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7章 王国マリア編 12話 暴露


「ちょ、待てよっ!」


「「・・・・・・」」


 呼び止める男冒険者を無視していると、物陰から1人の男が出てきた。


「貴様、ソロ冒険者じゃないのか?」


「またお前か・・なんでお前に教えなきゃならないんだ?」


 ヒュッ!


 派手な鎧男の後ろについた男冒険者が生活魔法ブロアーを俺達に放ち牽制すると、横にいたマリアが声を出す。


「あっ!」


 マリアが深く被っていたフードが運悪く脱げてしまい顔が顕になってしまい、慌てて被り直し背後に隠れるがすでに手遅れのようで、鎧を着た男の表情が固まっている。



「あ・・あ・・貴方様は、第3王女マリア様・・行方不明と聞いておりましたが」


 男は片膝をつき顔を上げ口を開く。


「失礼ながら申し上げます。私は王国地方都市ニシバル領主の長男であります、リジニット=ニシバルです。スパイル国王様の命により、貴方様を保護し王都へお連れさせていただきます」


 マリアの存在に気付かれたことに動揺していると、周囲に集まってきた兵士達に囲まれてしまった。


「ご安心くださいマリア第3王女様。このリジニットが、その犯罪者から今すぐに救い出しましょう」


 男と兵士達が抜剣し、ジリジリと間合いを詰めてくる。マリアがギュッと手を強く握ってくるということは、彼らと一緒になりたくないという意思表示だと思い考える。


 臨戦状態に陥り、完全に不利な状況に追い込まれた俺は、常日頃マリアに何かあった場合は、俺を擁護する必要はないから自分の立場を守るようにと伝えてきた・・だが、今のマリアの答えは俺と一緒にいるという答えがあった。


 だから、可能性がある限りマリアを連れて逃げることを模索する。


 気配探知スキルで周囲の分析をしていくが突破口が見つからない。一般人がいる街の通りで強力な魔法を放つ訳もいかずに思考していると、リジニットが怒鳴る。


「マリア様を拉致監禁した罪は重い!この場で素直に斬られ死んで罪を償うがいい!!」


 そう吐き捨てて上段斬りの構えで突進してくる。俺は半身に構え、アイテムボックスから片手剣を抜剣しようと右手を腰の位置に持ってきたところで、背後にいるマリアに腕を掴まれてしまった。


「なっマリア?」


『任せて!』


 念話でマリアの声が聞こえた瞬間にマリアが何かを探すようにモゾモゾと動いた直後に顔を上げて素早く動いた直後に、俺に斬りかかって来ていたリジニットが呻き声を上げて倒れ苦しんでいる。


「ぐぁ〜いてぇ〜!なんだコレは〜!」


 倒れたリジニットの両膝に漆黒のスローイングナイフが深く突き刺さっているのが見えた。


『アレはマリアが?』


『命中しちゃった』


  取り巻きの冒険者と兵士が倒れ悲鳴を上げるリジニットに視線を向けている瞬間に隠密スキルを発動しマリアとこの場を立ち去り路地裏まで移動し危機を乗り越えることができた。


『マリア、ぶっつけ本番で成功するなんてすごいな』


『私もビックリした。せめて1本だけでも当てようと必死だったから・・役に立てたかな?』


『もちろんさ』


 ギュッとマリアを抱き寄せて頬に軽くキスをする。


『もう、するならコッチよ』


 マリアが背伸びをして流れる動作で俺の首に腕を回し優しく引き寄せ唇を重ねたまま、騒がしくなった街の空が暗くなり落ち着きを取り戻すまでの長い時間を2人でゆっくりと過ごし宿屋へと戻った。


 マリアと宿屋の部屋に戻ると、大切な馬を亡くしたアルシアは落ち着きを取り戻していたが、綺麗な目は赤く充血したままで無理していることが容易に分かる。


「ハル、ギルドはどうだった?」


 アルシアの話題を振ろうと一生懸命な姿を見て胸が痛い。


「あぁ、街の北の位置に地下ダンジョンがあるせいかギルド内はごった返していたよ。それに、この街の領主の長男に絡まれるし。そういえば、勇者達は王都に帰還したってなってた」


「その領主の長男に絡まれたって・・問題は無かったのか?」


「「それは・・・・」」


 心配そうな顔をするアルシアに俺は、マリアが顔バレしたことを伝えた。


「なんてことだ・・」


「ゴメン。俺とマリアは、この街で自由に動くことができない。アルシアとシェルが頼りだ」


 アルシアは、溜息をついて何かを決めたような顔をする。


「ハル、馬車を引く代わりの馬が欲しいんだ」


「・・わかった。任せてくれ」


 俺は、それなりの金額を渡しアルシアに買ってきてもらうことにする。


 翌朝になり、アルシアとシェル2人が宿屋を出て新たな馬を購入するため馬車預かり所で聞いていたという街の北側にある馬小屋へ出掛けて行った。


 今日は、部屋でマリアと留守番をしている俺は呟く。


「残り11日・・移動で10 日か・・・・」


「ハル、間に合うかな?」


 不安そうに見つめるマリアを見て答える。


「大丈夫だよ、マリア」


 俺は、根拠のない答えを言ってしまった。急ぎたいが馬が手に入らないと前に進むことができない現状を理解しつつ焦る気持ちを抑えながら部屋で過ごし、昼に食事を摂りベッドで横になる俺はソファに座るマリアに聞いた。


「マリア・・アイツとは面識あったの?」


「彼は、帝国へ向かう途中に領主館に泊まった時の晩餐会で会ったくらいかな。名前を聞いて思い出した程度の存在よ」


「・・そっか」


 そう言って天井を見つめていると、ベッドが少し揺れてマリアが覗き込んでくる。


「どうしたの?」


「なんでもないよマリア。ただ・・昨日の一件で実力行使にでなければいいなと思ってね」


「そうね・・ハルを犯罪者呼ばわりしていたし」


「まぁ、行方不明の王女様を俺が連れ出している時点で、世の中の人からすれば俺は犯罪者だな」


 自虐的に笑っているとマリアがやるせない顔になったため慌てて上半身を起こし、そっと抱き寄せてフォローする。


「でも、こんな綺麗な王女様に出会えたことの方が嬉しくてたまらないけどな」


「ん・・ハル」


 それから2人同じベッドで横になり、この先の旅に備えるためゆっくりと昨日までの疲れを癒し夕方になった頃にアルシアとシェルが無事に帰ってきてくれた。


「お帰り、どうだったアルシア?」


「なかなか上等な馬を手に入れることができたぞ。ハルが費用を工面してくれたおかげだ」


 すると、隣にいるシェルがニヤつきながら、昼間の馬小屋での出来事を暴露する。


「だから、ハルよ・・馬達を見た瞬間に泣き出してな、昼まで何もできなかったのだぞ。それはもうピーピー泣いてあやすのに苦労したんじゃ」


「なっ!ばかシェル!泣いたのは最初だけだ・・絶対に泣き虫ではないぞ!いいか?」


 アルシアとシェルのやりとりを笑いながら見守る俺は、気持ちを切り替え低い声で3人に話す。


「・・・・ちょっといいか?」


 普段の喋り方と違う俺に何かを感じたようで、戯れていたアルシアとシェルはピタッと動きを止めて俺を見る。


「「・・・・」」


「今の現状、マリアを期日内に王都へ送り届ける時間が切迫している。残り11日で、明日出発して順調に行って王都に着くのが期日当日なんだ」


「それで間に合うのか?」


 アルシアが口を開く。


「正直言ってギリギリのラインだ」


「もし、間に合わない時は?」


「こないだ言った通り、マリアは死んだことになり、生死不明のまま国葬になる」


 驚くアルシアとシェルを見ながら話を続ける。


「だから、明朝の開門と同時に街を出る。10日かけて王都へ行く道のりを9日で辿り着かないといけない」


「また強行突破だな・・ハル」


 アルシアが目を見開いている。


「すまない。また馬に負担をかけてしまうな」


「それなら大丈夫だ!買った馬は最強種のオグンキャプ種だからな」


「オグンキャプ種?」


 少しアルシアが興奮した顔つきになる。


「知らないのか?その辺の馬とは次元が違い過ぎるぞ!足の速さと粘り強さが尋常じゃないのが特徴だからな」


 馬の話に興奮しているアルシアをなんとか落ち着かせ、帰ってきたばかりのアルシアとシェルに買い出しに行ってもらい旅の準備を整える。


「さぁ、明日から強行軍だ。今夜はしっかり休んで明日に備えような」


 部屋の灯りを消して部屋を暗くすると、いつものように1人が布団に潜って来たがいつもと違う。背中にピタッとくっついたままで何かをする気配がない。


 それが逆に気になってしまい寝れず、我慢できなくなった俺はゆっくりと寝返ると、寝間着姿のマリアが寝息を立てて寝ている。



「マリア・・」


 

 ささやくように呟き俺は、マリアを抱きしめながらゆっくりと意識を手放す。



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― 新着の感想 ―
[一言] 毎回チートの美少女と出会ってるだけで ハル自体が強くなってないのがなんとも残念無念 リル、クウコが何故勇者に同行さぜるをえなかったのか 一瞬で勇者を殺せるレベルとはなんだったのか 一言言える…
[良い点] 王女生存が貴族に知られたから、 もう期日までに急がなくても大丈夫だね。 貴族サイドの早馬で王都に連絡が行くでしょう。
[気になる点] え、オグ〇キャップ種?(難聴
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