5章 王都マーカー編 9話 達成すべき目標①
ハルがメインです。
お前らには死を・・破壊を・・消滅を・・・・。
王都が見える丘で1人いる俺は、沈み始めた陽を背に隠密スキルと気配探知スキルを発動し王都の門へ向かった。
門へ続く街道を走りぬけ、門兵に気付かれることなく門を通過し王都へ侵入した。
劇的に変化した俺の世界をよそに、この王都の街並みは何事も無かったようにいつもの光景だった。
「クソが・・・・」
そう呟き負の感情を纏いながら大通りを走り抜け噴水広場を通り過ぎ、あっという間に王城門前の広場に辿り着いた。
広場を見渡して見て、流石に処刑台は残っていなかったが、告知版のような物が視界に入り俺はその前に立ち内容を読む。
告
国家転覆を狙った反逆者の男の関係者である、元冒険者ギルド職員の女2名を公開処刑を執行したことをここに通告する。 マーカー王国 スパイル国王
読み終わった瞬間に抜刀し告知板を粉砕した。
「はぁ・・はぁ、リサとカラの公開処刑だと・・・・」
爆発しそうな感情をなんとか抑えて王城へ足を向ける。
王城門を警備する兵士は達は、平和ボケしているのか警戒心が薄く雑談に夢中で笑い合っている。
その横を通り抜けそのまま城内の敷地に広い中庭に来ると大勢の男女の騎士が訓練場から戻ってくるところだった。
俺は壁沿いに移動し前を通過する騎士達を眺めていると、見覚えのある騎士が1人楽しそうに仲間と会話をしながら歩いている。
右手の拳を握り彼の背中を見ながら、俺はその名を呟いた。
「・・トニー」
騎士の最後尾につき歩いて行くと、どうやら騎士寮へ戻るところらしい。
そのまま歩いてついて行き、騎士寮らしき建物に入って行く。
正面玄関から左が女騎士区域で右が男騎士区域のようで、俺は右に曲がりトニーの背中を追う。
ガヤガヤと騒ぐ騎士達が、それぞれの部屋に入って行く。
トニーは廊下を曲がり一番奥の部屋のようで、もう他の邪魔をする騎士達は部屋の中だ。
そして、とある部屋の前でトニーが立ち止まったところで一気に背後に立つ。
そして、部屋のドアを開け中へ1歩踏み込んだ瞬間にトニーの背中を渾身の力で蹴り飛ばす。
「ぬぉ」
ドゴン!
不意急襲的に蹴り飛ばされたトニーは、何か声を漏らし部屋の奥の壁に激突しうずくまっている。
その間に隠密スキルを解除し、トニーに俺の姿を認識できるようにさせ部屋のドアを閉めて施錠する。
「くそっ!誰だ!こんなイタズラをする奴は・・許さねーぞ!」
トニーがゆっくりと立ち上がる。どうやら危機管理意識は低いようだ。俺じゃなきゃもう殺されているぞ。
「・・冗談?なに惚けているんだ?本気だぞ・・トニー!」
「なっ・・その声は・・」
トニーは立ち上がり俺と視線が重なる。
「久しぶりだな、トニー。元気だったか?」
「お・・おま・・ハル、生きていたのか?」
トニーは、俺に話かけながら足元に転がっている剣に一瞬視線を動かして取ろうとしている。
それを見逃さない俺は、一気に間合いを詰めながらアイテムボックスから片手剣を抜き出しトニーの喉元を左手で強く締め上げ下腹部から壁まで一挙に突き刺す。
「んぐぅぅぅ」
トニーは目を見開き苦悶の表情で俺を睨みながら。声にならない音を口から血を吐き出しながら痙攣する。
俺は、左手を締め上げていた喉元を開放しトニーから離れる。
その直後にトニーは、さらに吐血し痙攣を繰り返している。
「・・なぁ、トニー俺ら幼馴染だったよな?どうして・・こうなっちまったんだ?」
俺からの問いに、トニーは何も答えない。ビクビクと全身を震わせ涙を流し苦悶の表情を俺に見せるだけだ。
「そうか・・最後に何も答えてくれないんだな」
溜息をついた後に、トニーの下腹部に突き刺した片手剣を両手で握り90度右に回転させ左横腹へ斬り裂くように抜いてやった。
ドサッ
その場に倒れ込んだトニーは、臓物を床に撒き散らし血溜まりの中で天井を見つめている。
しかし、その瞳に先程まで持っていた輝きは失われつつある。
そして、何かを言おうとして小刻みに震えている口から微かに声が聞こえた。
「・・お、おれは・・わる・・くない。だ・・だんちょ・・の・・め・・れいだ・・」
ブシュッ!!
トニーは2人の幼馴染への謝罪では無く、言い訳をしたことに対して片手剣を喉元に突き刺すことで応えてやった。
光を完全に失った瞳に生命の鼓動は、もう感じない。
「じゃあな・・トニー」
そう言って、ベッドのシーツで片手剣についた血糊を拭き取りアイテムボックスに収納し部屋を出る前に隠密スキルを発動させ、王族が暮らす場所を目指す。
騎士寮を出た俺は、再び中庭を通り抜けて何事もなく王城に侵入した。
長い廊下を歩いて角を曲がると、正面から茶髪の若いメイド1人歩いて来る。
俺はすれ違った後にメイドの背後にピッタリとつけて、口を塞ぎ威圧的に語る。
「今ここで死にたくないなら、大人しく王族の部屋まで案内しろ」
「ひっ」
突然の拘束そして脅迫されたメイドは、ガタガタと全身を震わせ小さく何度も頷く。
「塞いだ口は自由にするが、周囲に助けを呼ぶ行為をしようとした瞬間に首が体からサヨナラだ」
そう脅しながら、アイテムボックスから出した解体用のナイフをメイドの喉元に当てる。
確実な死を感じたメイドは呟く。
「・・はい、あなた様の命令に従います。なので、命だけは・・・・」
「・・案内しろ」
そう伝えると、メイドは震える足をスカートの上から抓るような仕草をして歩き始める。
廊下を歩き進める間に何度か同僚のメイドとすれ違ったが、違和感なく挨拶をしてやり過ごして行く。
初めは、廊下の角を曲がる度に視線を後ろに向けていたメイドだったが、何度見ても姿が見えないことに諦めたようで今は後ろを見ようとしなくなった。
メイドの案内で上層階へ上がって行くが、フロアごとに設置された階段の場所が違うため俺1人だと時間がかかってしまっていただろうなと思い、前を歩くメイドに感謝しながら歩いて行く。
そして、7階層目の廊下にきた時に前を歩くメイドが立ち止まった。
「あの・・いらっしゃいますか?」
「どうした?」
メイドは振り向かず喋り続ける。
「ここから先は、王族の専属メイドのみが入れる場所となります。このまま私が行くと捕えられて牢獄行きになってしまいます」
「・・だから?」
「あぅ・・・・すいません。行きます」
振り向くことなく歩き始めたメイドの肩をソッと掴み止める。
「ひゃっ」
「この先からが王族の場所なのか?」
硬直するメイドの耳元で、俺は聞く。
「は・・はい。あの赤い扉の先からは、国王の執務室や王と王妃そして王女の部屋がありますが、詳しくはわかりません」
「そうか・・ありがとう」
俺は、アイテムボックスから金貨が入った巾着を2つ取り出し、メイドの胸元に忍ばせる。
「いやっ・・んぁ・・」
そして、初対面の彼女を背中から優しく抱き寄せて耳元で囁く。
「怖い思いをさせてゴメンね。決して許される行為じゃないことはわかっている。けど、俺のするべきことをするために君を利用させてもらった。謝罪を込めて、この巾着を受け取って欲しい。そして、俺と別れたらすぐに王城から遠く離れて欲しい」
「えっ?えっ?」
俺の言葉にメイドは混乱している。メイドと別れる前に隠密スキルを解除し姿を晒し、俺の容姿を見たメイドは両手で口を覆い俺を見つめている。
「あっ・・あっ・・あなたは・・ハ・・」
俺は、彼女の口に人差し指を軽く当てて呟く。
「しぃ〜。贈ったものは、決して誰にも気付かれないようにね。ここまでありがとう・・元気でね」
何度も振り返り廊下を歩き去るメイドに手を振って見送り、階段を降りる際にメイドが一礼をして姿が見えなくなった。
そして、メイドを見送った俺は王族達が生活する赤い扉を目指し歩いて行く・・・・。
これからも、よろしくお願いします。




