5章 王都マーカー編 4話 それぞれの再会・・別れ
「なんか久しぶりだな、沖田・・・・」
「・・お・・おまえ・・」
「どうしたんだ沖田?ってアレ?声変わり?いやなんだこの感じは・・」
目の前で固まっている沖田が口をパクパクして、声になっていない。実際に驚いた人間はこうなるんだなと思う。
「沖田もこの世界に来てしまったのか・・しかも勇者として・・まぁ関係ないけどな」
「し・・椎名・・お前死んだんじゃ・・」
勇者沖田は、俺の顔を見て青い顔になって行く。
「まぁ、キャンプしていた時にこの世界に来たからな・・そういえば、沖田は何年なんだ?」
「は?」
俺の質問を理解できないでいる、勇者沖田にもう一度質問をする。
「だからさ、お前高校生になったの?」
「・・高2だ。」
「そうか、もう高2なのか。そしたら、琴音と美音もか・・」
俺と沖田が話しをしていると、ハイド騎士団長が邪魔をしてくる。
「勇者沖田様・・この場は我々に任せ、皆様のところへお戻りください」
勇者沖田は、半ば強引に騎士達の誘導により俺から離れて行く。勇者沖田を見送ったハイド騎士団長が口を開く。
「思い出したぞ・・あの欠陥品がお前だったとはな」
「・・そうだな。あの時の俺は欠陥品だったかもな。お前らは勝手に召喚し、使えないと判明すればゴミのように命を森で斬り捨てる・・」
「黙れ・・これ以上喋るな・・」
「ミリア第1王女は、あの時にいた少女ではないな?あの少女はどこにいる?ちゃんと挨拶しないと」
「・・貴様には絶対に教えぬ」
オレとハイド騎士団長の会話は、周囲の人間達に聞こえない程度の声量だ。そこへ、ハイド騎士団長の後ろからミリア第1王女が近寄って来た。
「・・あの、黒髪黒目であるあなたは、いったい何者ですか?」
「初めまして、ミリア第1王女様。俺は、数年前に召喚され棄てられた・・ハル=シイナと言います」
「・・え?召喚され棄てられた?どういうことなの!騎士団長!」
「そ・・それは、その・・」
ハイド騎士団長を問い詰めていくミリア第1王女は、なかなかの性格の持ち主だ。
「説明しなさい!」
顔から滝のように汗をかくハイド騎士団長は観念したようで、あの時の出来事を告白する。
「数年前にミリア第1王女様が不在している間に勇者召喚をした時に現れたのが、この反逆者だったのです。ステータスを見た限り平民以下の数値だったので、その場で処分が決まりました」
「・・ちょっと、処分を決めたのは誰なの?」
「・・それは、この男の前では言えません」
「言いなさい。これは、命令よ」
「そ・・それだけは・・」
「言いなさい!」
ハイド騎士団長がため息をつき、俺に背を向けて聞こえないように告げたようだ。
「・・あのイリアが!」
「ミリア様声が・・」
俺にも聞こえてしまった。処分を決めて指示をした少女の名前をイリアと言うことが・・。
「娘のイリアがどうかしたのか?」
ミリア第1王女の声で、国王が2人に声を掛けてきた。
「いえ、なんでもありません」
「なら良いが・・で、この容姿が変わってしまった、この男の処遇をどうするのだハイド騎士団長よ」
「このまま公開処刑で進めたいと思います」
「わかった。ならば、騎士団長の計画で実施せよ。決まり次第報告するように」
「お・・お父様!」
俺の処遇をハイド騎士団長に一任した国王は、この場から離れ大広間から出て行った。
それを追いかけるようにミリア第1王女も去って行く。
2人を見送ったハイド騎士団長は、俺の方を向き笑いを我慢しているかのような顔で大きな声を出した。
「たった今、スパイル国王様に一任された!よって、この反逆者を予定通り公開処刑に処する!」
周囲にいた騎士が、ハイド騎士団長の指示に従い俺を囲い連行して行く。
入ってきた扉ではなく後方の集団が入って来た扉の方から。
この騎士達の行動に気付くのが遅れたハイド騎士団長は、慌てて騎士達に俺を連れ出す扉の位置を指示した。
「おい!そっちの扉ではなく、向こうの扉から出すんだ!」
その指示の声の大きさに連行していた騎士1人が反応し、俺の名を呼んで動きをとめる。
「ハル!そっちではなくこっちだ!」
「・・ハル?」
集団から少し離れた場所に1人で壁沿いにしゃがんでいた少女が俺の名前を呟く。
俺の名前を呼んだ少女の方を向くと、視線が重なる。
少女は、茶目で黒髪を腰まで伸ばした容姿だった。
「・・・・真衣?」
「え?・・うそ・・夢?・・ほんとに・・はる・・ハル!」
1人で壁沿いにしゃがんでいたのは、幼馴染の真衣だった。
「・・真衣・・この世界に来ちゃってたんだな」
立ち上がり、俺に近寄ってくるが騎士達が阻み真衣を俺に近寄せないようにするが、ステータスの差がありすぎるためか、すんなりと躱して俺に抱きついてきた。
「羽流、会いたかった・・突然いなくなるんだもん。もう諦めようかと何度も何度も考えそうになってたんだから」
「ごめんな真衣。いきなりこの世界に連れてこられたから・・何も伝えられなかった」
「もう、会えたからいいの。琴音ちゃんと美音ちゃんも一緒に来ているの」
俺の幼馴染の再会を邪魔する奴が、ここにもいた。
「櫻田先輩!反逆者の男から離れてください。危険です」
勇者沖田が、真衣の腕を掴み俺から引き離した。
「イヤ!放して、私は羽流の側にいるの・・」
「ダメです先輩!僕達には、魔王討伐という大事な使命があるんです」
両手が拘束具で固定されているため、今の俺では真衣を連れて行くことができない。そう思っていると、真衣が俺から離れた隙にハイド騎士団長に示された扉へと連行されて行く。
その状況に気付いた真衣が大声を出す。
「琴音ちゃん!美音ちゃん!羽流が騎士に連れていかれちゃう!」
「さ、櫻田先輩!静かにしてください!!」
真衣の叫び声が聞こえたのか、集団の中から2人の少女が飛び出してくる。
「おにぃ!」
「にぃに!」
琴音と美音が走りながら俺と視線を重ね、俺と認識すると物凄い声で騎士達を止めようとする。
「「だめ!!連れて行かないで!!」」
バタン!
あと1歩の距離のところで扉を閉められてしまい、俺は琴音と美音に触れられることができなかった。
ドンドン・・ドンドン・・
「「ここを開けろー!!」」
ドンドン・・ドンドン・・
「おにぃー!」
「にぃにー!」
扉を強引に開けようとする音と俺を呼ぶ声を聞きながら連行されて行く俺は、また麻袋を頭から被せられチクッとした痛みを感じた後に意識を手放してしまった。




