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7章 王国マリア編 2話 リーダー


「閉門時間が迫っているぞー!」


 閉門ギリギリの時間で辿り着いた街の門兵にアルシアがギルドカードを見せていた。


「帝国からの冒険者か?珍しいな・・だいたい商人ばかりなんだがな・・」


 門兵が荷台に来て、俺達全員のギルドカードを確認し通行料銀貨5枚を徴収した後に笑顔で迎えてくれる。


「ようこそ、スパイル王国国境都市ノスガンへ!」


 やけに笑顔の門兵達が不気味に感じ足早に通過し、門近くの馬車預かり所で馬車を預け通りを歩いて宿を探しているいる途中に気になることを思い出した。



「・・なぁ、マリア」


「なぁに?」


「この街だと、マリアを知っている人間がいるんじゃないか?」


「ん〜〜大丈夫・・かな?この街は、来たことあるけど出歩いたことはないし・・」


「まぁ一応、フード被っておきなよ。王都から来ている人間いるかもしれないしさ」


「そうね」


 隣を歩くマリアに白のフード付きコートを渡し、素顔を見にくくさせているとアルシアが指を指し立ち止まる。


「ハル・・あの宿はどうだ?」


 アルシアが指差す方向には、猫をあしらった看板があった。


「宿屋ニャンちっ亭か・・・・宿主のネーミングセンスを疑うな」


「ならば、他の宿屋にするか?」


「・・いや、ここにしよう」


 俺を先頭に宿屋に入ると、正面の受付に猫人族の黒髪少女がヨダレを垂らしうたた寝している。


「あの〜すいません・・」


くぴぃ〜


「今夜、泊まりたいんですけどぉー」


すぴぃぃ〜〜


「・・もしも〜し」


 全然起きる気配のない彼女の顔に、アイテムボックスから出した濡れタオルで優しく覆ってあげる。


フゴォッ・・グゴッ・・ンゴゴッ・・


 濡れタオルが顔にベッタリ貼り付き呼吸困難に陥り、寝起きパニック状態のまま両手を宙にバタつかせている。


「アレは、ネコ泳ぎ?」


「「「・・・・・・」」」


 マリア達が哀れな目で少女を見た後に俺をジト目で見る・・早く助けてやれと言わんばかりの表情で。


 俺は、仕方なく濡れタオルを取ってやることした。


プハァッ!!・・ヒューハァーヒュー


 涙目で必死に呼吸をする猫人族少女の顔を見て、少しやりすぎたかな?っと思い呟いた。



「今晩4人で泊まりたいんですけど」


「殺す気かニャー!」


「部屋空いてますか?」


「死ぬとこだったニャー!!」


「料金いくらですか?」


「ワタシじゃなきゃ死んでるニャー!!!」


「・・・・ダメだ。このネコは言葉が通じないみたいだから、他の宿屋にしよう」


 俺は振り向き3人に伝えると苦笑いしている。すると、視線が俺の後ろへ移動したことに気付くと同時に背後から殺気をぶつけられたため振り向くと猫人族少女が物凄い形相で全身のバネをフルに使い強烈な猫パンチを繰り出してきていた。


「んっっニャーー!!」


「うおっ・・猫パンチ!?」


 不意打ちを寸前のところで躱した俺は、目の前を通りすぎる黒く細長い尻尾を右手で掴み高く掲げると発狂する少女の声が宿屋内に響き渡る。


「ンギャー!! 痛いニャ! 放すニャ!」


「・・あっゴメン」


 ドスンッ



 パッと尻尾を掴んでいた手を放すと床に落ちて座り込み、痛めた尻尾を撫でながら俺を睨みつけ口を開く。


「最悪なヤツだニャ・・いったい何のようかニャ?」


「・・・・だから、泊まりたいんだけど」


「1晩銀貨8枚だニャ・・4人なら金貨3枚と銀貨2枚だニャ」


 とりあえず、1泊分の料金を支払い部屋の鍵を受け取り2階へ行こうとしたら階段手前で呼び止められる。


「夕飯はどうするニャ?」


「あるんだったら食べたい」


 猫人族少女は、ニヤっとする。


「・・あるよ。別料金で1人銀貨1枚ニャ」


 銀貨4枚を追加で支払い部屋へ向かう。部屋は、帝国の宿屋と基本的に変わらないが清潔感は王国の方が上だった。


 部屋に4つ並ぶベッドの1番奥でうつ伏せになり、くつろいでいると背中に誰かが無言で乗って来る。


「ん?・・シェルか」


「うむ。久しく一緒に寝てないから、1番乗りできたのじゃ」


「おも・・たくはないけど・・まぁいっか」


 すると隣のベッドが沈み揺れたのが視界に入り視線を向けると、マリアとアルシアがジッと見ているため手招きすると嬉しそうにベッドに乗ってきて4人で戯れあっていると、部屋のドアをノックする音がした。


 コンコンコン


「お客さん、夕飯の時間ニャ」


「わかった・・今行くよ・・」


 3人をベッドから静かに下ろし乱れた服を整えさせてから部屋を出て1階の食堂に移動する。


 初めて目にした王国の肉料理は香辛料が絶妙に効いていて、満腹まで食べた俺達は部屋に戻り何事もなく朝を迎えた。


 スッキリと目覚めた俺は宿屋で朝食を食べた後に、あの猫人族少女から冒険者ギルドの場所を聞いて、初めての王国経営の冒険者ギルドへと向かうことにした。


 朝の街を歩きギルドに向かう途中に、数組の冒険者パーティーとすれ違ったが帝国と違い若い亜人族が混じっていて、みんな首に黒い首輪をしている。


「なぁマリア、亜人の子達はなんで黒い首輪をしているんだ?」


「アレは、奴隷の印なの」


「奴隷?奴隷を戦わせるの?」


「・・そう。盾役や荷物持ちをさせて、死んだら新たに奴隷を買うの」


「王国は、それが普通なの?」


「おとぅ・・国王が認めているから・・ゴメンなさい」


「・・・・・・」


 マリアからそう聞いて、俺は反応せず黙り込んだまま先頭を足早に歩く。


 俺から遅れないよう後ろから付いて来る3人も黙ったままで、そのまま王国冒険者ギルドの建物の前に到着し見上げる。


「ここが、王国の冒険者ギルドか・・・・」


「・・ハルゥ」


「みんな入ろう」


「あっ・・」


 すぐ後ろに立つマリアに呼ばれたが、なんだかモヤモヤした気分の俺は無視してギルドの建物に入って行く。



 扉を開けて中に入り立ち止まり見渡すと、右に窓口が並び冒険者達の列が出来ていて、その反対の左側は酒場が併設されているが、朝の今は営業時間外で席に座る冒険者達が雑談をして盛り上がっている光景だった。



 すると、袖口をクイッと引っ張られた俺は右へ振り向くと、マリアが涙目で見上げている。


「どうしたマリア?」


「ぅぅ・・怒ってる?」


「ん?何が?」


 袖口を強く握っている手が少し震えているように見えるマリアを見て、フード越しに頭を撫でてやる。


「マリアに怒ってないさ。ただ、亜人の扱いが気に入らなかっただけだから」


「・・・・うん」


「おっ?ハル、あそこの人集りはなんじゃ?」


 シェルが見る方を見ると、何やら掲示板の前に冒険者達が集まり眺めている光景があった。


 ここからではわからないため、近寄り掲示板に貼り出されている記事を読もうとしても背の高い冒険者が邪魔して読めないため隙間から顔を覗かせて頑張っていると冒険者たちの会話が耳に入る。



「へぇ〜勇者様達は、西と東の地下ダンジョンを攻略したんだってよ」


「スゲェな・・やっぱり同行している冒険者パーティーの助力もあるのか?」


「あぁ、同行しているパーティーって美少女獣人シスターズだろ?」


「そうそう。なんだか、その美少女獣人の主人が行方不明になってしばらく経った頃から勇者様達と一緒に同行するようになったらしいぞ」


「マジか?あの金髪と青髪の美女だけじゃなく美少女獣人の子達も、勇者様のハーレム要員なのか〜」



 そんな会話が聞こえた俺は、勇者様のハーレムを羨ましく思いながらこの場を離れて受付窓口へ移動し俺の番になった。



「あの、帝国から来た冒険者パーティー代表の者でして、王国内でも冒険者活動したくて申請に来たのですが」


「あっはい。それでしたら、こちらの紙に必要事項を記入して帝国ギルドカードを申請者分提出してください」



 肩まで伸ばした茶髪の受付嬢はが慣れた手付きで事務処理をしてくれたため、短時間で俺達は王国内で冒険者活動が可能になった。



「ハルさん。王国での冒険者活動は各地のギルドで冒険者登録をする義務がありますので、このノスガンから他の都市へ移動した場合は、活動前に管轄ギルドで活動登録を忘れずに済ませてからに活動するようにしてくださいね」



「ありがとう、気をつけますね」



 提出したギルドカードを返してもらい、そのまま依頼掲示板へと移動し依頼票を眺めていると、一緒に見ていたマリアが薬草採取をしたいと言ってきた。


「今日は試しに薬草さいしゅの依頼を受けてみよう」


 アルシアとシェルが同意してくれたので、今日は薬草採取をすることに決定した。マリアに依頼票を剥ぎ取らせ受付窓口で受付嬢に渡し受理手続きを済ませギルドを出た。



「今日の薬草採取のリーダーはマリアにするよ」


「えっ?私が?」


「そう・・だから指揮をしてパーティー活動をしよう」


 突然の臨時パーティーリーダーとなったマリアは驚いていたが、アルシアとシェルが賛成したため多数決によりマリアのパーティーリーダーが決定した。







 

 

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