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6章 帝国編 10話 アルシアとの旅・・からのマリア自滅


「さぁ!・・出発です!」



「いやいや・・まだ2人寝てるから」


「なら、起こすまでです!」



 マリアは、馬車の荷台へ軽快に歩いて行く。


「お・・おい、マリア?」


 グアングアングアン・・


 腰を落とし、荷台を両手で掴んだマリアが荷台を力一杯揺らす・・そして叫んだ。


「敵だー!敵襲!!」


 バサ・・


 ズザァッ!!


「「 ハル!! 」」


「ヒッ・・」


 荷台からアルシアとシェラが一挙に跳び出して身構え、強烈な殺気を周囲に放ち警戒している後ろで、騒ぎを起こした主は2人の殺気を受けて腰を抜かし地面を濡らしている。


「・・アルシア、シェル!問題ないから殺気を収めてくれ・・・お前らの後ろでマリアが震えているから」


「どういうことだ?」


 俺の問い掛けに、アルシアが理解できないようでいるため事の説明をすると、納得したようで殺気が消えていく。


「マリア・・無事か?」


「・・・・・・」


「あれで無事じゃないか・・」


 荷台の横で座り込んだままのアリアの側にアルシアとシェラが行き、悪戯が過ぎると怒られている。野営中にアレは、冗談でもやってはいけない行為のため、2人の説教が終わるまで静観する。


「ごめんなさい・・アルシア、シェル」


 マリアがちゃんと謝罪した事で2人は許してくれたようだ。2人がマリアに手を出そうとしたら止めようと思ったが、そんな心配は無用だったため安心した。


「マリア・・こっちにおいで!アルシアとシェルは、朝食を食べたら出発の準備を頼む」



「・・はい」


「「・・・・わかった 」」


 マリアは、不自然な歩き方で俺の方へ来て距離を取って立ち止まり俯いたままだ。もちろん、その原因を知っている俺は、マリアに生活魔法クリーンを掛けてやると、マリアは俺の側までやって来た。


「・・ごめんなさい」


「まぁ、2人を怒らせるなよ。それと、テントで着替えてきな」


「・・はい」


 マリアは、テントの中へ入って行くその後に、アルシアとシェルが俺の左右にあるイスに座りアルシアが口を開く。


「ハル、ちょっと叱り過ぎたかも」


「・・いや、ちょうど良かったかもな。冒険者は命をかける商売だからさ・・」


「なら、いいけど」


 左に座るアルシアの横顔は、少し気にしている表情をしている。


「・・でも、2人の初動も良かったよ。襲撃に対していい反応していたし。これ以上、マリアを責めないようにな」


 2人の食事が終わった頃に、テントからマリアが出てくる。先程の殺気を浴びたせいで、アルシアとシェラから距離を取っているように見えたため、俺はマリアを呼び寄せる。


「マリアちょっと来て」


「・・はい」


 マリアが借りて来た猫のような状態になり、マリアらしさが無くなってしまったため俺の膝の上に座らせることにする。


「もう2人は許してくれたのなら、切り替えて行かないと冒険者は務まらないよ」


「わ・・わかってはいるのです・・でも、あれを思い出すと・・」


 マリアが、思い出したように震えている。


 そっと背中から抱きしめて、落ち着かせるため呟く。


「マリア、アルシアとシェルの殺気を受けて気絶しなかったから上位冒険者になる素質があるね」


「・・そ、そんなことは」


 首を振り否定的な彼女に、シェルの秘密を教える。


「それはね、信じられないかもだけど・・シェルは神獣フェンリルなんだよ」


「ふぇ?」


 マリアは振り向き、目を見開いて俺を見てくる。


「今は、人化状態だから気付かないかもしれないけどね。Aランク冒険者でも、あの殺気を食らえば気絶確定だよ」


「この私は、2人に勝てる要素がありませんね・・」


 ガックリと肩を落とすマリアは、溜息をつき立ち上がる。


「・・でも、俺が鍛えたら勝てるようになるよ?」


 クルッと振り向き、俺に顔を近づけて来る。


「ほ・・ほんとに?」


「あぁ・・でも、マリアのステータスを見せてくれるか?」


「わかった・・ステータス」


 マリアが躊躇いなく俺にステータスを見せてくれた。




ステータス


名   マリア=スパイラル (女)

種族  人族 15才

職業  王族

H P 300/300

H P 150/150

魔法  火属性

スキル 剣術Lv1 鑑定Lv5 身体強化Lv2

称号  王国第3王女




 マリアのステータスを見て、なんとか冒険者向きの方だと感じた。


「ありがとう、マリア。とりあえず剣術を伸ばしていこうな」


「うん・・頑張る」


 マリアと話しをしている間に、アルシアとシェルの支度が終わったようで、4人で野営キットの撤収をして要塞都市へ向かう。


 要塞都市までの道中のマリアに今までのおてんばが消えて、大人しくなっている。静かに過ごすとマリアは、高貴なオーラを纏っているように見える。


 遠くに、人工物が見えて来た頃に俺は一つの懸念事項が頭に浮かぶ。


「そういえば、あれだ・・」


「ハル、どうしたの?」


 隣に座っているマリアが反応する。


「マリアって身分を証明するやつ持ってる?」


「今は持ってないわ」


「・・そうか、どっちみちダメだな」


「何がダメなの?」


 マリアは、俺が言ってるダメな理由が思い浮かばないらしい。


「身分証無しに街へ入るためには、魔力を込める水晶玉があるんだ。これで、対象者の情報がある程度把握できるんだ」


「・・ということは・・」


 マリアの表情から余裕が消える。


「・そう。マリアが王族なのが発覚してしまうんだ」


「そんな・・・・」


 俺達の会話を聞いていたアルシアが振り向き心配そうな顔をしている横でシェルが、何も心配していない口調で口を開く。


「なんだ・・ハルなら、隠密スキルがあるではないか。微塵も心配は不要だと思うぞ?」


「あぁ・・そうだった。解決だね」


「ふふっ・・へんなひと・・」


 何も心配が入らなくなったため何も考えず過ごしていると、いつの間にか要塞都市の近くまで進んでいた。


「アルシア、シェル。俺は、隠密スキルで隠れるから頼むな」


 そう言って、マリアを抱き寄せてから隠密スキルを発動し門兵の監視の目から逃れ状況を確認していると、シェルが小さなフェンリルに姿を変えて、アルシアの胸元に潜り込んでいた。




「次の馬車!こちらに・・1人か?身分を証明するものを出してくれ」


 門兵の指示にアルシアが順調に対応している。


「な・・ Cランク冒険者でしたか・・どうぞカードを返します」


「通っていいですか?」


 アルシアは、必要最低限の言葉しか発しない。


「あっ・・一応、荷台を見せてもらう」


「・・どうぞ」


 アルシアに対応する門兵の他に2人の門兵が荷台を覗き込んで確認している。


「・・なんか妙にスッキリしているよな」


「そうだな・・」


「おい!ニース、どうだった?」


 アルシアの対応する門兵が、荷台を覗き込んでいた2人に声をかける。


「ん〜特に目立った物は無いが、余りにも荷が少なすぎるのが気になるんだ・・」


「そうか・・お前もかニキル?」


 ニキルと呼ばれる門兵も荷が少ないことが不審に思っているようだ。


「門兵殿、この街で冒険者仲間と合流する予定なんだ。彼らの荷物を載せると、他の馬車と変わらないと思うぞ」


「・・・・よし。通っていいぞ」


「ありがとう」


 隠密スキルで認識を阻害しているが、門兵がこちらを見て視線が重なる度にマリアが声を漏らしそうになり、久しぶりに緊張する場面だった」


 さすが要塞都市と言われることはあり、街の外壁は高く門から街の通りに出るまで、道が複雑ですんなりと行かなかった。


 街の通りに入ると、多きな看板が視界に入ってくる





・・・・ようこそ、要塞都市フェズドレイに・・・・



 

 俺が隠密スキルを解除すると、アルシアの胸元に潜り込んでいたシェラが口に折り畳んだ服を咥えて荷台にやって来てから人化に戻る。

 

 アルシアは、何も言わなくても馬車預かり所へ向かい場所を預ける。そこの店主に宿の情報を仕入れてから街の通りを歩き探すのが、最近の街に入った時の流れになっている。


「・・ここが、今夜泊まる宿屋か」


 宿屋に入ると、受付に体格のいい赤髪の男がいる。


「ようこそ、宿屋テマクに」


「4人で泊まりたいんだけど、部屋空いていますか?」


 男は帳簿を捲り確認していると顔を上げて口を開く。


「今夜は、4人部屋か2人部屋が空いてますが、どちらにされますか?」


「4人部屋でお願いします」


 1泊で金貨3枚だったので、とりあえず3日分を先払いして鍵を受け取り部屋へと向かう。


 最上階の3階にある部屋は人数分のベッドとソファが置いてありなかなか広く快適な部屋で、それぞれがベッドに座ったり寝転んだりしている光景をソファに座り見ながら、明日の行動を決める。




「みんな、明日なんだけど・・」


「ハル、まずは冒険者登録よ・・ね?」


 マリアが目を輝かせながら俺を見つめる。


「シェルも、その冒険者登録とやらをしてみようかの」


「えっ?シェルが?」


「なんじゃ?ダメなのか?」


 シェルが俺の反応に不満な顔をしている。


「そんなことは・・」


「シェルも一緒に登録してくれるの?楽しみだわ」


 どうやら、シェルの冒険者登録も確定事項のようだ。


「アルシアは?」


「私は、街で買い物がしたい。単独行動でもいいか?」


「オッケー!暗くなるまでに宿に戻ってこいよ?」


「もちろんだ」


 これで、明日の行動が決まったところで欠伸が出て眠気を感じてきたところで、ベッドに潜り込んで俺は皆より先に眠ることにした。







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