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1章 はじまり 6話 想定外の里帰り

アクセスありがとうございます。

 豪華な馬車が、二人の前を勢いよく通過する際、小窓から覗く視線と重なるハルは呆然と見送る。


 視線を戻すハルは砂埃が収まり食事を続けようとしたとき、先程の馬車が急に止まると何者かが近付いて来る気配を感じ視線を向けた。


「ちょっと!あなた達!」


「「・・・・」」


「このわたくしを見ても無反応ですの?」


「あ〜間に合ってるから」


 俺は立ち上がり、威張り散らす彼女から立ち去ろうとした。


「待ちなさい!」


(うわ〜めんどくさいのに絡まれたな・・」


「あの・・ご主人さま?」


ミオが慌ててついて来る。


「ギリー二人を止めなさい!」


瞬間、目の前に執事の格好をした老人が行く手を阻む。


「どいてくれますか?街に戻りたいのですが・・」


「申し訳ございません。ミリア様のご指示ですので」


執事の老人は一礼しているが、隙が無い。ここは大人しく話を聞くことにした俺は少女の方に振り向く。


「それで、どちら様で?」


「ぬぁ・・なんですって? このわたくしを知らない?ですって?」


「なぁ、ミオ知ってるか?」


「いえ、知りません」


 目の前の少女は奇声を発し地団太を踏んで勝手に自己紹介をしている。


「わたくしは、スパイル王国第1王女、ミリア=マーカーですわ」


 第1王女のミリアと名乗る少女は、両手を腰に当てて意気揚々と言ってきた。


「お疲れ様です・・さようなら」


 ミオの手を引いて逃げることにする。


「あっ・・待ちなさい!・・・・まってお願い・・お願いします」


 足を止めて溜め息をつく。


「こんな平民に何かご用ですか?・・第1王女様」


「コホン・・このわたくしを王都マーカーまで護衛しなさい。さぁ、光栄に思いなさい」


「・・嫌です。さようなら」


 踵を返し、第1王女から去る。しかし、執事の老人ギリーが進路を塞ぐように立つ。しかも笑顔で。


「あの・・退いてくれませんか?」


「・・・・」


「ギリーよくやったわ」


「ミリア様、当然の行動です」


 相手の都合を考え無い王族に対し不機嫌なか顔で対応することにした俺は再び王女の方に向く。


「王女の前で、なんて不服な顔なの?」


「王女様のせいです」


「私は関係ないわ。ともかく私の護衛を受けなさい」


「王女様・・それでは護衛依頼を受けれません。報酬と依頼理由を」


 王女は周囲を見渡し、人気のないことを確認すると小声で告げる。


「それは・・王城で大事な儀式を行いますの」


「儀式?なんの儀式ですか?」


「ミリア様!これ以上の口外はいけません」


 いつの間にか執事のギリーが王女の側で理由を明かさないように懇願しているが、王女様の意思は固いようで一歩前に出てきた。


「それは・・わたくしの誕生日会ですわ」


「「「・・はい?」」」


なぜか、執事も驚いている。


「だから、毎年盛大にやってますの!・・お誕生日会を・・・・」


 あまりにも予想外の理由に固まる俺とミオだが、なぜかギリーも固まっていた。


「そ・・そうですか。ちなみに報酬は?」


「・・銀貨2枚ですわ」


「さようなら、王女様・・お元気で」


 破格の報酬を提示してきたので即決で断るが、すかさずギリーが金貨3枚と告げる。


「ミオどうする?」


「はい・・報酬額は問題ないかと」


「そうか・・王女様、依頼をお受けします」


 それからミリア王女と執事のギリーが馬車に乗り込んだのを確認し、御者の横にミオと座り王都マーカーを目指し出発する。道中に魔物が数体襲って来たが、ミオ一人で危なげなく倒し進んでいく。2夜ほど野営し3日目の昼には王都マーカーの街並みが見えて来たところで馬車を止めた。


「もうここまでくれば問題はないな。おーい、護衛はここまででいいか?」


 ギリーが馬車から降りて来て報酬の金貨3枚を渡してきて馬車に戻る。小窓からミリア王女と視線が重なる。


「第1王女様、これにて失礼します」


 馬車は動き出し王都マーカーへ向かった。馬車を見送り見えなくなったところで、王都へ向けてミオと歩き出す。


「まさか地下ダンジョン行かずに帰ってくるとはな」


「そうですね、ご主人さま」


 しばらく歩き王都西門に入る列に並んで待っていると、一人の門兵が近付いて来る。


「おーい、ハルじゃないか」


「あぁ、トニー久しぶりだな」


「ちゃんと無事に帰って来たんだな。そうだ、今夜は久しぶりに呑まないか?」


「どうしようかな・・」


隣にいるミオを見ると笑顔で頷いてくれた。


「いいよトニー。久しぶりに呑もう」


「よーし決まりだ。・・で隣にいる子は?」


「相棒のミオだ」


「ミオさん、ハルの幼馴染のトニーだ。よろしく」


 ニカっと笑うトニーが気持ち悪い。無意識にミオを背後に寄せる。


「初めまして・・ミオです」


「よろしくな。ハル、いつもの場所でいつもの時間に集合な」


 トニーは、ミオに手を振りながら持ち場へ戻っていく。そして、俺たちの番になりギルドカードを提示し王都の街中に入っていく。


「とりあえず、冒険者ギルドに行こう。家の管理を任せている人がいるんだ」


「はい」


 人通りが多い大通り歩いてギルドへ向かう。通りに立ち並ぶ商店店主達が声を掛けてくる。軽く挨拶を交わしながら歩いていく。やがて噴水広場が見えて来た。その手前にギルドの建物があり周囲の冒険者達が順々とギルドに入って行く。


 ギルドに入ると1階は大勢の冒険者達が依頼掲示板を眺めていたり、受付に並んでいる。列の隙間から受付嬢が見えた。忙しそうに対応しているリサだ。彼女に声をかけようと思ったが、こっそりと彼女の列に並ぶ事にした。


 列に並び待っている間にミオと今後のことを話す。


「ミオ、ここのギルドで活動登録しよう」


「はい。冒険者登録は西の都市ですからね」


 話を終えると、ミオが自然と背中にピッタリと張り付いてきた。自慢のねこミミは倒れて、細く長い尻尾を抱きかかえ俯いている。


「ミオ?」


 ミオの頭をゆっくり撫でて落ち着かせる。


「次の方どうぞ〜」


 不意に受付嬢から声を掛けられたため、急いで窓口に向かうが受付嬢は下を向いて書類整理している。

まだ気付かれてないみたいだから、少し声を変えてみることにした。


「あの〜すいません、活動登録をお願いしたいんですが〜」


 いまだに書類とにらめっこしているリサは気付かない。


「はい。それでしたら、あなたのギルドカー・・ドを・・」


 リサが喋りながら顔を上げてきて、俺と視線が重なると目を見開き一瞬固まる。

 

ガタッ


 突然立ち上がり、涙目で俺を抱きしめてくるリサが耳元で呟く。


「ばか・・いつ帰ってきたの?」


「さっきだよ、リサ・・なんかごめんな」


「もう、活動記録が依頼受理から何日も達成に更新されないから心配した・・」


「心配かけさせたな」


 突然背中に回されていたリサの腕がきつく力が入ってきた。


「ねぇ、後ろにいる猫人族は知り合いなの?」


「あ・・あぁ。相棒のミオだよ。西の都市で出会ったんだ」


「へぇ〜出会ったんだね〜」


「とりあえず、ミオの活動登録を頼む」


 リサは終始不機嫌な顔でミオの活動登録の事務処理をしてくれた。ついでに今夜トニーといつもの酒場で呑むことを伝え誘ったら、仕事を早く終わらせて行くと喜んでくれた。


「それじゃ、また今夜な」


「わかった。あ・・コレ」


「ありがとう」


 リサから家の鍵を受け取りギルドを出る。家に向かう途中に飯屋で遅い昼食を食べて家にたどり着く。入ると西の都市へ出発する時と変わっていない。逆に綺麗になっている。きっとリサがこまめに掃除してくれていたのだろう。

陽が暮れるまでミオとリビングでまったり過ごす。いつの間にかミオが目を瞑り寝ているので寝室へ運びベットに寝かせる。


 リビングのソファに座り窓越しに見える外の景色を眺めていると、寝室からミオがやってきた。


「おはよう、ミオ」


「おはようございます。すいません寝てしまいました」


「護衛の長旅だったから寝不足だから仕方ないよ」


 ソファの座面を軽くポンポン叩くと、ミオはそこに座ってくる。しばらくこのまま過ごしていると日が暮れた。


「そろそろ時間だな。ミオ、夕飯兼ねて酒場に行くよ」


「はい」


 ミオと家を出て、トニーと約束した酒場がある場所に向かった。夜の街を歩くのは久しぶりだったけど、酒場のガブリン亭に辿り着けた。店に入ると、カウンター席で男が一人で飲んでいる。顔は見えないが、見慣れた背中だったためトニーだとすぐにわかった。


「お待たせトニー」


「よう、ハル。 おせーよ」


「わりぃ。リサにも声かけといたぞ」


 トニーの右隣りの席に座ると、カウンター越しに店員が注文を聞きにきた。


「エールを二つと・・・・果実酒を一つ。それと肉焼きを二人分よろしく」


 注文を受けた店員は、調理場へ戻るとエール二つと果実酒を持ってきた。果実酒が入ったグラスをミオの前に置くとクンクンと香りを嗅いでいて、ニヤついたミオが俺を見てくる。


「遠慮せず、たくさん飲みなよ」


 ミオは無言で頷いて、チビチビ飲み始めた。トニーは、若干顔が赤く酔っているせいか門兵の仕事の愚痴をこぼしまくっている。特に今日は、事前通告なく王女が帰って来て対応が大変だったと繰り返し言ってくる。この話を聞くのは3回目だ。


「あの・・ご主人さま。よろしければ、おかわりを・・」


「いいよ」


 3人ともグラスの中身が無くなったところで肉焼きを持って来た店員にエール二つと果実酒を注文し終わったところで店の扉が開き客が入って来たようだ。


「あ・・いたいた〜」


 聴き慣れた声がする方を向くと、二人の女性が入り口から近づいて来る。


「リサ・・カラも来てくれたんだね」


「ハル・・久しぶり。ギルドに来てたの知らなくて、リサに聞いてビックリしたのよ」


「今日のギルド混んでたから、声掛けに行けなかったんだ」


 リサとカラと合流し、エールを追加注文した後テーブル席へと移動した。彼女達もここで夕飯を済ませるようで

それぞれが食べたい物を注文する。正面にトニーが座りその横にカラが座る。俺の右にミオがいて左にはリサが座っている。なぜか肩が触れるくらいと近い。


 トニーはグラスを持ち上げて喋りはじめる。


「えー西の都市から無事にハルが帰って来たこと、ミオちゃん初めましてを祝して・・カンパ〜イ!」


 3人がグラスを軽く当てているが、ミオは奴隷の立場なので同じ事はしなかった。けど、ミオが持つグラスを掴んで遅れながらグラスを当ててやる。


「えっと、初めましてミオさん。わたしは、カラよ。よろしくね」


「ミオでしゅ。よろしくお願いしましゅ」


 ミオは見た感じ普通だが、まあまあ酔っているようで語尾がおかしい。ここでトニー達3人にミオとの出会いを話し

俺の奴隷だと告げた。複雑な表情だったが受け入れてくれたようだ。しばらく、雑談を楽しんでいるとトニーが真剣な面持ちで話し始めた。


「なぁ、最近の王族が何か企んでいる事を知ってるか?」


「「「王族が?」」」


「あぁ。門兵の俺たちでも、ここ最近の王族の動きが慌しいんだ」


「カラ、ギルドでは何も聞かないよね」


「そうねリサ。マスターも普段通りだし」


「第1王女の誕生日会じゃないの?」


 俺は、本人から直接聞いたことをみんなに言ったがトニーに否定された。


「第1王女様の誕生日会は、もう終わっているぜ」


「え?そうなの?」


「あぁ」


「それじゃ、何をする気なんだ?」


 トニーは、周囲を見渡してから俺達に小声で言った。


「実はな・・・・勇者召喚の儀式を準備をしているらしい」


「「「勇者召喚を」」」






















第1王女は自分の誕生日会と言っていたが、トニーが予想外のことを告げた。勇者召喚の儀式を王族が行おうとしていると。

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