4 ガイア教
レイカが馬車に戻ると、待っていたポーが
「姫、無茶はなさらないでください」
「やっぱり見ていたのね」
ポーは、うなずくと。
「さすが、剣姫と言われるレイカ様。一瞬で、敵との間合いを詰めたり、後ろから迫る剣をかわして、逆に相手の背後に回り込んだりと、見事です」
「ふふーーん、そうでしょ。これも、日頃の過酷なスカートめくりで培った、体捌きのたまものです」
自慢げに言うレイカだが、ポーは厳しい表情になり
「でも姫様、レベル30程度の差なら剣の技術で補えますが、さらに上の相手には厳しいですよ」
「わかってる。戦う前に一応相手の力量は判断しているつもりだよ」
「でしたら、よいのですが。ところで姫は、モンスターを狩ってレベルを上げないのですか。スカートめくりなどせず、剣士や魔導師などは皆そうしているようですが」
苦言を呈するポーに、レイカは身を乗りだして
「何を言うのです! この体術を得るために、私はどれだけ子供達にパンツを見られる屈辱、恥辱を味わったことか。いつぞやは『姫のパンツ、昨日と同じだ、きったねー』と罵られ、ゴンゾーには、スカートをめくるだけでなく、お尻を触られ、悔しくて枕を濡らした夜もありました」
しみじみ語るレイカは、そのあと拳を握り
「でも私は、負けなかった! ゴンゾーに対抗するため血の滲む特訓の末あみだした、究極のお触り回避技は、今や町で痴漢にあう女性の護身術となり、敵の接触攻撃をかわす体術の基本となっています」
力説するレイカだが、ポーはあきれて、半分聞き流していた。
ちなみに、レベルを上げるのは、いわば基礎体力を上げるのと同じ。
レベルを上げれば武具の破壊力や防御力、魔法も威力が上がり、技術がなくても力押しで戦える。
しかし、いつまでも同じ武具や魔法では限界があり。レベルを上げて、より高位のアビリティーを使えるようにならないと、能力は頭打ちになる。
ただし、高位の武器や魔法を使うには自分の技量をあげる必要もあるのだが、レイカはモンスターをむやみに殺してレベルを上げることに、気が進まなかった。
◇
御者の声がかかり馬車が揺れ、再び走り始めた。
王都の外門が近くなり、振り返ると周辺の家並みから抜きん出て、大聖堂がそびえている。背後の王宮もほとんど隠れるほどだ。
レイカは大聖堂を見つめながら、男の言っていたことで気になることがある
「異世界人はなぜ、聖堂で蘇ることができるのでしょう」
それには、ポーが詳しく答える。
「ガイア教は異世界人を、この世界の空間に満ちているエネルギー体の素粒子、マナを使ってアバターを実体化させたのです。ですから、異世界人はマナで構築された肉体なので、死んでもマナが消えるだけで再構築すれば蘇るのです」
「異世界人は不死身というわけね」
「近いものです。殺されても実質死なないのですから、何でも出来ます。そこで、ガイア教はこの世界をゲームの世界に仕立てて、異世界人を転移させているようです。ゲームと思っている異世界転移者は、遊び半分でここへ来て非日常を体験し、もとの世界で苦労したり、嫌なことがあった者は、ストレスを発散しているようです」
「人殺しがストレス発散なの! ふざけるにもほどがある」
レイカは鬱々した表情だ
「ガイア教が神として崇拝している『ラ・ムーア』も、別世界から来たのかもしれません。司教のサグリンは、万物の創造主、全能の神と言っていますが、実態はわかりません。私は、とても神といった存在ではないように思います。来週の大聖堂の完成とともにラ・ムーアが完全に復活するので、早く実態を暴く必要があります。もし、神でなければ復活する前になんとかしなければなりません」
深刻な表情のポーにレイカも同意するように頷く。さらにポーは
「ガイア教は異世界人を取り込み、この世界を乱し、男尊女卑だけでなく、獣人も忌み嫌っています。すでに、大部分の獣人は王都の外に追いやられています」
「そのことは、私も反対したけど。完全に無視されています。ここまで、この世界をかき乱して、もう看過できません! とにかく早いうちに手をうちます」
決意するレイカに
「歯止めになるのは、姫しかいません。ただ、そのような姫をガイア教は危険視しています。気をつけてください」
心配するポーに、レイカは微笑んでうなずいた。
ポーの言葉を聞いたあと、外を見ていたレイカは急に思い出したように。
「パンツ、毎日履き替えてるのに……たまたま同じだっただけよ」
結構、気にしてる。
◇
馬車は城塞都市の王都の門をぬけ、郊外にでる。
草原や森が広がり、ところどころ、小さな村があり農業や牧畜がおこなわれている、のどかな田園風景の中、馬車は心地よく揺れながら進んでいった。
たまに、貴族たちの小城があり、背景の森や川の自然と溶け合って、絵画にしたい風景だ。
有力な貴族は、ごみごみした王都を避け、こうした田園地帯に領地をもち、優雅な生活を送っている。
しばらくすると、小高い丘の上に、ひときわ大きいオーク家の城が見えてきた。
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