表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/300

6章 帝国編 2話 新なる旅立ち②




「あれは・・冒険者か?」


 街の方から街道を馬に乗り爆走する集団に巻き込まれないよう、道の端で立ち止まり通り過ぎるのを待っていると俺の前で止まってしまった。


「おい坊主!さっきの爆発見たよな?」


「あっはい・・歩いていたらあの山が突然爆発しました」


 男に聞かれた俺は降りてきた山を指で指して答える。


「そうかそうか。だから服がボロボロなんだな」


 男に指摘されて服を見ると、ボロボロになっていることに気付く。


「あぁ、そうですね。爆風に巻き込まれて派手に転びましたから」


 男はニヤリと笑う。


「無事で良かった。邪魔したな坊主・・おい!お前ら急ぐぞ!」


 男の合図により集団は出発し山小屋の方へ走り去って行くのを見送っていると、最後尾の女と数秒見つめ合い興味をなくしたのか、何も言わず去って行った。


「あれ・・どこかで会ったかな?」


 集団と別れた俺は、早足で街道を進み2時間後に目的の街に辿り着く。


「初めて見る顔だな?身分を証明するものを出してくれ」


 周囲の門兵は検査を受けている俺を不審そうに見ている。


「まぁ、この街は初めてきましたからねって・・アレ?ちょっと待ってください・・・・ギルドカード・・カード失くしたみたいです」


「なに?・・なら、この水晶玉に触れてくれるか?」


「・・わかりました」


 指示通りに水晶玉を右手で触れるが、水晶玉の色が変化することはなく門兵の表情から警戒が消えた。


「よし、問題は無いみたいだな。通行税で金貨1枚だ。今日中にギルドカード発行して提示した場合のみ返金可能だ。改めて、ようこそ!イティカの街へ!!」


 ニコッと笑う門兵に金貨1枚を渡し無事に街に入ることができた。


 人がまばらに歩く通りを見渡しながら適当に歩く俺は、この街の宿を探すがなかなか見つけることができないため、たまたま近くの商店で陳列している男に声を掛けた。


「あの・・すいません」


「いらっしゃい!何かお探しで?」


 声を掛けた商店の男がスッと近づき、近過ぎる間合いに1歩距離を取った。


「いや・・その、この街の宿屋の場所を聞きたくてですね・・」


「なんだ・・宿ならこの通りをあっちにズバーン!って行って、左にズバンと歩いてクイッと右に曲がった先に見えるのが宿屋街だ!ついでにうちの野菜買ってくれよ」


 男のよくわからない説明を理解した振りをして、笑顔で渡された赤く実ったトマトを食べてみる。


「ん・・うまい」


 甘みと酸っぱさのバランスがとれた味で、とてもみずみずしいトマトだ。

 

「だろ〜?うちの母ちゃんの菜園で今朝採れたヤツなんだ。他のもうまいぞ!」


 男の・・いや、おっちゃんの勢いに負けた俺は、トマトの他に根菜類などの野菜を金貨2枚分買ってしまい店に陳列された商品をほとんど購入し、そのままアイテムボックスに収納した。


「あんちゃん・・それはアレかい?まさか・・どこかの貴族様じゃないよな?」


「・・貴族?違いますよ!ただの平民冒険者ですから」


 先程までの威勢は消え去り、青い顔で俺を見て震えている。


「な・・ならいいんだけどな・・俺はゴーブだ。これからもよろしく頼むな」


「俺はハルです。また買い出しの時に利用させてもらいますね」


 ゴーブと別れ、彼のよく分からない説明を頼りに宿屋街を目指し歩いて行くと、すんなりと宿屋街の入り口前にたどり着くと十数軒の宿屋が立ち並んでいた。


 宿屋街を見渡しながら歩いていると、ちょうど5軒目の宿屋から茶髪の少女が1人飛び出し俺の前で立ちはだかる。


 ズザザザァ!!


「うわっ!なになに?」


「お兄ちゃん!うちに泊まっていって!」


「いきなり子供に夜の誘いを受けるのもな〜」


「ち・・違う!バカッ!そんなんじゃなくて・・」


 茶髪の少女は俯き耳まで赤くして否定する。


「違うなら他にするよ」


「な・・だから、うちの宿に泊まって!」


「アーソウイウコトカー!お兄さん勘違いしてたナー」


 顔を上げて涙目で訴えてくる茶髪の少女に値段を聞いてみる。


「ちなみに、1泊いくらなの?」


「銀貨2枚くらいから・・・・」


「銀貨2枚?安いけど、その2枚くらいからって何?」


 俺の問いに答えることなく、強引に宿屋へ連れ込まれた俺に奥から女性に声を掛けられた。


「いらっしゃいませー!2名様ですね〜!」


「2名様?・・あの、泊まるの俺だけなんだけど・・」


 受付にいた茶髪の女性は笑顔で対応しているようだが、俺の話しを聞かず話しが進んで行く。


「1泊銀貨2枚で2名様なので銀貨4枚からになります」


「ちょっと、おねーちゃん!なんで私が客になっているのよ?どう考えてもおかしいでしょ?」


「・・あら、よく見たらサーシャじゃないの?あなたの分も彼に払ってもらえれば儲けものじゃない・・」


 どうやら2人は姉妹のようで、言い合っている隙に俺はこの宿屋から出ようとして、あと1歩のところで2人に気付かれてしまう。


「ちょっとお兄さん!逃げちゃダメよ!待って・・あっ!!」


 呼び止める声を無視して宿屋を飛び出した俺は通りを走り街を歩く。


「あの姉妹には参ったな・・とりあえず商店に寄って必要な生活必需品を買いに行くか・・」


 なにも考えず通りを歩き、気になった商店に入ろうと歩いていると1軒気になる商店を見つけ入ることにした。


「こんにちは〜」


「いらっしゃい。こんな店にくるなんて珍しいわ」


 俺を出迎えてくれた店主は金髪碧眼の女エルフで、棚に商品を陳列していた手を止め振り返り俺を見る。


「どうもです・・なんか気になって入っちゃいました」


「そう・・ならこの街の人じゃないようね。ゆっくり見てね」


 そう言うと彼女は、止めていた作業を再開する姿を俺は見てから陳列されている商品を眺める。


 気になった商品を1つ1つ手に取りカウンターに並べた。


「これらを買います」


「ありがとう、10点で金貨2枚ね」


 金貨2枚を支払い、受け取った商品をアイテムボックスに収納すると、エルフの彼女の目が見開き消えて行く商品をジッと眺めている。


「人族の冒険者で空間魔法持ってるの初めて見たわ」


「そうですか?アイテムボックスですから、空間魔法とは違うような気がしますけどね〜」


「その言い方、空間魔法を会得しているのね?」


「・・・・まぁ、そういうことになるかな・・」


 まじまじ見てくるエルフ店主とのやりとりを終わらせ店を出たあとは、あてもなく街を歩き陽が沈む頃に宿屋街に入ることにした。


 俺が宿屋街に入った瞬間に茶髪の少女が柱の影から飛び出し抱き付いてきた。


「おわっ」


「おかえりお兄ちゃん!こっちだよ!」


 今回は問答無用で俺の手を掴んで、あの宿に連れ込まれた。


「あら、お帰りなさい。夕飯はどうしますか?」


「・・え?夕飯?」


「うちの夕飯美味しいよ?」


 宿泊が決まっているかのように話す姉と夕飯を当然食べる前提でいる妹のペースに負けてしまった俺は、彼女達のいう通りにした。


「ご利用、ありがとうございます。銀貨5枚です」


「銀貨5枚?値上がってない?」


「妹料金が含まれてますので・・」


 受付にいる姉は、当然のように答える。


「お客さ〜ん!私のことだよ!」


 いまだに抱きついている少女は、俺を見上げて笑顔で告げてくる。


「君は、ここの従業員だろ?」


「そうだよ!サーシャが、お兄さん担当になるの」


「そういうことか・・わかったよ」


 俺は料金を支払い、サーシャに部屋まで案内してもらうことになり受付から離れる時に姉が名前を教えてくれる。


「お客さん、私はアリーシャ。その子は妹の・・」


「サーシャだよ!」


「俺は、ハル。よろしく・・アリーシャ、サーシャ」


 俺が泊まる部屋の鍵をアリーシャから受け取ったサーシャは、階段を上がり2階へ移動する。


 廊下を歩き突き当たりの部屋が、俺が泊まる部屋のようだ。


ガチャッ


 サーシャが部屋のドアを開けて、俺は部屋に入り見渡す。簡素な部屋で幅広なベッドが置いてあるだけだったが清潔感があり居心地はとても良さそうだ。


 俺が部屋を見渡していると、サーシャが質問をしてくる。


「ハルさんは、冒険者さん?」


「明日、ギルドに行って登録するから、これからそうなるかな」


「そーなんだ・・いいなぁ。えっと、夕飯が出来たら呼びに来ますね」


「ありがとう、しばらくは部屋でくつろいでいるよ」


 サーシャは頷き部屋のドアを閉めて1階へと降りて行く。


 部屋に1人になった俺は、ベッドに倒れ込み今後の予定を考えながらいると、いつの間にか意識を手放していた。



 暗闇の中、体に何かが乗っている感覚で沈んでいた意識がだんだん覚醒し始めてきて、ゆっくりと目を開けると茶髪少女が馬乗りになって俺を見ている。



「ん・・・・サーシャ?」


「あ・・・やっと起きましたね。夕飯ができたので呼びに来たら寝てたので起こしちゃいました」


「そっか・・ありがとう。だけどさ・・・・見えてる」


「見えてる?」


 サーシャは少し短めのスカートを履いていたが、俺に馬乗りで膝を立てていたためスカートが捲れて白い下着が俺からハッキリと見えてしまっていたのだった。


 俺が向ける視線の先にあるものに気付いて、慌ててサーシャが足を閉じたせいで俺は反射的に体を捻ったためバランスを崩したサーシャが倒れ込んできた。


 キャッ・・ドスン・・


 俺に向かって倒れ込むサーシャを反射的に受け止めた両手が、サーシャの胸を掴んでしまい慌てて手を引いたことでそのまま両胸を触った状態のまま俺とサーシャの顔は口付けをしてしまうような距離にまで寄ってしまった。


 互いの呼吸を肌で感じ、心臓の音が聞こえて来そうな程の静寂に包まれた部屋で長くも短い時間を見つめ合う俺とサーシャは、何も言わずソッと軽くキスをする。


 軽くキスをした後も見つめ合うが言葉を交わすこともなく2度目のキスで互いに強く抱きしめ合った。


「あっ・・ハルさん、そろそろ食堂に行かないと、お姉ちゃんが・・んっ・・」


「そうだね、そろそろ行かないとダメだね」


 俺とサーシャはキスと抱擁をしたが、その先に進むことはなかった。


 互いの乱れていた服を直して部屋を出て食堂に移動する。


 階段をおりるとサーシャは調理場へ向かい俺は空いている席に座り食事が運ばれて来るのを待ちながら周囲の客を見ると冒険者パーティーが2組とソロ冒険者が4人いるようだった。


 冒険者パーティーは、魔物討伐の反省会を兼ねた食事でエールを飲みながら良い関係性を持っているように見える。


 ソロ冒険者は、皆無言で食事を食べ終えると部屋へと帰って行った。


「ハル〜お待たせー!」


 サーシャが笑顔で夕飯を運んで来てくれたついでにエールを注文し金貨1枚を渡す。


「こ・・こんなに?」


「足りなくなったら、言ってね」


 サーシャは頷き調理場へ戻ると直ぐにエールを持ってきてくれた。


 今日の夕飯は、肉と野菜たっぷりスープとパンで量が多く予想外に満腹になってしまった。


 食べ終えた頃にサーシャが食器を片付けてくれて、他の冒険者達が部屋に戻り食堂に誰もいなくなったことで俺とサーシャは雑談をして日付が変わる前にお開きとなり部屋へ戻りベッドで眠りつくことにした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ