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4章 西の都市編 8話 北の地下ダンジョンへ 


 都市ニシバルを出発し、魔物の襲撃に遭遇せず昼飯の時間になり、適当な場所で馬車を止めた俺は、簡単な昼飯をみんなと摂り再出発する。


 お腹一杯になったこの時間帯は、物凄く睡魔に襲われてしまい、なんとなく進み続けているといつの間にか空がオレンジ色に染まっていたことに気付く。



「おっ?もう日が暮れてきてるのか・・宿営地を見つけないと・・」


 山を登りきり、山頂あたりの広場で馬車を止めると見晴らしの良い場所だ。ミオを起こし一緒に歩き崖の方へ行くと遠くに都市ニシバルの街並みが見えている。


「うわぁ〜遠くに見える街はどこですか?」


 ミオが遠くに見える都市ニシバルを見て興奮している。


「あれは、都市ニシバルだよ。俺達が居た街だよ・・」


「そうなんですね〜!あっ少しづつ明るくなってますね・・」


 街の人々の生活の証である、家の灯りがところどころで灯されて街並が明るくなって行く。


「ミオは、街に戻りたい?」


 そう聞いたミオは、振り返り俯いたままゆっくりと近付いて一歩前で止まる。


「えいっ」


 ミオが俺に抱きつき見上げて口を開く。


「ミオは・・ミオは・・ハルと一緒ならどこまでも行くよ」


 ミオは、全速力で俺から離れて馬車へ戻って行く姿を目で追うことしか出来なかった俺は、あの時のことを思い出す・・・・。


 ・・あの笑顔は、あの森で初めて会った時に一度だけ見せてくれた無邪気な笑顔で、とても懐かしい気持ちに満たせれた俺は1人で近くの岩に腰を掛けて昔の思いに浸っていた。


 陽が沈んで、周囲はいつの間にか暗闇に包まれていることに気付いた時に、自然と口から言葉が零れ落ちる。


「この幸せは、いつまで続くのかな・・みんな、いつかは俺から離れて行くんだろうな・・また1人に・・孤独になるのはキツイな・・」



 ・・・・俺の問いに答える相手はいない。そう思い、あの時の孤独感が俺を包み込もうと企んでいるようだ。


 膝に手をつき俯いた俺の目からは、自然と涙がこぼれ落ち地面を湿らせていく・・。

 

「ずっと続くよ・・リル(クウコ)が側に居るから」


 不意に足元から2人の声がする。俺の霞む視界の先に銀髪と金髪少女が膝をつき見上げているようだ・・。


 俺は2人の応えに反応できず、ただ静かに泣いているとボヤけた2人が視界を覆ってくる。


「ん・・」


 両方の両頬に舐められている感触が伝わってくる。


 ペロペロ・・ペロペロ・・


「リル・・クウコ・・ありがとう」


 2人を抱き抱え立ち上がり、馬車のところへ歩きリルとクウコを馬車の荷台に乗せて夕飯の支度を始めることで気分転換することにした。


 薪を集め組んでから、小さめのファイヤーボールで薪に火を付け安定させ暖をとる。焚き火は照明がわりになるため人数分のイスを並べる。


 アイテムボックスから大鍋を出し水を入れて火にかける。その間に、野菜を切って入れて肉を一口サイズに切ってから入れて煮込んだ後に、ニシバルの商店で買ったばかりの香辛料の白い粉末を入れる。


 新たに買った香辛料の白い粉末は、老人店主が言うには、シーチュと言うらしく寒い日の夜に食べると体が不思議と温まるらしい。


 大鍋で作った料理から良い香りが広がり始めた頃に、獣人シスターズがテントの幕を開けて荷台から飛び降りてくる。その後に、リサ達がゆっくり足場を確かめながら降りてきて配色の手伝いをしてくれた。


「ハル、この白いスープは何て言うの?」


 リサが初めて見るスープの名前を聞いてくる。


「リサ、このスープは、シーチュと言うんだ。そのまま食べても良いしパンを浸して食べても良いんだよ」


 そう言って、みんなは不思議そうに眺めた後、俺の合図で食事を始める。


 みんなは、初めて食べるシーチュが気に入ってくれたようで、みんなお代わりしてくれる。特に獣人シスターズが競い合うように食べ初めてしまい、リルとクウコのお腹がとんでもないくらい膨らんでしまった。


「た・・食べた・・げふっ・・」


 獣人シスターズは、お代わりした分は絶対残さず食べるため、最後の一口で限界を迎えイスから動けなくなっている。


 その様子を見ながら、リサ達と片付けを終わらせて寝る支度を先にしてもらう。しばらくして寝る支度が終わったとカラが教えてくれたタイミングで獣人シスターズを荷台のテントに1人づつ運び込む。


 今夜は、リサ達も手伝ってくれたためあっといううまに獣人シスターズの着替えが終わった。


 いつもの野営は、リルとクウコに魔物避けを置いてきてもらうが満腹で動けないため、今は俺が周辺を1人で歩き置き回っている。


 最後に1個を置いて、今だに燃えている焚き火の場所まで戻るとみんなの姿はなくテントの中でくつろいでいるのだろうと思い、1人イスに座り焚き火の炎を見つめる。


 アイテムボックスからコップを出して、あの商店で買った黒い粉を入れて温めた水をコップに注ぐと、なんだか心が落ち着く香りが漂い、ゆっくりと一口飲んでみる・・。


「うわぁ・・苦い・・けど好きかも・・」


 温まったコップを両手で持ち、寒空の下で1人の時間を過ごしている。たまに、薪を投げ込んで空に巻き上がり消えていく火の粉を、自分の姿に重ねていき心が少し沈んでしまう。


「はぁ、まだ立ち直れていないな・・」


 コップの中身を飲み干した俺は、もう一度黒い飲み物を作りを飲み終わったら寝ることに決めた。


 俺はイスを向かい合わせに置いて、靴を脱いでイスに足を置いて夜空を見上げる。


「うわぁ〜綺麗な星空だ・・子供のとき以来だな」


 しばらく星空を眺めていたが、いつの間にか寝てしまっていたらしい。



・・・・これは、あの夢?しばらく見ていなかったのに・・・・



 大広間に立たされている黒髪黒目の少年は、騎士に囲まれて状況で何かを叫んでいるようだ。相変わらず俺は、外野からあの少年を傍観しているだけ。


 王族のような着こなしをしている少女が何かを騎士に指示を出した後は、窓際へ移動し2度と関わろうとはhしていない。


「第2王女様、王国騎士団が責任を持って対応させていただきます」


 黒髪黒目の少年の前に立つ騎士の1人が、あの少女に言っている、まさか第2王女とは・・。


「頼みましたよ、騎士団長!」


「はっ!仰せのままに」


 騎士団長と見られる騎士は、敬礼のような仕草をして、この大広間から黒髪黒目の少年を連れ出しその姿は見えなくなった。しかし次の瞬間に、夢の続きがあった・・。


 大広間にもう1人黒髪黒目の子がいる・・その子は少女だった。しかも、第2王女の態度は少年の時とは違い優しい目と口調で問いかけていたが、黒髪黒目の少女は泣いていた。


 それを見ていた俺は、前触れもなく視点が変わり感情が変わった。


「くそ、なんで俺が・・なんで俺がこんな目に・・かなえ!・・かなえ!」


 抵抗する俺を見かねたのか、頭から麻袋を被せられてしまい視界を奪われてしまった。


 しばらく乱暴に扱われ、全身が打撲で思うように体を動かせないでいると、どこかの森に連れてこられたようだ。


「俺に何をする気だ・・妹のかなえを返せ!」


 正面に立つ騎士の顔に感情がないことに気づき、背筋がゾッとした。


「お前に、怨みはないんだが第2王女様の命令だ・・せめて痛くないよう一瞬で終わらせてやる」


 騎士が長剣を抜いて、俺の首に切っ先を突きつける。


「や・・やめろー!!」


 喉が壊れそうなほど叫んだところで視界が暗転した・・・・。




ガバッ!


 無意識に上半身を起された俺は、訳がわからないまま口から声が漏れている。


「ぁぁ・・ぁぁ・・」


「もう大丈夫・・もう大丈夫だから・・」


 誰かに抱き締められている・・・・


「ここにいるから・・ここにちゃんといるから・・」


 さっきと違う声がする。


 2つの声を聞いた俺は、全身に力を入れて硬直していた体をゆっくりと脱力し呼吸を整えていく。


「あれ・・ここは?」


 俺の視界に金髪と青髪が見えている。


「1人で、寝てたのよ・・この寒い外で・・」


 リサの声が優しく耳に入ってくる。


「1人にさせてしまって、ごめんなさい・・」


 カラの声が耳に入り心が落ち着いてくる。


「そうか・・またあの夢を見てしまったんだ・・」


 リサとカラは、ギュッと俺を優しく包み込んでくれる。


 その優しさに俺は、しばらく甘えてしまっていた・・。



「ありがとう。リサ、カラ・・ダメなところ見られちゃったな・・」



 2人は首を横に振り否定してくれる。その目には、涙を流していた跡が残っている。



「このままじゃ、2人を凍えてしまうね。テントに戻ろう」


 そう言って、俺は立ち上がりリサとカラの手を繋いだままテントに入り込んだ。


 テントに入ると、リルとクウコは寄り添いあい寝ていて、ミオとミリナはルーシーの側で寝ている。


「今夜は、一緒に寝ようか?」


 リサとカラは笑顔で頷き、3人一緒に毛布に入ってから冷え切った体を温め合う。


「「 ハル・・ 」」


 リサとカラが俺の名を呼び、順番に口付けをしてくる。


 お返しに今度は俺から2人に口付けをしていくと、リサとカラにスイッチが入ったようだ。


 3人の体温は急激に上昇し、その後の俺は、リサとカラをたくさん愛して寝てしまった2人を見守った後、俺は意識を手放した・・。



 ふと目が覚めた俺は、上半身を起こしテント内に誰もいないことに気付いたと同時に、外から賑やかな声が聞こえ安堵する。


「みんな、早起きだな・・」


 ガバッ


 テントの幕が勢いよく開いて、隙間からリルの顔が覗き込んでいる。


「ハル、起きた?」


「おはよ・・今起きたとこだよ」


 ガバッ


 また勢いよく幕が上がると、クウコが顔を覗かせている。


「ハル起きた・・ご飯できてるよ」


「うそ?・・マジで・」


「「うん」」


 俺は、飛び起きて外に出るとリサとカラとルーシーが協力して、朝ごはんを作ってくれたようだ。


 一番最後に起きた俺は、みんなに謝って一緒に朝食を摂った。


 みんなで野営キットの片付けを終わらせ一息をついたところで、北のダンジョンへ向けて出発することにした。



「よし!・・みんな、準備はいいかい?」


「「いいよ〜〜」」


「それじゃ、北のダンジョンへ向けて出発だ〜!」


「「「おーーー!!!」」」



 そして、みんなで馬車に乗り込み馬車を走らせて行く・・・・。




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