11 二百年の召喚獣
その後、レイカは宮殿に集められた膨大な本を読み、妖精の森の外に出て、モンスターと戦って剣技を磨き、ホーリ・スラッシュの鍛錬を続けた。
合わせて、ゴールドとマナを貯めるため、エクアドでは、ほとんどしなかったモンスター狩りもした。
モンスターを狩った時に落とされるアイテムを聖堂でゴールドに換金し、そのゴールドを貯めて通天回廊の扉を開ける水晶に交換する。残ったゴールドはモンスター・ボックスに交換し召喚獣を呼び寄せるのに使う。
これらのゴールドを貯めるのには約五十年かかり。それで、水晶1個と召喚獣1体を呼び出すことしか出来なかった。
さらに、モンスターを狩った時に自分自身に付与されるマナ素粒子は、レベル上げに使わず、専用の壺に入れて、より強い異世界の召喚獣を呼び寄せるために貯めていた。
◇
こうして、カズヤを召喚するまでの二百年の間に、レイカは四体の召喚を試みる。
これらの召喚獣はゴールドで交換したモンスターボックスに封じ込めるもので、レベルは上がるものの、より高位の魔獣への形態変化がなく、強さは頭打ちだった。
最初の二体は、レイカ自身も未熟だったこともあり、通天回廊に挑んだものの、一体目は十階層、二体目は十五階層に登ったところで、ダンジョンの中で二回死んで消滅してしまった。
三番目に召喚されたのは、魔獣ではなく魔導士で、レイカにとって思い出深い召喚魔導士だった。
◇召喚魔導士コルベット
その魔導士は、意外にもエクアドル王国の北の蛮族の地に住む、悪魔祓いのエクソシストで、コルベットと言う。
足もとまである白のローブを羽織っているが、ローブの下は、胸元のボタンを谷間が見えるまで、だらしなく開け、短いタイトスカートで美脚を惜しげもなくさらし、ウェーブのかかった金髪の長い髪、背も高く妖艶な二十歳を過ぎた女性の魔導士で、これまでで唯一、会話のできる召喚だった。
ただし、素質は高かったが、本気で魔術を鍛錬しなかったので、インチキ魔導士と言われていたらしく、召喚されたときのレベルは30程度だった。
百合気のおふざけも頻繁で
「お嬢様は、こんないい体してるのに、まだまだお子様ね……私が教えてあげる」
そう言ってキスを迫ってきたりして、レイカもかなり戸惑った。
こうしで最初の頃は、レイカを子供扱いして、悪ふざけもしたが、レイカの剣技や戦う姿勢、来歴に魅せられ、次第に真面目に訓練を積むと本来の素養を発揮し、レベル最高の100に達すると、さらにその限界突破にも挑んだほどだ。
ちなみに、普通の召喚獣はモンスター・ボックスの中に戻るのだが、コルベットはモンスターボックスには戻らず……というか戻りたがらず。レイカと一緒に寝食をともにし、最後はまるで姉妹のように親しくなっていた。
◇
レイカとコルベットは通天回廊に挑んだ。
行けば、恐らくコルベットは帰って来られない。
レイカは相当躊躇したが、早くスワンヒルを脱出したいレイカのことを想うコルベットの強い希望で、挑むことになった。
なんとか53階層まで達したが、コルベットのHPはなくなり、レイカのHPもほぼ0だった。
回復アイテムは無くなり、瀕死のコルベットを回復させることができない。
「よく、ここまで頑張ってくれました。コルベットのレベルは100に達しているのに、突破できないのは私が至らないから」
苦渋の表情でレイカが言う。確かにこの時のレイカの実力では、まだ不十分だった。ホーリー・スラッシュも習得していない。
しかし、コルベットは
「いえ! ちがいます。私が姫の足を引っ張っているのです。もっと強くならなくては……」
コルベットは悔しそうに、涙をながす。
その時は、窓から外に落ちれば戻れることを知らず、レイカはコルベットが死んでしまうのを、見送るしかできなかった。
「コルベット! しっかりして」
涙ながらに、抱きしめるレイカ
「姫様、これまで楽しかった……私はいつの日か、天界の門からここへ戻ります」
力なく語るコルベットに
「ええ、絶対に戻ってきて。ここに来るには、私の居場所を指し示す碧玉のついた剣をエクアドルに置いてあります。私自身での攻略ができないときは、その碧玉が強者を導いて、助けに来てくれるかもしれません。その時は、その強者の力になって、ここへ来てください。そして一緒に戦いましょう」
「はい必ず……それまでに、リアルで鍛錬を積み世界最強の魔導士となり、その勇者とともに、ここへきます。そして、通天回廊を攻略し、ガイア教のラ・ムーアを倒します! 」
涙を流しながら誓うと、コルベットは消えていった。
レイカも、そこで力尽き、失意のうちに聖堂に戻った。
◇
通天回廊のアーチ窓から飛び降りると、戻ることができるのが分かったのは、その次の召喚獣のときだった。
鍛錬は頑張ったのだが、ひどい臆病で、三階層目で怖くなってアーチ窓から飛び降りて、逃げてしまったのだ。
しかも、召喚獣が持っていた回復アイテムも一緒に持って逃げたので、レイカも諦めざるを得ず。まだ三階なので、試しに自分も飛び降りてみると、なぜか通天回廊の入口の門の前に戻っていた。
そこに、先ほど逃げた召喚獣もいた。
レイカと目があって、召喚獣はレイカに怒られると思って震えている。
しかし、レイカは微笑んで
「怖いのに、無理に連れてきてごめんなさい。もういいわ、帰りなさい」
この先の見込みもなく、召喚獣も怖がっているので、モンスターボックスの召喚を解き、その後召喚することはなかった。
◇
こうして、スワンヒルでの二百年の時間が流れ、その間に貯めたマナで、初めて異世界の召喚獣を呼び寄せた。
それが、カズヤだった。
貴重なお時間を割いて、読んでいただき感謝です、ありがとうございます。m(_ _)m
次回で第二部が終わります。
どうか、引き続きよろしくお願いいたします。




