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1章 はじまり 7話 思惑と繋がり・・からの依頼

 トニーが真剣な面持ちで話してくる・・・・


 似合わない・・と心の中で思うだけにしよう。


「実はな・・・・勇者召喚の儀式を準備しているらしい」


 四人の空間に無言の時間が流れる。隣のミオは、マイペースで肉を食ってるけど・・こいつブレないな。


 先に口を開いたのはカラだった。


「でも、勇者召喚は御伽噺の世界じゃないの?」


「カラ・・俺も聞いた時は、そう思ったさ。でもな・・王城に入る王族関係者が激増しているんだよ」


「そうなの?」


「あぁ。今日も事前通告無しに第1王女様が帰ってきたしな」


 リサが何か思い出したように呟く。


「たしかに・・ギルドの魔物討伐依頼件数が、最近飛躍的に増えているけど・・・・」


 カラは同意するように頷いている。


 現実味を帯びない話に俺は否定的になる。


「まぁ、例え王族が本当に勇者召喚しようが平民の俺には関係ないな〜」


 グラスに残っているエールを一気に飲み干す。その後は、しょうもない話で盛り上がり閉店の時間を迎えて、お開きになった。


 酒場ガブリン亭を出てトニーが先に帰り、顔を真っ赤にし足元が覚束ないミオを途中から背負い帰ろうとしたら、心配する二人が俺の家まで付いて来ることになった。


「リサ・・家の管理ありがとな。助かったよ」


「いいわよ別に・・・・こっそり・・んでた・・し」


 リサの声は小さく最後の方は聞き取れなかったけど、聞き返す気にはなれなかった。そして家に着いて寝室のベッドに熟睡中のミオを寝かせリビングに戻ると、リサとカラが今晩は泊まると言ってきた。


「二人ともマジで言ってるの?」


「「マジだよ〜。ねぇ〜・・・・アハハハ」」


 酔っ払っている二人はテンションが高い。こんな夜更けに女二人を夜道に送り返すの危険すぎる。このまま泊めた方が無難と思い、今は使っていない寝室に二人を泊めることにした。


「二人じゃ狭いけど、我慢してな」


「は〜い。こっそり夜這いに来てもいいからねー」


 カラがとんでもないことを言いながら、一瞬固まってしまった俺の右腕に絡み付き、優しく耳に息を吹きかけてきた。


「あっ・・カラ酔いすぎ・・・・」


 背筋がゾゾっとして、心拍数が跳ね上がる。


「カラ、一人だけずる〜い。わたしも〜」


 ベッドへ先に横になっていたリサが起き上がり、俺の左腕に胸を押しつけるようにくっついてきた。


「ふ・・二人とも酔いすぎだよ・・このままじゃ・・・・な?」


「「このままじゃ?・・なーに??」」


 酔っている二人からは妙な色気を感じる。西の都市から帰ってきて久し振りに会ったせいなのか魅力的に感じている俺がいる。このまま酔った勢いで・・と囁くもう一人の俺がいる。


「「な〜に〜??」」


 両方から柔らかい物理攻撃と精神攻撃をしてくる。二人ともギルド人気受付嬢だ。


 二人に掴まれていた腕を外し、そのまま腰に手を回し抱き抱えベッドへ優しく倒す。そのまま二人から離れるように立ち上がり部屋の扉へ歩く。


「「アッ・・・・」」


 背中から二人の声が聞こえるが無視して扉をゆっくりと閉める。隣の部屋でミオが寝ているから。


「仕方ないな・・」


 俺は振り返るとベッドで横たわる二人と視線が重なる。部屋の扉を閉めたけど部屋から出ていない。ただ扉を閉めただけ。部屋の魔法ランプを消すと、窓から差し込む月明かりだけになる。


 ゆっくりと二人のいるベッドに近づき、そのまま腰掛けるとリサとカラが上半身を起こし無言で見つめ合う時間がゆっくりと流れた。


「・・ハル」


 リサが両腕を伸ばして、俺の首に回して近づき軽く唇を合わせ離れた。その後にカラもリサと同じ仕草をして唇を合わせた。二人とも黙って俯いている。


 今度は俺から近づき、リサとカラに唇を合わせると二人は笑顔になり俺を見つめてくる。


「リサ・・カラ・・好きだ・・」


「「わたしも好きよ・・ハル」」


 このまま3人でたくさん抱きしめ合って、お互いの存在を確認し夜が更けていき眠りについた。


 目が覚めたら俺は、軽い疲労感を残す体を起こす。左右には生まれたままの姿になっている、リサとカラが寝ている。二人の頭を軽く撫でて、起こさないようゆっくりとベットから出て服を持ち部屋を出る。


 外はまだ暗い。二度寝をしようと思いリビングのソファで横になり、眠る前にリサとカラとの出来事を思い出す。


「まさか二人が泊まって・・最後までするとはな・・・・」


 そう呟きながら目を瞑り、深呼吸をしてゆっくりと意識を手放した・・。




 ここは・・・・・・


 あれ・・あの黒髪少年は確か・・・・


 あっ・・騎士達に連行されていく・・


 あぁ、またあの夢か。あの黒髪少年・・あの後どうなったんだっけな?





 全身に何かが乗っている感覚に包まれる。


 だんだん意識が覚醒していく・・。


 ゆっくり目を開けると、目の前に三角の黒い山が二つそびえ立つ。山なのに焦点が合わない。


 二つの黒い山がときどき動いている・・ピコッピコッと。


「山って動くものだっけな?」


 片方の黒い山に手を伸ばす・・届いてしまった。



 さわさわ・・サワサワ・・コリ


「ふにゃ〜〜〜〜」


 甘えた声を発しながら、体に乗っているものがモゾモゾと動く。


「お?この山は喋るのか?・・じゃなくて、ミオ?」


 ソファで寝ている俺の上には、寝室で寝ているはずのミオがいる。


「んにゃ〜・・おはようです」


「ミオ・・寝室で寝てただろ?」


「はい・・ちょっと寒くて目が覚めました。ここに来たらご主人さまを見つけたので宿屋の時のように側で寝ることにしました」


 ペロっと赤い舌を少し出して笑うミオの可愛さに負けて苦笑いしながら頭を撫でてやる。


 起き上がった俺は、ミオをソファに座らせて朝食を作ることにする。アイテムボックスから、こないだ買っていた肉串の残りを出して魔法コンロで軽く焼いてミオに渡す。それと、家に保存してあった野菜でスープを作る。


「ミオ、熱いからな」


ゴクッ・・


「あぅ・・ち」


 喉を詰まらせかけていた肉を流し込むために、できたての野菜スープを一口飲んでしまったミオは涙目になる。

すぐさまコップに水を入れて渡すと一気に飲み干している。


「だから言ったのに」


「うぅ〜」


 口を火傷したバカ猫に朝食を与えた後は、まだ寝ている二人の朝食を支度するためキッチンに戻ると、同時に二人がリビングに入ってきた。


 なんだかちょっと歩き方が2人ともぎこちないけど、俺は気付いてない調理に夢中なフリをする。


「「おはよう〜」」


「おぉ、おはよう、朝飯食うか?」


「「食べる食べる〜」」


 俺と二人はパンと野菜スープにして一緒に朝食を食べていると、先に食べ終わっていたミオは、窓際へ移動し日向ぼっこをしながら外を見ていた。


「「ハル、ご馳走様でした」」


「おうよ」


 ささっと朝の支度を済ませたリサとカラは、先に冒険者ギルドへと直接出勤して行くのを見送る。


 俺とミオは、のんびり支度を整えてからギルドへ向かい今日の依頼票を見にいくことにする。


「ミオ、そろそろギルドに行くぞ〜」


「はい」


 

 ギルドに入ると、朝早い時間でも冒険者パーティーが数組いる程度で、リサは依頼掲示板に依頼票を貼る作業をしているのを見つけ声をかけた。


「リサ、なんか効率の良い依頼ある?」


「ハル・・そうね〜コレなんかどう?」


「ん?商隊の合同護衛か・・報酬も金貨2枚だけど、集合は今日の昼で、細部は現地で告げるか・・・・ミオ、この依頼でも良い?」


「はい」


「リサ、この依頼受けるよ」


「はーい。窓口まで来てね」


 リサに俺とミオのギルドカードを先に渡してから窓口へ向かうと、リサは素早く依頼手続きを済ませてくた。


 ギルドカードを受け取りギルドを出る俺とミオは、依頼の集合時間が昼だったため、商店に寄り買い出しをすませることにした。


 大通りを歩き、冒険者の駆けだしの頃から世話になっている商店へ足を運ぶと、いつもの店主が出迎えてくれる。

「おはよう、ルーシーさん」


「おはよう、ハル。久しぶりだね。しかも可愛い子連れてさ」


 女店主のルーシーは、恰幅の良い中年女性だ。若い頃は冒険者で当時は人気だったらしい。


「彼女はミオって言うんだ」


「ミオです。初めまして」


 ミオは、俺の隣でお辞儀をする。


「わたしは、ルーシーだ。よろしくなミオちゃん」


「はい。よろしくお願いします」


「それで、今日は何が必要かい?ハル」


 店内のカウンターで肘をつき対応するのは相変わらずだ。でも、この店の品揃いは王都で1番と言っても過言ではない。


「ポーション類と携行食かな。あとは・・野営セットがあれば助かる」


「あいよ。ちょっと待ってな」


 ルーシーは店内に陳列している商品を集めることなく、奥に入って行った。しばらくして、ルーシーは手ぶらで戻って来たがカウンターの上に体力回復と魔力回復ポーションの瓶を40本程並べ、次に携行食を並べた。


「ルーシーさん・・この量をどこから?」


「あら?言ってなかった? 私もアイテムボックス持ちよ」


「あーなるほど。そしたら全部ください」


「二人分にしては多過ぎないかい?まぁ、ハルなら関係ないわね」


 ルーシーに金貨2枚を渡して、カウンターに置かれた商品を次々にアイテムボックスに収納する。


「相変わらず金持ちだね、あんたは。それにしても・・際限なく入るわね・・次は、野営セットだね」


 テントと毛布を数種類並べてくれる。それを一つ一つ見て必要な物を決める。


 大人5〜7人が入れそうなテントと毛布を4人分買い、追加でランプと調理セットを買い揃えた。


「ルーシーさん、香辛料はありますか?」


「あるよ」


 香辛料を数種類購入し終え、商店を出て大通りを歩く。途中の出店から漂う香ばしい肉の香りにミオがフラフラしながら寄って行く。


 最近、バカ猫が悪化したような気もするけど、もう気にしないでいよう。


「ミオ、昼飯は肉串で決まりか?」


「お願いします、ご主人さま」


 出店で肉串を6本と果実水4本買って再び大通りを歩き、依頼の集合場所へ向かう。


 はずだったが、ミオがじっと肉串が入った袋をガン見しているため、途中の噴水広場で軽く食べることに決めた。


 なんとか、肉串1本で我慢したミオの頭を撫でて噴水広場から移動し集合場所に集合時間ギリギリでたどり着くことができたのだ。



「まさか、こんな場所で集合とはね・・」



 周囲には複数の冒険者パーティーが集まっている。



 ここは・・王城正門前広場だからだ。


 時間になると王城正門横にある通用門が開き、4人の騎士が出て集まった冒険者達の前に立つと、雑談をしていた冒険者達は静かになり騎士達を見つめている。


 そして、ゆっくりと1人の騎士が、広場に設置されている壇上に上り見渡し告げた。


「よく集まってくれた冒険者の諸君。私は王国騎士団副団長のアイナ=スクートだ。商隊の護衛依頼と思って皆は来ているだろうが、これは偽の情報だ」


 集まっていた冒険者達が騒めくが、アイナ副団長は制止する。


「静かに!・・本来の依頼は、騎士団に所属したばかりの新人騎士の護衛である。諸事情により、騎士団のみでの新人育成訓練ができない今、皆に訓練間の護衛を頼む」



 商隊護衛の依頼だと思って来たのに、まさか新人騎士達の護衛だとは・・・・





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