4-4 死闘!北の関所(ジャイアント・キリング)
毒霧から生き残った僕とミホロ、そしてミュールだが。ひたすら闘技場の中を走って逃げるばかり
「ミホロ、何か持ってないか! 」
「もう、なにもないよ。だいたい爆弾やトラップとかの攻撃系のアイテム、持ってないし」
ミホロのMPは底をつきて魔法は使えない。ミュールも
「私も、主だったアイテムは使ってしまった。この剣での攻撃しかない」
僕も、持ち物を探してみたが、たいしたものはない。唯一、初回のダウンロード特典で召喚獣を呼べる魔石を持ってはいる。
とてもレアなアイテムなので、これまで温存してきたが、今使うにはもったいない。というのも、レベルの低い僕には、強い召喚獣を呼ぶことはできないからだ。
勝ち目もないのに、貴重な魔石を無駄使いするくらいなら、安楽死をして、聖堂に戻るほうがよほどましだ。
その間も、スコルピオンは壁伝いに逃げる僕たちに、あのハサミの攻撃を仕掛けてくる。走り抜けてなんとか、かわしているが、走り続けないとまともに食らって即死だ。
しかし、いつまでも走る体力はない、いずれは力尽きで最後をむかえるしかない。
そのとき、スコルピオンの爪が眼前に迫ってくる。
「あぶない! 」
奴も馬鹿じゃないようだ、僕たちを追いかけて攻撃するばかりでなく。先手を打って、走る先に撃ち込んだのだ。
僕たちは間一髪で静止し、目の前にスコルピオンの爪が壁に突き刺さる。
直後にそのハサミの下をかいくぐってなんとか逃げたが、ミュールが肩を怪我し、ミホロも足をくじいた。
僕たちは、そのまま、壁伝いに反対側まで這うように逃げのびたが、二人とも苦痛に顔をゆがめ、ミホロはもう歩けないようで、倒れるようにしゃがみこんだ。
ゆっくりと、スコルピオンがこちらを向く。もう、逃げることもできない。
「ミホロ大丈夫か」
足を押さえているミホロは
「もうだめ、動けない。私……死ぬの慣れてるから。みんな逃げて……できれば即死がいいな」
泣きそうな声で言う。
死ぬのに慣れてるって、いつも痛いのは嫌だ、と言っているのに。これまで、僕に付き合って、何度も死ぬような目に会っている、と言うか何度も死んでいる。
ほんとに「ごめん」と心のなかで何度も謝った。ミュールは、剣士らしく僕たちを守ろうとして立ち上がってくれるが、剣を振り上げる力もない。
どうやら、年貢の納め時らしい。
「なんとかならないのか……」
ここで負ければ、また来年まで待たなくてはいけない。
ミホロは覚悟を決めたようで、両手を握って震えている。ミュールは敵をにらみつけ、死ぬ前に一矢報いようとしている。
こうなっては、ぼくも何もしないわけにはいかない。
最後の望み、というより最後屁くらいにしかならない魔石を握りしめ、僕が出会ったモンスターを思い返した。
(スライム、草ネズミ、アンデッド・ボーン……)
ああーー! どれも雑魚キャラだ、僕より弱いレベル10前後だ。高価な魔石を使ってモンスターを召喚しても、一万円札でお尻を拭くようなものだ。
僕たちが、動けないのを知ってか、スコルピオンは二つのハサミを両方に大きくひらいて逃げ道をふさぎながら、なぶり殺しするように迫ってくる。
こんどこそ終わりだ……
こうなったら、投げやり、やけくそ、ダメ元だ!
成功すれば、最強の召喚獣……
「レイカーーーー! 」
魔石を、かざして叫んでみた。
…………
やはり、何も起こらない……ことも……
魔石が光り始める
「ええー! まさか! 」
魔石が手の中で砕け散ると、スコルピオンの前に、きらめく白光の塊が現れた。
光はゆっくりと小さくなり、人の形が浮かび上がる
その人影は……げげーー!
シースルーの薄衣のネグリジェで、下着がすけすけの……
「レイカではないか! 」
僕を始め、ミホロとミュールも唖然とした。絶体絶命のシリアスな状況に、場違いにもほどがある。レイカも周りの状況に気づいて
「やだーーー! 」
叫んで、うずくまってしまった。ミホロは、真っ赤な顔で
「カズヤ! なに、下着のお姉さん召喚してるのよ。この、ドスケベ!」
ミュールも、僕を白い目で見ている。
「ええ! これは! あの、その」
僕も驚いている。断じて言いう。ぼくはあの剣士レイカを望んだのだ。
しかし、状況は最悪だ。レイカはスコルピオンの真正面にいる。
「お姉さん危ない! 」
ミホロが叫ぶ刹那、真後ろからスコルピオンが、うずくまるレイカに襲いかかり、砂煙とともに消え去った。
「……死んじゃった」
ミホロは僕を睨んで
「お姉さんかわいそうに、もう死んだよ! しかも、魔石も無駄使いして」
めちゃくちゃ抗議の目で睨んでいる。ミュールも茫然として、呆れて言葉がない。
さすがに、世界最強の召喚お姉さんでも、寝間着状態ではどうしようもないだろう。僕も申し訳なく思っている。
しかし、次の瞬間!
スコルピオンの背後から、宙を舞うレイカがスコルピオンの頭上に飛び込んでいく。その動きは、スワン・ヒルのレイカそのままだ!
僕は拳を握りしめ「キターーーー! 」と思わず叫んだ。
レイカは逆手に持ったダガーで、正確な頭部の急所への一撃!
「ギュルルーーーー」
鈍い音を発して、スコルピオンの動きが止まる。
僕たちは、再び呆然とした。特に、ミホロとミュールは信じられないと言った表情だ。
「た……倒したの……下着のお姉さん」
霧散するスコルピオンの場に立つレイカは、ダガーナイフを、ネグリジェの裾を巻き上げて、白い太腿に括ったベルトの鞘にしまい込む。太ももと、レイカ様のおパンツが一瞬露わになって、どきっとした。
でも、見とれている場合ではない! レイカに話しかける千載一遇のチャンスだ。
僕はかけ出したが、次の瞬間、レイカは淡い光彩とともに霧散するように消え去った。
「………消えた」
僕は呆然と立ちつくした。
僕に気づいたろうか、せっかくのチャンスだったのに。
主のいない閑散とする、闘技場。
地面には死闘の跡の、折れた剣、防具、持ってきた道具が散乱している。僕たちは力が抜けて、呆然とその場にヘタリこんだ。
ただ先程から、なにか思いつめているようなミュールが
「何という動きだ。しかし、一瞬見えたが、あの人のレベルは10程度だった。だからカズヤ君にも召喚できたのだろう……それで、あの神獣を倒すとは」
口元が震えて、未だ夢を見ているようなミュールさん。あの、ゴンゾーの話は嘘ではない、いやそれ以上だと思ったようだ。僕も意外だったが、ひとつ勉強になった
(レイカは寝るときも、短剣を持っている)
そして、北の関所が突破された。
お読みいただき、感謝ですm(_ _)m
週一の投稿しかできないですが、引き続きよろしくお願いします。




