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現世に転移している異世界の剣姫に、僕は召喚獣として呼びだされた〜  作者: 猫ノあすき
第一章 僕は彼女の召喚獣
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9-1.決戦! 通天回廊

 

 それは、地吹雪舞う極北の大雪原の中に鎮座していた。

 その巨大な塔は、天に杭を打つように屹立し頂上は霞んで見えない。灰色の粗い岩肌の石積み、小さなアーチ窓が不規則に黒い染みのように点在し、まるで監獄のようで、塔自体が不気味で強大な、魔物のように見える。


 そこに召喚された僕は、呆然とその塔を見上げていた。

 周囲は見渡す限り、なにもない白だけの地平、ここに来ることさえも容易ではないだろう。

 僕は召喚されたのでわからないが、そばには犬ぞりがあり、かなり傷んでいる。ペガサスで、ひとっ飛びというわけには行かなかったのだろうか、苦労してきたようだ。


 分厚い防寒着を着たレイカは塔の正面の巨大な門の前に立ち

 モフモフ玉の僕をだきかかえ

「今日はお願いね」


(もちろん!)


 僕は目で笑った、唯一の感情伝達の手段だ。レイカも微笑むと、急にレイカの顔が近い、近い!


「これは、勝利のおまじない」

 そう行ってキスしてくれた。

(もう、これは死んでもやるしかない!)


 心に誓ったが、人間でない僕はモフモフの毛なので、レイカの口びるの感触は全くわからなかった。


 レイカは門の横の台座に、水晶のような玉を乗せる。

 扉がゆっくりと開き、真っ暗な中に足を踏み入れると燭台が灯り、がらんとした円筒形の広い部屋が見渡せた。薄暗く装飾のない石の壁面、人の踏み入れたことのない遺跡のようだ。

 背後で扉が閉まると、外の寒さがなくなる。


 レイカは厚いコートを脱ぎ捨て、露出の多い僕の大好きな身軽ないつもの剣士スタイルになると、剣を腰に(たず)さえ、深呼吸し。


「よ…よし、いくよ! 」


 少しこわばった声、あのレイカが緊張している……

 僕も息をのんだ、正面のらせん状の階段をあがると、最初の扉にさしかかる。

 確か暮れの鐘の音と同じ百八の階層があると言っていた。扉の前でレイカが手をかざすと、最初の扉が音もなく開く。


 いよいよ、スワンヒル脱出の、ダンジョンへの挑戦だ! 

 僕はものすごい緊張と不安と恐怖もあるが、それ以上に、この難関にレイカと二人で挑めることは、最高の幸せ、いわゆる恐悦至極!ってやつだ。


 出来れば召喚獣が、僕(和也)だと知って欲しいけど……でも、それを知ったら、もう呼んでくれないだろう。僕は召喚獣でもレイカと一緒にいられれば、それでいいんだ。


 ◇

 最初の部屋にはワームの群れが、うじゃうじゃ。

 僕は、猪八戒モードで、大きな杖を振りかざし。


「ブブブ・ブッ・ブブ!(エクスプローション!)」


 レベル60以上の魔道士が放つ、強力な範囲火炎の技だ。

 部屋全体が火炎に包まれると、八割のワームが黒ずみとなり、そのあとは、僕一人で掃除した。

 振り向くとレイカは、微笑んでうなずいた。


 簡単に倒したが、これだけのワームの群れは、小さな村など全滅させてしまう。王宮騎士団クラスが対応しないと、駆逐できないだろう

 これまでの特訓で、僕(召喚獣)はレベルマックスに到達した。猪八戒ではほぼ、レベル60以上、ミノタウロスではレベル80以上に相当する。


 レイカの微笑みに、気をよくした僕は、レイカを先導するように次の階に進んだ。



 次は、おなじみのスコルピオン、しかも三体だ。


(序盤でこれか! )


 今度は魔法攻撃が効きにくいので、ミノタウロスに変化して戦う。

 でも、今の僕とレイカではものの数ではない。

 僕が一体を倒す間に、レイカはすでに二体を(ほふ)っていた……さすがだ。

 しかし、序盤でスコルピオン三体とは、もしここに王国軍がきても、まさに門前払いだ。


 引き続いて階層を登っていくにしたがい、モンスターも次第に強くなっていく。

 スコルピオンもさらに格上のレッドスコルピオンとなる。一体で五体分程度の力がある。ほかのモンスターも同じだ。



 ところで、階段の途中に、外からシミのように見えたアーチ窓が時々空いている。

 外の冷たい冷気が入り込み、戦闘で火照った体には一瞬の清涼剤のようで気持ちいい。ついでに顔を出して外を見たが、真っ白の霧に包まれた雲の中のようで何も見えない。


 いったいこの塔はどこに通じているのだろうか……


 レイカは脱出と言っているが、脱出というのなら、下の世界に行くべきとも思うのだが、さらに上に行こうとしている……そこに何があるのだろう。

 僕も興味津々だ、そんなことも考えながら、登って行った。


 六十三階層……


 初めてレイカはロングソードを抜いた。


 柄には竜の紋章、(つば)には五色の鮮やかな玉石が埋め込まれ、ブレードは鏡のように輝いている。

 僕の心臓が高鳴ってきた、いよいよレイカの剣技が見られるのだ!


「モフモフ、そろそろ本気をださないといけない。ここからは、私が前衛でいく。基本的に私が集中した敵を攻撃している間、他からの敵を防いでほしい、つまり背中をあずけるってこと」


「グホッホ! (わかった)」

 

 僕は興奮して叫ぶように答えると、レイカは微笑んで、レッドスコルピオンに対峙した。

 ブレードを片手で斜め下に構えると、いきなり駆け込み、上から迫るハサミの下をかいくぐり、下段から切りかかる。


 初めて見るレイカの全力の剣術


 それは、見事の度を越していた!

 僕は唖然とするしかない。

 電光石火という言葉があるけど、レイカの剣技はまさにそれだ。


 五体のレッドスコルピオン、レイカは右から順に襲っていく。敵の体に一瞬、稲妻のような光が煌めくと、甲羅ごと切り刻まれている。


 ながれるような剣先、舞うような(たい)さばき、混成技の連撃、相手の攻撃はかすりもしない。振り込んだときの、剣先の軌道は目で追えず、見えない剣というのがあるとすれば、レイカのそれだろう。


 僕は極上の演劇を見せられているように、目が釘付けになり酔いしれた。

 もし、ぼくのいるエクアドル王国に来たら、王国の宮廷剣士だといつも威張っている奴らなど、レイカは果物ナイフで叩きのめすだろう。


 しかも、ロングソードの破壊力は半端ではない、ダガーや僕の斧などとは比べ物にならない。あの硬い甲羅を一撃で切り刻んでいく、しかも刃こぼれひとつしていない。

 瞬くまに、あのレッドスコルピオン五体が、甲羅ごと粉砕される。


 僕の出番はなかった……


 レイカは、少し息をはずませてはいるが、何事もなかったかのように、剣を収めた。

 そして、親指を立て次の階へ促すように微笑むレイカは……やっぱ、可愛い!


 しかし、その頃からダンジョンの攻略は苛烈を極めてくる。



読んでいただきありがとうございます。

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