4章 西の都市編 17話 移動・・・・王都へ
獣人シスターズのケモ耳がピコッと反応し、気配の方を見ている。その方向から3つの異なる足音が聞こえ近づいて来た。
現れたのは、ハイド騎士団長を先頭に勇者オキタ、そしてアイナ副団長の3人だった。
立ち止まり、俺達を見下すように見下すハイド騎士団長が口を開く。
「こんな埃っぽい場所で飯か?」
お前らが、砂埃を撒き散らして来たんだろ!っと思いながら平常心で答える。
「まあな・・シスターズがお腹をすかせたから」
ハイド騎士団長が、俺から視線を外し手伝っているシスターズを見渡す。
「劣等種族の獣人族などと飯を共にするとはな・・」
リルとクウコは、ハイドの差別的発言を微塵も気にかけることもなく手伝いを続けていたが、ミオとミリナは手を止めて下を向きネコ耳が元気なく萎れている。
俺は、ミオとミリナの側に行き2人の頭を撫でながらハイド騎士団長を睨む。
「わざわざ、ここに来て言いたかったのは・・それだけか?」
俺の言葉に反応し、一歩踏み出した勇者オキタを左手で制止したハイド騎士団長は、軽く溜息をついて告げる。
「ふん・・明朝に騎士団はここを離脱し王都へ帰還する。不本意だが、救援の支援をしたお前達も同行しろ・・いいか?」
「もちろん・・・・断る」
「なっなんだと!」
いちいち勇者が絡んでくるのが鬱陶しいため無視する。
「・・・・」
「これは強制だ。冒険者の身分で断る権利は無い。決して遅れないように準備を済ませておけ!」
「・・気がむいたらな、騎士団長殿」
ハイド騎士団長の横で俺を睨みつけ、何か言いたそうな表情をしている勇者オキタと目を合わせないように対応していたら、とうとう勇者が絡んできた。
「冒険者・・ちょっと、いいかな?」
「なんです?・・勇者様」
嫌味を込めて、勇者様と呼ぶ俺。
片方の眉毛をピクッっとさせる勇者。
「さっきから、冒険者の立場である君が、王国騎士団長に対する態度はなんなの?」
「何がでしょうか?」
「何が?って・・・・」
「はい?」
勇者オキタの歯軋りする音が聞こえ、苛立った表情をしている。
「はぁ・・いいか!今後は、勇者パーティーの琴音と美音に近づくことを許さない。次は、容赦無く切り捨てる」
そう言い放った勇者オキタは、踵を返し騎士団テントへ戻って行くと、それに続いてハイド騎士団長も後をついて行き、なぜかアイナ副団長が取り残され、俺と帰って行く2人の背を交互に見て困った顔をしている。
それを見た俺は、アイナに優しく伝える。
「・・アイナ、今は騎士団長達について行くのが、アイナの立場だよ・・」
アイナは、ハッとした顔になり無言で頷き急いで勇者と騎士団長を追って行く姿を見送り、出来上がった夕飯を配膳しみんなで食べた。
明日は、騎士団と共に行動することになったため、野営セットをアイテムボックスに収納し久しぶりにみんな揃って寝ることにした。
外が騒がしく聞こえ、ゆっくりと意識が覚醒されて行く。
どうやら、騎士達のやりとりを聞いていると、どうやらテントを撤収している感じだ。
俺は、全身に絡んで寝ている、獣人シスターズの手をゆっくりと解き解放されると、音を立てないように荷台に設置しているテントから外に出る。
「あ〜寒いな・・」
この時期の山の朝は、とても冷える。寝ている時は、シスターズの高めの体温を感じているため寒さを感じない。
大きく背伸びをした俺は、リサ達に任せっぱなしの馬の世話をして、馬の支度を終わらせ次に寝ているみんなの朝飯の支度をしている途中にアイナが1人でやって来た。
「おはよう、アイナ。今朝は冷えるね」
「おはよう。確かに冷えるな。ダンジョンに潜った日よりは、確実に冷えている」
銀色の騎士専用である鎧を纏うアイナは、副団長モードのようで、喋り方が上からだ。
「そういえば、具体的にはいつ頃に出発するのか?」
「知らないのか?もう少ししたら出発となっているぞ。ハル達は、騎士団の最後尾から遅れずに来るように!」
アイナは、自信満々の顔で話してくる。
「あぁ、遅れずに行くよ」
「よし、では」
アイナは、踵を返し戻って行く。その毅然とした態度のままのアイナの背をただ見送る・・だけの俺ではない。
隙だらけのアイナの背を見ながら、大きく2歩踏み出して背中から抱き寄せビクっとしたところで耳元で囁く。
「アイナ、王都で会えるか?」
「あぅ・・ハ、ハルゥ・・・・非番になれば会いに行く・・行くから」
口調が素に戻ったアイナのうなじにキスをして腰に回して両腕をゆっくりと放すと、俺の両腕を掴んでいたアイナの手が名残惜しそうにゆっくりと滑らせながら指先を最後に絡ませて離れていく。
その後のアイナは、一度も振り返ることなく歩き去って行った。
アイナの姿が見えなくなり馬車の方を向いた俺は、寝ているだろうみんなを起こして朝飯を食べさせることにした。
みんなで朝食を食べ終わり、出発の支度が終わった頃に騎士団の馬車が出発し始めた。
「みんな・・そろそろ出発だ。荷台に乗って」
俺からの指示に従い、獣人シスターズやリサ達は荷台に乗る。
だんだんと馬車の数が減り最後尾と思われる馬車を見つけて、適当な間隔を保ちながら馬車を走らせる。
しばらく森の中の道を走り抜けていると、後ろからリルとミオが出てきて、俺の左右にくっつくように座る。
「珍しい組み合わせだな・・2人とも寒くないか?」
まともに陽が当たらない森の道を通り抜け、冷たい風を受けているのに薄着の2人は気持ち良さそうな顔をしている。
「大丈夫だよ、いい感じ」
リルが答え、ミオは頷き同意している。
「・・そうか、ならいいけど」
森を無事に抜けて都市ニシバルに続く街道を走り続けた俺達は、そのままニシバルで必要な物資を買い揃えて宿屋で1泊し、翌朝には東門外の広場で騎士団と合流し5日程かけて王都マーカーに西門前に到着したのだった。




