5章 王都マーカー編 2話 不穏な幼馴染・・そして拘束
トニーと今夜酒場で飲む約束をした俺は、宿屋スーピーに戻りリサとカラにこのことを伝えると快諾してくれたため、みんなで夕食を酒場で済ませることになった。
陽が沈み暗くなる前に宿屋を出発して、待ち合わせの酒場へと仲良く歩いて向かう。途中の出店から獣人シスターズを誘惑する悪魔の香りに負けてしまい、フラフラする獣人シスターズをなんとか制御して、つまみ食いさせることなく無事に酒場に着いた。
店内を見渡しまだトニーが来ていないようなので店の奥にある大きめのテーブル席に座り、腹ペコシスターズの夕飯を先に注文して、トニーが来るのを待った。
しばらくして腹ペコシスターズの肉料理とパンと果実水がテーブルに並び、先に食べさせていると隣で食べているリルとクウコが美味しそうに食べている姿を見たせいか、リルの肉飯をつまみ食いしてしまった。
「おっ美味いなコレ」
「おいしいね」
リルがモグモグ食べながら顔を上げて満足そうな表情になっている。
もう一口食べたいと思い、今度はクウコの肉飯をつまみ食いするとリサに行儀が悪いと注意されてしまった。
なかなか店に来ないトニーに腹が立ってきた俺は、我慢できずに店員を呼び俺とリサ達の分のエールとつまみを注文してしまった。
「ハル、もうちょっと我慢できないの?」
リサに小言を言われてしまったが、リサも飲みたいようで顔は笑っている。
「もうダメだ・・酒場に来てエールを注文できないなんてありえない。これは、まだ来ないトニーの責任だ」
俺は、我慢できないことをトニーの責任にして自分を正当化してしまう。
「そうね、トニーが悪いわ。私も早く飲みたいもの・・」
カラは、俺に同意してくれているようだ。
あーだ!こーだ!と話をしているとエールとつまみが運ばれてきた。
みんなでジョッキを持ち上げ、旅の無事を祝して乾杯をした。
「「「「「かんぱ〜い!!!!」」」」」
思い思いにエールを一気に飲み、喉をシュワシュワが刺激しスッキリした後味で気分爽快になる。
「うま〜い!」
思わず叫んでしまう俺は、そのまま2杯目を注文した。
乾杯でジョッキをぶつけ合ったことが気に入ったのか、リルとクウコが何度も果実水が入ったコップをぶつけ合って乾杯と言い合い楽しんでいる。
1杯目のエールを飲み干したところで、2杯目のエールが届いた。まだジョッキの半分くらいしか飲んでないリサ達がペースが早いと言っているが気にしない。
「「あぁ!!」」
急にリサとカラが声を上げる。
「どうした?」
「「飲んじゃった!!」」
「飲んだ?」
下を見ると、リルとクウコが俺のエールをグビグビ飲んで半分も残っていない。
「マジか!」
急いで2人からジョッキを取り戻したが、手遅れだった。真っ赤な顔をしたリルとクウコは、頭をフラフラとさせている。
「「ニヒヒヒヒヒ」」
不気味な笑いをするリルとクウコは、椅子に立ち上がり小さくジャンプを始める。
「コラ・・座れって」
リルとクウコを強制的に座らせると、急に大人しくなる。
「ん?・・リル?クウコ?」
ゴゴン!
テーブルに顔をぶつけて伏せてしまったリルとクウコが微動だにしない。とりあえず息はしているようだ。
「酔いが回っちゃったのね・・」
リサとカラが、リルとクウコの側に来て抱き上げると、壁際に置いてある長椅子で横にさせる。
「ダメじゃないか、子供にエールを飲ませるなんて」
ルーシーに怒られ、謝っていると店のドアが開き男達が入ってきた。
「悪りぃ!遅くなった」
店に入ってきたのは、来るのを待っていたトニーだ。後から続いて入ってくる男達は、別の客だろう。
「おせーよ!トニー!もう始めてるからな」
そう言って、テーブルの席に座るトニーのエールを注文して、エールを待つ。
「久しぶりねトニー!本当に騎士になれたの?」
カラがニヤつきながら、トニーに聞いている。
「なっ・・なんだよ!ちゃんと騎士になれたさ。感動の再会と思いきや、一言目がそれかい?カラ」
「ふふふ・・それでどうなの?ホントのところは?」
「おぅ・・相変わらずですねカラさん。まぁ、騎士ですよ。今は、機動偵察隊っていう部隊に配属されたんだ」
「「へぇ〜〜!!」」
カラとリサは悪戯な笑みを浮かべ反応している。それを見るトニーは苦笑いだ。
「そういえば、冒険者ギルドに来ていたな・・その、なんちゃら隊って騎士が3人」
俺がそう言った時のトニーが俺に向けた目つきが一瞬変わったような気がしたが、この時は気にかけなかった。
「なぁ、ハル。お前さ、なんかやったか?」
「特にしてないよ。なんかあったのか?」
「・・いや、なんでもないさ」
そう言ったトニーは、店員を呼びエールを注文した。
ジョッキを手にしたトニーは、いつもの顔になり突然立ち上がる。
「さぁ、幼馴染の再会を祝って、かんぱ〜い!」
トニーの勢いに負けて、俺達3人もジョッキを持ち上げて、4人でジョッキを当てて乾杯をした。
そのあとは、何気無い会話を交わしている俺は、リルとクウコが気になり後ろを見るとルーシーが側に座り面倒を見てくれているようだ。なぜか、ミオとミリナも横になって寝ている。
俺と目が合ったルーシーは、苦笑いをして気にしないで良いと呟いてくれる。
顔の前で両手を合わせゴメンと伝えた俺は、姿勢を戻しトニー達の会話に参加する。
どれくらい経ったのだろう、そしてどれくらい飲んだのかエール4杯目からは覚えていない。どんどん進めてくるトニーに負けて、調子に乗った俺は何杯もエールを飲んでいる。
そして俺は無言で立ち上がる。
「どうしたの?」
立ち上がった俺にリサが聞いてくる。
「ん〜トイレかな?」
そう言って、店のトイレに向かう俺の姿を見てリサが寄り添ってきた。
「ちょっと大丈夫?飲み過ぎじゃない?」
「ん〜飲み過ぎたかもな・・おっと」
足元がふらついてしまい、近くのテーブルにぶつかってしまいトニーが冷やかす。
「ハル〜気を付けていけよ!」
「あぁ、ぜんぜん俺は酔ってないからな」
「もう心配だわ」
フラついてしまった俺を見たカラがリサのいる反対側を支えに来てくれた。
「あはは・・なんか悪いな、リサ、カラ」
リサとカラに支えながらトイレへと向かう。
「ここから先は・・流石に入れないから待っているね」
リサがそう言ってくれたところで、俺は酔った勢いで2人にキスをする。
「「・・もう」」
恥ずかしそうな2人から離れて、俺はトイレへと入って行く。
飲み過ぎたせいなのか、なかなか終わらない。普段より多めに出ているようだ。
やっと用を済ませトイレから出ようとしたところで、他の男性客が数人入って来たため壁沿いに避けて道を譲る。
どうやら、男冒険者3人が俺の横を通り抜けてトイレに入って行く。
「先にすまねぇな・・」
「あぁ、良いさ。間に合わなかったら大変だからな」
道を譲ったあとに俺は出ようとしたら、2人の男が立ち止まっていて先に俺を出させてくれるようだ。
「・・どうもです」
道を譲ってくれた2人はニコッと笑い、俺も愛想笑いで返し店内の奥にいるリサとカラそして横になっているリル達の姿を見つけた時に、なぜかトニーだけが俺を見て笑っている。
ただ笑っているだけだと、俺は思っていた・・・・。
突然、背後から両腕を掴まれ背中に回され何かを付けられたと同時に全身の力が抜けて、両膝を床につけてしまう。
「なんだおま・・」
強引にタオルで口を押さえ付けられて、声を発せられなくなる。逃げ切るためスキルと魔法を発動しようとしたが、うまく行使できない。
(くそ・・阻害魔法か・・)
なんとかもがき暴れて、音を出して周囲に気付かせようとしたが力が入らない。そして、不意に視界を奪われ目の前が暗くなったと同時に首筋に何かが刺さる痛みを感じた数秒後に意識を手放してしまたのだった・・・・。




