6章 帝国編 18話 アルシアとの旅・・からのマリアと買い物
酒場からの翌朝起きると、二日酔いで動けないと訴えるアルシアとシェルを放置して、マリアと2人で今日は買い物に出掛けることにした。
「ハル、何を買いに行くの?」
「この先の旅で必要な消耗品と武器屋にでも寄ってみようと思ってね」
「ふ〜ん」
大通りにある武器屋に入ると、前を歩くマリアはキョロキョロと見渡しながら店内を歩いている姿を見ながら、気に入った武器があったら買うよっと伝えると、嬉しそうに短剣が並んでいる売り場へ一直線に向かった。
俺は目新しい物があるか探していると、漆黒で手のひらサイズのナイフに釘付けになりカウンター越しにいる店主に声をかけた。
「マスター、このナイフは何に使うの?」
そのナイフを手に取りマスターに見せると、嬉しそうな顔で教えてくれる。
「それは・・スローイングナイフだ・・」
「スローイングナイフ?・・・・あぁ、投げナイフね。試しても?」
「いいぜ。そこの壁に書いてある十字に向かって投げてみな」
シュッ・・トンッ
スローイングナイフが壁の的に突き刺さると乾いた音が店内に響く。
「・・まぁまぁのセンスだな」
投げたナイフは、十字の右上に突き刺さっている。
「も・・もう一回やる」
マスターは、ニヤつきながら了承してくれたため、もう一度投げてみるが結果は同じだった。
「練習したら、そこそこ上達するかもな・・頑張りたまえ少年よ」
「くそ・・俺には向いてないな・・」
「どうしたの?なんか音がしたけど・・」
マリアの声に俺は振り向くと、奥からマリアが短剣を2本大事そうに抱えて戻って来る。
「いやぁ・・珍しい武器を見つけたんだけど、俺には向いてなくてね・・」
マリアは持っていた短剣をカウンターに置いてスローイングナイフを手に取り眺めている。
「ナイフにしては小さいね・・解体用?」
「いや、スローイングナイフって言うんだ。あの壁に十字が書いてあるだろ?あれに向かって投げてごらん」
マリアは、スローイングナイフを右手に持ち自然な構えでナイフを投げる。
シュッ・・トンッ
「おぉ、お嬢さん良いセンスだ。彼よりもいいぞ」
マリアが放ったナイフは、十字のど真ん中に突き刺さっている。
「本当に?まさか、あなたに勝てることがあるだなんて・・」
「どうだい?買ってみるかい?お嬢さん」
「欲しいけど・・」
「マスターこれ全部買うよ、あとそのナイフホルダーもね」
「まいどありっ!」
俺は、マリアの持ってきた短剣とスローイングナイフと5本収納できるナイフホルダーを金貨15枚で購入する。
「ありがとう、ハル」
「どういたしまして。そうだ、マリアこっちに来て」
スッと寄って来るマリアに対し俺はしゃがみ、さっき購入した黒革製ナイフホルダーをマリアに手渡す。
「コレをどうするの?」
「マリアは右利きだよね?」
「両方同じように使えるけど、右をよく使うかな」
「右足の太ももにつけてみて」
今日のマリアは買い物目的で街に出ているため、白色のワンピースを着ている。
「えっ?ここで?」
戸惑い赤面するマリアを見て、俺はドキドキ感を隠せない。
マリアは俺をチラッと見た後に、ゆっくりとワンピースを捲り色白の太ももを見せながらナイフホルダーを付けてくれる。
「そしたら、ここにスローイングナイフをホルダーにセットしてと・・」
「んぁ・・ちょっと、こんな場所で・・」
俺の指先が太ももに触れるたびに内股になるマリアの反応を気にすることなくスローイングナイフをセットし終え立ち上がる。
「重くない?」
「慣れたら気にならないくらいの重さよ」
マリアは立ち上がった俺によく見えるようにするためか、さっきよりめくり上げてナイフホルダーを俺に見せているため白い下着がチラッと見えてしまっている。
「くぅ〜なんかセクシーだねマリア」
「バッ・・バッカじゃないの!」
バサっとめくり上げていたワンピースを下ろして睨んでくるマリアを見ながら感想を伝えた。
「丸腰に見えて実は護身用ナイフを持ち歩く王女様であり、暗殺者にもなれそうだね」
「そんなことしません!」
それから、新しく買ったマリアの短剣を俺のアイテムボックスに収納して武器屋を出ると次の目的である消耗品を買うため商店に向かう。
この要塞都市で1番大きいと教えてもらった商店に入ると、確かにいろんな種類の物が売り並べてあった。
まずは、毛布と魔物除けグッズの買い足して、携行保存食と野営キットのテントとかを購入し見つけられなかった衣類を買うため違う商店へ移動して、マリアはアルシアとシェルの分を購入する。
「いったん宿屋に戻ろうか?」
「そうね・・2人が起きて待ってるかもしれないし」
それから宿屋に戻り部屋のドアを開けても、朝から何も変わった状況はない。
もう昼過ぎだと言うのに2人は乱れた寝間着姿で、シェルなんか頭を床につけて今にもベッドから落ちそうな姿勢で寝ている。
結局その日の夕方に起きたアルシアとシェルは、スッキリした顔で食べれなかった2食分を取り戻すかのように宿屋の食堂で食べまくっている。
「・・2人とも、そんな一気に食べると腹痛くなるぞ」
「そうよ・・もっと落ち着いて食べないと」
「「・・・・・・」」
俺とマリアの忠告を無視したアルシアとシェルは、予想通り明け方に腹が痛くて眠れないと寝ている俺を起こし布団に潜り込んでモゾモゾともがき苦しんでいる。
このままだと睡眠を邪魔されて朝まで付き合わされると思った俺は、仕方なく2人の腹に手を当ててヒールをかけて痛みを和らげてやると、そのまま俺の布団で眠ってしまった。
「せ・・せまい」
気づけば朝になり寝たような寝てないような、スッキリしない気分のまま起き上がり3人を起こして支度をさせる。
「今日でこの街を出て王国に向かうから」
俺の気持ちを知っていたのか、3人は驚くことなく返事をして身支度を整え終えると俺の側にやって来る。
「よし、行こうか」
長く世話になった宿屋の部屋の鍵を宿主に返して、アルシアの馬車を引き取りに行き大通りを進み門へと目指す。
もちろん、通り慣れた門の反対側にある国境門へ向けて。




