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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第三章 目指せ! 遥かなるスワン・ヒル
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5 ミュール

 怪我したミホロとミュールを馬車に乗せて王都に戻ってきた。

 北の関所が突破されたことで、王都が大騒ぎになるかと思ったが、そんなことはかき消される重大発表が、ガイア教からあった。


 ガイア教の最高神『ラ・ムーアの復活! 』


 ぼくは、ガイア教ではないので、ちょっとしたお祭り程度と思っているけど、ガイア教にとっては、待ちに待った神様が降臨して民衆を救済してくれるらしい。

 数ヶ月後らしいが、そのことで町は盛り上がり、復活祭も行われるようで、町に活気がでている。


 その影に隠れてしまった北の関所のスコルピオン討伐だが、さすがに低レベルの荷物持ちが退治したとは信じてもらえず。国民的アイドルのミュールが一緒だったこともあり、ミュールが奇跡的に倒したことになってしまった。


 無論、ミュールは懸命に全否定するが、なぜか王宮の上層部の圧力で、そういうことになってしまい、ミュールも納得いかないようだ。

 当の僕らは、そこそこの褒美をもらい、あまりこだわらなかった。


 その後、ミホロとゴンゾーで、十二番街でささやかな祝勝会をした。

「あの、下着のお姉さん、無茶苦茶強いじゃない。あの人がカズヤの言うレイカ姫なの。それに、すんごい美人だね」

 ミホロは久しぶりのご馳走で、リスみたいに頬いっぱいにして頬張りながら話す。僕は、うんうんとうなずいた。


「もし、そうだとしたら、ストレインワールドの世界三大美女の一人なんだって」

 確かにそう言われてもおかしくない、それに、自分のことのように誇らしくなる。でも、本人はそんな意識は全くないだろう。

 ゴンゾーは先に死んだことを後悔し、改心してレベルを上げ始めていた。



 しばらくすると、顔を隠したフードを被った人が店に入ってきて、キョロキョロと周りを見渡すと、僕たちを見つけて席に来た。


 僕たちが、(いぶか)しげに見つめると

「ご一緒させてもらっていいか」

 そう言って、少し顔を見せた。


「ミュールさん! 」

 と、言いかけたが、ミュールは口元に人指し指をあて、僕はその言葉を呑み込んだ。

 確かに、こんな場末の酒場に、ミュールが来たとなると、ひと騒ぎになる。


 ミュールは座ると、いきなり

「今回の北の関所の討伐。本来はカズヤ君が功労されるべきなのに、すまない。上層部は何を考えているのか」

 謝罪をし、納得いかないように愚痴ぽく言う。


「まあ、いいですよ。流星騎士団が何年もかけて倒せなかったモンスターを、初心者同然の僕が倒したなんて格好つかないでしょう。流星騎士団のミュールさんがいたからよかったですよ、もし僕たちだけだったら、逆に怪しく思われたかもしれません」


「それを言われると面目ない。ただ、せっかく悲願の北の関所が開通したのに、王宮は喜んでいないように思うのだ。ラ・ムーアの復活もあるが、ほとんど話題に取り上げない」

「王宮は、北とは断絶したままの方が良かったと」

「ああ、いや。勝手な憶測だ……気にしないでくれ」


 確かに、年に一回だけの、やる気のない北の関所の討伐は、民衆へのパフォーマンス的な気もする。本気なら、年に1回と言わず、大軍隊を差し向けるなどするだろう。

 ミュールはそれ以上話さず、話題を変え


「それより、剣術では伯父のシンドボルグを超える人はいないと思っていた。しかし、あの(ひと)は桁違いだ。カズヤ君はあの(ひと)を知っているのか」 

 一目惚れといった感じで、ミュールは羨望のまなざしで聞いてくる

「はい、スワンヒルにいて。レイカ姫と自分で言っています」


「天界のスワンヒル……幻の桃源郷だ。どうして、そんなところに」

「わかりません。実は、召喚獣として、僕は呼ばれているだけで聞くことができないのです」

「召喚獣としてだと。しかも、レイカ姫とは……にわかに信じられないが。実際にあの(ひと)を召喚したのだから、ありえるか……」

 少し考え込んだあと、ミュールは急に力をこめ


「もしかして、君たちは、そこに行こうとしているのか! 」

 どうやら、そこが本題のようだ。ミュールもレイカに会いたいようで、頭から湯気を出すような勢いで聞いてくる。


「ええ、そうしたくて、この無茶なクエストに参加したのですけど、今の僕たちのレベルでは、北の関所までも行くことすら難しいし。そのあとの、スワンヒルへのルートもわからない。今は力を蓄え情報を収集しているのです」


 ミュールは、少しがっかりしたように

「そうか……でも、スワンヒルなど、実在するかも定かではない。しかも、北の地は強いモンスターがいて、恐ろしい魔法使いもいると聞く」

「はい、僕も聞きました。確かストレインワールドの二大魔法使いの一人だとか。調べれば調べれるほど分からないことが多くて、かなり無謀な感じがするのですが……」

「感じがするが、どうするのだ」


「それでも、行こうと思うのです」

 すると、横からミホロが

「もう、言っても聞かないんですよ。ヘタレのくせに、頑固なのですから」

 呆れながら言うと、ゴンゾーは笑っている。


 ミュールも満足そうに微笑むと

「そうか、でもカズヤ君なら、行けそうな気がするよ。私も、何か分かればお伝えしよう、北の関所での借りもあるから」

 ミュールはそう言って、席を立った。


 剣士肌で律儀だけど、フードの下から覗く微笑むミュールさんて、めちゃ可愛い。だけど、要件が済むとさっさと帰るそっけないミュールさん。でも、お近づきになれたようだ。

 あの豊満な胸に顔をうずめた関所でのことを思い出し、デレっとしていると。ミホロはまたもや、怪訝(けげん)な表情で僕を見ている。


 ただ、ミュールの言うとおり、スワンヒルは、どこにあるのか全くわからない。地図もなく、やみくもに北に向かっても、広大な大地を彷徨(さまよ)って、下手したら遭難してしまう。


 ただ、僕はあきらめない。

 しばらくは、できるだけ情報をかき集め、

 早く、遥かなるスワンヒルを目指すんだ!



 ところで、北の関所を攻略したあとも、これまで同様にレイカに召喚されていた。

 相変わらず厳しい特訓が続くが、なぜか、以前に比べて口数が極端に少なく、淡々と義務的にこなしている雰囲気だ。

 さらに、お風呂が少なくなり、しかも……


 裸ではなく、水着をきているのだ!


 これは、レイカを召喚してしまって、僕だと気づいてくれたのか。早瀬とうまくいって、他の人(動物)に裸を見せるわけにいかなくなったのか。

 できれば、前者の方を渇望する。


 あるいは、僕だと知って嫌われているのかもしれない。さらに、北の関所に下着姿で召喚したことを怒っているのかも……

 わけのわからないまま、レイカの特訓を受けるしかない。まだ召喚してくれているのだから、必死で食らいついた。


 そこに、さらに辛辣(しんらつ)なお言葉が

「モフモフ、どうしてそこまでして、ついてくるの。嫌なら、逃げればいいのよ」


 なんだか、投げやりだ。

 でもそれなら、レイカの方が召喚しなければいいのに、相変わらずレイカは僕を召喚してくる。僕をイジメているのだろうか、でもそんなことをする(ひと)ではない。

 ほんと、訳がわからない。


お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m

引き続き、よろしくお願いします。

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