6章 帝国編 17話 アルシアとの旅・・からのマリア新スキル覚える
「・・来ないのか?それなら、俺から行くぞ!」
「はぇ・・」
アルシアから受け取った木剣を構えてから動揺しているマリアへ飛び込む。
俺が相手だという想定外の出来事にマリアから気の抜けた声が聞こえたが気にせず腹部に斬撃をくらわせて吹き飛ばした。
俺の手抜きした斬撃をくらったマリアが鈍い音を出しながら人形のように左へ吹っ飛んで行き、数メートル地を転がったところで止まりピクリとも動かない。
「立ち上がれマリア!」
大声で呼びかけながら近づき追撃の猶予を与えたが起き上がらない彼女の背中を蹴り上げ、宙に浮いたマリアの体に上段から木剣を叩き込む・・もちろん打撃力はそれなりに抑える。
ドゴッ!!
「ぐあぁ!!!」
地面に背中から叩きつけれれたマリアの呼吸が一瞬止まり、空気を吸おうと必死にもがいている。
「たった2撃でこのザマか?」
俺は、少し離れた位置でマリアを待つ。すると俯き震えながら立ち上がったところで俺を見る目は、しっかりと俺を捉えていて戦意を失っていない事に安堵する。
「ただ立っているだけか?」
「・・あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ」
短剣を構えたマリアが纏うオーラが変わり、1段階上の力を出せるようになったように感じる。
シュ!
今まで見た事ない速さで俺に迫って来るが、俺から見ればよそ見しても対応できる速さだ。
そのままマリアの止まらない連撃を躱したり木剣で受け流したりしていくと、息が荒くなり動きもキレが無くなってくる。
マリアの動きを見ながら対処し、そろそろ体力の限界だなと思っているとマリアの呼吸がスッと整えられていたことに気付く。
シュッッ!!
「うおっ!!」
一気にマリアの動きが早くなり危うく1本取られそうになった俺は咄嗟にマリアの首元に打撃を与えて意識を刈り取ってしまった。
「やべ・・やっちゃった・・・・」
ドサッ
気絶したマリアは足から脱力して、膝を地面に付けた後に顔面から倒れ込む。
「ハル!なにやっているんだ!」
背後からアルシアに怒られた俺は、マリアに治癒魔法ヒールをかけて傷を治す。
「ごめん・・ちょっとやりすぎちゃったかも」
「かもじゃない!」
アルシアが気絶したマリアを抱き上げて馬車の荷台へ運んで行くのを見送り、ポツンと1人になった俺は、アイテムボックスから野外イスを出して座り遠くの山を見つめ呟く。
「・・やっちゃったなぁ〜」
ゆっくりと静かな時間を1人で過ごしていると、背後から誰かが近づいてくる事に気付くが振りむかないでいるとマリアの声がした。
「続きをやりますわよ!」
マリアは俺の前に立ちやる気をアピールしている。
「・・マリア?・・え?」
「だから、鍛錬の続きをやりますわよ」
「そ、そうですか・・それなら昼はスキルの練習をしよう」
「スキル?・・スキルに練習があるの?」
マリアは理解できない表情で俺を見る。
「あるよ。とりあえず座って」
なぜかマリアは背中を向けて俺の膝に座わったため、彼女の行動に驚きと足に伝わる柔らかいオシリの感触に動揺し声を出してしまった。
「マ、マリア・・さん?」
「なんですの?」
マリアは振り向き不思議そうな顔をして俺を見る。
「いや・・とりあえずスキル練習しようか・・」
「そうですわね・・できるものなら」
全くもって信じていないマリアの両手を握り、目を瞑るように伝えた。
「これからどうするの?」
「俺の気配探知スキルを発動して、マリアの体に情報を流して共有してみるからそれを受け入れてくれるかな?」
「・・わかりましたわ」
俺は気配探知スキルを狭い範囲に設定し発動してマリアにゆっくりと流し始めると、マリアの全身がピクッと反応する。
「んぁ・・なにかきましたわ」
「それを感じてみて・・どう?」
「・・わたしとは別の存在が近くに・・コレは、ハル?」
「そうだよ・・もう少し範囲を広げてみるね」
そのままゆっくりと捜索範囲を広げていき、馬車の荷台にいる2人を捉えられる範囲に設定した。
「あっ・・この2つは、アルシアとシェル?」
「正解だよ・・気配探知スキルの練習はここまでだね。次は・・」
『・・マリア・・マリア・・聞こえるかな』
「なんですのコレ!頭の中からハルの声が・・・・」
「パスが繋がったみたいだね。念話スキルだよ。俺をイメージしながら心の中で話してみて」
『・・る・・ル・・こえる・・ハル・・きこ・・ハル聞こえる?』
『聞こえるよ。安定してきたね。これで念話スキルの練習は終わりだね』
背中を向けて座っていたマリアは立ち上がり俺の方を向いて再び膝の上に座り笑顔を見せる。
「ハル!これは現実なの?・・信じられないわ」
「マリアが俺を受け入れてくれたから、できたんだよ」
そう言うと、マリアの顔が真っ赤になり口がパクパクしている。
「ぁぅぅぅ・・・・」
しばらく固まっているマリアを堪能した後に、そのまま抱き上げて馬車の荷台へと運び乗せこの日は街に帰る事にした。
要塞都市フェズドレイに入る頃にマリアは落ち着きを取り戻したが、なぜかチラチラっと俺に向ける回数が増えているように感じたが気にしないよう決めた。
馬車を預けて宿屋へ向けて歩いる途中に1つみんなに提案する。
「みんな・・今夜は久しぶりに酒場で飲まないか?」
3人が立ち止まり俺を凝視して、息を合わせたかのように反応する。
「「「・・・・さんせぇーーー!!!」」」
基本的に俺が酒を飲みたい時にしか酒場に行かないため、他の冒険者パーティーに比べ飲まないに等しいレベルのようだ。でも、3人から不満が出ることがない・・たぶん。
そのまま宿に向かわず、近くの酒場に入り夕食を兼ねる事になり、マリアが果実酒を注文し他はエールを注文した。
まだ陽が沈む前の時間帯だったため、酒場にいる客は少なめだ。
そのため、注文した物があっという間にテーブルに並べられ、それぞれがグラスとジョッキを持つ。
「それでは・・マリアの鍛錬が終わったと言う事で!」
「「「「 カンパーイーーーー!!!! 」」」」
アルシアとシェルは、競い合うようにエールを一気に飲み干して2杯目を注文している。
隣にいるマリアは、料理を楽しみながら自分のペースで飲んでいる。
この3人を見ながらエールを飲みながら、数日の滞在だけの予定だった要塞都市フェズドレイでマリアの鍛錬をみっちりしたため1ヶ月弱も滞在してしまっていた事に気付く。
でもその分、飛躍的に強くなったマリアとこそり鍛錬して強くなったアルシアなので結果的にはプラスとなったと言えるだろう。
もちろん、シェルとの密約的な依頼もあるためこれ以上の滞在は避けたいため近々ここを旅立つ予定だなと考えていると、マリアの心配する声が聞こえる。
「ちょっと2人とも・・飲むの速すぎよ!」
マリアがアルシアとシェルに注意するが、2人は聞く耳を持たずにどんどんエールを追加注文して大笑いしている。
「マリア・・アレはもうダメだ・・諦めよう」
「・・でも」
「2人が周囲に迷惑をかけそうになったら、首トンして眠らせるからさ」
「・・首トン?」
俺の言う首トンを知らないマリアが、コテっと顔を傾けて俺をみる仕草が可愛いと思った瞬間に俺は負けを感じていると。
アルシアとシェルが隣のテーブル席に座る屈強な男達に絡んでしまっていた。
「んぁ〜〜なんだぁ〜そのしけたツラは?」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「あっ・・やめろ!」
立ち上がり隣に行く2人を捕まえようとしたが手が届かずに隣の席に近づき仁王立ちしてしまった。
「・・すいません・・もう帰りますんで」
アルシアとシェルに絡まれた男達は、苦笑いで対応してくれたのが助かった。
このまま乱闘になれば、先に絡んだこっち側が不利になってしまう。
「んあー!はなしぇー〜!
「邪魔をしゅるにゃー!!」
トンットンッ!!
「「んぎゃっ」」
これ以上の事態悪化を避けるため、仕方なく2人に首トンをして意識を刈り取ってやると間近で見ていた男達は、2人が抵抗できず崩れ落ちるのを見て目を見開き固まっている。
「どうも〜お騒がせしました〜あはははは・・・・」
アルシアとシェルを抱き抱えて店内を引き摺りながら出て、支払いをマリアに任せ店の外で待っていると支払い終わったマリアが出てくる。
「お待たせしました・・ハル、さっきのが首トンなのね」
「あぁ、アレで大概の奴は気絶するんだ」
「・・・・なんて恐ろしい技なの」
「じつは、マリアにもやったことあるんだよね・・」
「え?・・うそ・・・・」
アルシアとシェルを両肩に担ぎ歩いて宿屋へ向かうと、首トンをされた記憶の無いマリアは俺から離れて歩いてついて来る。
この距離は保たれたままで宿屋にたどり着き部屋のベッドに2人を寝かせつけた俺を離れてみるマリアの目が冷たかったことを忘れない・・。
(なんかゴメン・・・・マリア)




