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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第三章 目指せ! 遥かなるスワン・ヒル
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2 地獄の特訓

 一週間ぶりだろうか、久しぶりにレイカに召喚された。

 広い芝生の庭園、噴水から透明な水が絶え間なくせせらぐ水路、穏やかな風が吹き流れるスワン・ヒル。その贅沢な楽園を独り占めにしているレイカは、白いワンピース姿で、女神様の休日のようだ。

 そんなレイカは、いきなり


「モフモフ! ビッグニュースだよ! 」


 いつになく明るいレイカ、ニュースってなんだ、なにか嫌な予感がする

 ひょっとして、早瀬と付き合うことになったとか。だとしたら、聖堂のてっぺんに登って飛び降りてやる……死なないけど。

 さらに、リアルにもどったら『あきらめが肝心(かんじん)!』を座右の銘にしてやる。

 そこで、レイカの口から出たのは


「モフモフには第三進化形態があるのが、わかったの」


(……マジか! )

 僕はこれまで第一進化で猪八戒(ちょはっかい)、第二進化でミノタウロスになった。さらに、進化できるのか。


「いっぱい本を読んで、なんとか調べたのよ。ゴールドを使った召喚ではなく、モフモフのように、マナを使った召喚獣のみにできることなのだって」


 そうか、レイカは僕をレベルアップするため、考えてくれていたんだ。

 (いや)しい嫉妬心しか浮かばない自分を恥じるとともに、()()っときた。


 でも……となると、ミノタウロス以上ってことは、なかなかの召喚獣だぞ。ドラゴンクラスは間違いない、場合によっては神獣かもしれないぞ。

 なんだか興奮してきた。

 レイカも満面の笑顔だ。久しぶりに見るレイカの笑顔に、僕もうれしくなる


 でも、世の中そんなに甘くない


「よーし、いまから特訓開始だよ! これから毎日特訓だからね」

 そうなのだーーー!

 また、あの地獄の特訓が始まるのだ!


 しかも、さらに高位の進化形態だと、かなりの強敵を倒さないといけない。僕はレベルマックスで、これ以上鍛錬しても無駄なので、最近は召喚されても、庭の手入れや部屋の模様替え、建物の増改築の手伝いなどして終ることがほとんどだった。

 でも、僕的には、特訓よりそっちの方が良いのだけど。


「早くゴールドをためないといけないから、これからは、モフモフの行ったことがない、炎獄のダンジョンや、斬首の森、血の池地獄とか、すごいところに連れて行ってあげる。どこがいいかな、わくわくするなー」


 ……どういう風にすごいんだ。スワンヒルって、楽園ではないのか、天国、桃源郷ではないのか!

 うれしそうに話すレイカだが、僕は震えている。


 そうなると、いても立ってもいられないようで、レイカはモフモフ玉のぼくをひっつかみ、ペガサスに乗って飛び出した。

(お願い、やめてくれーーー! )

 妖精が、気の毒そうに見送ってくれた。



 カズヤです………

 聞いてください、僕の辛い毎日を。


 相手は通天回廊の五十階層以上に出てくる強敵ばかり。しかも、これは特訓なので、言うまでもなく僕が一人で倒さなくてはいけないのです。ですから、いつも僕はタコなぐりにされます。


 カズヤです……

 ダンジョンの設定も過酷で、火の海の上に架けられた、小さなハシゴの上で、大蛇を相手にするのです。蛇はハシゴに絡まっているので落ちないのですが、僕は足を滑らせれば、火の海に真っ逆さまで、焼け死にます。ちなみに、下が火の海でなく、巨大な毒針がビッシリの針の山バージョンもあります。


 カズヤです…… 

 熱せられている大きな釜から脱出するために、天井から吊るされた一本の紐を取り合う、釜茹(かまゆ)で地獄というのがあります……

 これは、スタートダッシュが大事で、糸は一人以上ぶら下がると切れてしまうので、一番先に紐にたどり着かなければなりません。しかも、たどり着いたら、あとから来る者を皆殺しにしなくてはいけません。最初はみんなで助かろうと先を譲りましたが、糸が切れて、全員釜茹(かまゆ)でになりました。


 と言った具合です……


 いじめだ、拷問だ、虐待だ、パワハラだ!


 でも、そのおかげで、肉体はもちろん、自分が生き残るためには、辛くても他者を叩きのめす、精神面も強くなった(?)……ような気がする。

 ちなみに、レイカはいつも高みの見物なので、僕がいじけていると。


「わかったわ、攻略方法を教えてあげる」

 レイカが、代わりに釜茹で地獄に挑戦したことがある。


 糸が降りてくると、我先に糸に向かって魔物達が池の中を喘ぎながら向かっていく。

 スタードダッシュが大事なのに、レイカは一番後ろで、のんびりと水着姿で次第に熱くなる湯に浸かっている。そして最初の魔物が糸にたどり着く頃を見計らうと、向っている魔物達の頭の上を踏みつけて走っていくのだ。

 そして、一気に先頭に出ると、その魔物の首をはねて、糸に捕まるとするすると登り、下の糸を切って他の奴を登れないようにする。


 自分一人が生き残るため、他の全員を犠牲にする、えげつない手法だ………

 でも、この攻略方法、大きなミノタウロスでは魔物を踏むと潰れてしまうし、猪八戒ではそんな敏捷な動きはできない。


 レイカ……もう少し考えてよ。


 ◇


 こうしていつも、ぼろ雑巾のような姿で戻ってきて、お風呂に入ると。


「今日も頑張ったね♪♪ 」

 レイカはうれしそうに、鼻歌まじりで、僕をアワアワにして洗っている。一方、僕はヘトヘトだ。


 そのあと、思わぬ話がでた。

「ねえ、いろいろ考えたのだけど、ストレイン・ワールドをプレイして、私のことや、モフモフを召喚することを知っていたりして……もしかして、モフモフって早瀬君、じゃないの」


(ええー! なんでそうなる)


 僕は猛烈に、首というか胴体を横に振った。

「違うの……ほんとに」

 どうも懐疑的だ、信じてくれ! 断じて僕は早瀬じゃない! これ以上早瀬にアドバンテージをくれてやるわけにはいかない!


「あの世界から召喚したのだから、候補としては早瀬君しか、いないのだけど」


(もう一人、いるだろ! ) 

 でもレイカが想像するのも無理はない、モフモフ脱出の方法を教えたのだし。


 しかし、早瀬はなぜ、レイカがストレインワールドをしていることや、モフモフが死んだことまで知っていたのか。

 もしかして、僕の手紙を見つけて、伝えた可能性もある。そしてそれを他の女生徒の机に入れる……だとしたら、相当に悪い奴だ。

 しかし、何の証拠もない。ホントに僕の妄想かもしれない。


 すると、レイカは

「でもごめん。私にはそんなことより、大事なことがあるの」


 早瀬とのことを、“そんなことより”と言ったことに、とーっても安堵した。そうだ、レイカには、もっと大事なことがあるだろ。大事なことって何か、教えてもらったことはないけど。


 ただ、女には手の早いイケメン早瀬のことだ、麗華がコロリといく可能性はめちゃっくちゃ高い。手遅れにならないうちに………何をすればいいんだ! 

 

 しばらくして、レイカは思い出したように

「そういえば、あいつもストレイン・ワールドのことを聞いてきたことがあったな」

 あいつとは、明らかにカズヤのことだ、やっと、思い出してくれたけど、嫌そうな表情をする


「あいつ、私のとなりの女子の机に変な手紙を入れたらしいの。何かいやらしいことが書かれていたのだって。学校に来るのが怖くなって、先生に相談したらしいよ」


 (ええーー! 何で)

なんども確認して確かに麗華の机にいれたはずなのに。それで麗華を初め、女生徒が僕のことを冷たい目で見ていたのか。

 やっぱり早瀬が、と疑いたくなる。

 

 さらに、衝撃的ことを言われた。

「しかも、あいつ、友達がいじめられてるのに、助けようとしないのだよ。私、そういう友達を大切にしない軟弱な男って大嫌いなの。それでなくても、変態だし、クズだよね、ゴミだよね、生きる価値なしだよねー」


 ここでのレイカは、学校のおしとやかなイメージとは、かけ離れている。露出の多いコスチュームに、魔獣相手に長剣を振り回し、言葉使いも結構辛辣(しんらつ)だ。

 そこまで言わなくてもと思うけど、僕のことより


 いじめられているって、三平太のことだろうか……知らなかった。


 急におとなしくなったモフモフを、麗華は不思議そうに見つめた。




お読みいただき、感謝です! m(_ _)m

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