4章 西の都市編 12話 地下ダンジョン②
「ハルッ!待って!」
リルが声を荒あげた時には、俺は踏み場の無くなった右足を地の底へ向けて落としていく・・。
「あっ・・やべ・・うぉっ」
ダンジョンの罠にハマった俺は、闇の底へ吸い込まれ生涯を終える・・ハズだった。
「よいしょっ・・と」
腰回りを誰かに抱きつかれ、穴に落ちることなくその場に体が止まりゆっくりと後ろに引き戻された。
「あ〜びっくりした・・」
穴に落ちる俺を助けてくれたのはクウコだった。
「あ、ありがとう、クウコ助かったよ」
「にひひ〜クウコちゃん頑張ったよ」
クウコの頭を撫でて抱き締めた。
心を落ち着かせた俺は恐る恐る穴を覗き込むが、深すぎて底が見えない。隣に来たミオも俺と同じように穴の底をジッと見ていると何かを見つけたようだ。
「あっ・・アレは、騎士が数人いますね、もう亡くなっていますが・・」
俺の右腕を掴み、落ちないように覗いているミオは、そこの様子を教えてくれる。
「罠の犠牲者か・・」
前を見て、冷静に穴の大きさを見ると飛び越えられない幅だとわかり、飛び越えて先に進むことを再開した。
この後は、順調に下層へ進み気付いたら20階層あたりまで辿り着いていたところで、俺の気配探知スキルに反応が久しぶりにあった。
「・・これは、騎士達かってあれ?消えた・・」
ハッキリと感じていた騎士達の反応が、霧がかってしまうように霞んでしまい認識できなくなり焦っているとリルが答えを教えてくれた。
「ハル、阻害魔法が使われたみたいだよ」
俺より高レベルの気配探知スキルを会得しているリルが言うから間違いないだろう。
「阻害魔法・・リル、どんな魔法なんだ?」
「ハルも使う隠密スキルは、個人とその近いもモノを視覚で認識させないように、阻害魔法は探知スキル系に対して有効範囲内の生き物の存在を探知できないようにさせるの」
「それは、厄介な魔法だな・・」
「だったら、こっちも何かしないとね?」
クウコがニコニコしながら、何かのスキルを発動したようだった。
「クウコ?何をしたのかな?」
「ふふ〜それはね、幻惑スキルだよっ!・・何にしているかはヒミツだよ〜」
どうやら、阻害魔法を知ったクウコが対抗策で幻惑スキルを発動したようだけど、見た目を何かにしたが教えてくれなかった。
クウコの頭を撫でて、教えてもらおうとしたが笑顔のまま口を割ろうとしなかったため諦めることにして、俺は阻害魔法を展開する存在の場所へ向かう。
ここの階層の道は、曲がりくねっていて先が見通しづらいため歩くペースが上げられないでいると、戦闘の音が響いてくる。
「みんな、できるだけ急ごう!」
だんだん、戦闘時の号令や唸り声、そして叫び声が混じった声がハッキリと聞こえ気を引き締めていると、トンデモナイ言葉を男が叫んだ。
「ブ・・ブレスが!・・またブレスがくるぞぉーー!!」
一瞬、叫ぶ騎士の意味が理解できない俺がいる・・。
「ブレス?・・って、あのブレスか!?」
チラッとリルとクウコを見ると、2人はコクッと頷く。
「・・マジかよっ!」
「「マジ(まじ)〜〜」」
ザザザァァー
急停止をして両手を広げ獣人シスターズがこれ以上先に行かないよう止めようとしたら、リルとクウコは笑顔で飛び込んで来る。遅れて来たミオとミリナは不思議な顔を見せたが、リルとクウコの様子を見て、嬉しそうに俺に飛びつく。
「と・・止まれ〜〜」
両足で踏ん張るが4人分の勢いをなかなか止めることができないでいると、背後に壁が迫っていることに気付く。
「クソ・・仕方ない・・」
壁に激突する直前に右足を振り上げ、壁を思いっきり蹴り込んだ。
ドォーン!!
なんとか壁に激突することを避け、その場に座り込んだと同時に・・。
グオオォォォォォ!!
ダンジョン内にいる生き物に、生きることを諦めさせるほどに響き渡る重低音の唸り声が・・・・。
アレは、間違いなく最強生命体のドラゴンの声だ。まだ姿を視認できないのにブレスの熱波がここまで伝わってくる。さっきまで聞こえていた複数の男の声が、今は聞こえない。
「ドラゴンが地下ダンジョンに生息するのかよ・・・・」
このまま俺達が加勢しても勝てるかどうか、わからないレベルだ・・・・このまま引き返す?だが、アイナ達が取り残されてしまう。けど、目の前にいるリル達を危険な目に合わせてしまうのも・・。
俺は悩んだ結果、戦略的撤退が心の中で支配し始める。
「これ以上は危険だ・・みんな、引き返そう・・」
「「ハル?行かないの??」」
抱きとめていた、リルとクウコが顔を上げて不思議そうな顔で聞いてくる。
「えっ?・・いや・・でも・・ド、ドラゴンだよ?」
「うん、ドラちゃんだね〜」
クウコが無邪気な笑顔で答える。
「はぇ?・・ドラちゃん?・・その、勝てるの?」
リルとクウコが頷く。
「「リルとクウコは、この世界で最強だからね!!」」




