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7章 王国マリア編 8話 遭遇

これからバタバタしていきます。


「アルシア!・・アルシア!」


 マリアの泣き叫ぶ声で、ふと我に返り現状を理解しようと深呼吸をして、アルシアの側へ行く。


「アルシア、目を覚ませ!」


 アイテムボックスからポーションを取り出し、5本を消費してなんとか止血できたが損傷した臓器は完全に修復していないため、傷口に手を添えて治癒魔法エクストラヒールを唱え損傷していた臓器を完全修復させた。


「はぁ・・はぁ・・できることは全部やった。あとは、アルシアの体力次第だな」



 アルシアの処置が終わった頃に異変に気付いたシェルが俺の場所にやってきた。


「ハル・・なにごとじゃ!・・・・アルシア」


 シェルは、横たわるアルシアを抱き抱えて不安な顔している。


「すまない・・油断してた・・」


「アイツは何者なの?黒っぽい髪が見えた気がするの」


 俺より近くにいたマリアが、犯人の容姿の一部を呟く。


「マリア・・シェル、アルシアを頼む」


 ザッ!


 俺は隠密スキルを発動し地を蹴って高原を駆け抜けながら、普段抑えている魔力を解放し全力で気配探知スキル使い奴の居場所を捕捉する。


「見つけた!」



 この高原から西の方向にある街道沿いの森を移動している。


 そいつの先に4人の気配が止まっているため、仲間と合流する算段なのだろう。


 そのまま全力で追従し、隠密スキルの段階も上げて奴の10メートル左側を並走する。


「絶対に捕まえてやるからな」


 奴の前に出るため走る速度をあげて進路上に立ち止まり、問答無用で風魔法ウィンドカッター2発を時間差で放つ。


 バシュッ・・バシュッ



「うぎゃっ!」


 ズザザァァ・・ドンッ


 右太ももと左脇腹を突然切り裂かれた男は、受け身を取れないまま血飛沫を飛ばしながら転倒し、地面を転がった後に大木に衝突して止まる。


「いでぇ〜いでぇよ〜くっそ〜」


 俺は、奴の側に立つと転倒したときにマントが脱げて姿が露わになっていた。


「黒髪・・・・」


 大木の根元で蹲っている人物は、黒髪少年だった。


 俺は、黒髪少年のかみを掴み上げて尋問する。


「おい!誰の命令だ?なぜ、アルシアを殺そうとした?」


「う゛〜う゛〜」


「てめぇ!答えろ!」


 黒髪少年は、傷だらけの顔をあげて口を開く」


「なんなんだ・・姿見せないお前なんかに答える必要ない」


 俺は、隠密スキルを解除して正体を見せる。


「これでいいんだな?」


「なっ・・なんでお前が・・ウソだろ?」


 目の前の黒髪少年は、目を見開き俺を見て震えている。


「はぁ?なにがウソなんだ?」


「お・・お前!・・シイナ・・死んだハズじゃ・・」


「死んだ?・・俺は、帝国冒険者だ!」


 黒髪少年は、まるで俺の言葉が理解出来ていない表情で口を開く。


「だからよ・・シイナ・・ハル=シイナなんだろ?」


「さっきから何を言っているんだ?俺に家名は無い」


「なんなんだよいったい・・・クソ痛ぇし惚けるし訳わかんねーよお前!」



 互いの言い分が合致しないでいると、離れた位置から近く殺気を捉えた俺は、黒髪少年から離れ隠密スキルで姿を眩まし周囲を警戒していると、黒髪の猫人族少女は姿を現した。


 猫人族の少女は、黒髪少年に近寄り何かを話した後、雑にポーションを渡して回復した黒髪少年を見送った後に不意に周囲を警戒する顔つきになり匂いを嗅いでいる。


 猫人族少女は、匂いを嗅ぎながら的確に俺がいる場所に近づいて来る。


「やばい・・このままだとバレてしまう・・」


 俺は、緊張のあまり彼女の顔を凝視している。そして、初めて見たオッドアイに何故か懐かしみを感じる。


 そして、俺まで残り4歩のところで立ち止まり小さく呟いた。



「ご主人さま・・たしかに、ご主人さまと同じ香りがしたのに・・どこ?」


 そう言い残し、黒髪の猫人族少女は、黒髪少年が走って行った方向へ足早に向かって行った。


「あっぶね〜獣人の能力恐るべしだな」


 周囲に気配がなくなったことを確認して、俺はアルシア達がいる場所に戻って行く。



「マリア、アルシアの容態は?」


 マリアは振り向き口を開く。


「ハル・・まだ目を覚まさないの」


「そうか。とりあえず馬車まで戻ろう」


 アルシアをソッと抱き抱えて馬車の荷台で横にさせた後、街へ戻ることにした。


 アルシアの体調を考慮し、1日できた道のりを3日かけて移動し街に入りすぐに大部屋が空いている宿を確保してアルシアの看病に専念する。




 黒髪男の襲撃から3日後の昼にアルシアが意識を取り戻した。



「アルシア!」


 アルシアが目を覚ましたことに気付いたマリアが抱き付き涙を流している。


「マ、マリア・・ここは宿屋なのか?」


「そうよ。3日も寝てたんだからね」


「そうか・・」


「よぉ、アルシア。体に違和感ないか?」


 抱き付いていたマリアを見ていたアルシアが顔を上げて俺を見て口を開く。


「ハル・・そうだな。体の奥底の深い所にハルの魔力を感じる気がする」


 俺は苦笑いしながら告げる。


「治癒魔法で、俺の魔力を大量に注ぎ込んだせいかもな」


「そうか、ならいいんだ・・うん」


 何故かアルシアは、嬉しそうにお腹をさすり笑顔になっている。


 アルシアの笑顔に何故か不安を感じ、マリアにアルシアの看病を任せてシェルと依頼報告のため冒険者ギルドに向かいギルドにたどり着くと、大勢の冒険者で賑っていて、窓口にいるアメリアは忙しそうに対応をしている。



 時間を置いて、窓口業務が隙になったところでアメリアがいる窓口へ移動した。


「アメリア・・」


「ハルさん。おかえりなさい。勇者様に会えましたか?」


「いや〜会えなかったよ」


「そうですか。でも、勇者様はこの街の領主館に滞在していますので、もしかしたら街で出会えるかもしれませんね」


「そうだね。1回くらいは見てみたいしね。今日は、こないだのクエスト報告に来たよ」


 ウォーウルフの討伐部位をカウンターに置いて報告する。


「本来なら交換窓口なんですけど、今日は特別ですよ」


「ゴメン、ありがとうアメリア」


「どういたしまして」


 笑顔のアメリアから依頼達成報酬と討伐報酬を受け取り、アメリアと雑談をしているとギルド入り口辺りが突然騒がしくなる。


「ん・・なんだ?」


「あっ!ハルさん。勇者様が来たみたいですよ」


「マジ?」


 俺は、アメリア指差す方向を見ると金色に輝く鎧を纏った黒髪黒目の少年の姿を見て呟く。


「へぇ〜あの少年が勇者様なんだ。確かに黒髪黒目だね」


「だから言ったじゃないですかハルさん」


 受付嬢アメリアが、バンバン俺の背中を叩きながら言っている。


 その勇者様の後に続くように黒髪黒目の少年ら5人が入って来た。


 そのうちの1人が見覚えのある顔だ。


「シェル、最後から2番目に入って来た黒髪少年がアルシアを襲った男だ」


「なっ・・奴がじゃと・・」


「落ち着け。今は何もするなよ。勇者の仲間だと、なかなか手出しできないからな」


「・・うむ」


 俺とシェルの視線に気付いたのか、アルシアを襲った男が俺の方を見て立ち止まり目を見開いている。


「ハルさん、お知り合いですか?」


「まさか。初めて見るよ」


「そんな感じには見えないんですけどね・・」


「そう?まぁ、用事は済んだから帰るよ」


「はい。ハルさん、また来てくださいね〜」


「オッケー!またねアメリア」


 アメリアと別れギルドのでぐちに向かっていると、俺を見た少年が先頭を歩く勇者に近寄り何かを告げているが興味は無い。


 そのままドアに手をかけたところで、予想通り背後から呼び止められてしまう。


「おい!そこの冒険者止まれ!」


「・・・・・・」


 ガララ・・


「君は、この勇者である俺の呼び掛けに応えないのか?」


「はぁ・・・・」


 溜息をついた俺は仕方なく振り向き勇者を見ると、正義感にありふれていた表情が蒼白へ変わっていく。


「お・・お前!死んだハズじゃ・・」


「また死んだハズじゃって・・勇者様。誰かとお間違いじゃありませんか?」


「はぁ? お前、シイナだろ?」


「違いますよ。私は家名も無い、帝国冒険者のハルと申します。他人の空似ではありませんか?」


「・・確かにアイツと喋り方が違う。王城地下牢で死んだと聞いた・・でも、死体は見ていない。どういうことなんだ・・訳がわからない」


「ですから他人の空似ですよ。仲間が待っているので失礼します」



 俺は勇者の制止を無視してギルドを出て宿屋に向かう。


 途中から1人の気配が一定の距離を保ち尾行している。ことに気付いた。


 あえて気付かないフリををして、途中から宿屋と反対方向へ歩きシェルと一旦別れて様子を見ると迷わず俺について来ることがわかった。


 大通りから人気のない裏路地に入り、三つ目の角を曲がった所で隠密スキルを発動し姿を眩まし待っていると見覚えのある少女が現れた。


 アルシアを襲撃した黒髪少年と話していた黒髪の猫人族少女だ。彼女は、急に姿を消した俺を慌てて探し始め微かに残った香りを頼りに慎重に歩いている。


 ちょうど彼女が俺の前を通り隙だらけの背中を見せたタイミングで、背後から少女を地面に押し倒し拘束して尋問する。


「動くな!」


「んニャ!放せ!」


「なぜ、俺を付け回す?」


「それは言えない」


 少女は全身に力を込めて逃げ出そうと必死で暴れている。


「そうか、なら仕方ないな・・」


 俺は、アイテムボックスから解体用ナイフを取り出し、彼女の首に当てて質問する。


「これが最後だ・・誰の命令だ?」


「言えない・・クッ・・」


「それは残念だ。・・最後の情けで聞こう。君の名は?」


「んくぅ・・・・ミオ、猫人族のミオ」


「ミオ・・良い名前だ。けど、ここでサヨナラだ。オヤスミ・・ミオ」



 解体用ナイフで彼女の動脈を切り裂こうとした瞬間に背後から急接近する気配を感じて再び隠密スキルを発動しその場から離れる。


 すると、拘束され横になったままの猫人族の側に茶髪の猫人族少女が寄り添う。


「お姉ちゃん!大丈夫?」


「なんとか・・ミリナが来てくれてなかったら、今頃この世からサヨナラだったよ」


「良かった。リルちゃんとクウコちゃん達が待っているから帰ろ」


 俺は立ち去る2人を見送り呟く。


「リル?クウコ?あの勇者達とは違う名前だな・・その2人が猫人族の主人なのか?」


 俺は、しばらく裏路地で考えたのちに宿屋に戻り部屋に入ると、シェルがいつもと違う様子に気付く。


「シェル?どうしたんだ?」


「ハル・・探していたモノが、この街にいる気配を感じるんだ」


「え?この街に?」


 ソワソワしているシェルの姿を見て、何か予想外の展開になりそうな予感がしている。


「シェル、探し物が見つかったらどうするんだ?」


「そうだな、1度だけ抱き締めることが出来たら・・それで満足だ」


「それだけ?」


「あぁ、それだけだ。もう、年齢的にも親元から離れる年頃だからな。一緒に暮らすなんてありえないのだ」


 シェルの言葉を聞いて、人族とは事情が違い過ぎることを痛感させられる。


「それなら、探しに行って来るか?」


「いや、今はアルシアの方が優先だ」


「そうか・・・・」


 普段見せないシェルの表情を見て、ソファに座り目を瞑り黒髪少年たちの俺を知っているような態度について考えながら夜が更けていった。


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