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7章 王国マリア編 10 話 スキル習得


 俺が喋らないと基本的に静かなパーティーだ。みんな基本的に明るい性格だけど、馬車の旅になると途端に物静かになる。この無言の空気に耐えれなくなった俺は、御者台でボソッと独り言を呟く。



「勇者なんて嫌いだ・・世間が好きでも、俺はキライだ!」


 すると、荷台で寝ていたハズのシェルが俺の側により耳元でささやく。


「シェルも勇者がキライじゃ・・ふぅ〜」


「シェ・・シェル!くすぐったいよ!」


 ビクついた俺を見て、ニヤつきながら荷台へと戻っていき入れ違いでマリアが隣に座る。


「・・ハル」


「どうした、マリア?」


「あのね、お願いがあるの。王都に着くまでにハルが持っている隠密スキルを教えて欲しいの」


「隠密スキルを?」


「うん・・きっとこのまま王城に戻っても不自由な生活しか待っていないし、私からハルに逢いに行けないなんて耐えれないの・・だから・・」


 そう言ってマリアは俺の腕に顔を埋めてきた。


「・・わかったよマリア。この前教えたスキルみたいにすぐ覚えることができないよ。それに、1つとても困難な条件を満たさないと完璧に習得することができないんだ」


「困難な条件?」


「あぁ。非常に言いづらい条件で、王女のマリアには到底受け入れられない条件なんだ」


「ハルとなら大丈夫よ。どんな条件なの?」


 俺は、荷台にいるアルシアとシェルの様子をチラ見してマリアを見て告げた。


「条件は、互いの魔力を受け入れ混ぜ合わせ同調させた後に全身の感覚を同調させるんだ」


「感覚を同調させる?・・それってまさか・・」


 俺と視線が重なり赤面するマリアに苦笑いして答える。


「マリアの想像通りのことだよ。だから、王女様のマリアには難しいだ・ごめんね」


 俺の本音はこの隠密スキルは親しい仲間にも教えることに気が進まないため、マリアには絶対無理な条件を提示した。彼女の反応を見て諦めたような顔になった事に安堵し、今夜の野営場所を探し進み続ける事に集中する。


 しばらく走り続けていると、ちょうど山沿いの街道の坂を上りきったところに野営に適した場所を見つけ馬車を止めた。


「みんな、今夜はここで野営するよ」


 シェルに馬の世話を任せ、俺とアルシアで新たに購入した大型テントを設営しマリアは夕飯の支度に取り掛かっている。


 そして、陽が沈む前に魔除グッズを周囲に配置し戻った時にちょうど夕飯が出来上がっていた。


「おかえり、今夜は久しぶりにマリア特製の肉シチューよ!」


 焚き火を囲むように野外イスに座り、マリアが手慣れた動きで配膳してくれた。久しぶりの野営のせいか、宿屋で食べる飯より美味くアルシアとシェルが何回もおかわりをしてしまい、鍋の中身が空っぽになってしまった。



「・・お前ら食いすぎだよ。朝飯は、携行保存食だからな」


「「あぅ〜」」


 2人は俺の言葉にショックを受けたのか、パンパンに膨れた腹をさすりながら悲しい顔をして訴えてくるが、俺は無視して食器の後片付けを済ませテントに入り人数分の毛布を適当に置く。


 それからしばらくしてマリア達がテントに入って来て毛布を手に取り広いテントの好きな場所で横になる。俺は、入り口から一番奥の場所で横になると、3人が俺の側まで転がりながらやってきた。


「ちょっと、スペースの無駄遣いじゃないか?」


「なんだ、嬉しくないのか?美女に囲まれて寝れるんだぞ?」


 シェルがそう言いながら、俺の毛布に自然と潜り込んできた。


「せめぇよ、シェル!」


「うぅ〜今夜も冷えるから、ハルの温もりが愛しいのじゃ」


「なら、寝間着を着ろよな・・また下着じゃねーかお前」


「そう言いながら、実はお気に入りじゃろ??」


 シェルが自慢の双丘をアピールしている。


「くっ・・それは認めるけどさ、2人がいるだろ?」


「ならば・・行くぞマリア!」


 突然、何か宣言をするアルシアに巻き込まれるマリア。


「え?うそ?・・ホント?アルシア、ねぇ?」


 アルシアが毛布から出て立ち上がりに支度を整え俺の毛布に潜り込んで来て俺はシェルとアルシアに挟まれた状態になってしまう。


 1人取り残されたマリアは呆然と立ったまま俺を見て固まっている。


「マリア、このバカ2人の真似しなくていいからな。君は王女様だ・・平常心で・・な?」


「何が平常心じゃ・・ハルが保てるのか?」


「ばかシェル!やめろ!」


 ゴンッ!


「イタ・・なかなかではないか・・」


「ホントだ・・」


「アルシア、そんな感想を言うんじゃねーよ!」


 バタつく毛布の中の状況を想像しているのか、凝視するマリアの顔がどんどん真っ赤になり呼吸が荒くなっている。



「シェル・アルシア・・ストップ!ストップ!・・マリア王女様が限界だ!」



「・・・・イヒッ」



 奇妙な声を漏らしたマリアが座りこみ、何をする気なのか見ていると足元の毛布をめくり上げて潜り込んで来た。


「ちょ・・ちょっと待ってマリア」


 器用に俺の体の上に乗りモゾモゾ動いていると、新たに素肌の感触がモロに伝わる。


「マリア・・まさかお前もか!?」


 毛布を捲ると、マリアが毛布の中から見上げ視線が重なると、ギュンッと俺の首元まで顔を近づけてきた。


「はぁ・・ハルゥ」


 マリアも鼓動が俺の胸に伝わってきて、俺の鼓動も同調するように早くなってしまう。


「ダメだ・・ここまで迫られたら・・・・いいな、3人とも」


「「「 うん 」」」


 この夜に3人の初めてを貰い、汗だくのまま熟睡する3人に生活魔法クリーンをかけて綺麗にして、1人服を着てテントから出た俺は肌寒い夜の中、野外イスに座り星空を見上げる。



「とうとうここまで来たか。でも、シェルは・・まぁ考えるのはやめよう」


 足元の消えかけた焚き火に新たな薪を置いて、炎を元気にしてやるとパチッパチッと薪の爆ぜる音を聴きながら暖を撮っているとテントから誰かが出てくる音がしたため振り向くとマリアがいた。


「マリア・・」


「ハル・・目が覚めちゃった」


「そっか・・寒いからこっちおいで」


 ぎこちない歩き方で俺の側に来て、隣の野外イスに座ると思っていたら、俺の膝に対面するように座る。


「マリアさん?」


「1人だと寒いから」


「それじゃ、背中が背中が寒いだろ?」


 アイテムボックスから余りの毛布を出して、マリアと俺を包むようにかける。


「あったかい・・ありがと、ハル」


 ギュッとマリアが俺を抱き締めてスッと離れ見つめ合う俺とマリアは、何も言葉を交わす事なく唇を重ねる。



「んっ・・・・」


「マリア、あのスキルの練習する?」


「うん・・する」


 マリアの誘導でてを繋ぎ1つなり、俺達は隠密スキルの練習を始めた・・。


 最初は、刺激に慣れていないマリアは不安定だったが、時間が経つに連れて流れに委ね予想を遥かに越える成果になった。


 集中していたため明け方になる頃には、マリアは疲れ果てて俺の上で静かに寝ている寝顔を見ながら頭を優しく撫でてやると、少し満足そうな笑顔に変わった。


 それから3日かけて移動し、毎晩マリアのスキル練習をこなしていた俺は、調子が良い状態で4日目の昼辺りに新たな王国の街が見えてきた。


 なぜか、互いの存在を確かめあった日からアルシアが積極的に御者をしてくれるため、たまに襲撃する魔物を排除するくらいの役割しかない。


 アルシアが御者のままでたどり着いた街の門兵の対応をアルシアがしてくれている。すると、この街は荷台に乗っている人間は馬車から降りて歩いて者を通過することが決まりらしい。


 もちろん、身分がバレないようマリアは、習得したばかりの隠密スキルを発動し荷台に乗ったままでいて、俺とシェルは門兵にギルドカードを提示して、通行料銀貨3枚を支払い街に入った。


『ここは、王国領地方都市マークスか』


 隠密スキル発動中のマリアを認識できるのはおれだけのため、街での会話は念話でしている。


『そうね、この街は何回も寄ったことがあるから隠密スキル発動したままじゃないと、顔バレしてしまうわ」


『そうか、それだけ王都が近くなっているってことか・・待てよ、それなら宿代が1人分やすくなるな』


『その分、外での行動に制限が増えるけどね』


『たしかに・・』


 マリアの指摘により、宿代削減より街での行動に制限がある方がマイナスだった。


 この街の馬車預かり所は、王都側の門近くにあるため通りを歩く人のペースに合わせての移動になり、のんびり時間をかけてたどり着いた。


「よし、まずは宿の確保だな」


 初めて来た街の宿事情がわからないため、必ず最初にやることは宿の確保だ。大通りを歩いて宿屋を探していると、先に冒険者ギルドを見つけてしまった。


「先にギルドに寄るのか?」


 アルシアの言葉に一瞬悩んだ俺だったが、先に宿屋確保を優先した。そして、ギルドから通りを2つすぎた場所で宿屋街を見つけることが出来たのだった。





 

 



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