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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第三章 目指せ! 遥かなるスワン・ヒル
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4-2 死闘!北の関所(出陣)

 

 北の関所の討伐隊は、流星騎士団の精鋭二十名と、その他の補助員五十名ほどの編成で、僕とミホロ、そしてゴンゾーは、その補助員として参加した。


 出発に際しては、壮行式が王宮内の広場で行われる。

 初めて入った王宮の広場は、国立競技場を思わせる大きな式典場で、周囲を城壁で囲まれている。

 広場には多くの兵士が左右に整列し、その真ん中を流星騎士団の精鋭が颯爽と進むが、僕らは広場に入ったところで止められた。


 正面の大きな宮殿の壇上で激励に立ったのは王の代理の執政官で、今やガイア教の法王となったサグリンだ。

 僕は、遠くからしか見えないが、初めて見る法王はかなり太って、心臓疾患になりそうな人だ。話は形だけで、重い体をよたよたと揺らせて、さっさと奥に下がってしまった。


 ミホロが小声で

「このゲームで初めて偉い人を見たけど、なにあのメタボ。あれが法王だなんて、幻滅だわ」

 確かに、このゲームのキャラ設定はセンスがない。ミホロは腕を組んで

「それに、仮の王のアッシュルムって、全く表に出ないらしくて、あの法王が実質のエクアドルの支配者みたいなものらしいよ」


 それは、聞いたことがあるが、どうでもいいことなので聞き流した。

 このあと、王都の目抜き通りを民衆の激励を受けながら行進する。周りには屋台が出て、花火も上がり、まさに毎年恒例のお祭りのようだ。


 部隊は王都を出て、北に向かう。


 僕とゴンゾーは、荷物を積んだ馬車の手綱を引いて一日中歩いた。

 ミホロは魔導士なので、魔石やポーションなどを、リュックいっぱいに詰め込んで背負っている。体より大きな巨大リュックで、まるでリュックが歩いているみたいだ。

 リアルでは、とてもそこまでの体力はないが、アバターの体なので出来るのだろう。


 一週間ほどすると、彼方に天啓山脈が見えてきた。緑の地平から突き出した灰色の岩峰の上に、白い砂糖まぶしたような峰々が、城壁のように地平線いっぱいに連なる爽快な景色だ。


 ミホロは目を輝かせて

「私、リアルではあまり外に出たことないし。なにか、わくわくする」

「僕も最近、旅行に出たことないよ」

 見たことのない植物や小動物、途中で立ち寄る村々では、珍しい食べ物や、民族衣装に目を奪われる。

 僕もミホロもレベルが低いこともあり、こんなに遠くまで遠征に出たことはない。なんだか、本格的なRPGゲームの冒険世界といった感じだ。


 山脈が近づくと、稜線が大きくV 字にえぐれている鞍部(あんぶ)があり、そこに目指す北の関所がある。

 天啓山脈の頂は頻繁に雲に覆われている。南のエクアドル側から吹く風が山肌にあたり、斜面を駆け上がる上昇気流とともに雲が発生し、雨が降るのだ。

 雨は麓に広大な森を作り、水を涵養した山体は洪水を防ぐだけでなく、絶え間なく豊富で清い水を湧き出し、エクアドルに豊かな水の恵みをあたえている。


 一方、山を越えた北の大地は、フェーン現象で湿り気を失った乾燥した風が吹き(さら)し、荒漠とした大地となる。

 北の蛮族が山脈を超えて攻めてきたこともあったらしいが、その気持ちもわかる。でも、この恵みの違いによる国力の差は歴然だろう。


 関所を目前に、各チームが最後のテントを張った。

 標高も高くなり夜は冷えるので、エールや酒も振る舞われ、この遠征で知り合い、仲間になった人達と、スコルピオン討伐の話で熱く盛り上がる。


 野宿にも慣れてきたが、食事はゴンゾーがほとんどやってくれる。しかも、料理が旨いのだ。

 今夜も特性たれで煮込んだボルシチ風の牛鍋は、周りの冒険者のメンバーにもふるまって高評だ。  


 そこに突然、厚手のガウンを着た流星騎士団の剣士がやってきた。


 団長のシンド・ボルグ!


 背後には副団長のミュールが、ハーフコートの普段着の姿で付いてきている。素足が露出し寒くないだろうかと思ってしまうが、皆その美脚に目が釘付けだ。

 ちなみに、ミホロは膝までの貧乏くさい黒のローブで、魔女の○急便の少女みたいで、さすがに大人の魅力のミュールには敵わない。


 しかし、流星騎士団の団長、副団長がこんな末端の天幕にくることはまずない。 

 僕とミホロは立ち上がり、直立不動で固まった。


 シンドボルグは、僕たちを手で制して。

「いや、気楽にしたまえ」

 すると、後ろのミュールが


「叔父上、どうしたのです。こんな素人の冒険者のところにわざわざ来るなど。しかも、そこの三人はレベル30にも達してないではないですか。はっきり言って足手まといです。ここで帰ってもらったほうがいいですよ」


 いきなり、小馬鹿にするようなミュールの言葉に、僕とミホロは少しムッとした。


 シンドボルグは苦笑いしながら

「そんなふうに言うものではない。せっかく我々の、遠征に志願して来ていただいたのだ」

「しかし、昨年も低レベルの冒険者に、連携を掻き乱されたではないですか」


 何も僕達の前で言わなくても。

 せっかくの美人で威厳あるミュール様なのに、その一言でなんだか人柄を察してしまう。

 そういえば、ギルドに来たときも、どことなく偉そうだった。あんなにきれいな人なのにもったいない。


 少し気圧されている僕達に、シンドボルグが

「ミュールは、隠し事とかできない真っ直ぐな性格なのだ。気にしないでくれ」

 

 確かに剣士らしい愚直さで、根は悪い(ひと)ではないのだろう……決して顔で判断しているのではない。念のため。

 一方ミュールは納得いかないようで、黙ってしまった。


 するとシンドボルグは、隅で鍋の番をしているゴンゾーの前に行き

「久しぶりだな、ゴンゾー」


 僕とミホロは再び顔を見合わせ

「えええ! ゴンゾーは、かのシンド・ボルグ団長とお知り合いなのですか! 」


 シンドボルグは僕たちに微笑んで、うなずいた後ゴンゾーに向かい

「まさか、また剣を取るとは思わなかった」

 ゴンゾーはボルシチの鍋をかき混ぜながら

「勘違いしないでくれ。俺は荷物運びと飯炊きだ」


 そこに、ミュールが割って入るように

「この方が、伯父上が唯一、敵わなかった御仁ですか! この人のレベルは20ですよ」

 ミュールの(わめ)くような言葉にゴンゾーは、小娘が何を言っている、と言った調子で

「かつて、レイカ姫はレベル5でレベル30の相手を一撃で倒した。ロングソードに対して姫は果物ナイフだった。しかも相手は二人だ」


 ゴンゾーの話に、ミュールは何を馬鹿なことを、と言った表情だ。

 レベル5なんて超初心者だ。どう見たって、敵うわけがない。僕もミホロも信じられない。


 するとシンドボルグが話題をかえ

「しかし、お前が異世界人とチームを組むなんて信じられないな。あれほど、異世界人を毛嫌いしていたのに」


「ええ! そうなの」

 ミホロが意外だと言った感じで言うと、シンドボルグは少し笑み浮かべながら

「こいつは、一度アカウントを取り消されているんだ。異世界人やガイア教と大喧嘩してな」

 そんなこと、聞いたことがなかった。しかも、ガイア教とまで。


 ゴンゾーは、リアルではニートだと言っていたけど、シンドボルグと知り合いで、さらにレイカを知っているということは。

 異世界人と思っていたけど、このエクアドルの人間なのか。うう、訳わかんねー! 


 ゴンゾーは、迷惑そうに

「もう、その話はやめてくれ」

「そうだな、すまん、過去のことだ。皆も聞かないでやってくれ、思わず口が滑ってしまった」


 ところで、先程から納得いかないミュールさん

「しかし、叔父上が敵わないなど信じられません。一度その技を見て見たいものです」

 シンドボルグは笑いながら

「ひさしぶりに、みせてやってくれないか。ゴンゾーの技を」


「……まあ、しかたない。こんなガキの相手をするのは正直つまらないが」

 うんざりしながら、立ち上がるゴンゾー  

 さすがのミュールもシンドボルグがそこまで言うので緊張し、僕も周りの者達も、どんな剣技が飛び出すのか固唾を飲んで注目した。


 次の瞬間、ミュールとミホロのスカートがひらりとめくりあがる!


 今は戦闘服ではないので、二人とも見せパンではなく、ミュールは純白、ミホロはクマさんの、マジパン!

 周囲の冒険者達も、目が釘付けになった。


「また、つまらぬものを、めくってしまった…… 」

 そう言って、ため息をついたゴンゾーだが


「なにすんの! 」

「コノ変態! それに、つまらぬものって何よ! 」

 ゴンゾーは、ミュールとミホロに叩きのめされた。

 これは、過酷な戦場に向かう兵士にとっての、ひとときの清涼剤、死ぬ前のエンドルフィンだ………と、周りの男達は思った


 しかし、ミュールは真っ赤になってカンカンに怒っている

「なんですか叔父上、この変態男は!! 」 

「ハハハ、こいつはレイカ姫のスカートめくり最高記録保持者だ。だれも、敵わない」

 ミホロは、唖然として

「スカートめくり! 」

 ミュールも力が抜けている。


 シンドボルグは笑いながら

「まだ、腕は衰えていないようだな。まあ、いいものを見せてもらった」

「叔父上まで、なんですか! 」

 ミュールが苦言を言う。ゴンゾーは

「しかし、また姫と勝負したいものだ。姫に比べればお前らの動きは、ほんとにガキンチョだ」


 ミュールをさらに怒らせてしまう、ゴンゾーだった。

 この先思いやられる……


貴重なお時間の中、お読みいただき感謝です。m(_ _)m

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