6章 帝国編 14話 アルシアとの旅・・からの一方的な復讐
3人を置いて宿屋を出た俺は冒険者ギルドへ直行した。アルシアに酷い仕打ちを奴らは、赤髪男のパーティーリーダーで他に男2人と女2人編成だろう。そして、アルシアより上位ランクの冒険者。
ギルドに入ると昨日世話になった受付嬢ラティナを探したが姿が見えず、仕方なく目の前を歩いている受付嬢に声をかける。
「あの、すいません・・ちょっとお聞きしたいことがありあまして」
「はい・・あら、初めて見る冒険者ね?何かしら」
この受付嬢の名札にフレンディアと書いてあったため、名前で呼ぶことにした。
「フレンディアさん、登録パーティー情報について聞きたいのですが・・」
「ギルド規約で決められた項目以外は開示できませんよ?」
俺は頷いて、受付嬢フレンディアに開示手続きを申請することに決めた。そして、彼女が受付窓口から俺を呼びその窓口へ移動する。
「・・それで、どのパーティーの情報を開示請求されますか?」
「パーティー名はわからないのですが、赤髪の男がパーティーリーダーをしていて、他に男2人と女3人の編成ぐらいしかわからないんです・・」
窓口に座る受付嬢フレンディアの営業スマイルが消えて、不機嫌な表情を見せ溜息をついている。
「そんな情報で調べろと・・・・時間が必要なので、しばらく後方の席でお待ちください」
あれから3時間ほど経過した頃に受付嬢フレンディアが俺を呼ぶ。
「そこの人〜お待たせしました〜」
呼ばれた俺は、急いでう窓口へ向かう。
「どうでしたか?」
「・・はい。相手から開示拒否がありましたので、あなたに教えできる情報はありませんのでお帰りください」
「・・ちょ、どういうことですか?パーティー情報は、申請されたら開示されるはずでは?」
「ですから、相手先が拒否されましたので・・これで失礼します」
受付嬢は、一方的に話しを打ち切り奥の事務所へ入っていく。
「・・・・どういうことだ?」
ギルドからの正規ルートからの情報収集ができなくなった俺は、周囲の冒険者達から聞くしか方法が残されていない。そして、ギルド併設も酒場で昼間から飲んでいるパーティーに近づき些細なことでもいい情報が欲しくなった。
「ガハハハ、そんでな・・っていうことなんだよ!なぁ?・・・・ん?誰だあんちゃん?」
盛り上がっている男達だけのパーティーに混ざり込む。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
1人金貨1枚を渡し交渉する。
「おぉ!いいぜ!何が知りたい?」
「聞きたいのはな・・・・」
俺は、受付嬢フレンディアにも話した情報を告げると男達の1人が思い出したように口を開く。
「赤髪のパーティーリーダーって言ったらアイツか?・・ほら、こないだ金髪嬢ちゃんに絡んでた」
「・・あぁいたな!たしか、ノース・クレストっていうパーティー名でペトロっていう弱っちい名前だったな」
(ノース・クレストのペトロか・・)
「ありがとう、世話になった」
そう言いながら追加で金貨をもう1枚ずつ追加で渡し席を離れてギルドを出る。このまま奴を探そうと思ったが、今はアルシア達の側で護衛をした方が良いと判断し今日はこのまま宿に戻ることにした。
「ただいま」
「おかえり、ハル」
部屋に入るとアルシアが寝ているベッドの脇に座るマリアが出迎えてくれた。
「アルシアはどう?」
「ときどき、魘されてたけど今は比較的に落ち着いて寝てるわ」
「・・そうか」
ソファ寝転がているシェラを抱き起こして座り、マリアを近くに呼んでアルシアに起きた状況を説明する。
「昨夜、アルシアが何者かに襲撃されて瀕死の状態にまで追い込まれていたんだ。帰りが遅くて、気配探知スキルでアルシアを探して迎えに行ったら路地裏で血だらけで見つかった」
俺の話を聞いた2人から殺意が漏れ始めるのを感じ取れる。
「いったい誰の仕業なのじゃ?」
犯人を聞いたら、感情的に行動しそうなシェルを宥めて続きを話す。
「まだ推測の範囲をでないのだけど、きっとアルシアを追放したパーティーリーダーが中心となって凶行したのだろう。彼女の大切な細剣も奪われているし」
「なら、すぐにでも・・・・」
「マリア・・気持ちは理解できる。だが確固たる証拠がない。今復讐したら、俺たちが犯罪者になってしまう」
「どうすれば・・」
納得の出来ない2人は憤りを隠せないでいる。
「しばらくは、このまま相手の動きを静観してこの街で生活する。きっと向こうから接触してくるはずだからな」
2人は、すぐに行動を起こせないことに苛立ちを感じていたが、しばらく経つと落ち着きを取り戻し翌日の朝にアルシアが目を覚ましてくれた。
「おはよう、アルシア調子はどうかな?」
「おはよう・・そんなに違和感を感じないから、だいじょうぶはっ・・」
ベッドから立ち上がったアルシアの背後から、マリアとシェルが飛び付き抱きしめる。
「「アルシア」」
「マリア、シェル・・もう大丈夫だから」
2人の行動に困り果てた顔をするアルシアだったが、ときより嬉しそうな顔つきに変わっているのを俺は見逃さなかった。
「みんな、今日は武器を買いに行こう」
3人の動きが止まり、俺を見つめる。
「「「 えっ??? 」」」
「なんで、そんな顔するんだよ・・みんな自分の武器持ってないじゃねーか」
まだ外を出歩くのが怖いアルシアだが、長引けば今後の活動に影響が出ると思い強引に外へ連れ出す口実として武器屋へみんなで行く事に決めた。
支度を整えて宿屋を出て武器屋へ向かう。ちょうど中央広場に面した場所にあり、俺たちはそのまま店に入ると、カウンター越しに年配の男と視線が重なる。
「いらっしゃい・・何を探しに?」
「ど、どうも。短剣と片手剣と細剣を見に来ました」
「そうか、気に入ったのがあったら声をかけてくれ」
「はい・・わかりました」
店の男は、そう言って奥に入っていく。
「気に入ったのが見つかったら教えてくれ」
3人は、気になる武器を手に取り欲しい物を探し始め1人残された俺は、カウンター前のイスに座り選び終わるのを待つ。
なかなか決まらない3人にしびれを切らしたのか、奥から男が戻ってくる。3つの武器を手にして。
「なかなか決まらないようだな」
「・・はい。すいません」
「彼女達にコレはどうかと思って持ってきたんだが・・」
「えっ?はい・・お〜い!3人とも戻って来てくれるか?」
3人は、素直に戻って来て、俺の側で立っている。
「えっと、アルシアにこの細剣な・・マリアには短剣で、シェルには片手剣だ・・どうかな?」
俺から手渡された武器を手に取り素振りを始めて感触を確かめている。
「どうやら3人とも気に入ったようじゃないか?」
カウンターに肘をつき店員の男が話しかけてくる。
「そうですね・・あの顔を見れば、そう思いますよね・・いくらですか?」
「3本で金貨20枚だな」
「金貨2枚かぁ〜」
「20枚だからな」
俺は、3人に欲しいかと聞くと同時に頷いたため金貨20枚を支払い購入する事になり、ついでに運よく売ってあったマジックポーチを購入し3人に渡し私用品を収納するように伝えた。
「まいど・・ありがとな」
「・・・・どうも」
満面の笑みで見送られ外に出ると、もう昼になっていたためこのまま飯屋に寄る事になり、今回はアルシアが食べたいメニューがある店に入る。
飯屋の店員に席を案内され、皆が食べたい物を注文し全ての料理が揃って楽しく食事をしている時間に邪魔者が侵入して来た。
「おい!俺を探し回っているのはお前か?Fランク冒険者」
急に俺達の幸せな時間を壊す赤髪男の声が店の個室に響き、正面に座っていたアルシアが顔面蒼白になり手に持っていたフォークを床に落としてしまう。
「あなたは、誰なの?」
マリアが突如入って来た男を問いただす。
「ん?お前は・・あの時のガキか・・まぁ今は関係ない。そこの男に用があるんだ」
「今食事中なんだけど・・出直して来てくれる?」
男の眉間にシワがより、どうやら気が短いタイプのようだ。
「殺すぞクソガキ・・女の前だからって良い気になるな!黙ってついてこい!」
赤髪男が近くにいたアルシアの首元にナイフを突きつけ、俺を脅す。
「わかったペトロさんよ・・素直に従うから彼女の首にある物騒なモノをしまってくれ」
席を立ち上がり男の近くに歩み寄ると、ペトロはナイフをしまい店の外に出る。
「「「ハル・・」」」
「大丈夫だから心配いらないよ・・アルシア、すぐに戻るからここで待っていてくれ」
アルシアの肩にソッと手を置いて囁くと、俺の手に触れる彼女は黙ったまま頷き手を離した。
店を出てペトロの後をついていくと、人気の多い通りから外れて路地裏の人気の無い場所に案内され途中から不自然に背後から男2人と女1人がついてくる。
「・・どこまで行くんだ?」
「・・・・・・」
この街の闇のような、一般人が避ける場所でペトロが立ち止まり振り向く。
「お前が、アルシアのパーティーリーダーだな?」
細剣を抜刀し俺に向けて聞いてくる。
「・・だったら?」
「アルシアを追放しろ。俺が引き取る・・いいな?」
「無理だな・・俺の大事な仲間だ」
俺は踵を返し帰ろうとしたが、背後にいた3人が道を阻む。
「ペトロさん、これはどういう事なのかな?」
「低ランク冒険者が上位ランク冒険者に歯向かうと、どんな結末になるか知っていだろ?」
「・・さぁ、知らないな」
ザッ
地を蹴る音と同時にペトロが俺との間合いを詰めて、細剣で刺突してくるのを紙一重で右に躱しアイテムボックスから片手剣を取り出し構える。
「なっ・・てめぇ、治癒士ごとき後方職が剣を持つんじゃねーよ!」
「・・治癒士?俺は・・そうだな、魔法剣士ってことになるのかな?」
「どちらも成長しきれない、中途半端野郎か!お前を叩きのめした後に、あの女達を俺が可愛がってやるから安心して逝きな!」
ペトロの背後にいる女魔法士が、火魔法ファイヤーボールを放ち時間差でペトロと男剣士2人が連携し迫ってくるのが見えた俺は、回避行動を取らずに横一線に風魔法ウィンドカッターを放ちファイヤーボールを切り消す。
男女の悲鳴が聞こえ、飛散したファイヤーボールを避けてペトロ達を見ると衣服が焼け焦げた後があり立ち止まり罵声を飛ばしている様子だった。
「エミル!なんでお前の魔法が爆発するんだ・・しっかりやれ!」
「オリス、ラング!3人で仕留めるぞ!」
今度は3人で攻めてくるようだ・・大声で指示するから何をするのかわかり対処が取りやすいから考えものだなっと考えていると、3人が互いの位置取りを正確にわかっているようで事前に知らなければ、なかなか回避しづらい連携攻撃で上位ランク冒険者である理由も納得できる。
俺は、迫りくる3人の前で隠密スキルを発動し気配を消すと、突然俺を認識できなくなり足を止めてペトロ達は周囲を警戒し始めている。
「消えた!・・どこいったんだ?お前ら見えるか?」
「わからない・・ラング感知できるか?」
「・・ダメだ!全く反応がない」
「エミル、俺達の周囲に魔法をぶっ放せ!!」
ボン!ボン!ボン!ボン!
エミルという女魔法士がペトロの指示でファイヤーボールを連発し、あっという間に魔力切れで座り込んでしまい成果を得られなかったペトロはエミルに八つ当たりする。
「この役立たず魔法士がぁ!」
その隙にペトロに迫り細剣を持っている右腕を肘から斬り落とし離れると、細剣が地面に落ちた音で自らの右腕が切り落とされた事に気付き発狂する。
「腕がぁー俺の腕がぁーー!!」
血飛沫を周辺に飛ばしながら転がるペトロに2人の男が駆け寄る。
「ラング!ペトロを押さえつけろ!俺がポーションを傷口にかける」
「わかった!ペトロ!大人しくしてくれ・・」
2人がペトロの手当てをしている間に座り込んだままの女魔法士の隣へ座る。
「・・エミルさん」
「だれ!」
周囲を見渡し声の主を探すが見えないため、後退りながら逃げようとしているため彼女の足を掴んでから隠密スキルを解除し姿を現す。
「ぁぅ・・助けて・・」
エミルは俺に勝てないと判断し命乞いをしてくる。
「アルシアがそう言った時に君は助けたの?」
「そっ・・・・それは・・」
「なら答えは決まっているだろ?」
エミルは項垂れ涙を流し始め後悔している首元に片手剣を当てると、ビクッとして全身が震え始める。
「エミルさん、今いくつ?」
「じゅ・・17才よ」
「そうか・・なら俺の1つ下なんだね・・最期に残す言葉はあるかな?」
「・・まだ生きたかったな」
死を受け入れるしか選択肢がないエミルは、グシャグシャな顔で俺を見上げる。
「エミル・・これも運命だから」
「・・ヤダ・・死にたくない」
「おやすみ、エミル」
ドンッ!
気絶したエミルは、力無くその場で倒れ込むと胸元に付けていたアクセサリーがほのかに輝き消えていく。
エミルを戦力外にした頃にペトロの応急処置が終わり、隠密スキルを解除した俺を見つけ足元で倒れているエミルに気付いたようだ。
「エミル!おい、エミルー!てめぇ、エミルに何をしたんだ!」
「彼女の魂は、さっき天へ昇って行ったよ」
「よくもエミルを・・ぶっ殺してやる」
「ペトロ!エミルに何かあったの?」
路地奥から新たに女2人がやってくる。
「ルミナール、マリエル・・どうしてここに来たんだ?」
「だって、このアクセサリーに反応があったから・・って、エミル?」
新たに来た女2人が、俺の足元で倒れたままのエミルに気付く。
「「そんな・・・・」」
(なんか・・俺が悪役みたいな雰囲気になってきた感じだな・・そろそろ帰りたいし)
「ペトロ!アルシアを痛めつけたのはパーティー全員なのか?」
「そんなの答える必要ない」
「そうか、お前らを相手しているほど暇じゃないから終わらせてもらうよ」
ペトロを直接痛めつけるのではなく、仲間から排除する作戦に変更し水魔法ウォーターボールを2つ形成し新たにやって来た2人の女に詰め寄る。
「「えっ・・ごぉぱぁ・・」」
2人の女の頭をウォーターボールで覆い、顔だけを溺れさせ両手で取り外そうと踠いているが簡単には取れないようになっている。
「このままだと、2人は溺死するよ」
地面に転がり回る2人は、必死にウォーターボールから逃れようとしているが無駄だ。2分ほどが経過し少しずつ動きが鈍くなって今は、口から出す気泡もほとんどなくなっている。
「クソッ・・・・わかった。俺が1人でやったんだ。コイツらは見ていただけで手を出していない」
「そうか・・でも、もう手遅れみたいだ」
「「ゴポッ・・・・」
2人同時に全身を激しく痙攣させ動かなくなったところで、ウォーターボールは形状を崩し地面に飛び散り吸い込まれ消えていき、それを見つめ隙だらけのペトロの横に立つ2人の男の頭部に打撃を加えて一瞬で2人の意識を刈り取り、残るはペトロ1人になった。
「もう、アルシアに関わらないよな?」
「わかった・・もう関わらない・・この片腕じゃ冒険者を続けられない」
「なら、この2人は預かって行く」
隠密スキルを発動し、倒れたままの2人を抱き抱えてペトロから見えない位置まで移動する。
「・・・・さてと、処置しますかね」
2人に雷魔法ディスチャージ・ショットを瞬間的にかつ微弱に放ち止まって間もない心臓にショックを与えると鼓動が戻り呼吸が安定したのを確認し、エミルの横に寝かせてアルシア達が待つ店に戻る。
「ただいま・・遅くなっちゃったねって、あれから料理に手を付けてなかったの?」
テーブルに置かれた料理が、俺が出る時と変わっていなかった。ただ1人を除いて。
「シェルは完食のようだね」
「うむ。シェルは、おかわりを所望するぞ」
店員を呼んで、シェルのおかわりを追加注文し店員が去った後にアルシアが口を開く。
「・・ハル、ペトロ達とはどうだったんだ?」
「あぁ、無事に解決したよ。もうアルシアに絡むことはしないと約束してくれた」
「・・そうか、ありがとう。でも、約束守ってくれるのだろうか・・」
不安な表情が残るアルシアに俺は、言わないでおこうと思っていたことを告げる事に決めた。
「・・実はな、この場で言うのもなんだけど、ペトロには代償として右腕を斬り落としたから」
「「「 え??? 」」」
「どうした?みんなそんな驚いた顔をして・・」
驚きを隠せないアルシアが口を開く。
「ほ、本当なのか?ペトロは、Aランク冒険者だったはずだ」
「本当だよ。アレがAランクだと大した事ないな」
静まりかえった席の中で、タイミング悪く店員がシェラの料理を運んできてしまい、ただならぬ空気を感じ取った店員は足早に去って行った。
「とりあえずみんな・・ご飯食べようか?」
「「「 うん 」」」
誰も何も言わない中で、なぜか急ぎ目に食事を済ませたお俺達は飯屋から出て宿屋へ向かう通りを歩いている時に、隣を歩くマリアに声をかける。
「マリア、帝国で冒険者を経験してから王国へ向かうか、このまま王国へ早く戻り無事を報告するのどっちにする?」
「う〜ん・・もう少しこの生活を経験して将来の公務に活かしたいですわ」
「わかった・・命の保証は完璧にはできないけどね」
「・・ハルがいるなら、きっと大丈夫のような気がします」
ニッコリと笑うマリアを見て、この子も守らないといけないんだと思い宿へ帰って行く。




