表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/100

3.特 訓

 翌日、麗華は普段通り、何事もないかのように登校している。


 昨日の召喚はなんだったのだ。

 しかも、かの白鳥麗華が学校では想像できない、露出の多い剣士姿で、あの胸でモフモフされたのだ。


 そんなことを考え、ビキニ同然の露出の多いレイカを思い出して、でれ~っと教室での麗華を見ていると、何度か目があってしまい、怪訝な表情をされた。


 ……麗華様など、僕にとっては高峰の花だとわかっているさ。


 彼女の周りには男女ともイカすやつばかりで、とても僕など近寄ることはできない。

 オタクで、背が低く、成績も中の下、身の程は分かっているつもりだ。でも、あんな表情をされると、正直グサッとくる。



 ◇

 その後、僕は頻繁に召喚されるようになる。

 僕の召喚は有無を言わせないもので、スマホなどの触媒はなく、いきなり召喚されるので、食事の最中、トイレの中に入っていたときに呼ばれたこともある。


 召喚のあとは、同じ時間、同じ場所に戻るため、リアルでは一瞬のことでだれも気づかない。

 

 そして、召喚されたときの厳しい特訓は、地獄だった。トラの穴だった。

 レイカと一緒に魔物の出る森や洞窟などに入り、出てくるモンスターを倒して僕のスティタスを上げる。


 僕の経験値を優先に上げるため、僕を前衛にしてレイカが後衛になるのだが、そもそも愛玩獣のモフモフの紐のような手足の攻撃では、モンスターにはほとんど効かない。死ぬ寸前までボコボコにされ、何度も気絶した。


「あなたは、やれば出来る子よ。頑張るの」

  最初は励ましてくれたが、次第に


「バカ、もう何やってるの! 」

 最近は叱咤が多くなり、ボロボロの半殺し状態で神殿に戻ってくると、容赦ないレイカを妖精が見ていられないようで。


「剣姫、そこまでしなくても」

(ああー、神様、仏様、妖精様)僕は涙目で妖精を見つめると、さすがに言い過ぎたと思ったレイカは。

「……ごめんなさい。早く脱出したいばかりに、つい焦ってしまって。おわびに、汚れた体を拭いてあげるわ」


 そうなると、悪いことばかりでもない。

 たまに汚れた体を洗うため、こうして一緒にお風呂に入ってくれるのだ。


 しかーし!


 召喚獣の僕は人間ではない、ということは女性の裸体に全く興味がでない、興奮もしないのだ。目の前にいるレイカの全てを見ても、毛を丸刈りにされた羊を見ているのと同じ気分なのだ。


 そこで、召喚から目覚めてすぐに、記憶の断片を全力で呼び戻して画像の再構築を試みても、やはりR16ゲームの限界、肝心なところはモザイクがかかっている……


 ◇

 さらに特訓が続いたある日

 なにやら、体に変化が……どことなく力が湧き上がる。


 そんな僕を見た妖精とレイカは

「これは、もしかして」

「ええ、ステータスアップの形態変化かも」


 より強い召喚獣への形態変化。 

 (やっとキター! モフモフ脱却だ)  

 自分でもワクワクする。

 何になるのか、アレクサンダーやナイトみたいなカッコいい召喚獣だといいな。


 レイカが、魔玉石をかざすと僕は变化した!


 体が大きくなり、なんとなく人の姿で、声もだせそうだ。


「ブゥー 」

 

 ええ!……もう一回

「ブブーー! ブブー!」


 ……まあ、こんなもんだろう。


 期待するのがバカだった。

 僕の第二形態は、猪八戒みたいな豚の妖獣。

 魔法攻撃が主体で、魔法で敵を弱らせてレイカが止めを撃つなど、戦い方のバリエーションが増えたが、相変わらず僕は前衛だ。


 ◇

 さらに特訓が続き、最終形態への变化のときがきた。

 最後のチャンスだ。


 ところで、形態変化は武闘系、魔法系に大きく分かれ、魔玉石の種類によって変わる。つまり、レイカの持っている魔玉石次第となるが、何の召喚獣が出るのかはわからないガチャ的な要素がある。


 それで、この前は補助魔法の使える猪八戒になってしまったようだ。

 その時のレイカの落胆した表情は今も忘れられない。


 そして今回、レイカの選んだ魔玉石から出現した最終形態はミノタウロス。


 レイカはそれなりに満足そうだが、もっと強い召喚獣はいくらでもいて、少し物足りなさもあるようだ。

 一方、僕としては、もっと格好いい姿にしてほしかった……せめてケンタウロスとか。


 その後も、レベル上げのためにスワン・ヒルのフィル―ドを狩って回った。普段はHP消費の少ないモフモフ姿だが、強い敵が出ると、猪八戒やミノタウロスに変化して戦った。


 そして僕は、悲しいことに召喚獣、レイカにとって必要のない時や、時間が経ってHPが無くなったあと消えてしまう。


 僕が消えたあとも、レイカはスワンヒルにいるのだが、何をしているのだろうか……気になるが探ることはできない。


 ちなみに、このエリアにはレイカと妖精以外にプレィヤーを見たことがない(イケメン勇者とかが、いないのには安堵している)。


 ところで、レイカはなぜ、このスワン・ヒルに閉じ込められたのだろう。


 さらに、リアルでは一瞬だが、レイカは何度もここに来て、ここの時間で二百年もの間、脱出するために戦っている。

 アカウントを替えて、最初からやり直してもいいものを、なぜ、そこまでして脱出しようとしているのだろうか。


 そもそも麗華のような優等生が、廃ゲーマーレベルでゲームをしていること自体、違和感がある。

 

 その謎には、召喚獣になっているだけでは分からないかもしれない。僕は自分のアカウントでのフィールドで、さぐってみようと思った。




読んでいただきありがとうございます。

※よろしければ、感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ