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7章 王国マリア編 13話 仕組まれた罠



「・・・・ハル、起きて・・」


 目を開けると、マリアが顔をのぞかせていて視線が重なる。


「・・おはよ。もう、時間か」


「うん」


 起き上がり魔法ランプに灯りを灯し、寝ているアルシアとシェルを起こして旅の支度をさせる。


「アルシアは、支度が終わったら馬車を頼む」


「あぁ、任せてくれ」


 返事をしたアルシアは、1人部屋を出て馬車を引き取りに行ってくれた。俺達3人も支度が終わり宿屋の前で待っているとアルシアが乗った馬車が、まだ薄暗い道をゆっくりとやって来る。


「待たせたな・・みんな乗って」


「ありがとな、アルシア。さぁ、王都へ向けて出発だ」


 寝静まる街中を走る俺達が乗る馬車が音を響かせながら進み門を目指す。ちょうど門が見えた頃に開門時間となり門兵が開ける準備をしている。そして、まだ眠たそうな門兵が詰所から数人出て来て対応をしてくれる。


「こんな朝早くに大変だな・・まぁ、気をつけて行きな」


「あぁ、朝早くにすまないな」


 門兵と会話をするアルシアの声を聞きながら、荷台に来た門兵に俺もギルドカードを見せて点検を終えたところで通過の許可を出され、アルシアが馬車を出発させる。


 荷台から遠く小さくなっていく門兵達を見ていると、急に詰所から大勢の人影が見えた俺だが気にせず御者台にいるアルシアへ視線をうつす。


 風になびいているアルシアの腰まで伸びた綺麗な黒髪に見惚れていると、隣にいるマリアがそっと呟く。


「アルシアの髪・・綺麗だよね」


「あぁ、凛としているよな。マリアの金髪は高貴な感じで綺麗だよ」


「そうかな?私もハルとおんなじ黒髪が良かったな・・」


「俺と同じ黒髪が?」


 マリアは自分の金髪を指先でクルクル巻きながら話していると、ふと後ろを見て声をあげる。


「あっ!街が見えるよ!」


 不規則に揺れる荷台で立ち上がり街を見る行動につられて、俺も後ろを見ると遠くに朝日を浴びて今日という1日が始まろうとしている都市ニシバルの全景が見える。


「大きな街だったね。王都はもっと大きいのかな?」


「もちろんよ!だって王都だもの・・王都なのよ!お・う・と」


 マリアは座り、グイッと顔を近づけて自慢してくる。


「わかった、わかった・・ちょっと落ち着いてな」


「もう〜信じてないんでしょ〜?」


 マリアと戯れあっていると、反対側で呆れた顔で見ていたシェルが急に警戒する顔つきにになり前を見つめる。


「ハル・・この先から血の臭いがする」


「戦闘中か・・」


 気配探知スキルを発動し、前方を索敵すると10 人の人族を40人の人族で包囲している状況だ。


「アルシア、この先で戦闘中だ!あそこを曲がったら見えてくる。そしたら止まってくれ」


「わかった!」


「ハル、どうするの?」


「マリア、ここで時間を消費するわけにはいかない。馬車を止めたら先行して様子を見てくるから待ってて」


「うん、気をつけてね」


「あぁ」


 アルシアは俺の指示通りに馬車を止めて俺を見る。


「みんな、ここで待っていてくれ。マリアは気配探知スキル常時発動して警戒しておくようにね」


 隠密スキルを発動し、ある程度街道を走り距離を縮めてから茂みを抜けて近づき状況を監視すると、商人隊の馬車が賊の襲撃され護衛の冒険者3人が血を流し道に倒れ、残り4人で馬車と賊の間で対峙する冒険者がいる。


「このままだと時間の問題だな」


 茂みを抜けて馬車の死角から隠密スキルを解除し、護衛冒険者の横に立つ。


「突然だけど、加勢するよ」


「うわっ!なんだお前は?」


「帝国冒険者さ。通りがけに見つけたから、ここに来た」


 護衛のリーダーらしき男冒険者は突然現れた俺に驚きながらも口を開く。


「この状況をなのに、1人で来たのか?」


「まぁね・・腕には自信あるから。勝てる公算だから助けに来たし」


「すまねな、帝国の冒険者・・なら、右側の賊達を頼む」


「わかった」


 俺は、右側にいる賊達に視線を向け奴らの陣形を確認し斬り込むポイントを絞っていると、俺の正面で対峙する賊の男が口を開いた。


「おい!何者だ?死にたくなければ、その護衛を殺せ!」


「無理な頼みだな・・俺は忙しい身なんだ。このまま大人しく死んで道を開放してくれ」


「この戦力差を見て随分と余裕じゃねーかクソガキ!最後に、名前を聞いてから魔物の餌にしてやろう。俺は、シャダン。この、ブラック・スイーパーのリーダーのシャダン」


 シャダンと名乗る賊の男は、戦斧(ハルバード)を構え殺気を放っている。


「俺は、帝国冒険者ハルだ!」


 そう言い、右手で片手剣をアイテムボックスから抜剣し構える。


「帝国冒険者か・・まさか、帝国人を殺す日が来るなんてな・・王国で最期を迎えて死ねや!」


 シャダンが、姿勢を低くし飛び出すような動きを見せた瞬間に、なぜか一瞬視線を俺から左にズラし再び俺を捉えたと直後に左足にチクリと痛みを感じる。


「イテ・・」


 左足に痛みを感じた数秒後に、視界に捉えていたシャダンが歪み始め息苦しくなり平衡感覚が狂い下半身が痺れ倒れてしまう。


「くっそう・・いったいなんなんだ」


 ジャリ・・ジャリ・・


 視線を上げると、護衛冒険者リーダーの男がしゃがみ込んで笑いながら俺を見下ろしている。


「ギャーハッハッハ!バカだなお前!初対面の男に背を向けるとは。ポイズンスネークの毒で全身が痺れはじめたら死ぬ間際だぜ。今は、足だけだろ?」


「・・・・・・」


 

 ガチャッ


 壊れた馬車のドアが開き、見覚えのある男が姿を現した。


「フッフッフッ・・ハーッハッハ!!罪人は、死んで罪を償う運命なのだよ・・さぁ、マリアの居処を言え・・」


「お・・お前は・・リジニット・・罠だったのか・・クソッタレ」






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