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7章 王国マリア編 3話 マリアの想い


「私がリーダー?えっと、それじゃー・・・・んーと・・」



 依頼票を見て考え込んでいるマリアの決心を待つこと数十秒。



「採取地域が街の北門を出た先にある森・・馬車を使わず歩いて行きましょう。街道は私が先導して行くわ。森からはアルシアが先頭で後ろから道案内するね。ハルとシェルは周囲の警戒と対処をお願い」



 パーティーリーダーとして方針を決めたマリアは、自信に満ち溢れた表情で先頭を歩き始める。


「さぁ、出発よ!」


「・・マリア、反対方向だよ」


「んふっ・・・・ナイスアシストよ、ハル」


 いきなり南へ歩き始めたマリアを注意し北へ歩かせる。恥ずかしそうに歩くマリアの後ろをついて行く俺は、今まで見ることのなかった、彼女達の背中を見守りながら歩くのがとても新鮮だ。


 少しだけ迷ったが、帰りに影響のない範囲だったため、このまま街の北門を通過し北の森へと続く整備された街道を2時間ほど歩き昼前くらいには、薬草がある森に辿り着くことができた。



「ここで食事を摂って昼から行きましょう。ハル、野営キットのイスお願い」


「いいよ」


 俺は全員分のイスを出し並べた後に調理キットを出して、早めの昼飯を作ることにした。


 調理中に何組かのパーティーが横切って行ったが、俺が調理している姿を見て驚きながら去って行く。


「何が珍しいんだろ・・・・」


「冒険者パーティーが外で食事の調理をしているからよ」


 隣に座っているアルシアが教えてくれる。どうやら野外で調理するのは、大部隊を率いた騎士団や王族ぐらいらしい。


 小規模の騎士団は確実に携行保存食で行動し、帝国冒険者も同じで干し肉や保存の効く食料を個人が持って行動するようだ。



「へぇ〜みんな大変なんだねー」


「ハルが常識を逸脱しているんだ」


 アルシアに突っ込まれてしまい思わず皆で笑ってしまった。


 昼食は少なめで簡単に済ませて出発の準備を整えた後は、マリアの指示により移動を再開した。


「・・・・アルシア、もうちょっと左の方に向かって」


「こっちか?」


「そうそう、そのまま」


 マリアの誘導で途中に俺より背丈のある茂みに入ってしまい、一時的に逸れてしまったが気配探知スキルを使い合流することができ、なんとか目的地の草原に出ることができた。



「ここの草原の中心にある草が、今回採取する薬草よ」


 マリアとアルシアが草原を走り薬草の収穫を始める。2人が収穫に集中できるよう、俺とシェルで周囲を警戒するが、気配探知スキルを発動していれば全員で採取していても支障は無いがマリアのために黙っておくことにした。


 魔物が周囲を彷徨くこともなく、ゆったりとした時間をシェルと野外イスに座り過ごしている。


 正確には、シェルは暇すぎて爆睡しているため実質1人で警戒に当たっている状況だ。


 少し離れた場所で2人が夢中になり丁寧に摘み取っている姿を見ていたが、かなり時間を消費していることに気付いていないため声をかけないと暗くなるまで摘み取りそうな感じだった。


 このままだと、街の閉門時間ギリギリかもしれない。



「マリア〜そろ帰らないと・・」


「「終わったー!!」」


 両手を上げて抱き合い喜んでいる2人は、確実に帰る時間のことを忘れている。


「これ以上、ここにいると閉門時間に間に合わないぞー」


「えっ?もうそんな時間なの?」


「そうじゃ、マリア達が楽しんでいる間に時間は経ったのじゃ」


「ハル、シェル・・ゴメンなさい」


 マリアは深々と頭を下げて謝罪する。


「さぁ、早く帰ろうリーダー。このままだと野宿になっちゃう」


 マリアは急ぎ足で森を駆け抜け歩いてきた街道を目指している。


 途中で行きにハマった茂みに遭遇し、パニックになりかけてしまったため、風魔法ウィンドカッターを進路上に放ち視界を確保して進むべき方向を示してやる。


「ありがとう、ハル」


「リーダーを助けるのもメンバーの仕事だよ」


 ガサガサガサッ


「やっと抜けれたわ!」


 前方でマリアの歓喜の声を聞いて進み出ると、森が終わり街へ続く街道があった。 

 

 だけど、ここからが時間との勝負だ。


「リーダー、まだ喜ぶのは早いぞ!こっから時間との勝負だ」


「うん。そうだったね・・急ぎましょう」


「「はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」」


 だいたい2時間かけて歩いた道を走って移動している。マリアとアルシアの息が上がり始め、走る速度も落ちてきた。


 シェルは・・さすが神獣フェンリルだけあって涼しい顔をしている。


「「ゼェ・・ゼェ・・ゼェ・・ゼェ・・」」


 呼吸が乱れ疲れ切っていたマリアとシェルだったが、なんとか立ち止まることなく走り切ることができた。


 きっと普通の王女様なら数分で根を上げていただろう。


 門が遠くに見えた頃に、微かに動く人影が見えた。


 そして、閉門時間ギリギリで門に辿り着いた俺達に昨日出会った門兵が声をかけてくる。


「最終は帝国から来た冒険者パーティーか?」


「あぁ、なんとか閉門時間に間に合ったよ」


「森で野宿と宿で泊まるのは、天と地以上の差があるからな」


 ギルドカードを提示して、活動登録しているため帝国冒険者でも通行料は無料とのことだった。


 そして、マリアとアルシアの呼吸を整えさせながら通りを歩き、昨日泊まった宿屋へ向かう。


 そして宿屋に入ると繁盛している時間帯のせいか、受付で昨日の猫人族少女がパッチリと目を開けていたため視線が重なる。


「今夜も部屋空いてる?」


「・・・・・・」


 何かがおかしい。姿勢良く受付にいるが、瞬きをしていないし少しも動かない。


「もしもし?」


「・・・・・・」


「まさか、目を開けたまま寝てるのか?」


 俺は振り向きマリア達に視線を向けるが、そんなバカなと言いたそうな表情をして受付にいる少女を見ている。


 無性にイタズラをしたくなった俺は、もう1度彼女に声をかけてピクリとも反応しないことを確認して、右手人差し指に雷魔法ライジングショットを彼女のネコ耳の綺麗な三角形の頂点にスパークさせた。



 パチンッ!!


「ンギャニャッ!」


 ドサッ


 蒼白い小さな雷が、ネコ耳に落ちた衝撃で乾いた音が響き渡ると同時に変な声を漏らしながら全身を仰け反らし硬直し床に倒れ込んでしまった。


「おはよう。今夜も4人泊まりたいんだけど」


「・・くっ殺・・」


「ん〜その言葉、何か違う気がする。もっとピッタリな人がいるはずの気がする」


 猫人族少女は、床に寝転んだまま視線を俺に向け力無く口を開く。


「・・き、昨日と同じ部屋・・だから同じ金をとっとと払っちまえ。もう痛いから勝手にするんだニャ」


「ねぇ、君の名前は?」


「ん?コロネ・・・・。金はソコに入れて行くニャ」


 コロネは、ガクガク小刻みに震える両足で立ち上がり受付カウンターに部屋の鍵を置いて奥に行ってしまった。


 とりあえず、昨日支払った金額と同じ額を箱に入れて鍵を手に取り部屋に向かう。


 部屋に入った後は、明日の予定を皆で考えながらゴロゴロしていたが1つもまとまらずに時間だけが過ぎていき、俺は何も考えずボソっと呟く。


「とりあえずさ、依頼報告もあるし朝から冒険者ギルドに行ってみない?なんか新しい情報もあるかもだし」


「・・そうね。近況の王国も知りたいわ」


 マリアが俺に同意し、気になっている王国の情報収集をしたいようだ。


「私もいいぞ。旅に情報は重要だからな」


 アルシアも同意してくれた。


 シェルは窓際に座り外を眺めていて答える気はないようだった。


「よし・・明日は冒険者ギルドへ行ってから決めよう」


 寝る前に生活魔法クリーンをかけてスッキリした後にベッドで横になり部屋の灯りを消して眠りにつくことになった。






 ・・・・なった。なったハズなのに、部屋を暗くして秒も経たないうちにシェルが俺の布団へスムーズに潜り込んでくる。



「ちょっ・・お前っ」


「んひひ良いではないか。昼間はマリアとアルシアに譲っておるのだ」


「マジかよ・・そんな協定がいつのまに・・」


「そうじゃ・・だから、な?」


 グリグリと体を押し付けてくるかのように押し込まれ、シェルが側に寄ってくる。


 俺の位置からでは、窓から差し込む月明かりが逆光となりマリアの顔が影になり視線がどこに向いているのか、それとも寝ているのかわからない。


 けど、ご不満な気持ちが俺の意識に流れ込んでくる。


「マ・・マリア?さん・・」


 マリアは俺の問い掛けの後に寝返り背中を向けて動かなくなった」


 そんな状況を知らないシェルは、俺からの刺激でスイッチが入ったのか動きが激しくなり1人で盛り上がり始めたため、強烈なデコピンをお見舞いして強制的に意識を刈り取ることに成功する。


 バチンッ!


「ぐひゅっ!!」


 脱力し動かなくなったシェルを抱き抱えて、シェルが寝る予定のベッドに放り投げて放置し、自分のベッドへと戻り横になりながら布団をかけると同時に背中に誰かがくっついてきた。


「・・シェル、もう目を覚ましたのか?次は手加減しないぞ!」


 そう言いながら寝返り、シェルに触れる。


「あっ」


 声を聞き、顔を見るとシェルではなかった。


「マ・・マリア?」


「ハルゥ・・」


 マリアは甘い声で俺の名前を呼ぶとギュッと抱き締めてくる。さすがに拒否する理由が無いため優しく抱き返す。


「ん・・」


「王女様が男の布団に潜り込んでくるなんて危ないですよ」


「・・ばかっ」


 そう言うとマリアは、優しく両手で俺の顔を包み自分の胸に押し付ける。マリアの柔らかい感触が寝間着越しに伝わり優しさに包まれている感覚の俺は呟く。


「マリアのいい香りだ・・なんだか安心するよ」


「・・もう」


 そしてギュッとさらに胸に押し付けたマリアは、ゆっくりと口を開いた。


「もう・・私の心はあなたで満たされてしまったの。でも・・あなたを独占できないことも知っているの。あと少しで、あなたとの旅が終わるそのときまでは、王女ではなく・・1人の女の子としていたいの・・お願い」


 マリアは抱き寄せていた俺の顔を解放し、視線をあわせて見つめる。そのまま何も言わないマリアは顔を近付けて唇を重ねた。



「んっ・・」


 マリアはそっと微笑する。


「私の初めての1つをハルに捧げちゃった・・」


「マリア・・」


「この先は、2人がいるからダメよ。もちろん心の準備はできてるから・・ね?」


「キスまでならいいかな?」


「んっ」


 俺はマリアを強く静かに抱き締めて何度も唇を重ねた。途中で、俺とマリアの状況を2人は気付いているが反応しないようにしてくれている。


「マリア、ちょっと外に出てみないか?」


「え?・・今から?」


「あぁ」


 隠密スキルを発動し、マリアをお姫様抱っこした状態で窓から部屋を飛び出し隣の家屋の屋根に着地して、寝静まった街の月明かりの下を屋根伝いに移動し一番高い屋敷の屋根で止まりあぐら座りをして足の隙間にマリアを対面で座らせる。


「ハル、どうしてみんな私達に気づかないの?」


「隠密スキルを発動しているからさ」


「そのスキル初めて聞いたわ」


 驚いた顔で見上げ見つめている。


「このスキルは、発動した人間を認知することが不可能になる阻害魔法みたいなものさ」


「対抗手段は?」


「今のところ無いよ」


 さらにマリアは目を見開き驚き呟く。


「それじゃ・・強固な王城の警備も無力なのね」


「まぁ、そうなっちゃうね」


「反則だわ」


「なんかゴメン」


 そう言いながらマリアを見つめ、軽くキスをする。


「でも、そのスキル保持者がハルで安心したわ」


 俺の足の間にマリアのオシリがスッポリとハマり、腰に両手を回して抱き合っていると、なんかとても相性が良いんだなと感じてしまう俺がいる。


「このスキルがあれば、王城へ送り届けた後でもマリアにいつでも会えに行けるしな」


「ホントに?」


 パァッと笑顔になったマリアは、急にとんでもないことを告白した。



「それなら、ここで私専属の騎士にハルを任命するわ」


「はっ・・光栄です。王女マリア様」


 クスっとマリアは笑う。


「王女とはいえ、継承第3位の女だから権威なんてないわ」

 

 俺はスッとマリアを立たせて、その場で片膝をつき顔を上げて真剣な顔で愛用の片手剣を差し出し口を開く。


「継承権の順位なんて関係ないさ。俺は、王女マリアの剣となり盾となり影の騎士として命がある限りお守りする所存ですよ」


 マリアは俺の片手剣を受け取り立たせる。


「ありがとう、ハル・・愛してる」


「俺も愛してるよ・・マリア」


 

 それから言葉を交わす事はなく密着した俺とマリアは、月明かりの下で甘い時間を一緒に過ごした。


 夜が開ける前にマリアは眠りについたため、揺らさないよう慎重に移動し宿屋へ戻り、マリアをベッドに寝かせ布団をかけ寝顔を見て頬にキスをして部屋のソファに深く座り今後の予定を考えていると、いつの間にか意識を手放していた。



 ん・・・・



 意識がだんだん覚醒して目を開けると、並んだベッドが視界に入る。どうやらソファで眠ってしまったみたいだ・・そして立ち上がろうとした瞬間に太ももに何かが乗っていることに気付き下を見る。


「お・・おぉ?」


 左太ももにシェル、右太ももにアルシアの頭が器用に乗せて寝ている。その2人の横顔を見ながら綺麗な銀髪と黒髪を優しく撫でてから、耳を優しく摘まんでぷにぷに弄ってピクピク動く反応を楽しんでいると、マリアが起きて俺の前に立っている。



「おはよう、ハル」


「おはよう、マリア」


 マリアは、俺の足元で寝ている2人をジッと見つめている。


「アルシア!シェル!起きなさい!」


 マリアは容赦無く2人の頬を叩き続け起こそうとしている。



 バシッ!バシッ!


「いっ・・痛いぞマリア!・・朝はもっと優しくだ!」


「そうじゃ!寝起きビンタは卑劣じゃぞ!もっとじゃ・・いやその、昨夜のハルのようにだな・・ぐっへっへっへ」


「なによなによ!2人とも狸寝入りしていたクセに!」


 アルシアとシェルが嘘寝だったことを見抜くマリアの洞察力に驚いた俺は、呟いてしまった。


「2人とも起きていたんだ・・」


 マリアの連続攻撃を最初は素直に受けていた2人だが途中から両手で余裕で逸らし始めて立ち上がり、支度を始めるようだ。


 俺は、アルシアとシェルが支度をする様子をソファから眺めていると、躊躇いもなく寝間着を脱いで下着姿になった後にいつもの服を着ている。



「2人とも純白なんだ・・」


 そう呟くと、不意に視界が左上へ強制的に向けられるとマリアの顔が目の前にあった。


「女の子の着替えを見ないの!」


「・・だってさ、俺がいるのに・・」


「だってじゃない!」


「そーいえば、マリアも白だったような・・」


 ムギュウ!!


「思い出さなくて良いの!」


「・・ふぁい」


 頬を強く挟まれ喋るのを強制的に止められてしまい、睨むマリアを見てそのまま静かにすることにした。



 


 そして、全員の支度が終わり今日の予定も決まってない俺達は、とりあえず冒険者ギルドに向かった。








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