6章 帝国編 11話 アルシアとの旅・・からのマリア登録する
もう少しでブックマーク100件到達しそうです。
ありがとうございます。
「おはよう、アルシア」
「・・・・おはよう」
夜明け前に目覚めた俺は、部屋のソファに座り静かな時間をまったりと過ごしていたところにアルシアが起きてきた。
「今朝は早いね」
「伝えてなかったが、早朝に出ようと思っていてな・・もちろん声をかけていくつもりだったし・・」
「・・そう」
アルシアは寝ている2人を起こさないように支度を始めて、出る前に俺の横に座る。
「・・ハル、暗くなる前には帰ってくる」
「わかったよ。帰って来なかったら探すからね」
アルシアは微笑し立ち上がり部屋を出ていく姿を、俺は黙って見送った。
「・・・・行ったの?」
「ん?・・マリア、起きてたの?」
「うん・・」
寝ていると思っていたマリアが、アルシアが部屋のドアを静かに閉めた後に口を開く。
「きっと、何かがあるんだろうな・・」
「いいの?1人で行かせちゃって?」
「一応、Cランク冒険者だしな」
「・・・・でも」
上半身を起こし、ベッドにいるマリアは心配そうな顔をして部屋のドアを見つめ布団を握りしめている。
「俺達は、冒険者登録を済ませような。もうシェルを起こして出掛ける準備をしよう。
マリアは、隣のベッドで寝ているシェルを起こしてギルドに行く準備を済ませてから宿屋の食堂で朝食を摂り、そのまま出発して冒険者ギルドへ向かった。
早朝の冒険者ギルドに入ると、帝国のギルドと違い獣人族の子を数人見かける。前を歩くマリアは、キョロキョロと見渡しながら歩きフラフラとしている。
「こ・・こんな朝早くても活気があるのですね・・驚きです」
ドンッ!!
「きゃっ!」
ドテッ・・
俺の脇を通り抜いた赤髪男が、マリアを追い抜く時に故意に背中を押して倒した行為を視認した。
「大丈夫かマリア?」
「・・」
「邪魔なんだよ!ガキがウロウロしてんじゃねーよ」
突然の出来事にマリアは呆然として、普段のような対応ができないようだ。だがお兄さん・・本当なら王族を押し倒した行為は死刑も同然ですからね。言えませんけど。
「す・・すいませんでした」
俯き謝罪するマリアの姿を見て舌打ちして立ち去る赤髪男は、右端の受付列へと並んで行った。
「なんなのだ?あいつは・・このシェルが消してやろうか?」
少々ご立腹なシェルが、赤髪男の存在を消してこようとしているのを宥めながら新規登録窓口へ2人を連れて行く。
「マリア、シェル・・ここで登録だからな・・あの、2人を新規登録手続きお願いします」
さすがに早朝から新規登録する奴はいないため、たまたま出勤したばかりの受付嬢が対応してくれることになった。
2人は、申請用紙に名前と年齢と得意魔法属性と役職を記入し終えると受付嬢に提出し、カウンターに置かれた水晶玉に手を置いて登録を済ませ、無事に登録事務手続きが終わってギルドカードを受け取る。
「やったわ!これで私も、ハルと同じ冒険者よ!どう?Fランクよ!Fランク〜!」
目の前で満足そうに立つマリアはFランクの意味を知らないのか、発行されたばかりのカードを掲げて嬉しそうに喜んでいる。
「そんなに嬉しいのか?」
「そんなの決まっているじゃない。だって、ハルと同じなのよ・・」
横にいるシェルは、マリアのように感情を出さず、なぜかニヤニヤとカードを見つめているのが気持ち悪い。
「・・あの、マリアさん、シェルさん・・」
窓口にいる受付嬢が2人に声をかけているが気付いていない。
「2人とも・・浮かれてないでさ、受付嬢が呼んでいるよ」
2人は振り返り、再び受付嬢の方を見る。
「あっ・・なんでしょうか?」
「この後に予定されている、初心者講習は受講されますか?」
「・・・・初心者講習ですか?
「はい。午前中は講義で午後からは魔物討伐講習です。今なら、銀貨2枚のところを銀貨1枚で受けれますよ」
「・・・・少々お待ちください」
マリアが振り返り遅れてシェルも振り返り俺を見て指示を待っているようだ。
「いいんじゃない?せっかくだし受講しなよ」
そう言いながら、2人分の受講料を受付嬢に手渡す。
「いいの?」
「もう支払ったしな」
「「ありがとう」」
この後、2人は受付嬢と共に2階の会議室へ向かって行くのを後ろから付いて行く。どうやら引率者の俺は、特別に参加していいとのことらしい。
「なんだ、新人だったのか?どうだ?俺たちのパーティに入れてやろうか?」
さっきマリアを押し倒した赤髪男が絡んでくる。
「・・・・結構ですわ。知人にパーティーに入る予定なので」
「まぁ待てよ。お前、剣士なんだろ?俺のパーティーは、ちょうど剣士を1人戦力外になって欠員なんだよ」
「ですから、結構です!サヨナラ」
あまりにも身勝手な男の態度に温厚のマリアもイライラしている様子だ。それに気付かないこの男はポンコツだ。
「なんだと!このCランク冒険者の誘いを断るのか?」
「ジーザラスさん!執拗な勧誘は禁止です!おやめ下さい」
さっきの受付場が背後の違和感に気付き戻って来てくれたようだ。
「ちっ・・ラティナか。なんっもしてねーよ!」
赤髪男ジーザラスは、舌打ちをしてマリアから離れて行き、ギルドを出て行く。その後に男剣士1人と拳闘士1人が追いかけるように出て、また女3人が慌ててでて行く様子を見送った。
「すいません、マリアさんシェルさん。講習はこちらです」
階段を上り廊下を歩き角を曲がったところのドアを開けて中に入ると、大きな長机が数個置かれている部屋だった。講習の2人は最前列の机に陣取り、俺は最後尾列の椅子を手に取り壁際に置いて講習を眺めることにした。
どうやら講習は、受付嬢のラティナが担当のようだ・・・・。
内容はこうだった・・・・。
① 最終依頼活動から1年を超えた場合は除名となる
② ギルド施設内の争いは、即日に拘束処分となる
③ 依頼は、1ランク上位の依頼を受理できる。
④ 魔物討伐時の討伐部位は、ギルド指定位置でないと引き取り金額が半分になる。
その他にもたくさんあったが、途中から睡魔との激戦に敗れ果てた俺は、意識を刈り取られていたのだった。
・・・・全身が揺らされrている感覚を感じ初めて目を開けると、マリアとシェルの顔が目の前にあった。
「ん?講習終わったのか?」
「もう終わったぞハル!今から魔物討伐講習に出発だ!」
「そうか・・なら起きないとな」
俺は立ち上がり背伸びをして部屋を出ると、後ろから2人がついてくるが何か違和感を感じる。
「どうしたんだ2人とも?何かあったら遠慮なく言ってくれ」
「・・・実は」
マリアが弱々しい声で呟く。
「私達は、武器を持ってないことに気付いたの」
冒険者登録したが、肝心なことを忘れていた。マリアとシェルの武器を・・。
「ゴメン・・忘れてた」
「どうしよう・・もう出発なのに」
午後の魔物討伐講習を楽しみにしていたマリアの顔を見て、ふと思いだす。
「あっそうだ!コレがあったんだよ。マリアには短剣で、シェルは俺の片手剣を使ってくれ」
「ありがとう、ハル」
「コレだと、ハルの武器が・・・・」
短剣を受け取り喜ぶマリアと俺を心配するシェルに何も問題は無いと伝える。なぜなら、俺は魔法全般が得意だからだ。
「それでは、ギルド前にある馬車に乗って森へ行きますよ」
受付嬢ラティナの案内により俺達は馬車の荷台に乗ると、すでに男が1人乗っていた。
「みなさん、この方は本日の魔物討伐講習担当のAランク冒険者スミスさんです」
「おう!俺はスミスだ。よろしくな。2人の安全は俺が保証するぜ!」
「よ・・よろしくです」
返事を返したのはマリアだけだったが、スミスは全然気にしない様子でラティナと話をして講習の打ち合わせをしている。
「マリア、シェル、一応俺の方でも警戒はしているから講習に専念してていいからな」
「あの男より、ハルが近くにいたほうが安全だと思うぞ」
「シェル・・それはスミスさんの前で言ったらダメですからね」
ラティナとスミスの打ち合わせが終わったようで、ラティナが御者に指示を出し馬車が動き始め街を出て森へと向かう。
道中に俺は、気配探知スキルを発動し周囲を警戒しながら目的地に着くのを待つことにしたのだった。
次回は、ハル達が初心者講習を受けている同時間帯のアルシア視点になります。




