6章 帝国編 12話 アルシアとの旅・・元パーティーリーダーの悪意
アルシアSide
目覚めるとソファでハルが座っている姿が見えた。何も言わずに部屋を出ようと思っていたが諦めて彼の隣に座る。怪しまれないよう暗くなる前には戻ると伝えた。
ハルは笑顔で、暗くなっても帰って来ないと探すと言ってくれた。前のパーティーでは、1度も経験の無い帰る場所があるという安心感・・なんか嬉しいな。
ソファから立ち上がり、振り向くことなく部屋を出る。本当は振り向き手を振ってから行きたかったが、きっと火照った顔を見せることはできない。
「どうしようかな・・・・」
本当はこの街で買うものなんて無い。昨日街に入ってから通りを歩いているときに、再び耳にしたあのパーティーの名前を。
「もう二度と顔なんか見たくない連中だし、ハル達に迷惑をかけたくない・・」
早朝で人通りの少ない通りを歩き冒険者ギルドへ向かう。
ギルドに入ると数組のパーティーがいる程度で、まだ冒険者達は少ない。私は、受付窓口で眠そうにしている受付嬢に声をかける。
「おはよう。ちょっといいかな?」
「・・お、はようございます。どんな用件でしょうか?」
「じつは、ノース・クレストという冒険者パーティーについて知りたいんだ」
「・・それでしたら、ギルドカードを提示してください」
彼女にギルドカードを渡し、元パーティーに所属していた者と確認が取れたようでギルドカードを返してくれた。
「どうのような内容を希望ですか?」
「えっと・・今の活動状況が知りたい」
彼女は席を立ち背後の棚にある簿冊を見に行って戻ってくる。
「えっと、今はAランククエストに行ってますね。場所は・・ここのギルド依頼のようで期限は残り2日ですね」
「なら、ここに戻ってくると?」
「はい」
「ありがとう」
なぜか私は、急いでギルドを出て商店街へ向けて歩き出した。あのままギルドに居たら出会してしまうと感じたからだ。
1人で通りを歩き、遅くなった朝食を中央広場にある出店で購入し広場のイスに座って食べる。そして、街の店が開店する時間になり時間潰しのため、目に入った店になんとなく入る。
この店は雑貨や旅向けの商品が豊富に取り揃われていて、いつの間にか長居してしまっていたようだ。このまま出るのもと思い、ハルへお土産を選び購入して店を出て通りを曲がったところで事は起きてしまった。
「「わっ!!」」
「あぶねーだろ!」
「あっすまな・・・・」
今ここで1番会いたく無い元パーティーリーダーと遭遇してしまった。私は、あの時の男の表情が脳裏に浮かび硬直してしまう。
「ん?おまえ・・アルシアか?何してんだここで?・・あ?」
「ぁ・・・・・・」
「ちょっと来いよ」
「・・ぇっ・・い、イヤ・・はなして・・」
不意に近づき私の右腕を強引に掴み連れて行かれ恐怖のあまりに全ての対処が遅れてしまい、誰もいない路地裏に連れ込まれた。
「な・・なに?」
「アルシア・・お前さぁ、パーティーに戻らねぇか?ソロ冒険者も限界だろ?」
「・・む、ムリだ・・」
私の反応に表情が険しくなり、胸ぐらを掴まれて家の外壁に背中を強打させられる。
ドン!!
「はぁ?お前に拒否なんて選択ないんだよバーカ!」
睨めつけて顔を近づけて来たため咄嗟に顔を逸す。
「もう、関わらないでくれ。私はパーティーを追放された身だ」
「・・そうだな。確かに追放してやった。だがな、お前のカラダとはまだ1度も決別してなかったな。今夜、ギルド横の空き地に来い」
「そんな約束はできない」
「だから、お前に選択権は無いだよ!今の俺は、ギルドにいたガキのせいでイライラしてんだよ!」
「ぐふっ・・」
下腹部を殴られ、激痛に襲われうずくまってしまった。またあの生活に戻るなんてイヤだ。ハルとの生活が絶対に良いに決まっている・・だけど、このままじゃハルに迷惑が・・。
気が付いたら、空が暗くなっている時間だった。このまま無視して宿屋へ帰ろうと歩き始めていたはずなのに、立ち止まった先に冒険者ギルドだった。
「よう、やっぱり来ただろ」
あの男の声がして振り向くと、あのパーティー5人全員の姿があった。
「ぁぅ・・いや・・」
「さっさとギルドに入るぞ!」
強引にギルドに入り窓口へ連れて行かれ、今朝会った受付嬢のところに向かわされた。
「待たせたなフレンディア」
「いえ、問題ないですよ・・ペトロさん」
「それじゃ、コイツのパーティー登録頼むわ」
背中に冷たいモノを感じた私は、震える手でギルドカードを受付嬢に手渡す。
「はい。お預かりしますね。このままお待ちください・・・・・・アレ?おっかしいな」
「どうしたんだフレンディア?」
受付嬢が何やら慌てているが、今の私には関係無い。早くこの男から逃げてハルの待つ宿に帰りたい気持ちでいっぱいだ。
「ペトロさん。残念ですが、この方はすでに素人名人会という冒険者パーティーに所属していますね」
「なっ・・お前ソロじゃないのか?」
「・・・・そういえば、大事な男のパーティーに所属していたんだった」
ゴキッ!!
鈍い音が聞こえた瞬間に視界がグニャリと歪んで、全身に強い衝撃を感じ呼吸ができず、起きている状況が理解できないでいると、髪の毛を鷲掴みされて無理矢理に頭を持ち上げられた。
「ぅぅ・・痛い・・いだいよ・・」
「クソ女!巫山戯るのも大概にしろよ!俺たちを騙すの何回目だ!」
激痛の中で男から罵声を浴びたまま反論出来ずにいると、記憶の無い嘘が真実に変わっていく感じがする。
「・・どうしで・・なんで・・」
「もういい!連れて行くぞ!」
他のパーティーメンバーの男2人に両腕を掴まれて、引きづられながらギルドから連れ出され人気のない夜の裏路地に投げ出される。
「がぁっ」
「アルシア・・お前にはもう冒険者としての利用価値なんてない。ここで、俺達とこの世界からサヨナラだ。ついでにこの細剣もらって行くからな・・おやすみ永遠に・・」
暗闇の中で聞こえたペトロの声が遠くなっていき。顔以外の全身に何度目かの斬られる痛みを感じていると、顔に強い衝撃を受けて、私は意識を躊躇いなく手放した。




