポーは、(あざけ)るように

「どうやって行くのです。具体的な場所はわかりせん、道もわかりませんよ」

 ……僕にそれを聞くかぁー、逆に教えてほしいくらいなのに。


「もう、いいですか。私は異世界の人とは話したくないのです」

 異世界人に恨みでもあるのだろうか、さっさと追い返したい感じだ。


 すると、横からミホロが

「あのー、カズヤはレイカ姫様を、逆召喚したのですよ」


 それは少し、気になったようで

「ほほーーう。にわかに信じられませんが、それなら、そこにある剣を抜いてみてください。レイカ姫が戻ってくるための道標として突き刺した剣です。もし、抜くことができれば、レイカ姫の場所へ導いてくれるでしょう。ちなみに、この前の男は抜けずに帰っていきましたが」


 これはよくある王道パターン。だれも抜けない剣を主人公が抜いて、運命の勇者となり、レイカとのハッピーエンドまっしぐら!

 僕は、剣の柄を握って、力を入れる


「うううーー! 」

 びくともしない。そこにミホロが


「私もやってみたーい! いちど、このパターンを経験してみたかったんだ」

 遊び半分で引っ張るが、ダメだった。

 さらに、ゴンゾーもチャレンジする。自分がレイカと運命の人だと、ひそかに思っているふしもある。

 真剣に抜こうとしたが………やはりダメで、めずらしく、かなり落胆している。


 僕は、もう一度

「このーーー! 」

 思いっきり引っ張る! 引っ張る! 引っ張るーーーー

 

 スポッ! 


 と音がして、握った剣の柄が軽くなり思わず後ろに背中から倒れた。

 両手は万歳状態になったが、片手に剣の(つか)をにぎっている。

「抜けたーー! 」


 へんな音だったけど、抜けたのではないのか! 

 やっぱり、僕は主人公だ。でも、やけに軽く、恐る恐る手元をみると……


 ブレードがないーーー!


「やっ…やってしまったー」

 僕は、柄の所だけ抜き取ってしまい、ブレードはつき刺さったまま。

 僕は真っ青になった。


ミホロが呆れた顔で

「壊しちゃったじゃない! どうするのカズヤ」

 僕は、あわてて、つけようとしたが付かない。紐でくくるものかっこ悪いし……


「姫様の、大事な聖剣の柄を壊すなんて、なんてことするのよ!」

 ミホロが僕を責める

「すみません……すみません! 」

 僕はポーに平謝りだ。


 ただ、ポーは驚いた表情のあと

「あなたは、レイカ姫を召喚させたそうですね」

「はい、たまたまですが。そのあと、ミホロの魔石をかりてやってみたのですけど、全く反応なしで……」


「召喚は、モンスターを強い力で隷属させるか、お互いが強い絆で結ばれていないとできません。あなたはレイカ姫のところに召喚獣として、()されているとのことですが。逆にレイカ姫を召喚したということは、おそらく、レイカ姫との絆が深いのだと思います」

急に態度が変わり、話を始めたポーは僕のそばに来ると


「聖剣プレアデスとこの柄は強い妖力で接合し、はずれることはありません。それがはずれるとは、何か意味するものがあるのでしょう。この柄には碧玉(へきぎょく)が埋め込まれ、月の光に照らすとレイカ姫のいる場所を指し示します。しかも、これは絆の深いカズヤ君にしか反応しないでしょう」

 レイカと絆が深いと言われると、なにか嬉しくなってくる。


「汚いところですが、よければ泊まっていってください。ぜひ、レイカ姫の今を私に教えて下さい」


 薄暗い洞窟の中で、粗末な囲炉裏を囲んで夜更けまで話しをした。

 リアルの麗華の話はできないので、僕はスワンヒルのレイカの話をすると、ポーもエクアドルでのレイカの話しをしてくれた。


 ゴンゾーも言っていたスカートめくりの話は、現世の麗華からは想像がつかない。僕は後学のため、ゴンゾーにレイカのパンツの趣味と傾向を聞くと……ミホロに話しを寸断された。

今度、男だけの時に聞いてやる!


 一方、僕がレイカのホーリ・スラッシュを見た話をすると、ポーは感極まったようで

「姫様がホーリースラッシュを! さすが、姫様! ………成し遂げられるとは」

涙を、ポロポロとながしていた。


 さらに、僕たちが驚いたのは

「ガイア教が崇めているラ・ムーアは、実は魔神なのです。ガイア教は異世界人を導き、洗礼と言って異世界人のアイテムの中に、禁止されている人の心を操る魔道具を潜ませるようです。すでに多くの異世界人が洗脳され、ガイア教の手先となり、ゆくゆくはその異世界にも侵攻するつもりでしょう」


 すぐには信じられないが、ゴンゾーはうすうす気づいていたようで、腕を組んで沈黙している。

 ポーは真剣な表情で

「もう時間がないのです。ラ・ムーアが復活すると、エクアドルは壊滅します。ひいては、他の世界も危機です。なんとかそれまでにレイカ姫を連れ戻して来てもらえませんか。カズヤ君の話しだと、レイカ姫には助けが必要です! 」


「ぼくが……」

「そうです、おそらくカズヤ君しかいません」

「でも、今の僕たちでは無理では……」

 僕が考え込んでいると、ミホロがうれしそうに


「行こうよ! 冒険だよ! せっかくのRPGゲームだし、冒険しないでなにするの。ゴンゾーみたいにスローライフはやだよ」

 ゴンゾーは、引き合いに出され不服なようで


「別に俺は、スローライフをしにきているわけじゃない。ただ、天界とはおもしろい。一度行ってみたいとは思っていた」

 珍しく前向きな発言、レイカが絡むと人が変わるのだ。


 僕はみんなの話しに押され

「こうなったら、行くしかないでしょ! 」

 流れもあって言ってしまった。

 

 しかし、急がないとエクアドルのこともあるが、麗華を、早瀬を始め他の男どもに取られそうな焦りもある。

 まあ、麗華が僕になびくのは、道を歩いていて宇宙から降ってくる隕石に当たるくらいの、天文学的な確率だろうが。この前の告白で、わずかな望みがないとはいえない。


 出来るだけ早く準備して、見切り発車でも行くしかない。


 最後にポーは

「ガイア教に知られるとまずいので、ひそかに出立してください」

 僕たちはうなずいた。


 話が終わったあと、外に出ると夜空に月が昇っている。


 月光に碧玉の柄をかざすと、一筋の光が北の方角の道を示していた。試しに、他の者がかざしても光はでない。

 しかも、これまでのように漠然と北の方角を指すのではなく、具体的な道の方向を示している。


 まるで、僕を導くように。


お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m


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