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4章 西の都市編 16話 地下ダンジョン⑥

地下ダンジョン最終話です。


「おにぃ!(にぃに!)」


 

 ボロボロの姿で飛び出してきた黒髪少女の琴音(コトネ)美音(ミオ)と視線が重なり言葉を失う俺は、ただ2人を見つめるだけだった。


「「会いたかったよぉ〜!」」


 獣人シスターズを器用にすり抜けて俺に抱きつく琴音と美音をなんとか受け止めて、リルとクウコの頭に置いていた両手を2人のために使った。


「コトネ、ミオ・・なんとか無事だったんだね」


「うん。にぃにがくれたポーチのおかげだよ!」


 俺をにぃにと呼ぶのはミオで、おにぃと呼ぶのはコトネだ。


「おにぃが守ってくれたから生きてこれたんだよ!」


「そっかそっか。でも、もう少し役に立つと思ってたんだけどな・・流石にここまで追い詰められるとは・・ゴメンな」


 琴音(コトネ)美音(ミオ)の頭を優しく撫で続けると、2人は少し落ち着いたようだった。


 すると、琴音が何かに気づいたようだ。


「あれ・・お、おにぃ、手・・左手がある・・」


「・・・・ほ、ほんとだ!にぃにの手が治ってる!どうして?」


 琴音(コトネ)美音(ミオ)が俺の左手を掴んで凝視している。


「あぁ、アレだよ・・くっつけた」


 2人が見つめ合った後、俺を見て叫んだ。


「「っえーーーー!!」」


 琴音(コトネ)美音(ミオ)が、さすが異世界だと言っているが意味がよくわからないから、そのままにしていると会いたくなかったハイド騎士団長が勇者を連れて出てきた。


「まさか支援に来た冒険者が貴様だったとはな・・」


 ご自慢の鎧がボロボロの姿で現れたハイド騎士団長は、相変わらずの口調だった。


「なんだ、しぶとく生きていたのか。勇者様一行だけでよかったのに・・」


 ハイド騎士団長の眉間にシワがより怒りをあらわにしたが、副団長のアイナがそれを制した。


「ハル殿!少し言葉を慎んでください」


 アイナは副団長モードに切り替えているようで、この場での関係はあくまでも冒険者ハルとして接しているようだ。


「すいません・・アイナ副団長殿」


「わ・・わかってくれれば良いんだ・・うん。あの、騎士団長そろそろ帰還しましょう」


「そうだな・・しかし、忌々しいドラゴンがいたはずだが?」


 ハイド騎士団長は、思い出したかのように周囲を見渡している。


「それなら、俺達のパーティーが倒したぞ!」


「なに?勇者様達でも追い払うことしかできなかった、あのドラゴンを?・・信じられるか!」


 ハイド騎士団長は、俺の言葉を信じる気は無いようだ。


「まぁ、信じないなら別に良いけどな」


「なんだと貴様!」


 長剣の柄を握り抜刀しようとする騎士団長をアイナが、なんとか抑えようとしてドラゴンを倒したことが事実だと告げる。


「まぁ、勇者様の無事が確認できたから依頼は達成だな。もう、俺たちは帰るからな」


「待て。アイナ副団長。これは、騎士団の依頼か?」


「そうです。西の都市ニシバルの冒険者ギルドを介して依頼を出しました」


「そうか・・なら仕方ない。貴様達のパーティーに王国から褒美が出る。ダンジョンから出た後は、我々と王都へ出頭してもらう」


 急に騎士団長が訳の分からないことを言ってくる。


「そんな国の褒美なんて辞退させてもらう。俺は王国と関わりたく無いからな」


 すると向かん家の奴が口を挟んできた。


「お前!ハイド騎士団長の言うことを聞けないのか!」


 ハイド騎士団長の横に居た勇者が俺に向かって怒鳴ってきている。


「勇者様には関係ないだろ?」


「なんだと!平民冒険者が、この勇者になんて言う態度だ!許せない!」


 困り果てた顔をするアイナが、口を開く。


「ハル殿、私からもお願いする。どうか、王国まできて欲しい・・」


 アイナが突然地面に膝を付き頭を下げる。


「ア、アイナ副団長!あんな奴にそんなことする必要がありません!頭を上げてください」


 勇者がアイナを引き起こそうとするが、アイナは抵抗し起き上がろうとはしない。


 抱きついていた琴音と美音が俺を見上げジッと見てくる。姿に俺の意地は簡単にへし折れた。


「わかったよ。ダンジョンから出たら王都に行けばいいんだろ?」


 俺の返事に琴音と美音が笑顔になり、アイナも安堵の表情になり立ち上がったが、あの勇者だけは俺を睨んでいる。


「だけどな、俺達は別行動でダンジョンから出るからな」


「そんなこと、好きにしたまえ!」


琴音(コトネ)美音(ミオ)!そんな奴の側にいないで、俺達と帰るんだ」


 勇者に手を引っ張られ、琴音(コトネ)美音(ミオ)は俺から離され、ハイド騎士団長と勇者一行そして騎士を連れて階段を登り始める。


 アイナは、どちらと共に行動するか悩んでいるかのように俺と騎士団長を交互に見ている。


「アイナ!」


 アイナに手招きをしてアイナを俺の側まで呼ぶ。


「な・・なんだ?」


「何を悩んでいるんだ?あのネックレスが無いから心配せず、副団長として行動しろ!」


「あぅ・・」


 軽く人差し指で、アイナの額を押して、行動を促す。


「ほら、早く行くんだ」


「で、でも・・」


 躊躇っているアイナを押して階段を登らせる。


「地上に出たらまた会えるだろ?・・な?」


 アイナは、何度も振り向きながら最後尾で階段を登って行く。


 だんだん離れて行く勇者一行を見ながら、アイテムボックスから青く輝く転移石を2つ取り出す。


「ご主人様、それはなんでしょうか?」


 背後にいるミオが不思議そうに転移石を見ている。


「コレはね、転移石といって記憶した場所に戻れるモノなんだ。だから、一瞬で地上の馬車の位置に戻れるよ」


 さてと、もう一つはあの子に渡さないとな。


「おーい!コトネー!ミオー!コレを受け取れ!」


 遠く階段を登っている琴音(コトネ)美音(ミオ)に向かって、もう一つの転移石を投げる。


 投げた転移石は、綺麗な放物線を描き2人の元へ向かって行く。


 突然投げられた石を慌てた様子で琴音(コトネ)が無事に受け取ったことを確認する。


「おにぃ〜!こ〜の〜い〜し〜な〜にぃ〜?」


「それはなー!ハイドに聞いてみろー!またなー!」


 それを伝えた後、獣人シスターズを抱き寄せて目を瞑らせてから転移石に魔力を込めて告げる。


「いざ!アルファポイントへ!」


 転移石が青く輝き始めて俺たちを包み込む。すると全身が一瞬浮いたような感覚になり、眩い光が収まっていき

目が開けれるようになった。


 目を開けた俺の前には、見慣れた馬車がある。すると背後から桶を落としたような音が聞こえ振り向くと、そこには、服を干していたリサが立っていた。


「ハル!」


「ただいま、リサ」


 干そうとしていた服を投げ、俺へと向け走ってくる。まだ目を瞑っている獣人シスターズからゆっくり離れて、飛び込んできたリサを抱きしめる。


「ハル!おかえり。ずっと不安だったの・・」


「あぁ」


「ずっとよ!ずっと怖かったの」


「ゴメンな、心配させて。ちゃんと帰ってきたから」


「・・うん。・・カラも心配してる」


 抱きしめていたリサを離し、軽くキスをして馬車の荷台へと向かい荷台のテントの幕を捲ろうと手を伸ばした瞬間に中から幕を開けて顔を出すカラと目が合う。


「え?・・ウソ?・・ハル?」


「あぁ、今帰ってきたよ」


「ハル!おかえり!」


 荷台から飛び降りるように俺に抱きつくカラを受け止め抱き締める。フワッと香るカラの香りが懐かしく感じながら強く抱きしめてしまう。


 ソッとカラを地面に下ろしてから、リサと同じようにキスをしてやった。




 ギューグルグルグルルルル



 背後から盛大に腹の虫が鳴り響く獣人シスターズが、俺をジッと見ている。もう少し感動の再会の甘い時間を俺に与えてくれてもいいのに。


 でも、空腹だと騒がずにジッと黙って俺を凝視するだけ成長したのかなと考える俺もいた。


「カラ、リサ・・せっかくの時間だったけど、腹ペコちゃん達の支度をしていいかな?」


 2人は頷いて手伝うと言ってくれた。


「ありがとう。リサ、カラ」


 リサとカラを同時に抱きしめた後に野営セットを一気に取り出して準備を始める。


「リル達も手伝ってくれよ!」


 そう言うと、獣人シスターズも積極的に手伝うようになっていたことに驚いた。


 俺たちが、飯の準備をしていると騎士団のテント地区が青く輝き出し、勇者一行が無事に転移石を使えたようだと思いながら調理を続けていると足早に近づく3つの足音が聞こえたのだった・・。














 




 

地下ダンジョンなのに戦闘が少なくてスイマセン。物語を続けながら戦闘描写に力を入れていきます。・・きっと。

この先のちょっと進んでから、また新たな動きが始まります。

この先の分岐路によっては、ブックマークしてくれた方で続きを読む気が失せる方も出るかもしれませんが最後までお付き合いしてもらえれば光栄です。

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