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6章 帝国編 13話 アルシアとの旅・・からの帰らないアルシア


「・・・・ハルさん、ハルさん」


「・・ん?どうしました?ラティナさん」


 目的地に着いた馬車でマリア達を見送り、今は受付嬢ラティナと馬車で留守番をしている。


「あのですね・・マリアさんとシェルさんとは、どういう関係なのでしょうか?」


「そうですね、ただのパーティー仲間ですよ」


「そうですか?なんか他の冒険者パーティーと比べて雰囲気が違うんですよ」


「気のせいですよラティナさん」



 たくさんの冒険者達を見てきたラティナには、俺達が不自然に見えるのだろう。確かに、平民と王族と神獣の混成パーティーだしな・・。


「思っていることを話していいですか?」


「・・・・どうぞ」


「マリアさんは、冒険者には無いはずの仕草に品があって高貴なオーラを感じます。しかも、平民を装ってますが貴族でも上位の階級のような気がします」


「貴族?・・おてんば娘が?」


「はい。そして、シェルさんは神秘的な何かを感じます。確たる証拠はありませんが、わかる人なら勘ずくと思います」


「へぇ〜あのやる気のないシェルから神秘的なやつね〜」


 (なんだこの受付嬢・・只者じゃない気がする・・」


「でもですよ・・一番不思議なのは、ハルさんです!」


「はぃ?・・・・この俺がですか?」


 2人の話をしていた時よりも確信をついたような目をして俺を見つめるラティナが口を開く。


「あなたは、一体何者ですか?こんな最強種見たことがありません!」


「・・ただの人族ですけど」


「守秘義務がありますが、はっきり言いますけど・・物凄い加護をお持ちですよね」


「・・・・・・」


 ラティナが嫌味の無い笑顔になる。


「無言は肯定と受け止めますね、ハルさん」


「き・・君はいったい何者なのかな?」


 動揺を隠しきれなかった俺は、ラティナに質問してしまった。


「ふふふ。ただの受付嬢ですよ」


 そう言って顔を逸らしたラティナは、静かに遠くを見つめて会話が途切れてしまう。


「・・・・ならいいけど。あまり詮索されると、それなりの対応しなきゃいけないしね」



 森の中でゆっくりとした時間が流れ、少し服に泥が付いたマリアと全然汚れていないシェルが満足そうな顔で帰ってきた。



「戻ってきたぞ〜ラティナ!2人とも文句なしの合格だ!」


「そうですか、それを聞いて安心しました。さぁ、暗くなる前に街へ帰りましょう」


 ラティナは、素早く出発の準備を済ませて御者台に座る。俺は、マリアとシェルが荷台に乗る手助けをしてやるとマリアが荷台に上がってきたついでに抱き付いてきた。


「マ・・マリア?」


「ハル・・やっと会えました。守られていると思っていても、姿が見えないのはやはり不安です」


 俺は、マリアの頭を優しく撫でた後に抱き上げて椅子に座らせると背後からシェルが抱き付いてきた。


「シェルも寂しかったぞ・ハルがいないとダメなようだ・・クックック・・」


「シェル・・ふざけてないで早く座れよ」


 雑に扱われたシェルは、不満な顔付きで俺を見ながら渋々座る。また、その顔が可愛いと感じてしまう俺がいる。


「ラティナさん、こっちの準備整いましたよ」


「はい。ありがとうございます。それでは出発しまーす」



 俺たちが乗った馬車は、森を抜けて街道を順調に走り陽が沈む前に要塞都市フェズドレイに辿り着き、ギルドに入るとマリアとシェルは初心者講習終了記念に討伐回数1回の記録を達成した。


 冒険者ギルドを出るときにラティナは、馬の世話のため裏にいるようで挨拶ができないまま宿屋に向かうことになった。部屋に入ると、暗いままでアルシアは帰ってきてない。


「ハル・・もう疲れて眠たいから夕飯いらないわ」


「シェルもいらないぞ・・もう寝るのだ」


「・・・・そうか。まぁ、夜中起きてお腹空いてたらアレだから一応夜食を準備しておくよ」


「「ありがと」」


 マリアとシェルが、ベッドに倒れ込む前に生活魔法クリーンで綺麗にしてやった直後に2人はベッドに沈んでいく。



「あとは・・アルシアだな」



 ソファに深く座り、気配探知スキルを発動しアルシアの存在を探すと街中で捉えた。場所は、どうやらギルドの近くにいるようでよく調べると路地裏で動く気配が無い。


「・・・・まさか!!」


 バン!


 部屋の窓を開けてそのまま外へ飛び出した俺は、隠密スキルを発動し家屋の屋根を走りアルシアの場所へ急行する。あと数分で着くときに焦りのあまり見落としていた6人の存在を。


 ズザァァッ



 俺とアルシアの間にいる6人と遭遇する経路だったため、隠密スキルを解除し裏路地を歩き1つ目の角を曲がると6人がこちらに向かい歩いてくる姿をとらえる。


 先頭を歩く男が細剣を持っていたため、警戒しなが俺は歩き6人とすれ違う。一瞬先頭の男と視線が重なったが敵意を出さないようやり過ごすことに成功したはずだった。


「おい、そこのガキ止まれや」


 俺は、素直に止まり振り向く。


「なんでしょうか?」


「今朝、ギルドにいたよな?」


「た・・たしかに、今朝ギルドにいましたけど」


 家の窓から漏れる光で、声をかけた男がマリアを脅した赤髪男と同一人物だった。


「ふん・・明日から夜道を歩くときは背中に気を付けるんだぞ」


「はぁ・・そうですね。気をつけます」


 男は何も言わず立ち去る。他の男2人と女3人は俺を見下す顔で終始見て赤髪男の後を追って行くその姿が見なくなるまで俺は見送り警戒して、見えなくなったところでアルシアの元へ全力で走る。


「アルシア!!・・・・あれ?」


 そこにアルシアの姿は無い。そこには、不自然に置かれた大きめの木箱が逆さまになって隅に置かれている。


 そして、その木箱に近づくと血のようなものが染み出していることに気付き木箱をどかせると、一目でアルシアだとは判別不可能なほどの人間が横たわっているにしか見えない。


「くっ・・なんて酷いことを・・エクストラヒール!」


 治癒魔法エクストラヒールを発動し、横たわる人間が治癒魔法が放つ光に包まれて傷が癒されていく。かなり酷い傷だったためエクストラヒールを3回ほど重ね掛けして、やっとアルシアだとわかるほど治癒出来た。


「アルシア・・」


 俺は、アルシアに治癒魔法を持続的に発動し、彼女の体にかすり傷1つ残さないようになるまで続け、だんだんと空が明るくなろ始めた頃にやっと顔色と呼吸が正常に戻ってくれたことに涙する。


「んっ・・・・ここはってハル?どうして泣いてるの?」


 アルシアの意識が戻ったことに遅れて気づいた俺は、アルシアに泣き顔を見られてしまい恥ずかしさを隠すため抱きしめた。


「アルシア・・良かった生きていてくれて。すぐに助けに行けなくてゴメン」


「・・そうか、私はハルに助けられたのか・・うぐっ・・うっ・・怖かったよ・・ハル・・」


 アルシアは、傷つけられた状況を思い出し号泣する。俺は、アルシアが落ち着くまで強く優しく抱きしめて、もう心配いらないとささやく。


「アルシア、立てるか?」


「・・なんとか」


「あれ・・・・細剣は?」


「・・・・どいうやら盗まれたようだ。お気に入りだったのだが、仕方あるまい」


 俺は直感的に思い出す。アルシアの細剣を盗んだ人間を・・もう完膚なきまでに潰すと心に誓い、恥ずかしがるアルシアを背中で背負い隠密スキルを発動し朝を迎えた街中を宿屋に向かって帰ることにした。


 宿屋の部屋の前で隠密スキルを解除し、アルシアを背負ったまま部屋のドアを開けて入るとマリアが飛び込んでくる。


「おわっ」


「ハル!どこへ行ってたの?突然窓から飛び出したと思ったら、気配がなくなるんだもの・・心配したじゃないってアルシア?」



「ハル・・私はもう平気だ・・だから降ろしてくれないか?」


「おぅ・・そうだったな」


 俺の背中から降りたアルシアは、血を失い過ぎたためフラフラしながらソファに横たわる。


「いったいどうしたのじゃ・・アルシアよ」


「悪りぃ、シェル・・マリア。今日は宿屋でのんびり過ごしてアルシアの看病をしてほしいんだ」


「・・それは構わんが」


「ありがとう。終わったら説明するから。ちょっと出かけてくる」



 3人を部屋に残し俺は冒険者ギルドへと向かう。


 まずは、情報収集のために・・反撃はそれからだ。




 










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