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1章 はじまり 5話 動き出すふたり

 朝日が昇りはじめた、宿屋リメインのとある二人部屋で起きた。



ふにゃ〜〜〜〜〜〜



 気の抜けた声が、部屋から響き渡り目が覚める。


「・・・・んっ?」


 ねこ耳と尻尾をサワサワモミモミしている。無意識に俺の手が動いていた。


「寝ても触るなんて、変態だな・・だが、やめられん・・・・」


 サワサワ・・モミモミ


「あの・・ご主人さま・・」


「お・・おはよう、ミオ」


「おはようございます」


 寝返りをうち、俺の顔を見つめるミオの顔は赤く涙目になって無言の苦情を訴えてくる。それを無視してベッドか出て支度を始めると、ミオは諦めたようでベッドから出て支度を始めた。


 支度を終え、ミオと目が合うが特に会話もなく部屋を出て食堂に移動し適当に空いてる席に座ると、調理場からモーテが朝食を持って来てくれた。


「おはよう、お二人さん」


「「おはよう(ございます)」」


 モーテは、そのまま他の客へ食事を出すため調理場へ戻って行く。朝食は、パン二つと野菜スープだ。完食し宿を出る時に受付にいたモーテに呼び止められる。


「今夜も泊まりに来るかい?」


「そうですね、特に何もなければ暗くなる前に戻って来ますよ」


「あいよ。また泊まりに来な」


「また利用させてもらうよ」


 宿屋を出て冒険者ギルドへ向かう。ミオの冒険者登録とパーティー登録するために。



「ご用件をどうぞ」


「この子の新規登録とパーティー登録お願いします」 


 今朝の受付嬢は、こないだ対応してくれた受付嬢だった。


「それでは、登録申請書に記入と手数料の銀貨1枚をお願いします」


 申請書を受け取り、ミオに聴きながら代筆し申請書と銀貨1枚を受付嬢に渡す。


「手続きをしますので、しばらくお待ちください」


 待ち時間を利用してミオと依頼掲示板を見に行き、今日の依頼を探す。どれがいいか聞いても、俺の決めた依頼でいいとミオは言うので、魔物討伐にしようかと考えていたら受付嬢に呼ばれた。


「思ったより、早かったですね」


「朝は、比較的に空いてますから。こちらが、ミオさんのギルドカードです。再発行には金貨1枚必要ですから紛失には気おつけてください。あと、ハルさんのギルドカードを出してもらえますか?」


 受付嬢に俺のカードを渡すと、ミオのカードと重ねて机上の魔法具に置くと一瞬カードが輝き消えると、カードを返してくれた。


「パーティー登録完了しましたが、パーティー名はいかがしますか?」


「まだ決めてないので、また今度にします」


 とりあえず、パーティー名はそのうち決めることにして、今はミオと依頼をこなして戦闘の慣らしを優先するため、もう一度依頼掲示板の所へ向かった。


 ここのギルドも薬草採取から魔物討伐そして護衛まで。それぞれ依頼ランクが記載されているけど、EランクからCランクが多いようだ。


「二人で丁度いい魔物討伐がないな・・ミオ、今日は出直そう」


「はい」


 今日は諦めてギルドを出ようと扉を開けようとした瞬間、勢いよく扉が開き顔面に直撃する。


 あまりの痛さに、その場で蹲っていると5人組の冒険者パーティーが入って来たようだ。


「おい、ガキ邪魔だ。そんなところで座ってんじゃねーよ!」


「・・・・・・」


「ご主人さま大丈夫ですか?・・・。あなた、ご主人さまに謝ってください」


「はぁ? 獣人族が人間様に指図するのか? そこのガキが悪いんだろ!!」


「くっ・・・・」


 男冒険者がミオに殺気をあててきた。そろそろ立ち上がって止めようと考えていたら、ミオが予想外な行動をとってしまった。


「おい! その意味わかってやっているんだよな?」


「あっ・・これは・・その・・」


 ミオは双剣に手をかけて身構えていた。その両手は小刻みに震えている。


 俺は立ち上がり、ミオを庇うように二人の間に立つ。


「アイタタタ・・おっさん急に扉を開けるなよ〜」


「お前の連れが、このオレに攻撃しようとしたんだぞ!」


「それは悪かった。けど、殺気当てられたら誰でも身構えるけど・・うぉっ」


ドン!!


 両手を上げたまま、男に攻撃の意思はないとアピールし話していたが、男は激昂し俺の胸倉を掴んで壁に押し付けてきた。


「てめぇ、なめてんのか?」


「そんなことないさ・・ギルド内で揉め事はマズイんじゃないか?」


 男はもっと力を入れてきた。俺の足が床から浮いてしまう。ミオが男に近づこうとしたため、首を横に振りやめさせる。この男のパーティー連中はにやつきながら見ている。男が二人と女二人。


 視線を他に移してギルド職員達を見るが、業務を続けていて見て見ぬ振りをしている。ここの職員は最悪だ。

リサ達ならこんなことないのに。



「もう、いいや」


「なんだと・・てめぇの立場わかっ・・ぐふぅ」


 男にだけ殺気をぶつけて意識を刈り取り、その場に崩れ落としてやると白目をむき口から泡を吹いている。


「ミオ帰ろう。ここにもう用はない」


 ミオの手を握りギルドを出る。背後から男のパーティ連中が何か叫んでいるが聞こえない。大通りに出てから振向くと俯いて泣いているミオがいる。そのまま裏道へ入り人目から避けた場所で抱きしめる。


「ミオのやったことは間違いじゃない」


「しかし、ギルド規定違反に触れそうになりました」


「すべての責任は俺が取る。ミオはミオが正しいと思うことをやってくれ」


 泣き続けるミオを強く抱きしめたまま、優しく頭を撫でて落ち着くのを待つことにした。しばらく経ち、落ち着いたのか顔を上げて見つめてくる。軽く背中をトントンすると笑顔になった。



「よし、ちょっと早いけど昼飯を食べよう」


「はい。行きましょう」


「その前に商店で買い出しをしてからね」


 大通りに出て、2店舗ほど商店に立ち寄って携行食やポーション類を購入しアイテムボックスに収納する。

この先のために、ミオ用にマジックポーチを購入し携行食やポーション類を渡し合わせて服と下着も購入し持たせることにした。


 1件目商店を出てから、数人が監視していることに気付いたが、すぐに仕掛けて来る気配がなかったため気付かないふりをした。2件目を出て飯屋に入ってからも監視を続けている。ミオは気付いてないようで素直に食事を楽しんでいる。


 不審者は宿屋リメインに入り部屋に入るまで監視されていたが、空が暗くなった頃に全員帰って行った。ミオにモーテに用事があると言い部屋を出た俺は、隠密スキルを発動し宿屋の屋根に立つ。


「きっと、奴らは明け方頃に襲撃に来るだろうな・・」


 奴らが監視場所にしたところに罠を仕掛けて部屋に戻る。


「ただいま」


「おかえりなさいませ」


 部屋に入ると、ミオはベッドに座っていた。


「明日は、依頼なしで森に行こう」


「はい。ご主人さま」


 寝間着に着替えて部屋の灯りを消す。二人でベッドに入り眠りについた。もちろん気配探知スキルを発動したまま。


 ピリっと頭に刺激を感じて目が覚める。


「おっ?昼間の奴ら来たな?」


 目を瞑ったまま奴らの動きを感じ取っていると、ミオがゆっくりと動いている。さすが猫人族。


「あの・・ご主人さま、起きてください」


 ミオに体を揺らされて、起きたように演じる。


「ん?どうした?」


「害意を持った何者かが近づくのを感じます」


 暗闇でよく見えないが、ねこ耳が忙しなくピコピコ動いてるようだ。


「ちょっと待って・・5人か・・気にしなくていいよ」


 上半身を起こしたミオはベッドから出て警戒している。尻尾が普段の倍以上も膨らんでいる。


「ミ〜オ」


 背中からミオを抱き寄せ布団に入れ抱き枕のように抱きしめる。予想外の俺の行動にミオはされるがままだった。ねこ耳と尻尾を撫でて落ち着かせる。


「のぁ・・ふにゃ〜」


「だいじょうぶ・・だから寝るよ」


「でも・・あぅ・・」


 しばらくしミオを撫でていると不審者5人の気配が遠ざかって行く。それぞれ同じ方向に向かって。


「ほらな?離れて行ったろ?」


「・・そのようですね」


 ねこ耳と尻尾が元に戻っていく。きっと落ち着いてくれたのだろう。ミオが寝たことを確認しベッドをゆっくり出てソファに座る。二度目の襲撃が無いと言い切れないため。


 夜が明けた頃にミオがモゾモゾ動き始めて背伸びをした。そのまま右手を俺が寝ているはずの場所へ探っているが

俺がいないことに気付いたようで、ての動きが早くなり一瞬止まるとベッドから飛び起きた。


「ご主人さま!!・・ってあれ?起きてたのですか?」


「おはよう、ミオ」


「おはようございます。遅くなってすいません」


「たまたま早く起きたから気にしないで。支度済ませて飯にしようか?」


 ミオはベッドから出ると急いで支度を済ませてきた。部屋を出て食堂に行き席につくと、隣にミオが座る。

なぜか機嫌が良いようだ。


「あんた達、仲がいいね。街で見かける主人と奴隷じゃなくて、まるで恋人どうしだ」


 モーテが笑いながら朝食を運んで来ながら言って来る。


「そう見えますか?大事にしていますからねー」


 チラッとミオを見ると顔を赤くして俯いている。それを見たモーテが可愛いと茶化し、俺は頭を撫でる。食堂は和やかな空気に包まれていた。


 朝食を食べ終えて宿屋を出る。本当は直接森に行って魔物討伐をしたかったが、手持ちの資金が心細いため不本意だがギルドに行きことにした。


「ミオ、ゴブリン討伐でいいか?」


「はい、よろこんで」


 依頼掲示板から依頼票を剥がし、無言で受付嬢に渡す。


「お・・おはようございます。依頼受理の手続きを済ませました」


 この金髪碧眼エルフ族の受付嬢は、昨日の争いを見て見ぬ振りをしていたせいか俺への対応が辿々しい。


「あぁ」


 受付嬢から依頼票を受け取りギルドを出てから、アイテムボックスに依頼票を入れて都市の北門から出る。

2時間ほど歩いて森に入り気配探知スキルを発動させると、目当ての奴らがいた。


「この先にいるな」


 ゆっくりと近づいて茂みから覗くと、ゴブリンが5体。


「ご主人さま・・私1人でやらせてもらえませんか?」


「ミオ一人で?」


 コクリと頷く彼女の意思は固いようだ。


「わかった。合図出すから頼むな」


 双剣を抜き低い姿勢で飛び込む準備をするミオを横目で見ながら、合図のタイミングを伺う。するとゴブリン達は俺達から離れていく方へ歩いていく。


「いけ・・」


 声と同時にミオの右肩を叩く。


 音もなく地を蹴り飛び出し列の後ろを歩くゴブリン2体の首に双剣を差し込む。そのままゴブリンの背中をジャンプ台にし先頭を歩くゴブリンの横腹を切り裂き着地する。


 ミオが飛び出した後に俺も飛び出し、最初に倒されたゴブリン2体の首を切り落とす。確実に止めを刺すことは必須だ。


 先頭のゴブリンが横腹を切られたが致命傷ではないようだ。


「てか、あいつもうあんな場所にいるのか・・さすがネコのポテンシャルは侮れん」


 残りは負傷した先頭のゴブリン1体と中央にいた無傷のゴブリン2体。無傷のゴブリン2体が加勢しミオを襲う。

先頭のゴブリンを抜いて時間差でミオに攻撃を仕掛けていく。


「ゴブリンのくせに連携が取れているじゃないか」


 ミオは地を蹴り2体のゴブリンに接敵するが、途中の日陰になっていた場所がぬかるんでいて足を滑らせてしまい体勢を崩す。


「きゃっ」


 足を滑らせたミオは片膝をつき、無防備な状況になってしまう。これがチャンスと気付いたゴブリン達は奇声を発しながらナタを振り下ろす。

 

 ミオは、咄嗟に双剣を構えるが、あれでは防ぎきれない。


 俺は叫んだ!


「ミオ!双剣に魔力を」


 ハッとしたミオの表情が見えた直後に双剣が瞬時に紅と青白に染まり出す。

 

ガッギン!!


 金属同士がぶつかる音が響き渡ったあと、2体のゴブリンが左右に倒れる。その先には返り血で赤く染まったミオが双剣を手放して座り込んで呆然としている。


 まだ1体いるのに武器を手放したミオは微動だにしない。


「やばい・・」


 最後に残っていたゴブリンを背後から斬り倒し、ミオに駆け寄る。


「大丈夫か?」


 問い掛けに無言で頷く。彼女の横に倒れ絶命したゴブリンから双剣を抜き取り渡す。


「あ・・ありがとうございます」


 ミオの手を取り立たせると、全身が返り血で染まっている。2体同時に浴びれば仕方ない。


「クリーン」


 生活魔法クリーンでミオの汚れを落としてあげると、我に返ったようだ。


「ミオ・・おつかれさま」


「す・・すいません。返り血に驚き、戦いの最中に武器を手放してしまいま・・した」

 

 俯いてしまい。最後の方はよく聞こえなかった。


「そっか・・次は浴びないよう訓練しなきゃだね」


「・・・・はい」


 落ち着きを取り戻したミオとゴブリンの討伐部位を剥ぎ取り終え森を出る。その間に魔物は現れることはなかった。都市ニシバルへと続く道を歩き続けるが、ミオとの会話は無い。あの失態に悔やんでいるのだろう。


 静かな時間が流れる。1歩後ろの位置を付いてくるミオは俯き、自慢のねこ耳も力なくペタンと倒れている。

行く先に二人が座れそうな石を見つけた俺は、気分転換に休憩を取ることに決めた。


「ミオ、休憩しよう」


「・・はい」


 二人で並んで石に座り、アイテムボックスから水筒と干し肉をミオに渡す。特に会話もなく、静かに重たく流れる時間を過ごし、軽食を取っていると帰る方向から土煙りが高く上がり近づいてくる。


「なぁミオ・・アレなんだと思う?」


「・・馬車ですね」


「馬車って、あんなバカみたいな速さで移動するものなの?」


「一般的には・・・・ありえないですね」


 豪快に土煙りを上げて突き進む馬車を目で追ってしまう。都市ニシバル行きに乗った馬車は、もっとのんびりしたものだった。


 だんだん近づいて来る馬車は、豪華な飾りをつけた馬車だ。


 きっと貴族が乗っているのだろう、速度を落とさず目の前を通過していくのをガン見する俺は、小窓から見下ろしてみて来る奴と視線が重なってしまった。






 



 

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