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6章 帝国編 6話 エルナとの旅・・からの本当の依頼


 二日酔いも解消され体調万全のアルシアとエルナを連れて早朝に宿屋を出発し、エルナの村へ向かう手段が徒歩になるため、アルシアの馬車を預けている店に立ち寄り数日分の預かり料を支払ってから街を出た。


「本当に歩いて行くんのか・・・・はぁ」


「アルシア、馬車は森の中を通れないし、置いて行くと賊にやられるぞ?」


「そうだけど・・」


 馬車移動が主だったアルシアは、歩いて旅をすることに慣れていないようだった。


「でも、ほとんどの荷物をハルが持っているからアルシアも軽装じゃない」


「うっ・・・・」


「まぁ、俺が荷物は収納しているからアルシアが持ってるのは、武器と水筒くらいじゃね?」


「・・すまぬ」


 他の冒険者達の装備と比べ、明らかに軽装のため言い返せなくなったアルシアは少し顔が赤くなっている。


「とりあえず、迷うことなく案内頼むぞエルナ」


「まかせて!最短距離で行くから」


 先頭を歩くエルナは、自信満々の表情で振り向き右手を突き出し親指を上に向けてくる。


 そして、3人の歩き旅は順調に進んで3日目の夕方辺りにエルナが無言で手を挙げ振り向き立ち止まる。


「ん?どうしたんだエルナ?」


「ここから先がエルフ族の自治区に入ります。わたしから離れないでくださ・・あっ!」


 不意にエルナがエルフ自治区の方を向きとある方向を凝視している姿に気付き、俺は気配探知スキルの範囲を広げると前方遠くに数人単位で散らばり止まっている存在を捉える。


 すると、エルナが口笛を吹くと同じような口笛の返事が返って来た。


 そして、もう一度エルナが口笛を吹いてしばらく経ったところに4人の気配が近づき武装したエルフが姿をあらわす。


「ただいま、カリナ姉さん!」


「おかえり、エルナ」


 エルナは姉のエルフと抱き合い無事を喜んでいる。すると、姉が従えて来た女エルフ3人が俺を警戒し見つめている。


「カリナ姉さん。この2人が依頼を受けてくれた、ハルとアルシアよ」


 エルナの姉が、俺の前に立ち少し見つめた後に警戒心を解いたようで、落ち着いた表情に戻り口を開く。


「あなた達人族がエルナの依頼を受けてくれた冒険者なのね?」


「・・そういうことになるかな」


「私は、エルナの姉のカリナよ」


「俺は、ハル。(私はアルシアだ)」


 カリナと握手をして、エルフの村へ受け入れてくれるようになった。


「まずは、長旅でお疲れだと思うので部屋へ案内しよう」


「あぁ、それは助かる」


 すると新たな気配が1人森を駆け抜けながら近づいてくる。


「カリナ様!大変です!」


「どうしたんだ、ミーシャよ」


「はい。む・・村にまた奴が姿を見せました!


「な・・なんだと?約束の日は、まだ先のはず・・・・」


 カリナ達エルフの表情が一気に暗くなり空気が重たく感じ、スッとカリナが俺を見る。


「・・ハル殿・・来て早々申し訳ないが、村まで急いで戻ることになってしまったのだ」


「わかった。一緒についていこう」


「ありがとう・・では後ろをついて来てくれ!」


 カリナ達エルフは、まぁまぁの速さで森を駆け抜けて行く、ピッタリと背後について行けるペースであったけど、アルシアが思ったより早くないため、カリナからある程度離れた場所で追いかけて行く。


 数分森を駆け抜けたところで結界を通り抜けたような感覚を感じた後、急に集落が見えて来た。


「・・あれがエルフ族の村か・・」


 簡素な門から警備している男エルフを横目に通り抜けると、中央広場にたくさんのエルフ達が集まっている。


 突然の人族乱入で困惑されるのを避けるため、中央広場から離れた位置に立ち止まり状況を伺うことにしていると、カリナとエルナを先頭に突然陣形を組み始めるエルフ達に驚くと同時に迫り来る大きな気配を捉えた。


 村中に響き渡るような大きな声が響く。


「エルフの民よ!そなた達の答えを聞きに来た!」


 エルフ達の前に姿を見せたのは、白銀の毛並みをした体長5メートル程ある狼だった。


「・・良い耳と尻尾の持ち主だな・・あぁ、モフモフ触りたい・・」


 俺の呟きが聞こえたのか、狼が一瞬俺の方を見たような気がした。隣にいるアルシアは本能的に動いたのか俺の背中に隠れる。


「期限は、まだ先のはずです!」


 カリナが狼に対し片膝を突き懇願するような感じになっている。


「そんな答えなんぞ聞いていないぞエルフの民よ。我の返事を聞きに来たのだ」


「・・そんな、フェンリル様!!」


「あれ?あの狼は、フェンリルだったのか。ただバカでかい狼じゃなかったんだな・・」


「フェンリル様!どうか・・どうか、もう数日お待ちください!今はまだ・・」


「ならん!!!!」


 フェンリルが一喝し、広場にいるエルフ族全員が崩れ落ち恐慌状態に陥っている様子を見て、特に先頭で立っているエルナの状態がよろしくない。


 俺はフェンリルとエルナ達の間に位置に一気に駆け寄る。


「なぁ、狼さん。俺の仲間が怖がっているから、その威圧を収めてくれないか?」


「なんだ貴様は!!」


 白銀の狼が俺を見下ろし睨めつけている。


「だから言ってるだろ狼さんよ・・その威圧に仲間が怖がっていると・・な?」


 目の前にいる狼に俺の視線に強い殺気を込めて睨む。


「ヒィッ・・」


 狼の口から小さく短い声が漏れた気がしたが気にせず殺気をぶつけ続ける。


「わ・・我は狼ではない・・誇り高き、ふぇ・・フェンリルであるじょ」


「そうか?白銀の毛並みでケモ耳と尻尾だから狼だろ?」


「くぅ、ちがう違う!あの下等な奴らと一緒にするでない!我は、神獣であるぞ人間がぁ!」


 大きく口を開けて一気に俺に襲いかかる狼の鼻先を右手で押さえつけながら背後へいなす。


 ズザザァァ〜ー!!


 アンギャーー!!


 俺の背後にいたエルフ達の場所に狼が勢い良く倒れ込んでしまったため、数人が巻き込まれたようだ。


(す・・すまん、罪なきエルフさんたち・・)


 エルフの陣形の中で倒れ込んだ狼は、俺に二撃目を出すことなくその場で鼻をヒクヒクさせている。


「狼さん、もう終わりなのか?」


「・・人間よ・・貴様の手から同族の匂いが微かに感じるぞ」


「同族?まぁ、人間同士触ることあるしな・・」


「ち・・違う!この我と同族の匂いだ!それも2つも・・・・」


 いつの間にか、狼から威圧は解かれていることに気付き俺は警戒心を解く。


「そうか?気のせいじゃないか?それよりも・・エルフ族に何かしたのか?」


「・・人族に我の大事な宝を奪われたため、その捜索を命令していたのだ」


 俺は溜息をついて口を開く。


「自分で探せよ・・お前、神獣なんだろ?」


 白銀の狼は、体をビクつかせ痛いところを突かれたような目をして口を開く。


「それは・・我が人族に捕らえられてしまうかもしれん。だから、エルフ族に命令しているのだ」


「他力本願まっしぐらだな・・この帝国が亜人を軽蔑視しているだろ?捜索だなんてリスクが大き過ぎるだけじゃないか?」


「そうですよ、フェンリル様!もう、何人も捕らえられて奴隷にさせられてしまったことか・・・・」


 カリナが悔しそうに叫び、その姿を見た白銀の狼が何か考えているようだった。


「・・・・ならば、同族の匂いを感じる貴様を頼るしかないか・・」


「えっ?俺が?ムリムリ!!」


 断る俺の話を聞かずに白銀の狼は、ゆっくりと俺に近付いて左頬をペロッと舐めた後に何も言わず森の奥へと姿を消した。


「ハル殿・・」


 カリナとエルナが必死な表情で俺に寄ってくる。


「カリナ・・あいつの宝の捜索に手掛かりがあるのか?」


 カリナは頷く。


「・・一つだけ手掛かりがある」


「教えてくれ」


「それは、フェンリル様が言うには、帝国と王国の国境付近の山で数年前に人族によって奪われたと・・」


「は?・・まさか、それだけじゃないよな?」


「・・・・・・それだけだ」


 俺は、絶望した。エルナの依頼は、どうやらフェンリルの奪われた宝の捜索依頼だった。


 亜人だけでの捜索の限界を感じ人族の助力を得ようとして、たまたま俺達が依頼を受けてしまった。


 しかも、あのクソ狼が俺に頼るとも言っていたし。


「はぁ・・これからどうなってしまうんだろ・・」


「すまぬ・・」



 村の中央広場に俺の落胆の声とカリナの謝罪の声が、風に乗って消えて行くのだった。


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