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6章 帝国編 16話 アルシアとの旅・・からのマリア地獄の始まり


「あっ・・お疲れ様です」


「戻って来たよラティナさん。これの換金をお願いしますね」


 今日の換金窓口担当の受付嬢は、ラティナさんだった。


 彼女にマリアが討伐した魔物の討伐部位を渡して査定が終わるのを依頼掲示板を眺めながら待つ事にした。


「ハルさ〜ん!・・お待たせしました」


「全然、早かったよラティナさん」


「今回の報酬は、銀貨8枚と銅貨が24枚ですね」


「ありがとうラティナさん。それじゃ・・」


「・・はい。お気をつけて」


 都市に入る時に起きたマリアは、ギルド内を疲労困憊の身体にムチを打って歩いていたが、途中で力尽き座り込んだ。そこへアルシアとシェラが抱き抱えて外へ連れ出す。


 ギルドに出てから、俺はマリアをおんぶして通りを歩き宿屋へ向かう途中にアルシアがずっと気になっていることがあると聞いてきた。


「どうしたんだアルシア?」


「ハル・・ここ最近ずっと気になっていたんだが、討伐の収入に対して支出が大幅に多いような気がするんだが・・大丈夫なのか?」


「なんだ、そんなことか・・それなら全然問題ないよ。死ぬまで使い切れないほど持っているから」


「はぃ?」


 俺のことを残念そうな顔で見てくるアルシアを信じさせるために、アイテムボックス内に収納している一部を見せる。


「ほら・・見てごらん」


 アイテムボックスを覗き込んだアルシアが口を開けたまま少しの時間固まってしまった。


「ぬぁ・・なんだコレは・・こんな大金見たことないぞ」


「金貨が数百枚以上と白金貨も数百枚以上あるからね〜」


「こ・・国家予算並みじゃないのか・・・・」


「まぁ、それ以上あると思うよ。しかも定期的に増えてるような感じがするんだ・・きっとどこかの女神様のおかげかもな」



『やっと妾を思い出したのか?』


『その声は・・久しぶりだね』


『なんじゃい、その反応は・・感動の再会だと思うておったのに』


『冗談だよ。いつもありがとうな・・ナトリア」


『ンフッ・・当然なのじゃ。妾に任せるが良いのじゃ・・ん?また繋がったら連絡するのじゃ」


 そう言われた直後にプツリと切れた感覚を感じると、ナトリアの声が聞こえることはなかった。


「ハル?どうして笑っているんだ?」


 隣を歩くアルシアが覗き込んで聞いてきた。


「・・あぁ、ごめんごめん。昔のことを思い出していてね」


「ふ〜ん・・」


「うわっと」


 後ろを歩いていたシェルが突然抱き付いてきて耳元で呟く。


「ハル、今の神秘的なモノはなんだ?とても偉大なモノを感じ取れたぞ」


「さすが神獣鋭いな。シェルが感じ取ったのは、俺に加護をくれた女神様と話していたんだよ」


「なんと・・さすがハルだな」



 なぜか嬉しそうな顔をするシェルに抱きつかれたまま歩き、背中からマリアがうなされている声が漏れているのにシェルが気にする様子はない。


 3人でくっついた状態を見ながら横を歩いてアルシアも、なぜか飛び付いてきて右腕に抱き付いてしまう。


 そのお陰で彼女達の柔らかいモノが当たりドキドキしながら宿屋に辿り着いたのだった。




 翌朝、マリアの悲鳴で目が覚めた。


「どうしたマリア!?」


「な・・なんですのこのステータスは・・・・」


 横のベッドで驚いているマリアの側に寄り、ステータスを見せてもらった。


「なかなかのベースアップだね。これからは、俺とアルシアとで近接戦闘鍛錬を重視してやろうな」


「ぅぅ・・まだやるの?」


「もちろんさ」


 ガックリと項垂れるマリアはそのまま布団に沈んでいき死にそうな顔をして天井を見つめボソボソと口を動かすだけになってしまった。




「・・それじゃ、この場所ではじめよう」



 要塞都市フェズドレイから南へ行った場所に開けた草原にみんなで来ている。


 ここは、マリアの鍛錬場所に最適だと思い次の鍛錬場所と決めていたのだ。


「ハル、どんなことするの?」


 目の前に立つマリアは、短剣サイズの木剣を手にして不安そうに俺を見上げ聞いてきたので頭を撫でながら教える。


「そんな不安な顔しなくても大丈夫だって。とりあえず、アルシアと戦って見てくれ」


「ア・・アルシアと?」


 マリアは、ムリムリと言いながら青い顔で首を振っている。


 きっと、野営のときにやらかした時のアルシアの姿でも思い出したのだろう。


 俺はアルシアに片手剣サイズの木剣を渡し指示を出す。


「アルシア、最初はマリアの攻撃を受けて流す程度で良いぞ。でも、アルシアの判断で反撃をしても良いから。とりあえず最初はマリアの動きに合わせてくれ」


「わかった・・さぁ、マリアいつでもかかって来ても良いぞ!」


「言うの忘れてたけど、寸止め禁止な!ちゃんと打撃を与えるんだぞ」


「「えっ??」」


 普段は細剣を使うアルシアだが、マリアの鍛錬のため使い慣れていない片手剣で相手をしてもらう事にした。


 それは、実力差が十分あるためで取り回しが不利な状況でも対処できるだろうという公算だ。


 俺は、2人から離れた場所で野営キットのイスを出して座ると、馬車の荷台で寝ていたシェルが隣に来たためもう1つイスを出して座らせる。


「シェル、珍しいな起きてここに来るなんてさ」


「フム・・なんだか面白そうなことが起きそうだから見に来たのだ」


 しばらくすると、マリアは観念したようで短剣を構えてジリジリと間合いを詰めて伺っている。


 初めはアルシアの反撃を制限しているからマリアのタイミングで始められるが、寸止め禁止のため強打をまともに受けると骨が折れることを理解しているマリアは実戦的な動きに近い。



 シッ!


 地を蹴り一挙にアルシアの懐へ入り込むマリアに対し、アルシアは冷静に片手剣を振り対処し牽制しようとしたがマリアが寸前で左側へ移動し、アルシアが剣を振りにくい方向から右脇腹に渾身の1撃を与えようとする。


 マリアの動きを完全に見えているアルシアは素早く対応し、振り出された短剣が速度に乗り切る前にマリアに接近し片手剣の握り部分で迫る短剣を弾き後方へ下がる。


 バックステップで間合いをとったアルシアを追撃するマリアは3連撃を試みるも見事に全て弾き返されて隙を見せたところをすかさずアルシアは上段斬りでマリアの胸元に斬りかかる。


 それをギリギリのところでマリアは短剣でなんとか防いだが勢いを殺すことができず力負けして体を飛ばされ、背中を地面に叩きつけられたと同時にアルシアの持つ片手剣の切っ先がマリアの喉元に突き付けられて1回目が終了しそのまま数十回続けられた。



「はぁ・・はぁ・・はぁ・・思い通りにいかないものね・・・・」


 マリアは倒されたままアルシアを見つめ呟く。


「まだ粗削りだが良い動きだったぞ」


 そう言いながらアルシアは右手を差し出してマリアを立ち上がらせる。


「マリア、アルシアから1本取れるまで休憩無しだから頑張れよ」


 キッ!!


 マリアが俺を睨め付ける音が聞こえそうなほど睨んでいる・・まるで、あんたがやってみなさいと・・。

 

 ここはちょっと思い知らせる必要があると思い俺は行動を起こすことにした。

 

 マリアから離れた場所でイスに座っていた俺は、隠密スキルを発動しながらアイテムボックスから解体用ナイフを取り出し駆け出し、瞬時にマリアの背後に立ち喉元にナイフを突きつける。


「ぁぅ・・・・」


「俺の動きに対処できないんじゃ、まだまだ鍛錬が足りないな・・」


「・・ご、ごめんなさい」


「おぉ・・ハル、いつの間に・・」


 反応が対照的な2人に俺は口を開く。


「マリア王女様は、いつ何時・・暗殺者に命を狙われるかわからない存在なんだよ?俺ぐらいの動きにはついてこないとダメだからね」


 スッとナイフを喉元から離しアイテムボックスに収納し拘束していた彼女の左腕を解放し、離れるとマリアは振り向き抱き付いて来た。


「・・あんなのまだ見えないよ・・ムリだから」


「大丈夫さ。アルシアとの鍛錬が終われば、俺がみっちり教えてあげるから・・だから今は苦しくても何度でも立ち上がるんだ」


 そう言ってマリアの頭を撫でてやると、彼女は見上げて俺の精神を抉るような発言を大声で言う。



「それなら、最後まで責任を取りなさい!・・ハル。これは、王女命令よ!」



「!!・・わかりました、マリア王女様」



 それからマリアとアルシアの近接戦闘鍛錬は半月ほど続き、今ではマリアがなんとか競り勝つ回数が増えてきた。


 その間に暇なシェルは自分の探し物を探してくると単独行動をしていたが、基本的に街から出る時と帰る時間には俺たちの場所に戻ってきている。


 そして、とうとう今日から俺と鍛錬する日になる事をまだ知らないマリアは、いつものようにアルシアと楽しそうに会話を続けている。


 今日こそアルシアと全戦全勝すると宣言しているが、マリアは今日から俺が教えることを知らない。


 そして、長く使っている鍛錬場所に辿り着くと、マリアが振り向き宣言した。


「アルシア・・今日こそ私が勝つわ!いつでも、かかって来なさい!!」


 だけど今日のアルシアは、片手剣を構えることなく苦笑いをしながらマリアを見ている。


「どうしたのアルシア・・私は準備万全よ!」


 俺は、アルシアの背後から入れ替わるように動きマリアの前に立ち片手剣をマリアに向けて宣言する。



「マリア・・今日からの相手は、この俺だ!かかってこい!」


「ふぇ?」


 突然の俺の乱入に戸惑う声を出すマリアは、少し目を見開き俺を見つめ固まっていた。



「・・来ないのか?それなら、俺から行くぞっ!!」



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