5章 王都マーカー編 6話 帰還・・夢か現実か
朝いつものように目を開き意識が覚醒していく。
「見知らぬ天井だ・・・・なんてな」
どこか遠く懐かしい感じがする部屋のベッドで俺は横になっている。
上半身を起こし部屋を見渡すと、整頓して並べられた本棚や勉強机そしてテレビが置いてある。
「・・俺の部屋か・・・・」
散らかった勉強机には、キャンプ情報誌が何冊か無造作に置いてある。ベッドから立ち上がり目に入ったキャンプ情報誌を手に取りパラパラとページをめくる。
たまに付箋しが貼られ豆知識的なことが汚い字で記入されている。
「きったね〜字だな・・これなんて書いてあるんだよ・・って俺の字か」
2冊目のキャンプ情報誌を手に取り、机に腰を掛けて読んでいるとノックも無しに突然部屋のドアが開けられて制服姿の少女が入って来た。
「おっと・・・・」
少女は俺を見ることなく一目散に、さっきまで俺が横になっていたベッドに勢い良く倒れ込む。
「・・ねぇ、君どうしたの?」
「・・・・・・」
俺の問い掛けに応じない少女は、ベッドに倒れこんだままだ。
すると、少女から小さな呟きが俺の耳に入る。
「あいたい・・会いたいよ、おにぃ・・どこにいるの?・・どこ?」
俺はドキッとして返事をしようとしたと同時に背後から声を重ねられた。
「なん(琴音、今日もにぃにの部屋に居たんだ)」
背後から聞こえた声も聞いたことがある。そう思っていると、ベッドに倒れ込んでから布団に潜り込んでいた少女が顔を出す。
「うん。だって、おにぃの部屋に居るとすぐ側に居る気がするもん。さっき布団に潜り込んだ時に微かな温もりと、おにぃの匂いがしたんだよ!美音は感じない?」
美音は部屋の入り口から部屋を見渡しながらゆっくり歩いて、ベッドに座り口を開く。
「もちろん感じるよ。なんだか今は、昨日まで感じなかったにぃにの温もりを感じるよ。それにさ、この右手に付けた3人お揃いのミサンガ切れてないしね」
美音はそう言い終えると、琴音が入っている布団に潜り込んでしまい、2人が俺との昔話を目に涙を溜めながら反し続ける姿を、ただただ黙って俺は見守ることに決めた。
夕陽が沈み、部屋が暗くなった頃には琴音と美音はいつの間にか寝息をたてて寝てしまったようだ。
「相変わらず仲が良い双子姉妹だな・・」
そう感じていると、1階から俺を呼ぶ女性の声が聞こえる。
「・・ハル・・ハル・・ハル・・」
自然と部屋を出て廊下を歩き階段を降りると、リビングの方からまた声が聞こえる。
「ハル・・ハル・・」
声が聞こえたリビングのドアを開けて入るが、誰もいないがテレビはついたままだった。
「美音の奴・・まだこの癖が残ってるんだな」
そう呟きながら、リビングテーブルに置いてあるテレビのリモコンを取りテレビを消すと暗くなった画面に白の服を着た人間が見えた。
「誰だ!」
早まる鼓動を隠しながら振り向くと、白色のワンピースを着た金髪と青髪の2人の女性が微笑んで立っていた。
この2人の女性は見た事があるようでないような、頭の中がモヤモヤに包まれて思いだせない。
「・・あなた方は?」
「「わたしのこと??」」
「・・はい」
金髪と青髪の女性は互いの顔を見合わせて俺を見る。
「「・・それはね」」
2人の女性が音もなくスッと俺の前に近づき右手の人差し指を、俺の口に優しく当てて呟く。
「「今は、ヒ・ミ・ツ・よ。それよりも」」
「それよりも?」
「「みんなが、あなたの帰りを待っているわ」」
「みんな?・・みんなって誰ですか?」
俺の質問で、2人の女性の表情は寂しそうな顔になる。
「「そう・・憶えてないのね。それが条件なのかしら」」
「あの・・あなた方はいったい・・」
「「ふふっ・・まだ知る必要は無いわ」」
そう言い残した2人は踵を返しドアを開けてリビングから出て行く。
「・・・・ちょっちょっと待ってください!」
俺は2人の女性を追いかけるため、少し遅れてリビングのドアを開けて廊下に出た。だけど、もう女性の姿は無い。そして、女性の正体を聞くため2階の俺の部屋で寝ている琴音と美音を起こすため階段を駆け上がり部屋のドアを開けて中に入った。
入った部屋は、琴音と美音が寝ている俺の部屋ではなかった。真っ白な空間に飛び込んでしまった俺は、一気に平衡感覚を失い真っ直ぐ立っていることができずに倒れ込む。
防御反応により、両手を伸ばし受け身を取ろうとしたが触れるはずの床は存在せず、そのまま下へ向かい顔が白い何かに押し付けられる感覚になり、一切の抵抗もできずされるがまま深く沈み込んでいく。
そして真っ白な世界に包まれた俺は、意識がハッキリとしない感覚に陥り、ただ空間を落ち続けていく感覚になっている。
すると遥か向こうに小さな黒い点が視界にの端に浮かび、無意識に視線を黒い点に移動させ見つめていると、だんだん黒い点が大きくなり巨大なブラックホールだと気付く。
「うわっ・・吸い込まれる」
何もできず、俺はブラックホールに吸い込まれ暗闇に包まれた俺は、不意に後頭部に強い衝撃を受けて意識を手放してしまった・・。




