6章 帝国編 7話 エルナとの旅・・別れからの新たな出会い
狼・・・・もといフェンリルの命令に従い宝を捜索し仲間の犠牲者を出していたエルナ達の心情を考えると、俺が捜索した方が良いのかもしれないという感情が心に芽生えてくる。
「なぁ、カリナ・・ここは帝国の領土にもなるのか?」
「正確には、帝国領土にエルフ族の自治区が存在し帝国は表沙汰では永久不干渉としている」
「・・そうか。ちなみにこの村に地図は存在するのか?」
「地図なら、私の家に保管してあるぞ」
「俺に地図を見せてくれないか?この世界を知りたいんだ・・」
「もちろん良いぞ。ついて来てくれ」
俺は、カリナの案内によりカリナとエルナの家に向かう。
案内された家は、人族と同じような平家の家だったことに驚く。
「エルフ族って大木の中に住んでいるもんだと思ってたよ・・」
「ハル・・・・それは、かなり昔のエルフ達のことだよ・・」
俺の横にいたエルナが呟く。
「そうなんだ・・なんかゴメン」
「良いよ・・別に・・」
ちょっと、いじけた顔をするエルナの頭を撫でて許してもらい家に入る。
「ハル殿・・地図を取り出してくるから、この部屋で待っていてほしい」
「わかった・・無理言って悪いなカリナ」
「だ・・大丈夫だ!気にすることはないぞ・・うん」
カリナは部屋を出て地図を取りに行ってくれたようだ。その待っている間にエルナが人数分のコップを持って来て椅子に座りカリナが戻ってくるまでティータイムとなった。
「ハル・・フェンリル様の宝物を探すの手伝ってくれるの?」
「それが、エルナの依頼だったんだろ?」
「・・うん。なんか騙しちゃってごめんね」
「いいよ。でもまさか、あの狼の依頼だったとは想像もしなかったよ」
しばらく俺とエルナとアルシアで談笑をしていると、カリナが部屋に戻って来た。
ガチャ
「待たせたなハル殿!地図を持って来たぞ!」
カリナが部屋に入りテーブルの上に持って来た地図を広げてくれる。
その地図には、王国と帝国そして他の国の位置も書いてある立派な物でカリナが説明をしてくれる。
「ここがアルカ帝国の領土で北側のここが、今いるエルフ自治区だ。ここから西にスパイル王国との国境があり、その手前に要塞都市がある」
「要塞都市?そこらへんの都市と違うのか?」
「もちろんだ。行ったことはないが、王国との戦いに備えて十分な戦力と難攻不落の造りになっているらしい」
「そうか・・なら国境沿いに行くなら、その要塞都市に行かないとな」
すると、エルナとカリナが顔を合わせ黙り込んでしまう。
「どうしたんだ?2人とも・・」
エルナが申し訳なさそうに口を開く。
「私たちエルフは要塞都市に行けないの・・」
「どうして?」
「それは・・」
「エルナ!ハル殿すまぬが訳を教えることができない・・」
カリナが俺に頭を下げて告げて来たので、俺はこれ以上追求するのをやめた。
「それなら仕方ない。俺とアルシアで行くとしよう。エルナとはここでお別れだ」
「あぅ・・そ・・そうだよね、ハル。短かったけど楽しかったよ」
「エルナ・・俺も楽しかったよ。ありがとう・・それじゃ、アルシア1度フカヒーニへ戻って馬車を引き取りに行こう」
「そうか・・エルナがいなくなるのは寂しいけど仕方ないのか」
今からフカヒーニへ戻ることに決めた俺は立ち上がり、カリナ達の家を出ようとしたらカリナに呼び止められた。
「ハル殿!・・エルナとの別れを急がず、今夜は家に泊まっていってくれないか?」
「男の俺が泊まるのは、不味いんじゃないか?」
「お願いハル・・今日は、泊まっていって・・ね?」
涙目になっているエルナの顔を見て、俺は了承した。
「ありがとう、ハル。部屋に案内するね」
エルナの後について行き、客間へと案内された。一方でアルシアは、エルナの部屋に泊まるようだ。
しばらく客間で1人過ごしているとドアをノックしエルナが顔を出す。
「ハル、夕飯できたから来て」
「ありがとう、今行くよ」
ベッドに寝転がっていた俺は、立ち上がりドアの側にいるエルナの元へ向かいドアを開けると寝間着なのか、ゆったりとした服装で胸元からエルナの谷間が見えてしまいチラ見してしまう。
「・・エッチ」
「ごめん・・つい・・」
俺の視線に気付いたエルナが、ボソッと呟くが表情は柔らかかった。
廊下を歩き地図を見せてもらった部屋に入るとテーブルにたくさんの料理が並んでいた。
「おぉ〜!これはご馳走だ・・」
「んふ〜エルナとお姉ちゃんとでつくったんだよ!」
「さすがエルナだな・・これは素敵な奥さんになれるよ!将来の旦那さんが羨ましいぜ・・」
「・・ばか」
エルナが何か口にしていたがハッキリと聞こえなかったため、そのまま椅子に座る。
遅れてアルシアが部屋に入り俺と同じような反応をする。
そして、エルナとカリナが席に座ったところで4人一緒に夕飯を食べた。
肉料理から野菜料理までバランスの取れた料理で、今までで最高の夕飯となり食後のお茶を飲んでお腹を落ち着かせた後に部屋に戻った。
部屋に戻った俺は生活魔法クリーンで体をスッキリさせて寝間着になった後にベッドへ倒れ込む。
「あ〜腹一杯だぁ〜エルナの料理美味かったな・・もう明日からは食べれないのか・・」
そう考えながら俺は、目を瞑り眠りについた。
どれくらい時間が経ったのだろう、誰かが部屋に入って来て何か言っている。
「・・ル・・ひくよ。・・・・ハル・・布団に入らないと・・ひくよ」
「ん?・・なぁに?」
寝ぼけながら返事をして寝返ると、薄暗い部屋に窓から差し込む月の明かりに照らされたエルナが目の前に立っていた。
「・・エルナ?・・あれ?・・部屋間違えたかな・・わりぃ・・部屋に戻るよ」
「ここは、ハルの部屋であってるよ。布団に入らないと朝寒いよ」
「・・そうか・・なら布団に入らないとな・・」
俺は、エルナに手伝ってもらいながら布団に潜り込み壁側に向くと、背中に潜り込んでくるくっつくエルナを感じた。
「あれ?エルナ?」
「ハル・・明日でお別れなんだよね・・イヤだ・・離れたくないよ・・」
エルナの泣きそうな声を聞いて、俺の眠気はどこかに消えてしまった。
「明日でお別れだな・・楽しかったなエルナ」
「う・・うん。だのじがっだよぉ・・」
もう涙声になってしまったいたエルナの声を聞いて、寝返りを打ちエルナと目が合う。
「出会いがあれば別れがある。エルナもたくさん経験してきただろ?今回も同じさ・・」
「ち・・ちがうよハル・・やだよこんなの・・」
「仕方ないな・・こっちにおいでエルナ」
モソモソと素直に近づくエルナをそっと抱き締めて頭を撫でてやる。
綺麗な金髪が月明かりに照らされキラキラと輝いて目の前でピコピコ動くエルフ特有の眺めの耳を優しく触ると、エルナの体はビクっと反応してしまった。
「んぁ・・エ、エルフの耳は認めた相手にしか触らせないんだよ・・」
「あっごめんな・・」
「いいの・・ハルは特別だから」
エルナの耳から右手を離そうとしたが、エルナの手が俺の右手をソッと掴み耳に誘導され俺は触り始める。
「・・エルナ」
「ハル・・」
俺は、エルナの名を呼び見つめると、エルナも俺の名を呼び見つめてくる。
無言のまま互いに見つめた時間を過ごし、何か確認をしたわけでもなく自然と互いに顔を近づけて唇を重ねる。
「ん・・ハル」
重ねた口を離し互いの息遣いを感じる距離で見つめ合いもう一度唇を重ねる。
2回目は互いに強く抱きしめ合いながら。
俺とエルナは、明日で別れることを惜しむように互いの存在を何度も確かめ合って一緒に寝た。
エルナは陽が昇る前にベットから出て、おぼつかない足取りで部屋を出て行く。
そう様子を見ながら2度寝をして、次に目を覚ました時に目の前にいたのはエルナだった。
「おはよう、ハル・・んっ」
俺を起こしに来たエルナは、俺に朝の口付けをしている。
「おはようエルナ。調子はどうかな?」
「うん・・まだここに感覚があるから幸せなの」
そう言いながらエルナは、笑顔でそこを優しくさすっている。
「そうか、ならよかったよ」
俺は上半身を起こし、エルナを抱き寄せてキスをするとエルナが俺をベッドに押し倒して来た。
「ハル・・またこの村に来てくれるかな?」
「もちろん、いつになるかわからないけど・・」
「そうだよね・・エルフは長寿だから、いつまでも待ってるから。それまで、他の男に嫁ぐことはないからね」
「カリナが反対するんじゃないか?」
「それなら、この村を出てハルの元へ行くの・・それにね・・」
「それに?」
俺に馬乗りになっているエルナの顔が物凄く幸せそうな表情に変わる。
「・・なんだかね、ココにたくさんくれたハルの想いがたくさん貰えたような感覚があるの」
「それってまさか・・でも他種族だと不可能って聞いたことあるけど、奇跡が起きたのかな?」
「うん。奇跡が起きたかも。次会うときには、ハルに会えるかもね」
「そうか・・ありがとう」
俺は、上半身を起こしエルナを抱きしめる。
「・・でもね、ハル」
「なに?」
「なんだか、ハルにはたくさんの女性が寄り添うと思うの。だけど、私は気にしないから」
「・・それって、ハーレムってこと?」
「うん。そんな気がする。だから、無事にいてね・・死んじゃダメだからね」
エルナが泣き始め、涙が俺の頬に伝わってくる。
「もちろんさ。生きて必ず会いにくるから。エルナも元気でいてくれよな」
「うん。わかった・・そろそろご飯食べに行こっか・・」
「そうだね、エルナ」
2人でベッドから立ち上がり客間の部屋から出て食事の部屋に入ると、すでにアルシアが朝飯を食べていた。
「んはよ〜ハル。今朝は遅かったな」
「おはようアルシア。アルシアこそ起きるの早いじゃん」
カリナが作ってくれた朝食を食べて、4人では最後となる食事を摂った。
その後、ずっと俺についてくるエルナの姿を見るカリナが不思議そうな顔をしているため、きっと俺達の関係に気付いてないのだろう。
俺とアルシアの支度が済んで、今はカリナとエルナの家の前に立っている。
「カリナ、世話になったよ。フェンリルの件は、俺が引き継ぐからこれから平穏な生活に戻れるよ」
「そうだな・・本当にすまない。感謝しきれないであるぞ」
「ハル・・近くにきたら、必ずここに来てね」
「あぁ、もちろん」
「約束だからね・・」
エルナの目には涙が溜まって、今すぐに溢れそうになっている、
「エルナ、旅人との別れは必然じゃと申しておろう。いちいち泣くではない。ハル殿に失礼だぞ」
「カリナ、いいんだよ。別れに悲しみはつきものだから」
「しかし、それでは長寿のエルフ族にとっては・・・・なっ」
俺は涙ぐんで瞳から涙をこぼさないよう必死に空を見上げているエルナに近づき抱きしめる。
その光景を見たカリナは固まっているが気にしない。
「ふぇっ・・・・うわ〜ん!!」
我慢できなくなったエルナが泣いて俺を抱きしめてくる。
「エルナ・・俺からの餞別だ。きっとこの先で役立つことがあるかもしれないから受け取ってくれ」
俺は、アイテムボックスからマジックポーチを取り出しエルナに手渡す。
「ハル・・コレは?」
「マジックポーチだ。たくさん物を入れてあるし、狩のときに役立つと思う」
「ありがとう、ハル」
抱き締めていたエルナから離れると名残惜しい表情になるエルナが手を伸ばし俺に触れている。
それを見ながら1歩1歩後ろに下がり、エルナと距離をとる。
手を伸ばし、触れられなくなった手をエルナがゆっくり降ろした後に自身のお腹を守るように両手で触っている。
「それじゃ、カリナ、エルナ元気でな!」
「あぁ、ハル殿、アルシア殿もお元気で!」
「・・・・」
「エルナ、そんな顔すんなよ!君の笑顔を見せてくれ」
「あぅ・・ハル・・」
俺の声にやっと笑顔を見せてくれたエルナに手を振り、俺とアルシアはエルフ村を出て森を歩きフカヒーニの街へと向かった。
村を出てしばらくすると、今まで黙っていたアルシアが声を掛けてくる・
「・・ハル」
「どうした、アルシア」
「あの・・エルナが女の顔で部屋に戻って来たんだが、何かあったのか?」
「そ、そうなのか?なにもなかったけど・・うん」
「そうか、部屋に戻って来たエルナから、その・・なんだ、幸せオーラが溢れていたんだ」
「・・・・・・」
(しまった!クリーンをエルナにかけてあげるのを忘れていた)
「ハ・・ハル?どうして黙ったままなのだ?」
「アルシア・・アルシアもいつかわかる時が来るさ」
俺は、アルシアの顔を見ずに森を歩き続ける。背後からアルシアの質問を無視しながら。
そして、3度目の休憩が終わり歩き続けたところで、森で野営する場所を選定し2人でテントを設営する。これまでと違いアルシアが辿々しい。
夕飯を携行食で済ませて、俺は周囲に魔物避けグッズを配置し焚き火の前で夜警に備える。
「アルシア、今夜もテントで寝るんだぞ。冷えるから毛布の代わりに寝袋おいてるから」
「ヒャい・・寝袋を使わせてもらうにょ」
周囲は完全に暗くなり、焚き火がないと明かりが確保できない環境だった。
もちろん今夜も気配探知スキルを発動し、魔物達の動きを監視しながら毛布をかけて目を瞑る。
しばらくすると、お腹の辺りだけ物凄く温かみを感じるとともに重みを感じて目が覚めた俺は、ゆっくりと毛布を捲り上げると、腹の上に小さく丸まって寝ている白銀の毛並みをした生き物が目に入る。
「・・お前、昼間の狼だろ?・・なんでここで寝てんだ?」
俺の声に目覚めたのか、小さく丸まっていた生き物が片目を開けて呟く。
「我は狼ではない。フェンリルだ」
「・・あぁ、わかったよフェンリルさん。なんでここで寝てるんだ?」
「貴様から我が宝の匂いを感じてな・・もう一度確かめに来たのだ」
「もう、十分嗅いだだろ?ここから出ような」
俺は、腹の上で寝ているフェンリルを捕まえて出そうとしたら、抵抗された。
「やめてくれ!1人で寝るのは、もう寒くてな。誰かの体温を感じて寝たい時期なんだ」
「そうか・・その気持ち理解できないことはないが・・」
「ならば、このまま寝ても良かろう?」
「それなら、対価を要求する」
「人族の金なんぞ持ってないぞ?」
「なぁに、金には困ってない。このまま寝てていいからさ」
「そ・・そうか?なら言葉に甘えて、ここで寝よう・・わふっ」
俺は、この飢えていた感情を、このフェンリルに一気に流しこむ。ケモ耳と尻尾を全力で弄りたおし、己の精神が満足するまで弄りまくった。
その間のフェンリルは、全身をくねらせながら息遣いが荒くなり何度か全身を硬直させて4本の脚が伸び切った状態になることが何度か続いた。
そしてついに俺の精神が満足すると同時に腹の上にいたフェンリルが猛烈な光を放ったため、思わず目を閉じて後ろに倒れ込んでしまった。
光が収まり、目を開けるとそこには白銀の長い髪の若い女が全裸で俺の体の上で横たわっている。
「ん?・・どちら様ですか?」
「んはぁ・・はぁ・・貴様の指使いは・・なんなのじゃ・・もう虜になってしまったではないか・・」
「この声、お前フェンリルか?」
「だとしたら、なんじゃ?まぁ、人化したのは数十年振りだが、うまくできたかのう?」
何事もなかったのように女が立ち上がり腕組をしていて、俺も遅れて立ち上がる。
「・・もちろん。申し分ありません・・」
ニコリと笑う彼女は、気にすることなく俺に近づいて抱き付く。
「クンカクンカ・・クンカクンカ・・」
(コイツ・・なんか残念臭がするぞ)
「・・やはりな、間違いなくあの子の匂いが微かにある」
「あの子?そういえば、2つ匂いがするって言ってたな」
「たしかに・・もう一つは天狐の子の匂いであろうな」
いまだに抱きつきていたまま、匂いを嗅いで話をしているため、彼女の大きな胸が目の前にあり触りたくなる。
「それで、その天狐はどこに?探してるんじゃないのか?」
「所在はわからぬ。普段は互いに不干渉だからな」
「・・なら仕方ないか・・んで、そろそろ名前を聞いてもいいか?」
スッと彼女は俺から離れて威厳を保つように口を開くが全裸である。
「名乗る名は無い・・我は神獣フェンリルだ!」
「ん〜そう言われてもな〜」
「ならば、貴様が我の名前を考えよ!」
恥じらうことなく全裸で腕組をする彼女を眺めつつ呼び名を考える。
(肌の白いフェンリルか・・シロフェンリル?シロフェン・・違うな。シフェンリル・・長いな。シェンリル・・いや、シェリル・・なんか偉大な名前だから却下だ。なら、シェル・・コレだな)
「なぁ、これからはシェルって呼んでいいか?」
「・・シェル?それが、我の名か?」
「そうだよ。肌の白いシェンリルを略してシェルと決めた」
彼女は、気に入ったのか少し笑顔になる。
「そうか・・これからはシェルだ」
「決まりだな・・とりあえず服を着てくれないか?」
シェルは、俺と背丈が近いためアイテムボックスから俺の着替えを取り出して、シェルに着せた。
「これが人族の服か・・なかなか良い物だな」
初めて着た人族の服を気に入ったようで、クルクルとその場で回っている姿を見ながら俺は用が済んだなら帰れと突き放す。
「・・そんな。シェルのことが嫌いなのか?」
「いや・・好き嫌いじゃなくて、もう寝たいんだよシェル」
「なら寝るが良い!我は・・コホン、シェルは気にしないぞ」
俺は深く溜息をつく。
「わかったよ・・俺は寝るから勝手にしろな」
俺は、追加の毛布を地面に敷いて大きめの毛布をかけて、シェルを放置して寝ることにした。
焚き火の近くで、まだ動き回っているシェルの足音を聞きながら意識を手放していく・・・・。




