5章 王都マーカー編 3話 反逆者と王族
ドン!!
外部から受けた衝撃で意識が強制的に覚醒されるとともに、全身に痛みが走る。
目を開けると、地下室のような薄暗いジメジメした場所で転がっている。
「くっ・・ここはどこなんだ・・」
まだハッキリしない意識の中でいると、罵声を浴びせられた・・。
「クソガキ!いつまで寝ている・・さっさと立ち上がらんか!・・この愚か者めがっ!」
ドゴッ!
「ぐぁっ!」
無防備な状態で横っ腹を蹴られ激痛に耐えている俺に次々と罵声を浴びせている声の主は、ハイド騎士団長だった。
「・・・・騎士団長、またあんたの仕業か」
「・・このガキを・・いや、反逆者のこの男を連行しろ!」
「反逆者?・・それは、どういう意味なんだ・・」
ハイド騎士団長の後ろで控えていた騎士達が俺を取り囲み手足に拘束具を強引に取り付け、この場からどこかに連れて行くようだ。まだ、両手が前で固定されている分少しはマシだ・・。
暗く長い階段を上がり扉の前で止められると、麻袋を被らされ、また俺の視界を奪ったあとに扉が開く音した後に背中を乱暴に押され少し歩かせられたところで止められた。
どこかの大広間に入ったのか、周囲から騒めく声が聞こえてくるが何を言っているのかはわからない。
騒ついていた周囲の声が静まり静寂に包まれている気がする。
誰か1人が歩く足音が響きわたりどこかで止まると、騒ついていた者達は歩いてきた者の言葉を待っているかのように静かにしている。
「今から、スパイル国王様とミリア第1王女様が入室されます」
年配の男の声が聞こえた後に、俺は頭を押さえ付けられ膝裏を蹴られ強制的にひざまずく姿勢をとらさられた。
すると、聞いたことのない男の声が響き渡る。
「皆の者・・つらを上げることを許す。さて、ハイド騎士団長よ。そこにいる者は?」
「はっ!この者は、我が王国の勇者様の命を狙った反逆者であります」
周囲にいる者達が一斉に騒ぎ始める。それを、国王の声が制止した。
「落ち着け・・続けなさい、ハイド騎士団長」
「この反逆者の身分は平民冒険者でありながら、貴族や勇者様達に多大なる損害を与えてきました。よって公開処刑が妥当と判断しております」
「そうか、ならば致し方あるまい。我が王国の使命である魔王討伐の邪魔をするものを生かしておくことはできん。しかし、その反逆者が何者か知らずに処刑することは、我が意に反する。最初で最後であるが、その反逆者の顔を見せよ」
「・・わかりました」
勝手に俺を処刑する話が決まり、国王が俺の顔を見たいと言っている。せめて文句の1つでも吐いてやろうと決めて機会を伺い、被せられた麻袋が取れた瞬間に正面に立つ国王の隣に立つ少女と目が合った瞬間だった・・。
「ハル!・・あなたハルじゃないの!?」
少女の隣に立っている国王は、驚愕の顔で少女と俺を交互に見ている。
「お久しぶりですね、ミリア第1王女様」
ミリア第1王女に声を掛けると、ハイド騎士団長が俺の胸ぐらを掴んできた。
「貴様っ!第1王女様に何をした!」
「・・・・そんなん第1王女様に聞けよ」
ゴキッ!
ハイド騎士団長の右パンチがモロに顎に受けてしまい、その場に倒れこんでしまった。馬乗りになり続けて殴ろうとしてきたところで、第1王女がハイド騎士団長を制止する。
「おやめなさい!騎士団長!」
倒れこんだ俺にハイド騎士団長が馬乗りになっている頃に後方の扉が開き、集団が入ってきた様子だ。
入ってきた集団に一度視線を動かしたミリア第1王女は、すぐに視線を戻し聞いてくる。
「なぜ、どうしてあなたが・・ハルが反逆者なのですか?」
「・・そんなことわかんねーよ。部下に聞いてくれよ、ミリア第1王女様」
ミリア第1王女は、俺からハイド騎士団長に視線を動かす。
「ハイド騎士団長。嘘偽り無く、もう一度説明しなさい」
このやりとりに何かを感じ取ったのか、さっき入ってきた集団が騒ついている。
「この反逆者は勇者様と敵対し命をも狙っていた男です。そのため、この反逆者を野放しにする訳には行けません。よって重罪であるこの男には、公開処刑が妥当だと具申しております」
ミリア第1王女は腕を組み考えている。
「・・・・それは、あなたの偏見では?」
「第1王女様!それは事実です!」
このやりとりに後方から声をあげて近づいてくる男がいた。
「勇者オキタ様・・事実とは?」
勇者オキタがハイド騎士団長の横に立ち、俺に指を指して口を開く。
「僕は紛れもなく、この男に命を狙われました。そして、大切な女性をも奪おうとしたのです。また、僕の魔王討伐という使命を邪魔する存在です。それに、第1王女様は反逆者を庇う理由があるのですか?」
俺を庇うという疑惑を勇者から指摘された、ミリア第1王女は明らかに動揺している。
「か・・庇う?この私がですか?何を言っているのですか勇者様は!私が反逆者を庇う理由はありません。ならば、アレを使います!」
「アレ・・第1王女様、アレとは何でしょうか?」
「それは、真実の輪です!」
「ミリアよ!それは国宝だぞ・・こんな者に使うのか?」
「おとうさ・・国王様、だからこそ使うのです。勇者様を狙う反逆者と疑いをかけられた男だからです」
しばらくして、近衛兵が大きな木箱を持って来てミリア第1王女の前に置かれる。
木箱を開けてミリア第1王女が取り出した物は、金色に輝く大きな輪だった。
「おい、変な気を起こす気持ちなんか考えずに言われた通りに行動しろ」
ハイド騎士団長が、こう言い周囲の騎士に指示を出すと、6人の騎士が俺を囲い抜刀している。
「・・わかったよ」
床に置かれた金色に輝く輪の中に入り立っていると、ミリア第1王女が近づき手に取った輪をゆっくりと持ち上げる。
持ち上げられた輪と床の間には、金色に輝くカーテンが伸びていく。膝から腰の位置そして胸の位置まで上がったところで真実の輪の動きが止まり、プルプルと震えている。
「ハ・・ハル・・その私の背じゃこの高さが限界なの・・どうしよう」
困った顔が可愛いじゃないか、ミリア王女。じゃなくて身長差を考えると届かないの当然だろ?そう思いながら、俺は1つ提案した。
「だったら俺が、しゃがむ方が良いかな?」
「・・うん。お願い。ゆっくりね」
俺はゆっくりと膝を曲げて、真実の輪より低い位置に頭が来るようにしゃがんだ時だった・・
金色に輝くカーテンが俺を包みこみ、周囲の状況が見えなくなった途端に目を開けていられない程の強烈な光に包まれてしまう。
目を瞑っても眩い光の中にいると、頭の中に膨大な知識と記憶と風景が凝縮されて流れ込んでくると同時に頭が焼き切れそうになる激痛に襲われる。
「グガガガガガガ・・・・」
言葉にならない声を口から漏らし、決して意識を失うことを許されないかのごとく激痛の時間を過ごしていると、ゆっくりと光が弱まっているような気がしてきた。
そして俺は、悪夢のような痛みと光から解放され、朦朧とした意識の中で立ち尽くしていると右手からブチッと何かが切れる音がした。
ゆくっりと下を見ると、足元に何か紐のような物が落ちているのを見つけ拾い上げると右手につけていたミサンガが切れたのだった。
「このミサンガ・・あいつらがプレゼントしてくれたやつだ・・」
切れたミサンガから前に視線を動かすと、俺の前に立っているミリア第1王女、ハイド騎士団長、勇者オキタそしてスパイル国王が目を見開き固まっている姿を見て俺は声をかけた。
「なんか久しぶりだな、沖田・・・・」




