6. 告白
僕はストレインワールで、ミホロやゴンゾーと北へ向かうための準備をしたり、スワンヒルでレイカからの召喚で特訓をしたりと、忙しい。
さらに、夏休みも近づき、盆踊りシーズンになり部活も活発になっている。
そんな中、家に帰ると、最近なぜか妹がご機嫌だ。
「どうしたんだ。やけに明るいな」
「えへへ、英語の発表会で、白鳥先輩に褒められたんだ」
「ふーーん」
僕は気のない返事をする。
そういえばこの前、学食に行くと人間磁石の麗華がいて、その周りに人が集まり、ほんとうにアイドルのようだった。他の学年の生徒も寄ってくる中、妹が端の方で、なんとか話に入ろうと食らいついている様子が、なんとも健気だ。
さらに、妹は
「最近、白鳥先輩がいろいろ私に教えてくれるの」
「ふーん。よかったな」
僕にもほんのわずかのお恵みを、と言いたい。
「よーし。がんばるぞ! 」そう言ったあと
「それから、お兄ちゃん! この好機をぶち壊すようなことをするなよ。白鳥先輩に、話しかけるな、近づくな、目に入るところに行くな! 」
釘をさすように言うが、どうせ近づきたくても、近づけるわけない。僕は「はいはい」と、気のない返事で手を振ってうなずいた。
そんな妹はルンルン気分で、英語の勉強を頑張り、成績もあがっている。麗華さまさまだろう。
そのうち、親父が帰ってくると。
「おかえり! 」
妹がとんでいく。
おこずかい目当てで媚びているのが、みえみえだ。親父は今日もご機嫌で
「お寿司だ! 」
かつて、酔っ払いのお土産の定番。
最近、親父の羽振りもよく、その恵みに僕たちも乗せてもらっている。
お小遣いも上がったし、先週は数年ぶりに家族で焼き肉に行った。この歳になって家族と出かけるなんて、面倒だけど、焼き肉だけは別格なのだ。
こうして意外と、家族円満、家内安全な状況だ。
ただ、三平太のことでひと悶着になる。
◇
僕は、あの告白劇のあと、時々三平太に状況を聞くが、何も変わったことはないと言う。
まあ、恋人でもあるまいし、隠しことをするのも構わないが、やはり友人がいじめ的なことに巻き込まれるのは、レイカに言われたこともあるし、いい気分ではない。
その日は、部活が休みになり、いつもはそのまま帰るのだが。忘れ物があって教室に戻ると、教室の戸口で三平太と数人が集まっていた。
嫌な予感がする。
僕は、そばに行って
「な……なにしてる」
恐る恐る訪ねると、横にいる男子が
「三平太が同じクラスの女子に、告白するそうだ」
教室の中には、数人が残っている。そのうち、黒板の前で二人の女子が待ち受けているが、どう見ても、こちらの男子と示し合わせているようで、へらへらと談笑していた。
教室の後ろでは麗華と生徒会の女子が、数人で打ち合わせをしていて、他にも数人残っている。
僕は三平太に向かい
「お前その娘が、好きなのか」
「ええ……まあ…でも、紹介してくれるって言うから。ひょっとして、うまくいくかもしれないし……」
僕は、周りの奴らを見て
「そんな、わけないだろう! 」
とは……怖くて言えない。
横の男子が、いらんことをするな、と言わんばかりに
「おい、せっかっく、俺たちが設定したチャンスなんだぜ。じゃましないでやれよ」
「………」
ぼくは、言い返せない。
確かに僕がでしゃばることでもないが、どうせダメに決まっている。でもどうすれば………
こうなったら、三平太と一緒に恥をかいてやるくらいしか思いつかない。僕にはそれくらいのことしかできない。
「おれも、告白する! 」
半分やけくそだった。周りの奴らが
「ええ! お前が、誰にだ」
どうせ、特攻して爆死するなら、大型戦艦か大型空母を狙うべきだ。
「し……白鳥麗華に告白する! 」
一瞬、周りが固まった。
そのあと、皆は腹を抱えて笑いだした。
「おい! 正気か。白鳥麗華は別格だ。どれだけのイケてる男子が辛酸をなめたことか。早瀬だって、落とせないって言っているのに。お前みたいなのが無理に決まっているだろ、なんなら他の子を紹介してやるぜ」
わかってる、それにこいつらが紹介できる女子なんて、基本的にぐるに決まっている。それこそ、僕など相手にされない。そんな奴らに金を払う気はない。
すると、三平太が
「カズヤ……いいよ、ぼくいくから」
そう言って、いきなり教室に入っていった。僕が行動すると言ったので、僕に恥をかかせないようにと思ったのだろう。
黒板の前の女子は、きたきた、と言った感じで笑っている。
それに気づいた麗華も怪訝な顔をしているが、さすがに、やめろとまでは言えないようだ。
僕は思わず、三平太を追いかけて。
「おいまて! 」
「僕が、うまく行けば、お前も告白しろ」
「ええ! でも」
「いいな」
ぼくは、睨むように言うと
「……わかった」
そして僕は、麗華に向かった。
それは、戦艦大和に、竹やりで挑む櫓漕ぎ舟。
僕は、真っ赤になり、麗華の前に立つた。
これから何が起こるのかだいたい想像ついたようで、横の女子が
「なんなの! 」
僕の間に入って、麗華を庇おうとする。やはり、門前払いかと思ったが
「ちょと、まって」
麗華は意外にも女子を制し、僕を見据えた。
まさか、僕の話を聞いてくれるのか……巨大空母を守る駆逐艦の対空砲火で、近づくことすらできずに撃墜され、三平太と盆踊りをしようと思っていたのに。
思ってもみない展開に、僕はにわかに、緊張してしまった。
ただ、もうあとにはひけない
「白鳥麗華さん、ぼ……ぼくと、盆踊りしてください! 」
あれ……焦って文言、間違えたかも、麗華が唖然としている。
もう、どうにでもなれ! やけくそで頭を下げた。
さあ、早く罵詈雑言をあびせろ、切って捨てろ。
すると、下げた頭の上から
「ねえ、中川くん。それって、だれかに言わされているの」
僕は顔をあげると、麗華の瞳が僕をまっすぐに見詰めている。
その真剣なまなざしに圧倒され、直視できない。
「ええ……それは…」
「三平太くんを助けるため、私をあて馬にしているの。それでカッコいいとおもっているの。それが、三平太くんのためと思っているの」
「そ……そんなこと…」
矢継ぎ早に言われ、ぼくは答えられない。
そして、つぶやくような声で言った言葉にぶちのめされた、
「あなた、レイピアをもってたね。だったら勇者を目指しているのでしょ」
麗華は知っていたのか!
僕は、脳天から鉄槌を打ち下ろされた感じだ。
ただし、麗華は
「私の答えは決まっています。今のあなたではNoです」
やっぱり、そうだろう、想定通りの答えだ。それでも0.001%くらいの奇跡は期待していた、やっぱりショックだ。
そう思って麗華をみると、なぜか微笑んでいる。
とても、相手を振った表情ではない。
「大事なことですから、もう一度言います。い・ま・の・あなたではNoです」
それは、僕が変われば、答えも変わるということ?
艶やかな長い黒髪を、川のせせらぎのように揺らしながら、おだやかに微笑むこの表情は……
麗華はゆっくりと席を立ち
「これから生徒会に行くので」そう言ったあと、再び小声で
「ストレイン・ワールドで、ポーに会ってほしい。それで、ポーの言ったことを私に伝えて」
「ポー……?」
「オルフェス山の洞窟にいる」
そう言い残して出て行った。
まあ、振られた……のだろう。
さらに、その様子を見ていた生徒達が、麗華の告白の断り方が神対応だと絶賛した。
麗華は相手を振る場合でも、相手を思いやっていると。
その後、クラスの奴らは、僕を気の毒そうに見たり、馬鹿なやつだと冷ややかな目で見たり、総じて嘲笑っている。
ただ、僕は知っている。
あの表情は、魔獣を倒せず悔しい思いをしているとき、僕をなぐさめてくれる笑顔だ。
(勝てなかったけど……負けてはいない! )
お読みいただき、ありがとうございます。m(_ _)m
週一の更新ですが、引き続きよよろしくお願いします。




